クラウドワークスの創業時のプレゼンテーションを公開しました。クラウドワークスの創業時のプレゼンテーションです。このプレゼンテーション資料でエンジェル投資家を集め、事業を拡大した。ぜひご覧ください。
登壇者情報 2016年11月17日収録 ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」 スタートアップ企業のビジネスプラン研究 第一回 「クラウドワークス」 (講師) 小林 雅 ICCパートナーズ株式会社 代表取締役 ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授 氏 (ゲストスピーカー) 吉田 浩一郎 株式会社クラウドワークス 代表取締役社長兼CEO (アシスタント) 小泉 陽以
前編はこちらをご覧ください:クラウドワークス成長の軌跡
中編はこちらをご覧ください:クラウドワークスのターニングポイント
クラウドワークスの創業時のビジネスプランのレビュー
小泉氏 ターニングポイントを見てきましたけれども、次は創業当時のビジネスプランの紹介ですね。
小林氏 そうですね、創業当時のプレゼン資料、これなかなかいいですよ。このデザインなんですか! 「インターネット開発のクラウドソーシング」とは! びっくりぽん!
吉田氏 ちょっとこれ何を言ってるか分からなくて(爆笑)。「インターネット開発のクラウドソーシング」というのはそもそもインターネット詳しく無い人みたいな資料ですよね(苦笑)。
小林氏 つっこみどころ満載ですよね。次に行ってみましょうか。会社設立は2011年11月11日なんですね。丁度4年前ですね!
吉田氏 丁度4年前ですね。ここら辺は普通ですかね。突っ込みどころとしてはね。
小林氏 ここ注目なのは株主の数が多いんですよ。つまり自分に自信がないため多くなってくるんです。
吉田氏 それは間違いないです。
小林氏 だいたい自分に実績が無い人は他人の実績を借りるんですよ。これ悪いことじゃないですよ。
一般的には顧問が多いとか、Webサイトに記載されている顧問の経歴が長いとかね、そういうのが傾向に出てくるんですよね。自分に自信ないでしょ?と思いますよね。
小泉氏 ちょっと信用があるのかなって、そう見せたいんですよね?
小林氏 見せたい心理が分かるからそうなるんですよね。
吉田氏 私のキャリアで下の1行とか「ベトナムに事業進出を果たし、横浜市、JETROなど講演取材多数」というのは今のビジネスに何の関係もないですからね。
小林氏 でも吉田さんは、昔は「営業の達人」という名刺を配ってたんですよ。自分で「営業の達人」という名刺を配ってる人だったんですよ。
恥ずかしいですよね。今となっては日本ベンチャー大賞ですよ!
「営業の達人」っていう名刺をドリコムの代表の内藤さんに出したら「面白いね」という話になって営業担当の執行役員になるという吉田さんの起業家のキャリアに繋がった。人生何が起こるか分かんないんですよ。
吉田氏 実はアタッカーズ・ビジネススクールに通ってた頃に「営業の達人」という名刺を持っていて、大前研一先生にも渡したことがあります。
小泉氏 大前先生は何かおっしゃってました?
吉田氏 大前研一先生は全く動じることなく、私が今まで見た営業の達人は君みたいのじゃなくて、飛行機を売ってたと。ジャンボジェットのセールスマンで、彼が私が会った中で最も営業の達人だ、と全く動じずに、何となく想像つくと思いますけどそんな受け答えをしていただきましたね。
あと、野村の経歴というのも……
小林氏 グランドピアノを所有する……
吉田氏 全然関係ないですよ、全然関係無いんですけど何かないか?と思って書いていたりとかですね。
小林氏 面白いですね、突っ込みどころ満載でしょ。これで投資しますかあなたは?みたいな話ですよね。
吉田氏 次も2行目に「スーパーエンジニア」と書いちゃっていますからね。
小林氏 誇張する表現を多く使うんですよね。俺はすごいってね。それは裏返すと自信がない、実績がないということなんですよね。
吉田氏 一番力を借りたのは松崎さんでして、松崎さんは慶応義塾大学出身でMBAを取って、日本興業銀行から楽天の役員ですのでピカピカな経歴なわけですよね。これ1人で1ページですから。
小泉氏 1人だけ1ページですね。それも非常勤!
