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「日本サッカーが強くなった理由は、スタートアップ政策にも応用できるのでは?」というモデレーター石井さんの問いに、グロービス今野さんが”国際化”と”育成・選抜の仕組み”という2つの要素で回答。小学生年代から始まる代表選抜システムになぞらえ、VCを育てなければスタートアップも育たないという、湯﨑さんの持論にも発展します。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは中小企業基盤整備機構です。

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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 7S
イノベーション政策に物申す! – 政策立案のキーマン x 前広島県知事・有力VC 公開討論会
Sponsored by 中小企業基盤整備機構
(スピーカー)
今野 穣
グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー
中野 千亜希
中小企業基盤整備機構
九州本部 企業支援部 支援推進課長
湯﨑 英彦
広島県
前知事
(モデレーター)
石井 芳明
中小企業基盤整備機構
創業・スタートアップ支援部長
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日本サッカーに学ぶ、世界で勝つスタートアップを作る法則

石井 では、残り30分ですので、後半のグローバルやスケールの話をしたいと思います。
これに関して、ずっと今野さんに聞きたいと思っていたことがあります。
今野さんは、知る人ぞ知るVCの中で最もサッカーに詳しい方で、ご自身もサッカーをしていらっしゃいます。
日本のサッカーは強くなりましたよね。
実は僕は元サッカー少年で、子どもの頃、ワールドカップは別の世界の別の人たちがやっているものだと思っていました。
当時、日本には実業団があって、その後Jリーグができましたが、ワールドカップって遠いよね、全く違う人たちがやっているよねと思っていました。
でも気づいたら、今、ワールドカップに出場して、どんどん勝てるようになっていて、これはどういうことなのか。
それは、スタートアップ政策にも応用できるのではないかと思っています。
日本で世界に勝つスタートアップを作るためにはどうすればいいのか、それは日本サッカーが世界で勝てるようになったところに学ぶべきところがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
今野 ありがとうございます。事前の打ち合わせでいきなり、サッカーの話を聞きますと言われて(笑)。
石井 すみません、無茶ぶりで(笑)。
今野 かつ僕はJFA(日本サッカー協会)の人でもないし、会長をはじめ仲が良い人はたくさんいますが、客観的に無責任に発言するとよくないのですが。
日本サッカーに学ぶポイント①「国際化」

今野 色々なことをやられていると思いますが、明確に2つの要素があって、1つ目の要素はやはり「国際化」です。
国際化も2つの要素に分解され、一番大きいのはヨーロッパのリーグで日常的にプレーする選手が増えたことだと思います。
今の日本代表選手の所属チームを見ても、ほぼJリーガーはいないです。
石井 ブラジルではなくて、ヨーロッパなのですね。
今野 ヨーロッパです。
どちらでもいいのですが、グローバルスタンダードのプレー強度の中でも、もともと高いと言われていた日本人の技術が出せるようになるぐらいになりました。
もともと能力はあったけれど、飛び出していったカズ(三浦 知良)さん、ヒデ(中田 英寿)さんがいて、「日本人もやるじゃないか」言われるようになり、選手がどんどん海外に行き、今、日本代表選手は、ほぼ全員が海外リーグ所属です。
つまり、いきなりワールドカップで外国人と対戦するのではなく、日常的にグローバルのスター選手とプレーして、この選手はこのレベルの能力なんだなという物差しを持っていることになります。
日本が絶対的に劣っていたわけではないけれど、ビビっていた部分もあって、でも行ってみたらまあまあできるじゃないかと。
なぜなら、野球でも、大谷 翔平さんは世界で一番のプレーヤーですから、日本人は別に劣っていないのです。
まさに先ほど湯﨑さんがおっしゃったメンタルバリアみたいなものが外れて、当たり前のこと、日常になったのは、すごく大きいと思います。
国際化のもう一つは、これは応用できるかわかりませんが、ハーフが増えたことです。
日本代表の若年層のチームにはハーフの選手が沢山います。
石井 そうですか。
今野 トップには鈴木 彩艶くんがいて、ある種日本人という定義の国際化も、強くなっている要因の一つだと思います。
石井 ラグビーでも、海外の選手がどんどん日本のチームに入って、帰化して、国籍を取ってという動きがありますね。
今野 ラグビーも、そうですね。戦術として、兵力を国際化するというのも一定あると思います。
日本サッカーに学ぶポイント②「育成・選抜の仕組み」

