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ICC FUKUOKA 2023 ファンドレイジング – 社会起業家に寄付・支援しよう!に登壇いただいた、ピリカ小嶌 不二夫さんのプレゼンテーション動画【ごみ問題解決の鍵、計測手法の世界共通化を目指す「ピリカ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 12A
<新企画>ファンドレイジング – 社会起業家に寄付・支援しよう!
Sponsored by ICCパートナーズ
小嶌 不二夫
株式会社ピリカ 代表取締役
一般社団法人ピリカ 代表理事
HP | STARTUP DB
富山生まれ、神戸育ち。大阪府大(機械工学)卒。京大院(エネルギー科学)を半年で休学し、世界を放浪。道中に訪れた全ての国で大きな問題となりつつあった「ごみの自然界流出問題」の解決を目指し、2011年に株式会社ピリカを創業。ピリカはアイヌ語で「美しい」を意味する。世界中から2億個のごみを回収したごみ拾い促進プラットフォーム「ピリカ」、画像解析による広範囲のポイ捨て状況調査サービス「タカノメ」や、マイクロプラスチック調査サービス「アルバトロス」等の新規製品を生み出し、全てを事業化。ごみの自然界流出問題の根本解決に取り組む。2021年に環境スタートアップ大臣賞を受賞、2022年にMIT Technology Review Innovators Under 35 Japanに選出。
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小嶌 不二夫さん ピリカの小嶌です、よろしくお願いします。
ピリカは、ごみの自然界流出をゼロにすることを目指している組織です。
「ピリカ」という言葉は、アイヌ地方で、「きれい」「美しい」という意味を持ちます。
ごみの自然界流出は、気候変動に匹敵する環境課題
僕たちが向き合っているのは、「ごみの自然界流出」という問題です。
ポイ捨てごみ、海洋プラスチックごみ問題としても知られています。
10年後には、気候変動に匹敵するような、地球規模の環境課題になると言われており、色々なところが問題意識を持っています。
たかがごみと思うかもしれませんが、めちゃくちゃ規模の大きい問題なのです。
2050年の海の姿を想像できますか?
世界中でポイ捨て、不法投棄がされ、どんどん自然界に流れ出すごみが増えており、2050年には、海に流れ出すプラスチックごみの重量が魚の重量に匹敵するという予測もあります。
よく誤解されるのですが、重量の話なので、ごみと魚は1:1ではありません。
プラスチックやごみは軽いので、現実的にはこんな感じになるのです。
中央の魚と周りのごみが同じくらいの重量です。
これが30年後の地球の海の姿ということで、絶対にそうはさせないぞと我々が取り組んでいます。
生態系や産業、人体など、すごく広範囲に影響があり、この問題を絶対に解決したいのが我々ピリカという組織です。
旅した全ての国にあったごみ問題
そもそも僕自身、子供の時から環境問題にすごく興味があり、たまたま読んだ本の影響で、将来は研究者になりたいと思っていました。
しかし大学に入学後、研究では論文を書くところで終わってしまうことに気づき、その先の解決までしたいと考え、大学院をサボって色々な国を旅しました。
スライドの写真はインドのものです。
一つ一つは小さく見えるごみですが、世界中で同じようにポイ捨てされ、流出しています。
実は、世界で回った全ての国や地域でこの問題があったので、足し合わせるとものすごく大きな問題ではないかと気付きました。
それで帰国し、大学の電気代とパソコンを使って勝手に作り始めたのが、ピリカという会社です。
それを怒られて大学中退をしたのが、創業時の話です。
株式会社と一般社団法人を設立
ごみ流出問題を解決するため、我々は色々技術やサービスを開発しています。
今日のテーマである寄付で頂いたお金は、研究開発や事業拡大に使わせていただいています。
創業から12年が経ち、フルタイムとパートタイムの社員を合わせて50名の組織になっています。
ピリカでは営利事業が基本ですが、今でも企業からの協賛や非営利法人としての寄付によって支えられている組織です。
今でこそ売上1億円を超えるような規模になりましたが、創業期は本当に大変で、色々な協賛や寄付に支えていただきました。
ですから今日は、我々は皆さんの支援によってどんな事業をしてきたのか、これからどんなことをしていきたいのかをお話ししたいと思います。
世界的なごみ拾いSNS「ピリカ」
最初に始めたのは、「ピリカ」というSNSで、ごみを拾う方々にとってのTwitterのようなサービスです。
無料でダウンロードできるアプリですが、皆さんがごみを拾い、その写真を撮って共有すると、いいねの代わりに「ありがとう」やコメントなどが送られてきて、ごみ拾い自体もどんどん広がっていきますし、拾う人のモチベーションも維持できる仕組みです。
誰が使うのかとよく言われますが、実は日本中、世界中にユーザーがいらっしゃいます。
皆さんが知らないところで、深夜早朝、誰にも気づかれずにごみを拾ってくださる方がたくさんいることが分かっています。
これまでに世界の100以上の地域や国で利用いただいており、もう少しで3億個に迫る、累計2.8億個のごみが回収されています。
今でこそ、このサービスは自治体や企業から安定的に収益を頂けるビジネスになりましたが、創業期はこのアプリがあるだけで、ビジネスモデルも何もなかったのです。
そんなピリカを支援してくれたのが、実はごみ処理をしている中小企業の経営者、オーナーの方々でした。
色々なつてを頼ってたまたま紹介いただき、10年前、事業を紹介すると、「面白いね、協賛するよ、いくらだい?」と言われました。
協賛していただけるとは思っていなかったので、あたふたして「30万円」ですと言って以降、企業からの支援金額は30万円となりました。
10年以上、協賛いただいている企業もたくさんいらっしゃり、支えていただいているサービスです。
