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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただいた、アーバンエックステクノロジーズ前田 紘弥さんのプレゼンテーション動画【道路、橋…街の異変をすぐ報告! 「アーバンエックステクノロジーズ」は、都市インフラをみんなで守る仕組みを作る】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
前田 紘弥
株式会社アーバンエックステクノロジーズ
代表取締役
HP | STARTUP DB
東京大学卒業後、三菱総合研究所にてインフラ関連の民間企業に海外進出支援、新規事業立案等のコンサルティング業務に従事。2019年10月からは東京大学生産技術研究所特任研究員として、機械学習や画像処理手法を用いたインフラ点検の効率化に関する研究を推進。2020年4月に株式会社アーバンエックステクノロジーズを創業し、未踏アドバンスト事業などの採択を受け、事業を推進。2021年3月博士(工学)取得。
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前田 紘弥さん アーバンエックステクノロジーズの前田と申します。よろしくお願いします。
「みんなで守ろう、みんなの街」ということで、お話をさせていただきます。
故郷の変化で芽生えた都市インフラへの関心
私は、長崎県の五島列島の出身で、こちらの写真のとおり、島が点在していて、海と山がとても綺麗なところです。
こちらは、実際の若松大橋という非常に新しい橋なのですが、この橋が架かったことによって、今まで船で移動していたところを、車で移動できるようになりました。
そういった大きな変化を通じて、都市インフラというものに関心を持ちました。
おそらく、皆さんのビジネスも普段の生活も、道路や橋、トンネルといった、都市インフラがあるからこそ成り立っていると思います。
大学(東京大学工学系研究科)でも社会基盤学専攻という土木の分野を勉強しまして、その後、街のデジタル管理を行うソフトウェアを行政向けに販売するアーバンエックステクノロジーズという会社を創業して、今に至ります。
都市インフラの課題とは
そのような事業をする中で、行政という中央の管理者が管理する、都市インフラの課題を感じています。
こちらが、その一例です。
私が見つけたものなのですが、何かわかりますか。
こちらは、ポットホール(※)と呼ばれる、道路に開いている穴なのです。
▶編集注:アスファルト道路の表層がはがれて出来る丸い穴、へこみのこと。
▶穴ぼこや段差に関する事故と対応実務(道路WEB)
もしかすると、都心部にしか住んだことのない方は、ご覧になったことがないかもしれませんが、地方に縁のある方は、ご覧になったことがあるのではないかと思います。
実は、こういった穴が原因の事故は年間1,000件ほど起きており、道路を管理している行政が訴訟を受けているという、そういった状況があります。
自転車やバイクに乗っているところをご想像いただくと、危ないと思っていただけるのではないかと思います。
ポットホールができる原因は、様々ありますが、基本的には、交通量と車の重さによって引き起こされます。
ですので、私たちが、普段、車を運転したり、タクシーに乗ったり、eコマースで物を買ってトラックで荷物を届けてもらったりする中で、知らず知らずのうちに、ポットホールを発生させているという、そのような状況があるということです。
行政の管理者による見回りには限界が…
では、今、どのようにして、このポットホールを見つけているかと言いますと、基本的には、各行政の管理者が、こちらの黄色い車を運転して見て回っています。
しかし、日本だけでも、道路は120万kmもあり、予算も人手も限られています。
今後、人手も次々と減っていくような状況ですと、ポットホールを見つける前に事故が起きてしまいかねません。
一方、世の中に目を転じてみると、Googleマップなどでは、皆で新しい建物の情報を登録していますよね。
シェアリングサービスにおいても、皆で口コミを書いて、皆で情報を集めています。
しかしながら、道路点検や都市インフラの分野は、管理者がデータを集めています。
市民から集めた街のデータが行政に届くアプリ
そこで、私たちは、私たち市民が街のデータを集めることができたらよいのではないかと考え、そのような発想で始めたのが、こちらの「My City Report」というシステムです。
こちらは、シンプルなスマートフォン用アプリです。
何か街の困ったことを見つけた際に、写真を撮って、位置情報とコメントを添えてアップするのです。
そうすると、そのデータが、管理している行政に自動で届く、そのような仕組みになっています。
行政の処理時間が70%削減
私たちユーザー側は、ほかの方が、どのようなレポートを公開しているかを一覧で確認できたり、自分の周囲にはどのようなレポートがあるのかを地図表示で確認ができます。
