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4. CVCの成否は「減損会計」ではなく「時価評価」で評価しよう

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「ズバリ聞きたい!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?」全7回シリーズ(その4)は、国内大企業によるスタートアップ投資の現状について。JR東日本、KDDIによるオープンイノベーションの成功事例や、事業会社が保有するCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の成否評価の課題について議論が交わされました。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのfor Startups, Inc.様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2C
ズバリ聞きたい! ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?
Supported by for Startups, Inc.

(スピーカー)

仮屋薗 聡一
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
代表パートナー

野内 敦
株式会社オプトベンチャーズ
代表取締役

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 /
DIMENSION株式会社 代表取締役

村田 祐介
インキュベイトファンド
代表パートナー

(モデレーター)

竹内 寛
MAGENTA Venture Partners
Managing General Partner

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最初の記事
1. 徹底議論!ベンチャーキャピタルは今後どうなっていくのか?

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3. マッキンゼー・総合商社・医師出身者…「横のつながり」で活性化する起業家コミュニティ

本編

国内大企業によるスタートアップ投資の現状

竹内 お話を伺っていると、日本のスタートアップは今非常にいい環境にあるように思います。

一方で先ほど宮宗さんから、大企業とスタートアップのつながりについての課題が指摘されました。

この辺りについて、仮屋薗さんはどのようにお考えでしょうか。

仮屋薗 現在、4,000億円弱に及ぶ日本のスタートアップ投資額の半分ほどが、大企業からの直接もしくはCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)からの投資です。

今後、大企業によるオープンイノベーションの文脈での投資、事業シナジーを求める姿勢は否が応でも高まっていくでしょう。

このように、かつては機関投資家がその過半数を支えていたリスクマネーを、今や大企業が同じぐらい支えている状況となりました。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 仮屋薗 聡一さん

一方で、大企業とスタートアップの興味関心は必ずしも、常に同じ方向を向いているわけではありません。

特に日本の多くのスタートアップは、複数の大企業からのマイノリティ投資を受けています。

それぞれの大企業とのPoC(Proof of Concept:概念実証)や共同開発に、どれだけ自社のリソースを割いていくのか、そのバランスをどうするべきかとまどっている起業家が増えている印象です。

また大企業側に目をやると、かつてとは違いスタートアップを上から見ている感じは今やありません。

2015年頃からCVCが一気に増え始めたので、今はちょうど、スタートアップと大企業の協業契約の在り方やモニタリングの仕方について見直しがかかる時期に当たります。

今このタイミングでしっかり評価の仕方、つまり何をもって是とし、何をもって協業を見直すべきかを日本全体で考えていかないと、腰折れになってしまう可能性があると思います。

2020度からはベンチャー投資の税制優遇(※) が行われるので、税制を上手に使って、マイノリティ投資のみならず、大企業からのM&Aにもつながっていくといいなと思います。

ここでスピードを緩めてはいけないと、強く思っているところです。

▶編集注:2020年4月から、国内の事業会社またはその国内CVCがオープンイノベーションに向けスタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度が創設されました。詳細はオープンイノベーション促進税制(経済産業省)を参照。

竹内 ありがとうございます。

具体的に、大企業がベンチャーと上手に付き合っている例や、その結果として新しいビジネスができた象徴的な事例はありますか?

国内大企業によるオープンイノベーションの成功例

株式会社オプトベンチャーズ 代表取締役 野内 敦さん

野内 皆さんもよくご存じだと思いますが、KDDIさんは非常に上手だと思います。

KDDI Ventures Program(KDDI株式会社)

仮屋薗さんがおっしゃったように 、大企業がスタートアップを上から見るかつてのような状況ではありません。

KDDIさんを見ていると、新たなエコシステムをベンチャー中心につくることで彼らが“大企業のピース”にならないように努めていて、やり方が上手だなと感じます。

どれだけ業績へのインパクトがあったのかは分かりませんが、そのようなイメージが描けているのは強みだと思います。

また、JR東日本さんは協業のテーマを先に決めて「こういうことをやります」と打ち出します。

STARTUP PROGRAM(JR東日本スタートアップ株式会社)

