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3. グロービス今野さんが語る、地方発ディープテックが世界を獲る可能性

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グロービス今野さんが提示する、このセッション全体を貫くフレームワーク「東京と地方」と「日本と世界」は相似形という視点。世界が注目する広島発のディープテック企業・大熊ダイヤモンドデバイスの事例や、地域アクセラレーションプログラムが”補助金頼み”で終わってしまうという中小機構・中野さんの悩みを通じて、「コミットメントの見極め」の重要性が浮かび上がります。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは中小企業基盤整備機構です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 7S 
イノベーション政策に物申す! –  政策立案のキーマン x 前広島県知事・有力VC 公開討論会
Sponsored by 中小企業基盤整備機構 

(スピーカー)

今野 穣
グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー

中野 千亜希
中小企業基盤整備機構 
九州本部 企業支援部 支援推進課長

湯﨑 英彦
広島県
前知事

(モデレーター)

石井 芳明
中小企業基盤整備機構
創業・スタートアップ支援部長

『イノベーション政策に物申す! –  政策立案のキーマン x 前広島県知事・有力VC 公開討論会』の配信済み記事一覧


「東京と地方」と「日本と世界」は相似形

石井 さて今野さん、先ほどディープテックに地域(の制約)はないというお話がありましたが、地域をどのようにご覧になっていますか?

今野 結論めいた話で言うと、このセッション全体で共通するフレームワークがあるとすると、「東京と地域」あるいは「東京と地方」という考え方と、「日本と世界」という考え方は、ほぼ相似形だということです。

例えば、日本から世界で勝てる会社を作ろうという話と、地域から日本、もしくはそれ以上スケールする会社を作ろうという話で、課題はほぼ一緒です。

世界に比べれば、東京と比べると、お金が足りない、人が足りない。

日本がビッグテックに勝てるのかみたいな話と、わざわざ地域や地方で東京と同じことをやってどうするの?みたいな話があるわけです。

まず、そういうフレームワークで考えられるというのが1つです。

そういう意味でいうと、僕が地域や地方に一番期待していることは、その地域特有の強みのところです。

先ほど湯﨑さんもおっしゃっていましたが、県として、地域性を持って、強いセクターや強い企業、城下町があるだとか、そのユニークな強みがあるかにこだわってほしいと思います。

数年前に地域のピッチコンテストに行きましたが、東京で見るようなピッチコンテストが多く、まず採用が東京と同じスピードで進まないのに、勝てるわけがないよねという話ばかりでした。

今は、ディープテックは固有の技術をもとにものづくりをしていますし、先ほど地域性がない、地域格差がないと言ったのは、主に大学の周りにその技術アセットがあるので、大学の所在地や研究されている先生の研究室の場所に紐づくものであって、それは東京でなければならないということは全くないのです。

そういうところが、最近、地域の見方という意味では変わってきていて、期待が上がっているところです。

石井 ありがとうございます。今すごくなるほどと思いました。

「東京と地方」と「日本と世界」というフレームワークは、もしかしたら同じですね。

僕らも政策の議論でよくやりますが、それを別々に話しがちです。

でもフレームワークとしては、両方近いものがあるのかなと思いました。

今野 東京から今さらGoogleと同じことをやっていないですよね、正直。

局地戦で日本が強い領域で勝てるものを……、僕はどちらかというと、イノベーションの範囲内ですが、発明もあるけれど、日本は細かい改善やアプリケーションに強いと思っています。

例えば、そういう長所を活かして、サッカーの戦術もイングランドと日本では違うわけですよ。

石井 確かに。

今野 フィジカルで勝負するイングランドと、アジリティ(俊敏性)やチームワークで勝負する日本と違うわけであって、という話が、地方のスタートアップとして日本で勝つ、東京の人たちにも勝つみたいな話をすれば、同じことが言えるはずです。

より局地戦というか、より強みにフォーカスする。

逆に言うと、地域性がないものを地域でやっても意味がないということです。

日本固有の経験がアドバンテージになる

石井 だから僕らは国の政策を考える時に、日本の勝ち筋は何かと結構議論するのですが、地域の勝ち筋は何かを、もちろん湯﨑さんのところではやっていらっしゃると思いますが、色々なところがやるべきかもしれないですね。

