3. 生きる意味を再考できる、「京都・丹後」の「意味のないもの」巡り

▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください！
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから！
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから！

ICC FUKUOKA 2025のセッション「「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！」、全10回の③は、「京都・丹後」チームの飯尾醸造 飯尾 彰浩さん、クスカ 楠 泰彦さんが登場。あえて自社事業に触れず、京都・丹後にある「意味のないもの」を食、工芸、歴史、時間の切り口から紹介します。丹後地方の知られざる逸品を、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。

▼
【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 6E「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！
Supported by EVeM

▲

▶「「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！」の配信済み記事一覧

---

クラフテッド・カタパルト優勝経験者の2人が語る「京都・丹後」

荒木　では、続いて京都・丹後チームです。

よろしくお願いします。

（以上スライド6枚をスピーディーに投影）

飯尾　というわけで、丹後には、意味のないものがたくさんあります。

では、自己紹介をお願いします。

楠 泰彦さん（以下、楠）　ICC FUKUOKA 2020のクラフテッド・カタパルトで優勝した、クスカの楠と申します。

▶伝統技法で“手織りの美しさ”を世界に伝える。京都丹後発のネクタイブランド「KUSKA」（ICC FUKUOKA 2020）【文字起こし版】

▼
楠 泰彦
クスカ株式会社
代表取締役

京都・丹後生まれ。30歳で東京から家業の織物業に戻り、2010年に自社ブランドkuska fabricを立ち上げ、手織りの商品を開発し、帝国ホテルに旗艦店を構え、ロンドン、サヴィル・ロウのロイヤルワラントの店舗でも展開中。また、地元、京都・丹後に特化したWEBメディアTHE TANGO(ザ・タンゴ)を運営。趣味は丹後の海でサーフィン。
▲

飯尾　自己紹介がいやらしい。

（会場笑）

楠　すみません（笑）。

飯尾　同じく、2023年のクラフテッド・カタパルト優勝者の、飯尾です。

▶商品×体験×ビジョンでお酢と地域の未来をつくる「飯尾醸造」（ICC KYOTO 2023）（PR TIMES）

▼
飯尾 彰浩
株式会社飯尾醸造 五代目当主
江戸前シャリ研究所 所長

1975年京都府宮津市生まれ。 2000年、大学院にて醸造学を修めたのち、大手飲料メーカーにて営業教育、マーケティングに従事。 2004年より飯尾醸造に入社後は伝統的な酢造りを学びつつ、R&D、ブランド戦略、マーケティングなど経営全般を担う。 2013年に五代目就任後、経営理念を「モテるお酢屋。」と定める 2017年、街の活性化を目的に、築120年の町家を取得・改修して直営イタリアンレストランacetoを開業。同時に離れの蔵をカウンター6席の鮨店へ。現在は、鮨割烹「西入る」として営業中。 2018年より江戸前シャリ研究所所長として、世界シャリサミットを主催している。全国各地はもちろん、世界中の江戸前鮨職人にとって技術共有と交流の場をつくっている。 2021年より、海の京都DMO「食の総合プロデューサー」として、地元の食品事業者のサポートも行っている。
▲

優勝者が2人いたら、もうプレゼンは必要なくないですか？

丹後から出ると、必ず優勝するというジンクスが……。

楠　そうですね、前回の京都（ICCサミット KYOTO 2024）では、（京都・与謝野町発ベンチャーの）ローカルフラッグの濱田（祐太）くんは……（※） 。

▶編集注：ローカルフラッグの濱田 祐太さんは、ICC KYOTO 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇して5位に入賞。

▶生まれ育った地域の衰退を止めたい! 地産ホップの「ASOBI BEER」で京都・丹後から挑戦する「ローカルフラッグ」(ICC KYOTO 2024)

