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ICC KYOTO 2025のセッション「復活企画 最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?」、全4回の③は、青曜社 松尾 真継さんが最高の成果を生むために最も大事だとする「理念」について、スープストックトーキョーでの取り組みをもとに語ります。UntroD永田さんが、「業績が伸びないなら理念は変えたほうがいい」と考える理由とは?ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 5B
復活企画 最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?
Supported by EVeM
(スピーカー)
永田 暁彦
UntroD Capital Japan
代表取締役
仲山 進也
仲山考材
代表取締役
松井 しのぶ
ユーザベース
上席執行役員 CHRO
松尾 真継
青曜社(せいようしゃ)
代表取締役
(モデレーター)
麻野 耕司
ナレッジワーク
CEO・CPO
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麻野 松尾さんは、いかがでしょうか?
実現したいことに一生懸命になる状態を作る人がリーダー

松尾 もう全て出尽くしてしまったような気分ですが、今回のセッションのお題を与えられて、「最高の成果」とは何だろうなと考えたとき、リーダーシップやチームマネジメントが必要ということは、チームがそこにあって、一人ではできないことを実現するためのチームであるということです。
そのチームにおいては、「北極星」(前Part参照)や「お題」(Part.1参照)という意見もありましたが、僕は「理念」が大事だと思っています。
理念を実現することがメンバーにとって圧倒的に自分ごとになっている状態、つまり、自分で自分にそれができているかを問うて自走してくれている状態になると、リーダーは最終的には要らないのではないかと思っています。
観た方もいらっしゃると思いますが、Amazon Primeで『教皇選挙』という映画をたまたま最近観ていて、このお題に関連するなと思っていました。
あれはまさに、キリスト教の最高のリーダーを決めるための選挙なのです。
ネタバレにならないように気をつけますが……、出てくる大司教たちがまあ本当に、全然尊敬できないのですよ(笑)。
みんな、我欲の塊で、好き嫌いが激しくて、聖職者のリーダーたる人間たちの中から最高リーダーを決めようとしても、人間は結局こうだなと感じさせます。
でも最後には、教皇選挙ではあるので、なるほどと腹落ちする形でリーダーが決まります。
そのときに一番大事なのは教義や理念であり、それらを最大限体現できる人、それらの最大の信奉者であることがリーダーの要件なのだと感じたのです。
リーダーといえば、偉いとか、自戒、自制できるとか、すごい人をイメージしがちですが、人間は所詮弱いもので、目指すもの、信じるもの、実現したいことに一生懸命になる状態を作る人がリーダーなのではないかと僕は思っています。
麻野さんの質問に一言で答えると、「理念を自分ごと化すること」かなと思いました。
理念が自分ごと化した瞬間

松尾 具体論でないほうがいいのかもしれませんし、僕は皆さんのように素晴らしい経歴ではないかもしれませんが、スープストックトーキョーを経営していた際、現場があり、パートナーと呼んでいたアルバイトが1,300人以上人いました。
彼ら一人一人に理念を浸透させるため、全力を使って、語りまくっていました。
どういうことが理念につながるかを話すわけですが、話しても話しても、先ほどの野球の監督の例(Part.1参照)のように、メンバーは「これで合っていますか?」とこちらを当然見るのです。
でも、最高の成果が出せたかどうかはさておき、ある時、すごく変わったと思えた瞬間がありました。
当時、定め直した理念は「世の中の体温をあげる」というもので、毎年1月7日には七草粥を販売していました。
世の中の体温を上げるとはどういうことで、それが七草粥とどうつながるか、いつものように「お待たせしました、ごゆっくりお召し上がりください」とお粥を単純に提供するだけで、受け取った人は、胃袋の温度が上がったとしても、はたして心の体温は上がるのか、上げるためにはどうすればいいかということをずっと問い続ける会議をしたのです。
結果的に答えは出なかったので、最後は私から押しつけるかのように、「今年も一年、健康でお過ごしください」という言葉を全員で絶対に添えてみようとしました。
全員でそれを言うことを徹底させていくにあたり、野球の監督のように最初は僕が全店を回って、本当に言っているかをチェックしていました。
しかし、最初は「言わされていた」人たちが、言っていくうちにどんどん変わっていくのです。
顔が真っ赤になり、頼んでもいないアドリブまで飛び出したりして。
言うことでどんどん連鎖が起きて、すごい量を準備していたのに、七草粥は品切れしてしまいました。
その一言を添えただけで、すごく変わったのです。
なぜ変わったかと言うと、理念を自分ごと化したからだと思います。
すごく分かりやすかった例として、スタッフが年配のお客様に「今年も一年、健康でお過ごしください」と言ったら、その方がスタッフに対し「若いのに感心だね、あなたも健康でいてね」と言われて、言われたスタッフは顔が真っ赤になって、半泣きになるというシーンがありました。
それまでは、チラチラ柱の影で見ている僕のほうを「ちゃんと言ってますよ、社長」という顔で見ていたスタッフが、それ以降はもう僕のことは気にならなくなっていました。
「世の中の体温をあげる」という理念を自分で実現したら、こういうことが返ってくるのだな、自分の体温も上がるのだなと体験して自分ごとになった瞬間、自走し始めたのです。
▶64人の世の中の体温をあげる(スープストックトーキョー)
結果的に数字も良くなったし、お客様から翌日、お粥の味がどうこうではない感想が山ほど寄せられました。
リーダーの最高の成果は、理念を通じて仲間が幸せになること

