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5.「セカンダリー投資」と「M&A」が、未上場ベンチャー株式の“塩漬け化”を解決する

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「ズバリ聞きたい!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?」全7回シリーズ(その5)では、大企業のスタートアップ投資が当初の思惑から外れることで生じる“塩漬けの未上場ベンチャー株式”の問題について、その解決策が議論されました。未上場株の流動性を高めることは、大企業が積極的に投資活動を続けるためにも必要なポイントです。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのfor Startups, Inc.様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2C
ズバリ聞きたい! ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?
Supported by for Startups, Inc.

(スピーカー)

仮屋薗 聡一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー

野内 敦
株式会社オプトベンチャーズ
代表取締役

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 /
DIMENSION株式会社 代表取締役

村田 祐介
インキュベイトファンド
代表パートナー

(モデレーター)

竹内 寛
MAGENTA Venture Partners
Managing General Partner

「ズバリ聞きたい!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 徹底議論!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?

1つ前の記事
4. CVCの成否は「減損会計」ではなく「時価評価」で評価しよう

本編

竹内 大企業による戦略的なベンチャー投資は、最終的に買収や何らかのビジネスをする目的で行われているはずです。

その目的がで揺るがないのであれば、まだ結果が出ていない、あるいは減損が生じた状況でも「今は途中経過のプロセスなのだ」という切り口で見ることもあるのかなと思います。

アメリカやイスラエルでは、ベンチャー企業のイグジットの8~9割がM&A(企業買収)によるものです。

MAGENTA Venture Partners Managing General Partner 竹内 寛さん

買収される際のバリュエーション(企業価値)は、そのベンチャー企業のアセットではなく、「買収して何をするか」で決まるため、買収する側の意思が金額にものすごく反映されています。

そこで質問ですが、大企業がベンチャー企業にマイノリティ出資して、それがずっと継続していく構図とは何を意味しているのでしょうか?

日本でのベンチャーと大企業の付き合い方が、そこに凝縮されていると思います。

M&Aなどが今後どうなるか、ご意見を伺いたいと思います。

大企業が保有する“塩漬けの未上場株”を流動化させるエコシステムを

株式会社オプトベンチャーズ 代表取締役 野内 敦さん

野内 やはり大企業がベンチャー企業に出資するのには何らかの目的があります。

オプトグループのように振り切って「目的はキャピタルゲインだ」という会社は他にはまずないと思います。

「何らかの事業の連携をするために、お付き合いしましょう」という最初のステップとして5%のシェアを取り、これによって情報を流通させようとするところがほとんどだと思います。

これは正確に分析しないといけませんが、例えば3年後に大企業側の当初の目的が達成され、その株式が有効に活用できているベンチャー投資がどれだけあるかと問われれば、ほとんどの場合は当初の思惑とずれているだろうと考えています。

しかし、当初の思惑通りに連携できなかったとしても、株式を購入したことは後戻りできません。

このような出口のない株式の塩漬け状態が、これからも出てくると思います。

それを流動化させるためにも、VCが株式をセカンダリーで買い取ったり、第三の企業のM&Aをサポートしたりするなど、株式を滞留させないエコシステムが必要です。

大企業は、それほどストーリーがないままスタートアップの株式を持つことがあります。

そして減損した結果「どうすればよいのだろう」という議論が多くの会社で起きています。

未上場株の流動性を高めることは、大企業が積極的に活動し続けるために必要なポイントだと思っています。

キーワードは「セカンダリー投資」と「M&A」

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 仮屋薗 聡一さん

仮屋薗 血流に例えると、プライマリーの投資は「動脈」で、セカンダリーの投資は「静脈」だと思います。

▶編集注:セカンダリー投資とは、既存の投資持分を買い取る投資のこと。

世界を見ていても、セカンダリーの投資プレーヤーの存在は下降トレンドになったとき非常に重要ですが、日本ではその専業プレーヤーはおそらく片手で数えるぐらいしかいません。

数が少ない上に資金量も少ないので、極めてディープなディスカウントがないとなかなか購入できません。

やはりそこにマーケットがないという状況があるので、今後日本における「動脈」と「静脈」が回るためには、「セカンダリー」と「M&A」の2つが大事だと思います。

この2つが回って初めて、上昇・下降トレンドを含めたサイクルが出来ていくのではないかと思いますし、この2つに対する待望論はあります。

しかし大企業のM&Aの担当や、セカンダリーで購入して時期を見てしっかりリターンを出すファンドマネージメントのケイパビリティにおいては、海外と日本ではその歴史・経験に大きな差があります。

ここは追いつくべきポイントだと思っています。

竹内 ありがとうございます。宮宗さんは、いかがでしょうか?

