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毎回、魅力的な企業・経営者が登壇するICCサミット。ICC KYOTO 2022の開催地である京都で1875年創業の「開化堂」を訪問し、その6代目当主・八木 隆裕さんにものづくりから工芸の未来まで、さまざまなお話をうかがいました。海外からも注目されてる、精巧な茶筒を作る工房も見学させていただきました。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
年に2回のICCサミット。9月開催の京都では、毎回京都の歴史や文化を感じられる特別プログラムを追及していますが、前回のICC KYOTO 2021では細尾 真孝さんにご協力をいただき、テキスタイルギャラリー「HOSOO GALLERY」で西陣織の見学ツアーを開催しました。
▶経営者 Meets 西陣織。特別プログラム「HOSOO GALLERY」訪問で、京都の伝統と革新の文化に触れる【ICC KYOTO 2021レポート】
その細尾さんからのご紹介で、今回訪問したのが100年以上前から同じ製法で茶筒を手作りする開化堂。河原町六条で創業した明治8年(1875年)以来、高い気密性をもつ、銅、真鍮、錻力(ブリキ)製の茶筒を作っています。
開化堂の茶筒は、ミラノサローネなど国際見本市の出展や、英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)のパーマネント・コレクションに認定されるなど、近年海外からも注目が集まっています。
▶海外販売のはじまり。(Kaikado blog)
下のリンクを参照すると、金属缶の技術は19世紀初頭にフランスで生まれ、1810年にイギリスで技術の特許が出され、日本に缶詰が伝えられたのが1871年。まさに文明開化とともにやってきた技術で、渡来から時を置かず創業し、開発・製造・販売を開始したのがこの開化堂です。
▶金属缶の誕生(日本製缶協会)
▶缶詰・製缶業界のあゆみ 明治時代(1868年〜1911年)(日本製缶協会)
今風にいうと、まさにベンチャー。しかも完成度の高いものづくりが当時ですでにできていたことは、当時と全く同じ茶筒を現在も作り続けていることからもわかります。そんな古くも新しい開化堂をICC一行は京都下見の際に見学してきました。
100年前の茶筒でも修理ができる
開化堂の6代目当主・八木 隆裕さんは、次回ICC KYOTO 2022に参加予定。きっと皆さんと議論が盛り上がるはずと思える情熱に溢れた方で、100年以上前の茶筒を修理する話から、メタバースで開化堂の茶筒を開ける感覚を伝えたいという夢まで、熱く語ってくださいました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、音もなく閉まる開化堂の茶筒の映像をまずはご覧ください。
映像の最後には、手作りでこの茶筒を作る工房の様子も見られます。創業当時から同じサイズでものづくりを続けるのが開化堂の使命、と八木さんは言います。
八木さん「手作りですが、直径も高さもまったく一緒。100年前の茶筒を修理しますが、今買っていただいたものを、100年経っても修理できるようにするのが弊堂の使命だと思っております。」
珈琲缶やパスタ缶、Bluetoothのスピーカーや、徒歩10分のところにある開化堂カフェまで、さまざまなものを作っていますが、それはすべてこの使命のためにやっているのだそうです。早速ショップの商品を見せていただきましょう。
手に取ると、気になる角がまったくありません。銅製、鳥獣戯画が描かれた茶筒は29.095円
缶入りのBluetoothスピーカー「響筒」。蓋をするとゆっくりと閉まり、一旦停止となる
▶手作り茶筒の老舗「開化堂」とワイヤレススピーカー「響筒」を商品化 開化堂にて100台限定発売(Panasonic)
この開化堂の商品の数々、茶筒には3種類の材料を使っています。八木さんの背後にあるシルバーに見えるものが錻力(ブリキ)、その下にイエローっぽく見えるのが真鍮、茶色っぽいのは10円玉でおなじみの銅。いずれも触って、使い込んでいくうちに色が変化していくのも魅力のひとつです。
この茶筒は使っていくことで、表面の色が経年変化していきます。ジーンズやレザーのように、世界に一つの色に育てていくことができるというわけです。もしも凹ませてしまったり、蓋のしまりが悪くなったら、開化堂に持ち込めば修理をしてもらえます。
新品と120年以上前の茶筒。最終的にはこの濃い焦茶になります
毎日触っていくと、人によってこんな変化が楽しめるそうです。
手前の3つはいずれも真鍮の茶筒ですが、触る人の食生活によって色が変わります。一番左が新品で、赤褐色の真ん中は肉食が多い人の手が触ったもので、右側は野菜を多く食べる人の手によるものだそう。体質の酸性、アルカリ性が茶筒の色でわかってしまうというのも面白いですよね。
見た目だけではなくて、使い心地も開化堂の茶筒の魅力のひとつ。軽い空気圧を感じながら開け、空気を押し出しながら閉める感覚がたまらなくて、何度もやってしまいます。
工房を見学
お話のあとは隣接する工房で、作っている現場も見学させていただきました。
板金をカットして成型し、つなぎ目を息を合わせてはんだ付けして、密閉具合を何度も調整しながら形を仕上げ、最後は磨いて完成なのですが、気密性の高さが売りのため1つずつ人の手で確かめながら、そのすべての工程で正確さが求められます。
正確なサイズ、円型、ぴったりと閉まる蓋はむしろ手作りでないと調整できないというのは、まさに職人技の世界。作る現場を見てからは、さらに茶筒を見る目が変わります。
開化堂が考える工芸の進化とは
デンマークのデザイン会社 meets 開化堂のシリーズ。「うちの特徴である気密性がないものなので、最初は作るかどうか悩みました」
八木さん「初代から変わらないものを作っているので、すごくコンサバなことをしている会社と思われがちですが、よく見てみると、いろいろなことをやっているとわかればいいと思っています」
茶筒作りを軸に、右に左に未知の領域に踏み込んでは戻り、少しずつ前進する。それを「反復横跳びしているようなもの」と八木さんは言います。
「変わったことをやってみた、どうだ!と押し付けるというよりも、工芸は一歩近づいたときに初めて交えられるものだと思う」
開化堂の6代目として、背中に父親やご先祖、未来に自分の子どもや孫のことを考えて今があるととらえて長い時間軸でつらなる”We”という、目には見えないつながりを感じながらものづくりをしているそうです。
「日々、なんとなくInbetweenを作っている、”I”ではなく”We”のものづくりなんです」
先に紹介したBluetoothのスピーカーもしかり。間違いなくスピーカーのほうが先に使えなくなってしまいそうですが「それを考えて、茶筒として使えるように作ってある」とのこと。今の私たちはスピーカーから流れる音楽を楽しみ、100年後の人たちは、それを茶筒として使う。これもまた”We”のものづくりなのでしょう。
「そのうち新しい素材が手に入らなくなってきたら、作るのではなく、修理をするだけの開化堂になるかもしれない。修理材料の確保だけでも今からしなければ」と言いますから、NFT茶筒を作りたいというのも夢ではなく、文化をつなぐ取り組みとしてすでに視野に入っているのかもしれません。
八木さんは、ICC KYOTO 2022 DAY2のセッション7D「伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(シーズン2) 」に登壇いただく予定です。
ICC KYOTO 2022開催の折には、国内外から求める声が止まない、人間よりも長生きする茶筒を見に開化堂を訪れてみてはいかがでしょうか。八木さん、工房の皆さま、見学させていただきまして、ありがとうございました! 以上、開化堂から浅郷がお送りしました。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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