小林氏 多分の松崎さんのイメージは凄そうだなって思うけど、普通にフランクないい人ですよね。
吉田氏 これは松崎さんが楽天辞められた直後で、ちょっと気持ちにも余裕があって、「それ面白そうじゃないか」ということで即答いただいたらもうあちこちで松崎さんの名前出させていただきましたね、当時。
小泉氏 続きまして当時のミッションのスライドですね。
小林氏 これはもはやポエムみたいですね! 今は「“働く”を通して笑顔に」というすごいシンプルなミッションになってるじゃないですか。キャッチーなメッセージが重要なんですよ。
吉田氏 ちょっと力みを感じますよね。
小林氏 力みを感じて、理解されないから長く書いちゃうんですよ。だから詩になっちゃうんですよね、僕はよくポエムというんですけど。
吉田氏 そこからのこれですからね。
小林氏 これですよね、クラウドワークスとフェイスブックと比較してるんですよ。今となってはフェイスブックもクラウドワークスもすごいけど、当時は圧倒的に規模が違う! 「仕事はクラウドワークス、生活はフェイスブック」というのは……
吉田氏 脳が夢に満ちてるんで、夢で満たされてるような……
小林氏 これを聞いてどう思いますか?
小泉氏 夢が大きくていいと思います。
小林氏 すごくポジティブですね。(最初は)バカじゃないかと言う人もいるんですよ。
吉田氏 Launch Padのプレゼンもこのスライドを使いましたよね、言い切ってました、生活はフェイスブック、仕事はクラウドワークスになりますと・・・・
小林氏 世界最良のサービスを目指す!
吉田氏 日本最良も今頑張らないと・・・いう感じですけど(笑)
小泉氏 続いては「中長期ビジョン」のスライドですね。
小林氏 もはやあれですね。
吉田氏 何を書いてるかわからないけど、相当 この番組(BBTの講義)は素晴らしいコンテンツですね。
小林氏 なんですかね、この3番目の「小中高生の才能を活用する」というのは。今はどちらかというと年齢が高い方が活躍されていますよね?
吉田氏 何を言ってるか分からないですよね。「アジアのエンジニアのソーシャルデータベース」って、もはやカタカナが多すぎて何かよく分からないですね。
小林氏 「中長期的なビジョン」というのは、まだ4年しか経ってないのに「あれ、中長期って何年なんだ」みたいになってるじゃないですか。
全くガラリと変わってるというね。やってることは変わらないんだけど、言ってる言葉は大きく変わるという良い例ですね。
吉田氏 その時の知恵を振り絞った感じがありますね。
小泉氏 今のビジョンと比較してどうですかね。
吉田氏 そもそも自分で言っておいて何なんですけど、ソーシャルデータベースが何なのかと当時の自分に聞きたいですけど、言いたいのは人がどんなスキルを持っていて、どれくらい仕事ができるのか?というデータベースが蓄積されていくと個人が強くなっていく、ということだと思います……
ちょっと私は顔が赤くなってませんか?