ダイナミックな買収と、小規模でも意味のある投資を

株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 / DIMENSION株式会社 代表取締役 宮宗 孝光さん

宮宗 当事者として実際に事業再生に携わりIPOもさせていただきましたが、課題がいくつもあると感じています。

課題の1つは、資金力です。

ある程度の金額でイグジットするにはそれを買い取るプレーヤーの資金力が必要ですが、そこにまず資金が回っていません。

例えばセカンダリーのファンドが募集をかけて、機関投資家から100億円を集めたとします。

機関投資家は、投資しているファンドに対するリスクをヘッジしようとするので、分散投資を希望します。

そうすると1社あたりに割ける金額は最大15%となり、ダイナミックな買収は起こりません。

そこをまず、日本として変える必要があります。

もう1つは、野内さんの会社でもやられているように投資先の経営をハンズオンで支援して、大きなインパクトのある事業に成長させるチームの存在です。

投資先にリソースを送り込み成長させるという意味ではカーライルさんやベインキャピタルさんのようなプライベート・エクイティ (Private Equity:PE)ファンドが存在しますが、彼らが投資するのはあくまで大きな企業体に対してです。

投資先の規模が小さくなると効率性が悪くなるので、やはりそこにはプレーヤーがいません。

そのためスタートアップ・エコシステムに必要なことは、大きな資金が流れることと、小規模でも意義がある会社に資金を回そうとする人が増えることです。

この2つがあれば、セカンダリーも欧米のようになっていくのではないかと思います。

竹内 現在、小規模でも意義がある会社に資金を回すことができるのは、どのような人でしょうか?

宮宗 非常に難しいのですが、ファイナンスを理解しながら、事業も理解できる人です。

野内さんはご自身で創業をされていますが、経営は人の意識を変えることだと思いますので、熱量を持ってやれる人が必要です。

さらに一定の経験も必要ですが、その経験を積む場があまりありません。

起業して上場した方がセカンダリーに回り、日本のエコシステムを変えるぞと意気込みを持って取り組む、そんな方が複数名出てくると面白いと思います。

PEファンドがベンチャー企業を投資対象とする動きも

インキュベイトファンド 代表パートナー 村田 祐介さん

村田 最近日本でも少しずつ、北米で行われているようにPEファンドがVCの投資対象に対しても取り組む事例が出てきていて、期待しています。

基本的にキャッシュフローが読める業態しかPEファンドによるデューデリジェンスの対象にならないかと思いますが、2019年に大型調達をしたあるSaaS企業が、外資系VCとあわせて外資系PEからも投資を受けていました。

もう少し前では、VOYAGE GROUPとポラリス・キャピタル・グループの例がありますが、ネット企業がPEファンドの投資対象になることは、これから明らかに増えていくだろうと思います。

株式会社VOYAGE GROUP、MBOの実施及び当社株式譲渡に関する意見表明のお知らせ(2012年5月14日、VOYAGE GROUP)

当然一定の持ち分を取る前提だと思いますが、マジョリティを取るというPEファンドの伝統的スタイルではなく、VCの持ち分を買い取りに行くというような動きが、今後の流れとしてありそうな気がします。

デューデリジェンスをしていく方々のケイパビリティという意味でも、VCというよりもPE寄りの発想が必要なのかなと思います。

VC的思想を持ちながら、PEファンドのように成長支援

野内 今村田さんのお話を聞いていて、ふと、私たちがやっていたことはセカンダリーに近いのかもしれまないと思いました。

2005年、内山幸樹さんが代表を務めるホットリンクがオプトの子会社になりました。

私もオプトから同社のボードメンバーに入り、IPOを目指しました。

オプトでは、子会社化されてもIPOを目指していいという変わったルールがあるのです。

そしてIPOしたら、「卒業」ということでオプトはその株式を徐々に売却していきます。

ホットリンクの他、モバイルファクトリーライトアップも同様です。

もちろん、我々はPEファンド型ではありません。

「PEファンド型ではない」というのは、「コストカッターではない」ということです。

VC的な思想を持ちながら、でもPEファンドに近い形でボードに入り、グロースを支援します。

このようなやり方を過去にやってきたので、「私はVCではなく、PEかもしれない」と思いました。

(会場笑)

宮宗 実際にコストカットはしたのでしょうか?

野内 コストカットはしていないので、「New PE」かもしれません(笑)。

(続)

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続きは 6. VCから投資先企業への、従来とは異なる分業型経営支援がトレンドに をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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