松尾 その後、2月頃にお店に行った時、顔の知らないスタッフから「今日は寒いので、あたたまっていってくださいね」と言われたことは忘れられません。
何事かと思って、「えっ、どうしたの?」と言うと、「1月7日のあの活動にとても感動して、みんなで話し合って、普通の日でも何か言おうということになったのです」ということでした。
寒いからあたたまっていってくださいとか、マスクをしていれば花粉症に気をつけてくださいとか、自分の言葉でお客様に話しかけるようになったらしいです。
商売上定めたマニュアルでもなんでもないですが、その人自身が楽しんでいて、その行動が自分のものになっているのです。
最高の成果と言うと、グロースとか数字とか成長とかいろいろ解釈はあるとは思いますが、僕は、組織が理念を実現できていることであり、それを通じて仲間やチームが幸せになっていることではないかと思っています。
理念の下では、リーダーすらその僕(しもべ)だと思っているので、何としてでもチームをそういう状態に持っていくために下働きをするのがリーダーの役割ではないかと感じています。
そういう原体験もあるので、一言で言うと、「理念に向けての自分ごと化」かと考えました。
理念を後回しにしようとする企業へのアドバイス
麻野 ありがとうございます。
理念と言うと、僕も前職で組織人事コンサルタントをしていて、理念が大事だと思うことがありました。
経営者は、そういう総論に賛成してくれます。
でも実際に事業をすると、総論では賛成していても各論に落ちると実践されないというか、そんなことを言っている場合ではないとなりやすいのが理念というものだと思います。
そういう経営者がいたとして、どうアドバイスをしますか?
「目の前の業績を何とかしないといけないので、理念なんて言っている場合ではない」という状況には、かなり陥りやすいと思うんですよね。

松尾 しつこくやれ、ですよね(笑)。
甘えてるんじゃない、という話です。
リーダーでも社長でも、それを実現するのが役割なので、その役割を全うせずしてチームのメンバーに何を期待するのかという話です。
しつこくしつこく、本当にしつこく、僕は言い続けていました。
「たまたま乗ったバスの運転手がアナウンスで面白いことを言っていて、今日はその一言で僕の体温が上がった。体温が上がるってこういうことだよね」みたいな社内用のコラムを100回連載したり。
結局はしつこさですが、先ほど「幸せ」と言ったように、それに一生懸命取り組んでいたら自分の人生も豊かになるような理念を定めればしつこくなれます。
創業者が定めたものを後生大事に守るやり方もありますが、僕はひっくり返したタイプなので、変えてもいいと思っています。
スープストックトーキョーの前身のスマイルズという会社は、生活の中で新しい何かや価値を生み出していく、「生活価値の拡充」という理念を掲げていました。
でも、スープストックトーキョーという人物(※) が持つべき理念は、創業者が別のところで話した「世の中の体温をあげる」というほうが僕にはしっくりきたので、それを使うことにしたのです。
▶編集注:本セッションPart.4で、「スープストックトーキョーというブランドを、僕はずっと『スープストックトーキョーさん』と呼んでいました」と、松尾さんから発言がありました。
この理念には、世の中の体温が低いという前提がある。
それを理解すると、共感しやすくなり、他人の体温を上げたくなるのです。
僕が好きな理念に、スノーピークの「人間性の回復」がありますが、これも人間性が失われているという前提があり、みんなで回復しようよということです。
昔ユニクロで働いていた時は、経営理念が23カ条もあって暗記するのがとても大変でしたが、最近の理念はコピーライターが書いているからなのか、とてもすっきりしています。
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というもので、これも常識に縛られる生き方をやめようということを言っているわけです。
▶︎FAST RETAILING WAY (FRグループ企業理念)(FAST RETAILING)
売上1兆円を目指すとか、業界No.1になるとかいうビジョン的なことではなく、どう生きていくかを会社の理念として定めていて、そこに汎用性と人生を豊かにするヒントが込められていると、チームメンバーは、それを自分の何かに重ね合わせて頑張っていけるのだと僕は感じています。
だから、理念の設定がすごく大事だと思っていますので、今お手伝いしている会社では、理念を書き直すこともしています。
「理念」とは市場における競争原則