小林氏 (吉田さんは)涙がちょちょぎれそうですよ! 次見てみましょうか。これはいいですよね。
吉田氏 これは今もそんなに変わらないですね。
小林氏 「クラウドソーシングは何ですか?」という説明ですからね。
吉田氏 これはそんなに変わってないですね。
小林氏 イラストがちょっと古い。
吉田氏 こういったものがインターネットに出せますよと。
小泉氏 そして世の中にどんなサイトがあるの、ということで次のスライドです。競合の状況といいますか。
吉田氏 これぐらい市場のポテンシャルがありますよと。そういう意味では、ここに書いてあるものは今もそんなに状況は変わってないので、ここら辺のところは当時の自分を褒めてあげたいです。
小林氏 ちゃんと生き残ってますよね。
吉田氏 そうですね。
小泉氏 既にこの段階で、もう国内でもクラウドソーシングをしてる会社もありますね
吉田氏 まだそんなになかったんですけど、数十社ぐらいのレベルではあったと思いますね。
市場規模がどれくらいかということで、当時アメリカでトップ企業といわれていたoDeskというのが、実は売上を当時外部に公開しまして、単月の売上が13億円ですよということで概算で年商150億円、利益15億円ぐらいですよと。これでも今見たらちょっと小さいですね。
小林氏 小さいですね。
吉田氏 創業8年目で利益15億円ってちっちゃくないかと自分に言いたいですけど、本格的な、さっきご覧いただいたように総合型のクラウドソーシングはあまり日本になかったんですよね。
なので、総合型のクラウドソーシングが無い中でこれぐらい市場があるというのが1つの価値があると。oDeskも当時色んな資料を公開してたので、非常に成長してますよと説明していました。
小林氏 この他人の力を借りる的な資料ですね
小泉氏 アメリカではこういう状況ですよってことを。
小林氏 説明する時に、日本にそもそも市場がない、これからというので、海外や他の業種を利用して解説するんですよ。
投資家や社員に信じてもらうためには、自社のサービスの資料はほとんどなくて、クラウドソーシングとは何かとか、市場規模は何かというスライドが大半を占めるという資料なんですよね。
吉田氏 そもそもこの数字では見えないですもんね、この資料ね。ひたすら右肩上がりみたいな。
小林氏 「すごい盛り上がってるよ」という資料が、市場規模どれくらいっていう。つまりこの時に恐らく「市場はあるんですか?」というのが一番多く質問された内容だと思うんですよね。
吉田氏 かつ、市場を証明できないと、日本においては。そもそも基本的にはなかったので。
小林氏 なのでそこが厚めになるんですよね、そもそも何ですか、というところが。
吉田氏 論理が飛躍して、何兆円という物を並べている……
小林氏 「低コスト開発へのシフトは当然である」というのは、言い切ってますよね、これ。
吉田氏 世界のIT市場全体になってます。だから上記のあらゆる市場がクラウドソーシング化する可能性があると確信していますと言っていて、力みや、背伸び感がありすぎですね……
どんなサービスになるのということで、これはそんなにズレてはいないですけどね。
続いて研究開発という、この3つの分野はちょっとイメージはずれてますね。
研究とかR&Dのクラウドソーシングというのは単発のプロジェクトみたいになるので、かつ大企業の守秘義務性が高い業務ですので、この1番というのはあてが外れてますね。
逆に2番と3番というのは我々今すごくやってますので、打率としては6割6分というような感じになっています。
小泉氏 スタートアップ時のビジネスプランというのは、やはりそういった形で他社といいますか、参考になるような物を持ってきてプレゼンする、というような形なのでしょうか?
小林氏 そもそもアイデアはどういうふうに生まれるのかを説明しますと、様々な要素を掛け合わせて生まれると思うんですよ。
アメリカに同じようなサービスがあるとそれを説明すればいい。そういうイメージがある、いわゆる目標があると開発するサービスが明確になるので、そういう意味では非常にいいと思いますよ。
吉田氏 「現在のヒアリング状況」は当時努力しました。
発注側と受注側の人達が、こういうサービスがあったらどう思いますか?ということをサービス立ち上げ前にヒアリングしました。利用登録を約束いただく流れを作っていました。
口頭ベースでは投資家に対して具体的な企業名を全部話していて、こういった企業は使うよといようなことを話していました。この資料は多少今でも使える資料なので、自分もまあまあ頑張ったなと。最後に事業目標のスライドを説明します。
このスライドの「2013年9月期の月間流通額1億円突破」というのは、これは予定を前倒しでクリアしてますね。