従来の大企業目線ではなく、このような「大企業のリソースを使ってください」という姿勢が、日本の大企業の隅々まで浸透するといいなと思っています。

日本の大企業にあるリアルな経営資源を起業家の皆さんが自由に使えて、それを踏み台にして大きくなっていっていいという流れが、ようやく始まってきたと思います。

今挙げた2社が、その成功例だと思います。

CVCの成否評価は「減損会計」ではなく「時価評価」で

野内 一方で、仮屋薗さんと少し見方が違うところもあります。

CVCによる戦略投資には、投資を決める側とそれを評価する管理部門側がいます。

大きな減損がどんどん続いていったときに、そのCVCに「継続」の判断を下せるエネルギーを各企業がどれだけ持てているかが疑問です。

減損はあくまでも減損で、評価が下がっただけで消えるものではありません。

そうした点を日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)で支えていくことが必要なのかもしれませんし、CVCの評価の仕組みをつくらないと、大企業のお金が市場からサーッと引いてしまうのではという懸念があります。

仮屋薗 減損会計 ではなく、時価評価がとても大事になってくるということですよね。

村田さんがちょうどリサーチをされていますので、ここは村田さんからお願いしたいと思います。

村田 JVCAに加入していただいているCVCの数は、この5年間で7~8社から70社近くまで増えています。

インキュベイトファンド 代表パートナー 村田 祐介さん

特にこの1~2年は、JRやJTB、それにエネルギー系企業などの伝統的企業の加入も多く、それに伴い、CVCの設計の仕方についてJVCAの窓口にご相談に来られる方も増えています。

その一方で、CVCの中でも長くやられているところも増えています。

そこで、つい先週も行いましたが、CVCの方が集まって車座になり、先輩CVCがどのようなことをしてきたのかを情報共有する会を定期的に開催しています。

CVCの評価がすごく難しいことはグローバルで共通かもしれませんが、イグジットを基準にした「一発成功」や「一発アウト」の評価をするのではなく、時価評価をしながらマークアップするもの・マークダウンするものを見極め、途中経過も含めた評価の仕方にすべきだと思います。

1だったものが、直近の公正価値に直せば2や3になっていると評価できるようになれば、組織としてもCVCが継続しやすくなると思っています。

B/S、P/Lに加え、NAV(net asset value)による評価を

株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 / DIMENSION株式会社 代表取締役 宮宗 孝光さん

宮宗 オプトグループさん同様、我々ドリームインキュベータも上場していて、投資とファンドをやっています。

そこで起こりうる問題は「継続できるか」です。

評価が「減損」という形で起こってしまうと、オプトベンチャーズさんもそうだと思いますが、ブレーキがものすごくかかります。

これを変えるために、我々は上場企業として通常のB/S、P/Lに加えてNAV(Net Asset Value )という指標を出していて、さらに未上場の株式もNAVで評価しましょう、ということを打ち出し始めています。

Net Asset Value(NAV)の解説(ドリームインキュベータ)

CVCが3年経った時点で結果が出ずに減損額がものすごく多いと、「これはどういうことだ?」と言われてしまいます。

野内さんがおっしゃったとおり、消えるわけではなくあくまで減損なので、企業体は復活する可能性もありますが、その圧力は大きいので、ぜひJVCAでも働きかけていただきたいと思います。

事実、こういった指標がないと継続できなくなるCVCが多いと思います。

スタートアップを支援する我々としても、CVCの灯火を消してもらいたくありませんので、ぜひVCという立場でもこの指標を推進できればと思っています。

竹内 ありがとうございます。

(続)

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続きは 5.「セカンダリー投資」と「M&A」が、未上場ベンチャー株式の“塩漬け化”を解決する をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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