（会場笑）

飯尾　そんな、おらへん人の悪口ゆうたら、あかんて。

（会場笑）

楠　いやいや、あそこに……（笑）。

飯尾　おるんかい！

（会場笑）

手ごね、薪窯で焼くパン屋「弥栄窯」

飯尾　では、気を取り直して。

意味のないもの4つをご紹介します。

まず、意味のない「食」です。

弥栄窯という、この写真の彼（太田 光軌さん）1人で経営しているパン屋があります。

まず薪を割り、小麦を挽き、ミキサーを使わずに手でこね、成形して、自ら作った窯でパンを焼きます。

このひとかけのパンに、どれほどの思いが込められているのか、ここまでやる意味が本当にあるのか。

「ご馳走」という言葉をご存知ですか？

ご馳走とは、自らが奔走し、相手のことを考えて作るものです。

若手刀鍛冶3人が構える「日本玄承社」

飯尾　続いては、意味のない工芸です。

ここからは有料になりますので、お財布を出してください。

（会場笑）

楠　改めまして、私から、2つの伝統的で美しい工房を紹介します。

まずは、刀鍛冶の日本玄承社です。

彼ら3名（黒本 知輝さん、山副 公輔さん、宮城 朋幸さん）は、日本刀で一番有名な、東京の吉原 義人（よしはらよしんど）さんという師匠に弟子入りして、刀鍛冶を学びました。

▶鋼の道に立つ青年たち　日本玄承社 前編（THE TANGO）

そして2年ほど日本中を巡り、独立して、美しい刀を作るための場所として見つけたのが、ここ丹後です。

丹後に工房を構え、1300年続く玉鋼を刀にします。

玉鋼を熱し、大槌を振るって鉄を叩く、これは鍛錬の作業です。

皆さんは経営者ですので、ぜひ、この鍛錬を体感していただきたいと思っています。

飯尾　これは、九州国王と巡れるんですよね？

楠　そ、そうですね。

いや、違いますね（笑）！

「鍛錬」という言葉の語源はこの作業ですので、ぜひ、ご覧いただきたいです。

火花が散ってきれいなので、心も洗われる体験が実際にできます。

出来上がる刀は、本当に美しいです。

独特の波紋ができて……。

飯尾　これは私が作った刀です。

楠　……そ、そうですね!?

（会場笑）

長い刀から短刀まで作られており、カスタムオーダーもできますし、ふるさと納税の返礼品にもなっていますので、ぜひ。

螺鈿織の技術を生み出した「民谷螺鈿」

楠　2つ目の工房（民谷螺鈿）は民谷螺鈿（らでん）といい、貝殻を織り込む丹後織物を作っています。

▶古の美を現代に織り上げる　民谷螺鈿株式会社（THE TANGO）

貝殻の内側、真珠色の部分を薄く削り、紋様にカットします。

飯尾　それを和紙に貼るのですよね。

楠　はい、通常の螺鈿細工は貼るだけですが、和紙に貼ったものを西陣織の引箔（ひきはく）という技術で1～3mmにスリットして、横糸に入れて織っていきます。

出来上がるものは、着物や、螺鈿の打掛です。

ちなみに、数千万円から数億円単位の価値があるらしいですが、織るのにも4、5年かかるので非売品となっており、丹後でしか展示されていませんので、ぜひ、丹後でご覧いただきたいと思います。