今野 そうですね。

それぞれの地域に、それぞれの強みが絶対ありますし、例えば大学も、この大学はこの分野に強いというのは、当然明確にあるわけですよね。

それは地域の方からしたらすごく大事なアセットというか強みなので、そこを思い切り尖らしていくことは、すごく大事なことかなと思います。

石井 ここ九州でも長崎に、蚊を以て蚊を制するスタートアップが出てきました。

フィールドワーカーズといって、マラリア蚊を撲滅するために、不妊の蚊を野に放つことによって、蚊が減り、殺虫剤が不要になるというスタートアップです。

出てきた背景として、長崎に熱帯の専門の研究所(長崎大学熱帯医学研究所)があって、アジアでもトップクラスです。

そういうところから出てくるし、スターサイエンティストは地域に点在されています。

今野 本当にそうですね。

グローバルのところでの話になるかもしれませんが、僕が2社直接見ているうちの1社の北海道大学の会社は、ダイヤモンドで半導体のデバイスを作ります。

20〜30年研究はずっと続いていて、シリコンの次はガリウムで、次はダイヤモンドだろうという世界共通のコンセンサスが一定形成されています。

ようやく実用化のめどが立ち、本当に世界を取れるのではないかと思う会社です。

海外の顧客からインバウンドで沢山話が舞い込んでくるので。

石井 そうですね。

今野 なぜそんなことができるのか、端的に言うと東日本大震災が影響しています。

福島の廃炉作業の時に、高圧、高温、高負荷下の炉の中で廃炉作業をオペレートできる半導体が既存のものではありませんでした。

当時はまだ量産できていませんでしたが、ダイヤモンドデバイスを使った半導体だけがオペレートできました。

石井 なるほど。

今野 何が言いたいかというと、日本固有の経験が実用化に対してすごく時間的なアドバンテージになったということです。

みんな研究だけをしてきたのですが、彼らが直面したケースは、背に腹は代えられない、もう試作品でいいから作ってくれという経験で一気にR&Dが進むわけですよね。

ダイヤモンドの時代が来るだろう中で、その実用化に向けて、世界の中で2段ぐらい早いのです。

日本における地域も一緒ですが、世界の中で当該の北海道の会社の課題先進国的なところでの経験がすごく大事な競争力と強みになっています。

石井 大熊ダイヤモンドデバイスという会社ですね。

今野 そうです。

石井 中小機構のインキュベーション施設にも入っていただいて、本当に期待の星だと思っています。

最近、世界の投資家が、大熊ダイヤモンドデバイスに話を聞きたいとたくさん来ます。

今野 めちゃくちゃ来ますよ。

投資家もそうですし、色々な産業界から、びっくりするような、誰もが知っている企業が来ますね。

石井 他では、例えば横浜市から少し外れたところに、すずかけ台という場所があります。

そこにインキュベーション施設がありますが、そこもシリコンバレーのコースラ・ベンチャーズからトップキャピタリストが直接やってきて、会社の技術を教えてほしいみたいな話があったりするので、見ている人は、場所を選ばず見ているのですよね。

今野 そうだと思います。

アクセラレーションプログラムを一過性で終わらせないためには

石井 サッカーの話は後半でもう一度お伺いしたいと思いますが、中野さん、地域でずっと取り組んできて、悩みを抱えているのですよね。

その悩みをお話しいただければと思います。

中野 ありがとうございます。

先ほど少しご紹介しましたが、我々も各地で色々なアクセラレーションプログラムをお手伝いしています。

一緒にプログラムを動かし、講義後にメンタリングをセットでして、参加企業のビジネスプランをブラッシュアップして、最後デモで発表して、ベンチャーキャピタリスト(以下、VC)におつなぎするまでの一連のプログラムです。

