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大気中からCO2を直接回収する“DAC”で、排出量実質ゼロへの貢献を目指す「Planet Savers」(ICC KYOTO 2024)

ICC KYOTO 2024 リアルテック・カタパルトに登壇した、Planet Savers 池上 京さんのプレゼンテーション動画【大気中からCO2を直接回収する“DAC”で、排出量実質ゼロへの貢献を目指す「Planet Savers」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。

【速報】アルツハイマー病の治療に光! 新薬で世界規模の課題解決を目指す「Neusignal Therapeutics」が「リアルテック・カタパルト」優勝(ICC KYOTO 2024)


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ

池上 京
Planet Savers
代表取締役CEO
公式HP | 公式X

新卒で独立行政法人国際協力機構(JICA)に入構し中東のインフラ開発、政策支援に従事。ケンブリッジ大学でのMBA(経営学修士号)取得を経て、ソフトバンク・ロボティクスに入社しAIロボットの海外展開に取り組む。その後株式会社MIRAIingを設立し、リーダー教育を2,000名以上の学生に提供。気候変動を食い止めたい、インパクトあるスタートアップを立ち上げたいという想いで、2023年に日本初のDirect Air CaptureスタートアップPlanet Saversを設立し現職。京都大学法学部卒、公共政策修士。


池上 京さん 「100年後も暮らせる地球を次世代に」、Planet Saversです。

気候変動への危機感

私は新卒でJICA 国際協力機構に入構しました。

世界を本当に良くしていきたい、大きなインパクトを生んでいきたいとの思いで途上国のインフラ開発、政策支援に携わっていました。

そうした中で、問題意識を持ったのが気候変動の問題です。

当時私は、火力発電所のリハビリテーションの案件を担当していました。

CO2をもくもく出しているのを見て、「これ、大丈夫なのかな」と内心思いました。

そして、2018年の休暇中に訪れた四国で西日本豪雨に遭いました。

100年に一度の大災害になりました。

▶️西日本豪雨 死と破壊(REUTERSグラフィックス)

「本当にヤバい、どうにかしないといけない」と強く思いました。

日本初、“DAC”の研究開発スタートアップ

そうした中、私はJICAの次のイギリス留学中に気候変動オタクのアルバンというフランス人の同級生に出会いました。

そして、彼から「すごく面白い気候変動の技術があるんだ」と教えてもらいました。

それがDirect Air Capture、「DAC(ダック) 」と呼ばれる、大気中からCO2を直接回収する技術です。

我々は日本で初めてのDACのスタートアップとして、研究開発に取り組んでいます。

申し遅れましたが、私はPlanet Savers CEOの池上と申します。

連続起業家です。

共同創業者の伊與木(健太さん)は、東京大学で「ゼオライト」というCO2の吸着材を研究開発する、日本でもトップクラスのサイエンティストです。

また、豊富な研究開発経験のあるサイエンティスト、エンジニアが集まっています。

気候変動の解決にはCO2回収が不可欠

気候変動、これを本当に止めないといけません。

皆さんの中でも大雨、台風で影響を受けた方がいらっしゃると思います。

これは、どんどん、どんどん悪化していきます。

気候変動を止めるためにはCO2排出量を実質ゼロにしないといけませんが、皆さん、本当にCO2の排出量をゼロにできますか?

ここ京都に来るのに、飛行機に乗ってきた方はいらっしゃいますか?

飛行機はCO2を大量に排出します。

でも電化はできません。

そうすると、出したCO2を回収するしかないのです。

同じような産業はたくさんあります。

10億トンという日本の年間CO2排出量に相当する規模のCO2を、グローバルで回収せざるを得ない未来が待っています。

グローバルではDAC産業創出の動き

DACのグローバル市場規模は、2050年に70兆円に達すると予測されています。

そういった中、グローバルでは産業創出していくしかないだろうと巨額のマネーが動いています。

イーロン・マスクは1億ドルの賞金、マイクロソフトは50万トンのクレジット購入、アメリカ政府は巨額の税額控除や補助金を出しています。

そういった中で、日本でも大企業がカーボンクレジットの購入を契約したり、経済産業省が市場創出の後押しに動いたりしています。

ANA、米社からCO2回収由来の炭素クレジット購入(日本経済新聞)

DACワーキンググループ (METI/経済産業省)(経済産業省)