民谷螺鈿の製品は、最近ではディオールのコレクションに使用されていますし、着物をアップデートした名刺入れもあります。

こちらも、ふるさと納税の返礼品になっています。

上皇后の美智子様が、民谷螺鈿の帯をお召しになっています。

▶︎京丹後の螺鈿織り、細糸に宿す虹色の輝き（日本経済新聞）

身につけることは文化をつなぐことですので、ぜひ、丹後のクラフトを体感してください。

お伊勢さまのふるさと「元伊勢 籠神社」

飯尾　3つ目は、意味のない歴史です。

これは雪舟が描いた『天橋立図』で、国宝です。

▶天橋立図 – 名品紹介（京都国立博物館）

右側の真ん中に鳥居が見えると思いますが、元伊勢 籠神社（このじんじゃ）といい、その名の通り、伊勢神宮のルーツの神社です。

▶宮津にある「元伊勢」！？神秘の神社を大解剖〜籠神社（京都府宮津市）

1300年を超える歴史があり、この奥宮が、眞名井神社です。

ここには、日本で唯一、天照大神と、食を司る豊受大神（とようけのおおかみ）が、並んで祀られています。

伊勢神宮の内宮が天照大神、外宮が豊受大神ですが、豊受大神の出自が丹後にあるということです。

現在83代目となる、海部という名前の宮司がおり、その人の家系図（海部氏系図）は国宝となっています。

「家計簿」ではなく、「家系図」です。

つまり、丹後は日本のオリジン、起源だということです。

その日本のルーツである丹後に、皆さん、来られたことはありますか？

ぜひ、来ていただきたい。

それが、志を持つ皆さんのやるべきことではないかと思います。

意味のないことに触れ、原点に帰るひと時を

飯尾　最後に、意味のない時間。

今のこの時間は、果たして皆さんに響いているのだろうか、意味があるのだろうかと思いつつ、皆さんは普段、お忙しくされていると思いますので、もう一度原点に帰り、自分の生きる意味が何かを再考するのはいかがでしょうか。

それは、意味のないことに触れることで、発見できるのかもしれません。

天橋立、伊根の舟屋もあります。

▶天橋立から車で30分。舟屋で知られる伊根町へ行こう！（海の京都）

私たちは、自社についてのプレゼンは一切しません。

クスカも飯尾醸造も、出てきません。

ただ、丹後という場所で、意味のないものを巡っていただく時間を提供したいと思っています。

以上です、ありがとうございました。

楠　ありがとうございました。

荒木　素晴らしいプレゼンテーション、ありがとうございました。

最初はどうするのかと思いましたが、すごく強いメッセージで、素晴らしいプレゼンテーションでした。

飯尾　ここで、会場にいらっしゃる雅さんに一言頂きましょうか。

丹後に行った気になっていたことを反省

小林 雅ICCパートナーズ代表（以下、ICC小林）　僕は飯尾醸造もクスカも行ったことがありますが、共に素晴らしいです。　

飯尾醸造のものづくりは本当に素晴らしいです、それに加えて、丹後にはこんなにマニアックな世界があるのだと感動しました。

飯尾　ありがとうございます！

ICC小林　丹後に行った気になっていた自分を、深く反省しました。　

改めて、2日くらいかけて丹後に行きます！

荒木　おお～！

ICC小林　880万円（※日本玄承社の返礼品を選んだ場合の、ふるさと納税の寄付金額）はちょっと高いですけど、丹後に経済効果をもたらすべく、お金を使いますので。

（会場笑）

荒木　ラッキーでしたね。

飯尾　雅さんが、丹後のプレゼンをぜひ聞きたいとおっしゃっていたので。

荒木　え、本当ですか（笑）？

（会場笑）

ICC小林　石川樹脂工業についても聞きたかったのですが、時間の関係で戻らなくてはいけなくて…ここに来られた時間が、たまたま丹後だったということです（笑）。

（会場笑）

ラッキーなのは、丹後です（笑）。

荒木　雅さん、ありがとうございます（笑）。

私も雅さんと丹後を訪れたことがありますが、こんな魅力があったのかと。

事前に資料を頂いた際、「あれ？お二人の事業の紹介はないのでしょうか？」と聞いたくらいです。

その際、「私たちよりもすごいことをしている人がいるので、それを推します」とおっしゃっていました。素晴らしいプレゼンテーションでした。

飯尾　こういう場で、自分のプレゼンテーションをしても仕方なくないですか？

荒木　そうですね……って、いや、そうですねと言うのも…そんなことないです（笑）！

（会場笑）

飯尾　「クラフトサケを作っています」って話をしても…ねえ。

（会場笑）

荒木　それも良いです（笑）！

では、皆さんから質問を頂きましょう。

（続）

▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください！
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから！
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから！

編集チーム：小林 雅／小林 弘美／浅郷 浩子／戸田 秀成