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ユーザーインサイトをどう深掘るか?SHOWROOM前田・ソウゾウ松本が徹底議論【K16-6E #5】

ICCカンファレンス KYOTO 2016 Session 6E 「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」

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「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」【K16-6E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その5)は、SHOWROOM前田さんとソウゾウ松本さんにそれぞれのユーザーインサイトの深堀り方についてお話頂きました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 6E
「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」

(出演者)
前田 裕二
SHOWROOM株式会社
代表取締役社長

松本 龍祐
株式会社ソウゾウ
代表取締役社長

小泉 文明
株式会社メルカリ
取締役(当時)

(聞き手)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル

坂本 達夫
AppLovin Corporation
Director Sales, Japan

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【本編】

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坂本 お2人のお話を聞いて共通しているのが、実際に作り始める前にかなり調査されていることだなと思いました。

その調査をどういう風にされていて、どのようなところをご覧になっているのか、その調査された結果をどのように自社のサービスに生かしていらっしゃるのか、ご経験を含めてお2人に伺ってみたいです。

前田 僕は、とにかくユーザーインサイトの深掘れるところを徹底的に深掘るということだと思います。

例えば、中国には投げ銭サービスに週に1,000万円も課金するようなユーザーがいるのですけれども。

坂本 1,000万円の投げ銭ですか!

コアユーザーインサイトの徹底的な深掘り

前田 そういうコアユーザーが一体全体どういう気持ちなのかを言語化したくて、徹底的にインタビューしたことがあります。

坂本 ユーザーに実際に話を聞いたのですか?

前田 聞きました。

井上 中国語で?

前田 はい。中国の投げ銭サービス訪問の時に、紹介して頂いて。

松本 優しいですね(笑)。

前田 一応、相手のサービスをプラットフォームとして活用しようとしている、日本のゲームディベロッパーでもあったので。

(一同笑)

松本 そうではないと協力しないですよね。

前田 当時、話を聞いていて一番面白かったのは、女の子の配信ルームがあって、その部屋に入室する時に、ユーザー自身の車がアバターとして映るんですよ。

車は、カローラだったり、たまにポルシェが来たり。

坂本 ユーザーが持っている車ですか?

前田 そうです。

それでヒューッと入室するんですけれども、面白くて、100万円以上するバーチャルの車をユーザーがそこで買うんですよ。

坂本 リアルの車でいいのが買えますよね。(笑)

現実でポルシェを買っても隣に乗せる女性がいない

ICCカンファレンス KYOTO 2016 Session 6E 「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」

前田 そうなんです。インサイトが全く分からなかったのですが、色々話を聞いて面白かったですよ。

皆共通して言っていたのが、リアル社会で自分がポルシェを買ったとして、隣に乗せたいと思う女の子がそんなにいないということでしたね。

坂本 ほお。

前田 例えば、一つわかりやすい例を。今、中国で「YY」に迫る勢いで「映客」というサービスがすごく流行っているのですけれども、トップに常にこういう演者(スマホ画面を見せながら)が来るんですよ。何時に開いても。

何時に開いても必ず、こういう非現実的なほど質の高い演者がいて。おそらく、中国のKTVで働いているような子が昼間やっていたりするケースも多いのでしょうが。

坂本 これは今リアルタイムですか?

松本 すごいですね、投げ銭が。

前田 要は、ここまで美しい女性が、身の回りにいないそうなんですよね。

僕が言われたのは、「一度中国を歩いてごらん、街中にこんなに可愛い子はいないよ」と。

坂本 確かに。

前田 ユーザーは、リアルにおけるコミュニケーションが特段上手な訳ではないし、どういう風に付き合ってよいかもわからないから、ネットでこういう演者に出会って、例えば自分がそこで車を持っていれば「ポルシェ、カッコいい!」と言ってもらえて。それでいいんだと。

坂本 その子とどうこうなりたいという訳ではなくて、その中で。

前田 そうそう。

自己顕示欲や承認欲求を満たしに来ている

前田 そこで彼らの想いを抽象化してみたのですが、端的に言うと、現実世界では十分に刺激されない自己顕示欲や承認欲を、ネット社会に満たしに来ているのかなと思いました。

考えてみたらソーシャルゲームもそうだし、これは人類共通の欲望だと。別に中国特有の理由で流行っているわけではないな、と感じて、それはもう興奮しましたね。

坂本 これは日本でもいけると?