今野 2つ目の要素は、「育成・選抜の仕組み」が非常にしっかりしていることです。
それこそトップダウンで、JFAから地域、都道府県のクラブまで統制が取れました。
多少の例外はありますが、乱暴に言うと、小6、中1の時点で日本代表のグループがだいたい分かっているのです。
石井 小6で?
今野 小6、中1で「トレセン」といって、区の選抜、市の選抜、県の選抜、地域の選抜で、小5くらいから選抜があります。
確か中学生で200人ぐらいのグループがあって、ほぼそれが将来の日本代表のプールなのです。
そこに入っていない子が後で努力して突然変異して入ってくることも当然ありますが、実際に代表に入る早くて20歳過ぎの10年前に、この子は来るともう特定されているのです。
それが仕組みとして、誰かの主観であっても、色々なスクリーニングを経て選抜されていく仕組みはとてもきれいにできています。
石井 それは、候補者が広がっているからできるのですか?
僕が子どもの頃は、サッカーはマイナーなスポーツでした。
少年サッカーチームに入っても、クラスの中ではちょっとマイナーで、野球をやっている子たちがメジャーでした。
ところが、ある時からサッカーがメジャーになってきて、だからこそ良いアスリートの卵が集まる気がするのですが、どういうスイッチだったのかなと思いまして。
『キャプテン翼』の影響ですか?
今野 ヨーロッパの一流選手でも『キャプテン翼』を読んでサッカー選手になったような人もいるから、それは大きいと思いますね。
なぜ野球よりサッカーがポピュラーになったかという話をし出すと長いですが、一番わかりやすいのは手軽にできることだと思います。
ボールが1個あったら、道でできますから。
石井 確かに。
今野 野球はバット、ボール、グローブと、道具が色々必要ですよね。
ブラジルのストリートでサッカーをしていた子どもが代表になっていることからすると、手軽であることは大きいと思います。
あと、『キャプテン翼』の世界も、もちろんそうです。

石井 あとは、今のようにワールドカップで勝てるようになると、目指す人がさらに増える感じでしょうかね。
前段の「国際化」について言うと、もっと日本の起業家に海外のすごいところで働いてもらうとか、戦ってもらうみたいなことを何かやりたいですね。
今野 まさにアナロジーをそのままいくとすると、ビッグテックのキーポジションで働く人の数が実はKPIかもしれません。
石井 ビッグテックの中で働く、あるいは、アンドリーセン・ホロウィッツで働くとか。
今野 ベンチャーキャピタルでもいいですね。
石井 アクセル・パートナーズに行くとか、そういうところですね。
今野 日常的にそういう人たちと普通に働く。
本当は会話できる力や技術力があるのですが、まだ遠い存在と思っているかもしれないですね。
石井 そうですよね。
日本の起業家がヨーロッパのピッチコンテストで勝てるぐらいになってくるといいし、というところかもしれないですね。
2つ目の「育成・選抜の仕組み」のほうは、アントレプレナーシップを持たせる教育とか、スタートアップがどんどん出てくるような過程でのトレーニングとか。
G-STARTUPなどもアクセラレーションプログラムをやっていますが、改善点はありますか?
もっと急こう配の依怙贔屓をしてもいい
今野 もっと急こう配の依怙贔屓をしてもいいのかもしれないですね。
日本代表は、スタメンは11人しかいないですからね。
石井 そうですね。
サッカー少年は、何十万人?…、何百万人?
今野 以前調べたのですが…、実はうちの子どものチームは、中学校で全国3位になりました。
中学校は6,000校ぐらいあったので、仮に1校20人としたら、中学校だけでも12万人で、高校を入れたら、まあ100万人近くはいるんじゃないですか?
石井 最近は少年だけでなく女性も増えてきたし、ボリュームが増えてきた中で、急こう配で選ぶ選抜というのも。
今野 J-Startupは、すごくインセンティブがたくさん設計されていていいと思いますが、だいぶ数が増えて、若干希少価値が(笑)。
石井 そうそう、というのはあります(笑)。
昨日も、僕の後任の富原 早夏さんという経済産業省のスタートアップ担当室長が来て言っていたのが、J-Startupプレミアを作ろうかみたいな話があって、そういうのもやってみたらいいのかもしれないけれど、そうなってくると行政でどれだけ応援しきれるかが悩ましいところなので、その辺のバランスを見ながらという感じかもしれないですね。
湯﨑さん、グローバルで勝っていくことについて、いかがでしょうか?
ご自身が、イグナイト、アッカ・ネットワークスと、グローバルで戦ってこられてきましたが。
世界で働く人を増やす

湯﨑 やはりマインドセットなので、サッカーの例でもありましたが、世界で働いてみるのはすごく意味があると思うし、そういう人を増やす。
それは、裾野ですよね。
それで高くなりそうな人を代表のプールに選んで、集中投資するということじゃないかと思います。
石井 なるほど、そうですよね。
湯﨑 先ほどイノベーションの探索の話をしましたが、人も探索が必要で、その探索のためには、やはりある程度広くやらないとなかなか出てきません。
石井 そうですよね。
湯﨑さんがスタンフォード大学に行っていらっしゃった時に、僕はバークレーにいて、そのコミュニティで話していると、ものすごく変わった人間が多くて、後から見ると、すごく化けるのです。
会った瞬間は、「この人どうなの?」みたいな。
そこがちょっと難しい。
例えば、スティーブ・ジョブズも、ただのヒッピーだったみたいな話もよくあります。
サッカーの場合、この子は伸びるみたいな、選ぶ方法が出てきていますが、ビジネスの世界では、スタートアップや経営者をどのように見ればいいですか?
湯﨑 それは、とにかくやらせるしかないです。
(一同笑)