永田 先ほどの本田 宗一郎の話が感情論、概念的な話になると嫌なので、改めてお伝えします。
ユーグレナ時代に一緒に仕事をした仲間が見ている前であえて言いますが、僕も理念は大切だと思っています、でも理念通りに行動して勝てなければ、その理念が間違っているということだと思います。
僕はずっと、理念とは市場における競争原則であり、それが独自性を作り、マーケットの中での強みを作るから、理念に基づいて遂行すると業績が伸びる状態になるべきだと思っています。
ですから前提として、伸びないなら理念を変えたほうがいいと思います。
理念をどう浸透させるかについては、何十回も落とし込むのはリーダーとして素晴らしいと思うものの、自分自身はそうはできていません。
大きく2つあって、1つは、理念とつながっているKPIを達成すると成功するという体験を組織に落とし込むことが大切だと思っています。
自分と同じようにやれと言っても当然できないので、スモールサクセスが必要です。
その体験を設定するのがリーダーの役割だし、成功体験をした人が次のリーダーになるプロセスを繰り返すのです。
もう1つは、必ずエラーが起こるので、エラーについて見直すタイミングを持ち続けることも大切です。
僕はこの2つのプロセスを回すことが大切だと思って、仕事をしています。
VCの投資ですらもっとサイエンスができると思っているので、非常に細かく成功体験を設定する一方、エラーが起こるという前提を持っているので、投資基準の見直しを3カ月に1回します。
つまり、理念とは勝利のための要素であり、感情や気持ちだけで追いかけるものでもなく、実現するためのKPIを達成しても業績が伸びないなら理念を変えればいいのです。
組織は気持ちで変わるものではないので、先ほどの従業員の例はまさにスモールサクセスを得たということなので、そういう体験をデザインすることがこちらの仕事です。
僕は、そのデザインがなるべく定量的にできればいいなと思っているタイプです。
「型」と「制約条件」の違い

仲山 「お題設計アプローチ」(Part.1参照)の観点からコメントしますね。
これは、お題の構造です。

お題は、「制約条件はこれで、この型を使ってこのタスクを行ってください」というのが基本形です。
先ほど松井さんが、伝統的アプローチで教えたほういいこともあるとおっしゃっていましたが(前Part参照)、自分が正解だと思っていることは型として示し、その型を使ってもらうべきで、理念は型にあたると僕は思っています。
楽天の理念は「エンパワーメント」です。
僕が入社した時は、「インターネットで日本の中小企業を元気に」というものでした。
「売上を上げてください、ただしインターネットを通じて日本の中小企業を元気にすること」という型が示されていたということで、型を使わなければ回答してもバツになるということです。
入社して3カ月、半年とお題に取り組んでいるうち、お客様から「商売が元気になった、ありがとう」「最近、仕事が楽しい」みたいなことを言われる成功体験ができるようなお題を設計できているのが、良い会社だと思っています。
松尾さんが言っていた、「まずはこれを言って」というのは制約条件なのです。
制約条件は、お題に取り組んでいる人にとって望ましい行動がしやすいように、無駄な試行錯誤をしなくてよいようにつけるものです。
実力がない人、お客様から「体温があがった」というフィードバックをまだもらったことがない人には、とりあえず言ってみるという制約条件をつけることで、成功しやすくなります。
必要がない人には制約条件はつけなくてもいいですが、型だけはずっと同じで、それは松井さんの言う北極星みたいなものです。
お題設計アプローチにおいて自分で考えて答えを出すのは頭脳コストがかかりますし、責任を負わなくてはいけないので、楽ではありません。
ですので、お題を出す時は「このお題をやりたいかどうか」「やりたいです」という関係性から始めないと、うまくいかないと思います。
麻野 ありがとうございます、お題を解きやすくする補助線みたいなものが理念ということですか?
仲山 理念は型です、外してはいけないものです。
型と制約条件の違いは、「型」は相手のレベルに合わせて変えない、どんな相手にも使うもので、相手のレベルに合わせて変えて良いのが「制約条件」です。

麻野 ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