英語版のクラウドワークは、当時は(クラウドワークスではなく)「クラウドワーク」だったんですね。 当時はクラウドワークはサービスもスタートしていなかったですね。
2016年9月期東証マザーズ上場と書いてありますけど、これは2015年9月期に上場。
小林氏 黒字上場じゃないですか。このスライドでは。
吉田氏 当時は黒字上場が目標でしたね。これを赤字上場という形で前倒しで勝負したという感じになりますね。
小林氏 先ほどの顧客のヒアリングというのがありましたが、「リファレンス」とか「パイプライン」と言って、投資家がよくデューデリジェンス(投資審査)でチェックするんですよね。
どんなところがお客さんになるんだと。全く実績がない場合は、実績になりそうなところはどこなのか。そこに対してヒアリングをして確認をするんですね。
だからこれから起業される方の場合は、初めは何も実績がないので、見込み顧客はどこなんですか?という質問に対してヒアリング候補先があるというのは重要です。
最初は知り合いなど色々お世話になった人に拝み倒して、お願いすることが多いんですけれども、それだけだとどうしても限界があるんじゃないですか。
こういったゼロから開拓していくことは、非常に開拓力があるんだよということを示していますね。吉田さんはさすが「営業の達人」だなと。
小泉氏 ちなみにこのビジネスプランをどれくらいのところに持っていかれたんですか。
吉田氏 コンタクトできるベンチャーキャピタルは全て回ったので、どれくらい回りましたっけね、20件ぐらいは回ってるんじゃないですかね。
小泉氏 皆さん反応はそれぞれという感じだったんですか。
吉田氏 基本は私はやっぱり実績が全然無かったので、基本的には冷たいですね。
小林氏 50社回っても反応のあるところはそんなに無いと思いますよ、普通はね。そこを何とかするのが起業家であり、吉田浩一郎なんですよ! まさにオトコです。
小泉氏 それでは最後になりましたけれども、吉田さんから受講生へのメッセージがありましたらお願いします。
吉田氏 今回小林さんにいい企画をいただいたと思っていて、「劇的ビフォーアフター」のようでした。
小林氏 どうでした、振り返ってみて。
吉田氏 やはり最初の「インターネット開発のクラウドソーシング」はちょっと意味が分からないですね。
小林氏 最初は意味が分からないけど、今は日本ベンチャー大賞ですよ。これは自信になりますね。
吉田氏 これは面白い企画でした。振り返る機会がないと改めてしっかり比較しなかったので、当時の自分によく頑張ったねと言いたいです。
受講生に伝えるメッセージとしては、最初は精一杯に力むしか無いと伝えたいです。力む中で気持ちが誰かにたまに伝わって、支援してくれる人がポツポツと現れていって、それがだんだん大きな輪になっていくわけなんで、最初何も無くてもここまでこれるんだという改めての気持ちに私はなってますね。
小泉氏 最後に小林さんからお願いします。
小林氏 「インターネット開発のクラウドソーシング」といっても、創業4年後には日本ベンチャー大賞の受賞企業になる。
実績もまるで無い、どうしようかと思う人もいると思うんですけど、非常に自信になる内容ですよね。
第1回目の講義にふさわしい内容だったと思います。受講生の方には自分のビジネスプランを見て、これはいけてないんじゃないかと思う人がいると思うんですよ。だからやる前から諦めちゃう人が多いんですよね、起業って。
今は立派かもしれないけど、最初はこんなもんだと。ほとんどの会社はそうだった、だいたいね。
孫正義さんもみかんの箱の上で話をしたという有名な話がありますけども、その当時から自分は今のようなソフトバンクになるとか、そういうふうに言ってるわけですよ。頭おかしいんですよみんな、基本的に。
まずは起業する時は力んでも構いませんよと。最初に言っていたことと言うことが変わっても関係無い。頭おかしんじゃないかって言われるぐらいが丁度いいと思っていただければいいんじゃないかと思います。
小泉氏 ありがとうございました。さて、お送りして参りましたビジネス・ブレークスルー大学大学院アントレプレナーコース、スタートアップ起業のビジネスプラン、いかがでしたでしょうか。今回はゲストに株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEOの吉田浩一郎さんにお越しいただきました。吉田さん、小林さんありがとうございました。
吉田氏 小林氏 ありがとうございました。
(完)
編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり
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