こちらのアプリは、行政にとっては、情報の統合的な管理ツールでして、市民からどういったレポートがあったのかを、このような形で、簡単に確認ができます。
基本的には、すでに写真と位置情報があるため、どのように対応するかを、すぐに決められます。
そして、対応を行ったら、市民にプッシュ通知をするという形になっています。
基本的に、今までは、何かを見つけたら、現場に確認に行って意思決定するというプロセスがありましたが、このソフトウェアを使うと、写真と位置情報がすでにあるため、それらのデータを見るだけで対応ができます。
今までよりも、行政の処理時間を70%削減できるという、そういう効果も出始めています。
ゴミ拾いや生き物などのレポートもやり取り可能
これから、私が好きなレポートを3つ、ご紹介します。
1つ目は、ガードレールの破損です。
ポットホールと並ぶ重大な破損なのですけれども、こういったものを行政の管理者が見つけるのは大変なのです。
なぜなら、1つの自治体で1,000kmもの道路を管理しているからです。
ですが、その地域で生活している私たちにはわかりますよね。
2つ目も、すごく良いと思っている使い方で、インフラが壊れていたというレポートではなく、ゴミが落ちていたから拾っておいたというレポートなのです。
投稿すると、行政から「ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします」というメッセージが届きます。
子どもでもできますし、「ありがとう」だけで繋がる、素敵な関係だと思っています。
最後の3つ目は、少し商売気があるのですけれども、生き物探しや名所探しです。
何か行政ごとに大事にしている生き物や、市民目線で見たときに「PRしたい」「観光地を探したい」といった、そのようなニーズがありますよね。
そういった際に、例えばこちらのように、行政が「ヒヨドリを探しています」と言いますと、ヒヨドリを見つけた人が写真を撮ってアップしてくれる、そのようなサービスになっています。
全国28の自治体と年間契約
ビジネスモデルは、非常にシンプルで、行政との年間契約です。
自治体の規模に応じて、100万~1,000万円ほどです。
とてもほっこりするようなサービスだと思っています。
市民が市民の目線で名所などのデータを集めることができる、そういった点を評価していただき、現在、東京都・神奈川県・和歌山県をはじめとする、全国28自治体で、実際に導入いただいております。
ドラレコの道路点検AIでも官民連携
市民の力をお借りする弊社の事業はこれだけなのかと言いますと、そうではなく、まだほかにも取り組んでいます。
ドライブレコーダーを使ったアプローチです。
三井住友海上火災保険が保険契約と併せて提供しているドラレコが、4万台ほどありまして、それらすべてに、私たちの道路点検AI技術をインストールしています。
保険契約者の街のドラレコのデータから、リアルタイムに全国分の道路状況が集まってくるのです。
そうすると、行政の管理者が点検のために走らなくても、保険契約をしている一般の方々が普通に走るだけで、道路の点検が完了するという、そのような世界を作っています。
品川区では1カ月で84%の道路データをカバー
こちらは、非常に面白いのですが、品川区では、1カ月で84%の道路データが集まるということで、点検のために行政の管理者がわざわざ走らなくても、点検が済むのです。
街のドラレコから集まったデータは、行政の方々も、WEBダッシュボード画面で簡単に確認ができるため、現地に行かずに意思決定をしていけるという仕組みになっております。
この取り組みを始めて1年ほどですが、すでにいくつかの自治体で、実際に導入いただいております。
また、2022年度グッドデザイン賞やインフラメンテナンス大賞優秀賞 といった、ありがたい賞を、いくつか頂いております。
私たちの趣旨に賛同してくださる方が、少しずつ増えてきていることを実感しております。
道路点検から、様々なインフラへの展開を目指す
私たちは、道路点検という事業から始まり、今後は、道路点検事業を拡張しながら、インフラのライフサイクル全体に事業を展開していきます。
また、インフラと一言で言っても、多くありますので、様々なインフラに事業展開していきたいと思っています。
すでに、海外での実績もありますが、どのような国でも基本的には必要不可欠な都市インフラに対して、サービスを提供していきたいと思っております。
「みんなで守ろう、みんなの街」ということで、私たちは、スマホやドラレコといったデバイスを使って、市民の方々の力を少しずつお借りする、そのようなアプローチで、行政という中央の管理者が管理する都市インフラの限界を超えていきます。
そうして、街の安心安全を守っていきます。
趣旨に賛同してくださる自治体の皆様、ぜひ私たちのサービスを使ってみてください。
また、都市インフラの課題は、とても大きなものですので、この会場にいらっしゃる民間企業の皆さん、私たちとコラボレーションができそうとお考えでしたら、ぜひお声がけいただけますと嬉しいです。
どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子