我々は国という立場でそういったお手伝いをしていますが、我々が全部の地域を満遍なく手伝うことはなかなか難しいので、ピックアップしながらお手伝いをしています。

我々が去った後も、地域で自走して続けていただきたいのですが、そのための支援をどこにお願いするのがいいのか、ノウハウを移転したり引き継いだりしてもらえる機関の育成も含めてやっていかないといけないのではないかと、ずっと悩んでいます。

石井 一過性になってしまうところがあって、これは国の政策でも同じですが、補助金を出しているうちは盛り上がって回っていても、補助金が切れるとシュッとしぼんでしまうようなことがあります。

中小機構でも色々支援して一緒にセミナーをやったりもしますが、その期間が終わると収束していってしまいます。

そこにノウハウやエネルギーを蓄積することが大事なので、なかなか悩ましいと思っています。

湯﨑さん、いかがでしょうか?

コミットメントの熱量の見極めが必要

湯﨑 おっしゃる通りで、一つは単年度予算主義の問題ですね。

それからもう一つは、あまりにも手厚くやりすぎると行政依存が生まれてしまいます。

これはスタートアップだけではなくて、地域活性などでもそうですが、活性化の取り組みをすると聞いて、行政のお金を頂戴とか、行政にまず来て何かしてくれでは、絶対にうまくいきません。

行政なんか関係ないよという人のほうが、うまくいくのですよね。

なぜなら、取り組んでいる人たちのコミットメントが全然違うからです。

そもそも誰かに手伝ってもらうからできるというだけだと、支援がなくなるとしぼんでしまいますよね。

石井 企業が補助金頼みで事業をするのと同じですね。

湯﨑 同じです。

だから企業側、あるいは地域側も、その活動を続けるためにはコミットメントがないと、支援がなくなった時点で必ずしぼむので、それをどう発見するかとか、そもそもコミットメントがあるところを対象にするかとか、そういうことがやはり必要ではないかと思います。

石井 なるほど、コミットメントがあるところにですね。

今野さん、いかがですか?

成功事例をつくる重要性

今野 同じような意見です。

広島県でやられていた湯﨑さんのフレームワークはその通りだなと思いますし、裾野を広げるとか新しく始めることを支援するのは、もちろん大事でやればいいと思いますが、そこから成功事例ができないと、それが良いことなんだと認識されたり、インテンシファイ(強化)されたりしないと思います。

だから良い事例、高さが出る事例を同時に作らなければいけないという時に、これも面白かったのですが、2020年の少し前に、経済産業省に産業政策を作ってくださいと言いました。

そうしたら、その時は無理ですと言われました。

国として特定の領域に依怙贔屓するような政策は立てられません、と。

でも、今見てください、日本として、「17分野」と言っているじゃないですか。

▶︎戦略17分野における「主要な製品・技術等」(内閣官房)

石井 言っていますね。

今野 それと同じように、地域も公的な存在というのはもちろんトレードがありますが、「うちの県は、これで立県します」くらい言ってほしいなと思います。

石井 なるほど。

今野 そうするとそこに人材も集まるし、お金と投資家も集まるし、この県にはこの強みがあるんだなと認知されます。

それは、1つでなくてもいいのです。

そういう産業政策及びその領域に対する徹底的な依怙贔屓をもって、高さの出る事例を作って物事を動かすことをしないと、裾野ばかり一生懸命に、先ほどのラーメン屋の事例をやっていても、それだけでは必要十分にならないので、思い切ってやってほしいなと思います。

石井 なるほど、そうですね。

今野 言い方はともかく、考え方としてはすごく思います。

石井 フォーカスする感じですね。

今野 そうです。

石井 ちなみに、依怙贔屓しろとかフォーカスしろとかターゲットしろという話を、堀(義人)さんからもずっと言われているし、インキュベイトファンドの赤浦(徹)さんからもずっと言われています。

そういう中で出てきたのが、J-Startupです。

これができた背景として、当時の世耕(弘成)経済産業大臣が、依怙贔屓しろ、それが産業政策のターゲティング政策に大事だと言ってくれたことがあります。

そこがリーダーシップだったなと思いますし、やはり、リーダーが方向を示すということですかね。

今野 そうですね。

コミットメントを呼び起こすには

石井 今野さんはリーダーシップをキーワードに掲げていらっしゃいますが、リーダーが方向を示し、コミットメントを呼び起こすには、どのような工夫が必要ですか?