前田 日本でもいけるし、アメリカでもいけるし、世界的にいけるなと。もちろん、まだベーシックニーズが満たされきっていない発展途上国においては、もう少しインフラ寄りのサービスに勝機があると思います。

しかし、日本やアメリカにおいては既に必要十分な便利さが担保され、その次にどういう欲求が起こるかというと、人間としての尊厳が満たされたいとか、すごいと思われたいとか…

坂本 承認欲求ですね。

前田 マズロー(Abraham Harold Maslowの自己実現理論)ではないですけれども、結局はそういうところに(欲求のレベルが)上がっていくじゃないですか。

さらに、テクノロジーが進めば、コミュニケーションも含めて何もかもを効率化する方に一旦は向かうはずです。これによって、日常生活において、人間の温かみが失われていく可能性があります。例えば銀行の窓口がAI(編集注:Artificial Intelligence=人工知能)になったら銀行のお姉さんとのやりとりもなくなって、逆にちょっと人肌が恋しくなるというか。

ネットが効率化していくことによって逆に、むしろリアルの価値に気づかされて、もっと人間的で温かいアナログな何かが流行るだろうという仮説もあって、それが中国サービスから抽出したエッセンスの一つですね。

日本においても、そういうものに課金する人の気持ちというのはアナログなものが多いのですが、そういった温かい気持ちを生み出せるようなサービスにしたいという想いがそもそもありました。

ICCカンファレンス KYOTO 2016 Session 6E 「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」

ご質問の内容に戻りますが、どういう調査をするかということで言うと、基本は現象やデータなど、かなりファクトドリブンで動くというところがあります。

DeNAの文化も結構似ているのですが、我々も、ファクトを見てきちんと仮説を立ててからアクションを起こすことをルールにしています。

チームの価値観を合わせるためのペルソナ作り

松本 僕は、立ち上げ前に詳細なインタビュー等はしないですね。

過去にもあまりやった覚えがありません。

というのは、サービスモデルやUIに近いところまでを同時に検討しながらサービスを作っていくので、インタビューをする時間がないというか。

事前の情報収集でこの領域はよいのではないかということを考えますね。

例えば女子向けというところでは、「あれ、そういえばソウルに行った時も、上海に行った時も、日本のプリクラ機があったよな」という風に。

アジアで日本の「カワイイ」というカルチャーが受け入れられているところを見て、それでアジア向けにやろうということで振り切りました。

リリースした後、台湾に行って実際にインタビューしたりしました。

ただ単に台湾のショッピングセンターに行って女性に話しかけるだけなのですけれども、それこそ(小泉さんと)一緒に行きましたよね。

前田 一緒に行ったのですか?

小泉 台北101に行きました。女の子をナンパしたよね。

坂本 えー。

松本 ひたすらスマホを見せてもらっていました。

ICCカンファレンス KYOTO 2016 Session 6E 「新規事業の立ち上げプロデューサー対談」

リリース前はインタビューはやっていなくて、強いて言うならばやるのは、チームの価値観を合わせるためのペルソナ作りというのをやることがあります。

例えば、TRILLをやっていた時にはTRILLの女性ユーザー、対象者で動画ユーザーというのを明らかにするために、メンバーがインタビューをして、うちのユーザーってこういうものが好きだよねという価値観、例えば「とりあえず”パリに行きたい”ってやたら言うよね」とか、「”マカロン好き”って言うよね」とか、「”○○女子になりたい”って言うよね」とか。

これがうちの女子像だよねというのを作ると、基本的にはそのペルソナと、「リトル本田」じゃないですけど、心で対話できるような状態をメンバー全員で持つと、意思決定が早くなるんですよね。

坂本 この機能があのユーザーには向かないかなといったことが、皆同じ目線でできるという。

松本 その目線が合っている場合は、例えばアッテのユーザーのペルソナは「メルカリを使っている人」という、すごく広いのですけれども、何となく、年齢層が20代から30代くらいの女性やお母さんが多くて…というところを共通できているので、初期にはあまりインタビューをしなかったんですね。

坂本 なるほど。

松本 もう皆の認識が共通しているから。

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(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり

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【編集部コメント】

続編(その6)では、子会社が新規事業を立ち上げてスケールさせるメリットとデメリットについて議論しました。SHOWROOM前田さんが親会社DeNAのリソースをどう使い尽くしたかについてぶっちゃけています。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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