先ほども言ったように、今、留学が減っているのはすごく問題だと思うのですが、海外に行く経験があり、しかも働いてみる。
例えば、アンドリーセン・ホロウィッツやビッグテックに送るとか、ある程度、そこのレベルで大量生産する必要があります。
その中から自分にマッチするな、フィットするなと思って、目がギラギラしてきて、俺はやるぞみたいな人が出てきて、それを事業化したり、ビジネスを大きくすると、お金もかかるしリソースがかかるわけだから、全部にはできないわけです。
でも、いくつかそうやって伸びてきたところを、ピックアップするイメージです。
石井 なるほど。
今野 選ぶというよりも、あるプールを作ったら、そこで一定の競争なり相対的な物差しができるから、自然とある種尖った人がポンと出てくる、プールというか、まさにコミュニティというか、場を作ることがすごく大事な気がします。
石井 物理的距離とか心理的距離、あるいは連絡の密度などが高いプールを作るということでしょうか?
今野 まあ、そうですね。
システムを開示して、地域選抜する
石井 地域のエコシステムを検討している時にそういう話があって、例えば明治維新の英傑と呼ばれた人たちが出てきたのはごく限られた地域でした。
九州、鹿児島のこのエリア、山口のこのエリア、それから高知のこのエリアみたいな。
その人たちが切磋琢磨して密につながっていた感があって、そういうコミュニティの作り方があるのかなと思います。
今野 そうでしょうね。
サッカーも市の選抜があって、県の選抜があって、地域の選抜があって、国の選抜があるから、長州藩とか土佐藩の話は、地域選抜同士の会話なのですよ。
中国地方の選抜が長州であり、四国選抜が土佐であり、九州選抜が薩摩でありみたいな、結局そういう話なのでしょうね。

石井 なるほど、面白いですね。九州カラーとか、色も出てくるのですか?
今野 サッカーですか? そこはあまり関係ないかもしれないです。
石井 そうですか。切磋琢磨していくのでしょうね。
今野 選手も、次は市だ、県だ、地域だ、国だというのも、システムが開示されていますから、その階段を上がっていこうというのはわかっています。
石井 なるほど、地域のスタートアップも、そういうことができるといいのかなと。
今野 行政がやるかどうかは別にして、例えば、“福岡県の今年の3人”みたいにやってしまえばいいのではないかと思います。
石井 それはいいかもしれないですね。
スタートアップとVC、双方の育成が必要
湯﨑 サッカーの例でいうと、僕は今の選抜システムもそうだと思うのですが、選ぶ目がないとできないことですよね。
選抜後に指導できないといけませんが、その仕組みも多分サッカー界でできてきたのではないかと思います。
今野 そうですね。
湯﨑 それがスタートアップで言えばVCなわけです。
色々なところで働かせようというのは人の問題ですが、スタートアップや企業とか、いわゆるベンチャーでいうと、たくさんのスタートアップやベンチャーを作って、そこでいいなと思うものを選抜して育成し、リソースを注ぎこむ仕組みがあります。
選抜をして育成をする仕組み自体を、国や行政がやろうとするのは、僕は間違いだと思うのです。
それをサポートすることはできるけれど、目利きがあるわけではないので、スタートアップを育てようと思ったら、VCを育てなくてはいけません。
石井 そうですね。

湯﨑 今ようやくグロービスもファンドを作って二十数年になり、独立系のベンチャーキャピタルも増えてきましたが、ようやくここへ来てという感じなので、もっともっと増やさなければいけないし、それを増やすためにはお金が流れ込まないといけません。
昨夜の話にもありましたが、指導も試行錯誤だから最初は失敗するのですが、失敗フェーズはある意味、ベンチャーキャピタル・インダストリーの死の谷みたいなところかもしれません。
行政が死の谷を乗り越えるサポートをするのは、僕は意味があると思います。
そこで実際のプレーヤーとコーチする人の組み合わせができてきて、そこでまた良い成功モデルがスパイラルを描いてくるのではないかと思いますね。
石井 確かにおっしゃる通りで、J-Startupがまさにそうです。
スタートアップを今280社選んでいますが、行政に目利きの力がないから、VCや大企業のオープンイノベーションを担当している人に選んでもらっています。
湯﨑 J-StartupはJ-Startupで僕はいいと思うのですが、どれだけそこにコミットするか、どれだけ本気になるか。
選ぶのは簡単なのですよ。
石井 同じ船に乗るということですね?
湯﨑 そうです。選んだだけだと、責任は何もないですからね。
ある意味、目立つ企業を選ぶというのは、サッカー選手に何か表彰してあげるとか、そういうのでいいのですが、それを本当に育てようと思ったら、自分の利害が一致して、本気になってやらないといけません。
これが失敗したら、自分も失敗するという関係が。
石井 まさにキャピタリスト。
湯﨑 そうそう、だから結局ベンチャーキャピタルなのですよ。
それがないと、本気で大きくなっていきません。
石井 なるほど。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