方向を示しただけでついてきてくれるかというと、そうでもない部分もあって、それは企業においても同じだと思いますが。

今野 先ほどの話からつながる部分もありますが、細かい成功体験を続けるべきだと思います。

最終的にユニコーンになる前にも、その前に何回か調達や大きなパートナーとの提携があったり、いい人材が採用できたりといった良いニュースがたくさんありますよね。

やはり勝てていないチームは、モチベーションが下がります。

石井 勝つ経験ですね。

今野 そうです。

少し失敗もすべきだし、トライもすべきですが、その中の何回かに1回はこれでいいんだ、これで勝てているんだ、これで前進しているんだという経験をして、それが繰り返されれば、モチベーションは勝手に上がると思っています。

「いけるかもしれない」みたいな。

石井 湯﨑さん、勝つ経験を部下の方々、県庁の方々もしてきましたか?

湯﨑 そうですね。

勝つためには負ける必要もあります。

失敗してもいいというのはそういうことなのですが、100%うまくいくとか100%勝つことはあり得ないから、失敗を許容しながら、その中でうまくいくこともあります。

それを積み重ねていくことが、すごく大事だと思いますね。

石井 ということは、自治体と一緒にプロジェクトを行う時も、勝つ経験を持ってもらわなければいけなくて、これでうまくなって、動いている、だから次にこれをやりましょうよみたいな感じですね。

今野 だから、最初の1つはその地域が一番強いところ、要は勝ちやすいところにフォーカスして、トライをして事例ができました、次はこうしましょうというように、だんだん一般化して、他の領域に展開すればいいと思っています。

これは、日本のスタートアップが世界で勝つ時に考えたほうがいいことと、全く一緒ですね。

石井 そこは同じですね、なるほど。

中野さん、地域において、それで展開できそうですか?

中野 そうですね。

なかなか難しいところもありそうですが、それは、地域で強みを持っている県や自治体をまず探していって、そこにアプローチしていくということですか?

大学の研究や技術に注目

今野 僕らの場合は、県というより大学単位で見ます。

この大学、この研究室は世界に誇る研究をしていて、この教授は法人なりをしたがっているという情報をキャッチしたり、もしくは提案しに行ったりして、大学単位で見ています。

エリア目線で言うと、それぞれのエリアにそういう旗印になるような人なり研究室なり技術なりがあるのではないかと思いますし、もっと言うと、地域に強い会社があったら、その周りに城下町的なエコシステムがあるわけですよね。

そこも一つのオポチュニティかもしれないという考え方をすると、勝ちやすいというか勝率は上がるのではないかと思います。

ただ、同じ人が裾野を広げることと、この両方をやることは結構難しいかなと僕は思います。

石井 そうですね。

今野 裾野を広げるほうは広げるほうのKPIを持って、高さを出すほうは高さを出すほうのKPIを持った別のものですよね。

石井 なるほど、役割分担ですね。

僕らも地域のポテンシャルを見ますし、もう一つは「この人」みたいな地域のキーパーソンですね。

今、地域でスタートアップが盛り上がっているところは、割りと顔が見える人がいるのです。

ここ福岡なら、高島(宗一郎)市長のリーダーシップがすごいよね、広島なら湯﨑知事の時にすごく動いたよねみたいな話があって、実はその下に、行政の人で現場を動かす人がいてみたいなところがあって、それと地域のポテンシャルが組み合わさるといいかなと思います。

広島でいうと、ファンドに詳しい串岡(勝明さん、広島大学)さんがやってきて、これを一緒に色々やりましょうよみたいな。

串岡さんがやるのだったら僕らも応援するよみたいな雰囲気ができてきたから、そういうパートナーシップでコミットメントを引き出すのはいいかもしれないですね。

中野 やってみようと思います。

石井 やってみましょう、僕らもやってみたいなと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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