マイクロプラスチック流出調査・対策の「アルバトロス」
それ以外にもいくつも取り組みがあり、「アルバトロス」は、川や海を流れるマイクロプラスチックの調査、研究、対策を進める事業です。
直径5mm以下のマイクロプラスチックは、皆さんにとっても身近な問題として迫っており、最近だと人間の血液からも砕けたプラスチックが発見されています。
▶マイクロプラスチックは、人間の血液にも潜んでいる:研究結果(WIRED)
これが問題であることは認識されていますが、実は元となる製品や流出経路はあまり分かっておらず、あまり解明されていないのです。
ですから、対策を取るための調査や研究が必要です。
狭い場所でも使える低コストな調査装置を開発
ですが、今までの調査手法には問題がありました。
船を使って網を引く、漁業のような手法で調査をしていたのですが、船を借りるのは費用がすごく高いですし、船だと入れないような狭い水路や川があるのですが、むしろそういうところが流出元なのです。
ですから、そういった場所でも使える調査装置を、楽天やAmazonで買える既製品を使って、低いコストで作りました。
ピリカ 22.jpeg
それを、寄付や協賛、日本財団からの助成金などを活用して、どんどん広げていきました。
これが今は国連でも採用されるようになり、世界最大のマイクロプラスチックの調査手法の一つとなっています。
最近では、東南アジアのメコン川でも使われています。
グラウンドに使われる人工芝の破片が国内で大量流出
大学や企業と連携し、どんなプラスチックが漏れ出しているのかを分析したところ、日本ではサッカーやフットサルのグラウンドに使われる人工芝の破片が大量に流出していることを発見し、それを色々なところに発信しました。
発信をしましたが、問題をなかなか認めてもらえなかったので、寄付や助成金を再び得て、勝手に抜き打ち調査をしたところ、大量に漏れ出しているのが分かりました。
流出した人工芝の対応相談窓口を設置
それでも解決策がなければ前に進まないので、一緒に解決策を作っていこうと考えました。
色々な方に協力いただきながら、パートナーを見つけて解決策を作り、今では色々な窓口を作っています。
できない理由を全て潰し、前に進むようになってきました。
これらのプロジェクトのきっかけは全て、寄付や協賛による支援でした。
本当に感謝しています。
ごみになる人工芝を有価で買い取り再生
最近だと、人工芝をプラスチック原料に再生し、かごや、人工芝のグラウンドで使えるような練習用コーンを作っています。
QRコードがついており、ピリカの仕組みと連動し、誰が、どこで回収したごみで作られた製品か分かるという、トレーサビリティのある形になっています。
▶牡蠣パイプと人工芝のアップサイクル製品の試作に成功(PR TIMES)
ごみ問題解決にはグローバルな“ものさし”が必要
このように色々な事業を行っていますが、これから頂く寄付や協賛金は、研究開発や事業のグローバル展開に活用していきたいと思っています。
ごみ問題解決の鍵は、実は対策ではなくて、ものさしと呼ばれる計測手法だと思っています。
ごみ問題は昔からある問題なので、拾ったり、ポスターを貼ったり、ごみ箱を設置したりなど、皆さんも見たことのあるであろう活動や対策は既にたくさんあるのです。
しかしものさしがないので、どれが良いのか分からないですし、どの地域が問題なのかも測れないのです。
結果として、色々な活動に少しずつお金がかかっており、インパクトが小さいままなのです。
ですから、安くて、どこでも使える、共通のものさしを作って普及させることで、効果が測れ、良い取り組みにお金が集まり、インパクトが大きくなってく新しい仕組みが作れるはずなのです。
ごみ流出問題のものさしはAI×スマホ×自動車で作れる
その最前線のプロジェクトがこちら、「タカノメ」です。
世界中で既に走っている車と、世界中に既に普及しているスマホを組み合わせて、グローバルのごみのものさしを作るプロジェクトです。
車のダッシュボードにスマホを取り付けセットしておくと、勝手に路上のごみの種類や数を読み取ります。
既に20万km、地球5周分の調査を進めていますが、色々な企業や自治体と連携しています。
結果が分かれば、どの地域に予算を集中させるのか、効果が高いのはどの取り組みかかが分かりますので、問題を効率良く解決します。
また、先ほどのピリカで、汚い場所をボランティアに教えると、彼らが喜んで汚い地域でたくさんごみを拾ってくれる流れになっています。
ごみ調査のものさしを世界共通にしていくために
日本国内では、廃棄物業界や物流業界がお金を出してこのプロジェクトに協力してくださっており、どんどん調査依頼地域が広がっています。
▶ピリカ様と連携する研究開発の取り組み、ごみ分布調査サービス「タカノメ自動車版」専用コンテナトラックを導入(山一商事)
しかし、調査網をグローバルに広げるためには実績を作っていかなければいけません。
このプロジェクトを世界共通のものさしにしていくために、海外での調査を進めるための車両代、通信費、人件費にお金を投じ、地球規模で問題が測れて効率良く解決できるようにしていきたいと思っています。
個人からの寄付ももちろん大歓迎ですし、企業からの連携や協賛のお声がけも大募集しています。
▶編集注:個人の方向けURLはこちら、企業の方向けURLはこちらです。
環境問題を起こすのも、解決するのもテクノロジー
最後に、僕が大好きなことわざを紹介します。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け、早く遠くへ行きたければ自動車で行け」、これは僕が作ったことわざです。
21世紀はテクノロジーの時代です。
僕らの愛するテクノロジーによって、環境問題がまさに引き起こされてしまっていますが、その環境問題を解決するのもまたテクノロジーであり、科学技術の力だと思います。
ぜひ、我々のプロジェクトに参加していただき、未来の科学技術の力で、大きな環境問題を一緒に解決していきたいと思います。
以上です、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成