しかし、皆さんはまだあまり聞かないと思います。

日本でDACに挑戦しているところは非常に少なくて、スタートアップで本格的にDACに挑戦しているのは我々が初めてです。

国内でゼロでした。

難易度もコストも高い大気中のCO2回収技術

なぜかというと、非常に難しい技術だからです。

大気中のCO2は、0.04%しかありません。

皆さんも今CO2を感じないと思います。

そのため、排ガスのような濃いところからCO2を回収するのに比べると非常に難しいのです。

回収コストが10倍、20倍、30倍とかかって、トン当たり1,000ドルかかっています。

コストを下げないと社会実装はできません。

革新的なCO2吸着材を開発

それに対して我々は、革新的なCO2の吸着材とこれに最適化されたCO2回収装置を開発し、コストを1,000ドルから100ドル以下まで下げていきます。

私たちが開発しているのは、「ゼオライト」といわれるCO2の吸着材です。

聞いたことのない方も多いと思いますが、「ゼオライト」は実は日本でも取れる天然の無機鉱物です。

孔がたくさんある多孔性物質になっていて、「物理吸着」といって、この孔の中にCO2がスポッと入っていきます。

実は250種類ある素材群で、この250種類の中にCO2を回収しやすいものがあることが、この2年間で分かってきました。

ゼオライトを合成して、さらに特性変化させることもできるのが面白いところです。

DAC用ゼオライトの3つの強み

DAC用ゼオライトには、どのような強みがあるのでしょうか。

強みは3つあります。

1つは熱が不要で、CO2回収から濃縮までできることです。

実はCO2が0.04%だと何にも使えないし、除去もできません。

90%以上まで高めないとCO2を地下貯留できないのですが、そのために100℃の水蒸気や900℃の熱を使うと大量にエネルギーを使います。

我々の開発した吸着材は熱が不要で、CO2をスポッと掃除機のように抜くだけでよく、圧力差でできるので、コストが下がります。

そして2つ目に、吸着材は価格が高い上に1年しかもたないものが多いのですが、我々のゼオライトは安価に天然にあるものを取れますし、かつ耐久性も10年と無機物のため長いです。

そして3つ目に、1トンCO2を回収するのに水を10トン使うアプローチもありますが、これはサステナブルでなく、環境に悪いのではないかと海外では問題視されています。

そういった中で、我々の開発した吸着材は水を使わずサステナブルです。

世界トップ3に入るゼオライト合成技術

これだけ聞くと、多分皆さんはどこに参入障壁があるのかと思われるかもしれませんが、実は我々は世界のトップ3に入るようなゼオライトの合成技術を持っています。

この合成技術を持っている研究室は非常に少ないのです。

そこが大きな参入障壁になってきます。

我々はこの蓄積されたノウハウや技術を活かし、すでに吸着量が高く、吸着速度が速く、かつ脱着しやすい、非常にパフォーマンスが高いDAC用ゼオライトを作りました。

ゼオライトに最適化したDAC装置を同時開発

これらをさらに良いものにしていこうと取り組んでいますが、同時に我々はこのゼオライトに最適化されたDAC装置も作りました。

これは、実際に千葉県で動かしているCO2回収装置で、1日10kgのCO2を回収します。

これを1トン回収できるところまで、今高めていっています。

特許も取得しています。

これをモジュール化し簡単に輸送して建設し、コストを下げ、さらに大量生産もして、スケールメリットが得られるようにすることに取り組んでいます。

この吸着材と装置を組み合わせて、今は1,000ドルという回収コストを400ドル、100ドル、50ドルと減らしていき、社会実装していきます。

吸着材と装置をセット販売するビジネスモデル

ビジネスモデルとして、私たちは吸着材と装置をメーカーとしてセット販売していこうと思っています。

DACを導入したいというお客様はグローバルにいます。

CO2を地下貯留してカーボンクレジットにして、カーボンクレジットを買いたい相手に販売していくモデルを考えています。

ただ、日本だと今CO2を地下貯留できません。

まずはカーボンリサイクルへの活用を考えています。

光合成で使用してトマト等の収穫量を上げる、コンクリートにCO2を固定してカーボンクレジットを作る、水素と混ぜて合成燃料を作るといった実証で使用いただくことを考えています。

創業1年で多くの実績

我々は創業1年ですが、多くの実績があります。

まず2.5億円のシード投資をしていただいています。

日本初のDirect Air Captureスタートアップ、Planet Savers株式会社がシードラウンドにて2.5億円の資金調達を実施(PR TIMES) 

大企業とのPoCも決まっており、政府からの支援、補助金等も頂いています。

そういった中で、海外最大手のスイスの競合企業Climeworksの元CXOの2人(Carlos Haertel元CTOとDaniel Egger元CCO)もアドバイザーで参画してくれています。

彼らの知見を活かしてタイムマシン経営(海外で先に成功したビジネスモデルを日本で展開すること)をし、プロトタイプを作り、商用化、量産化をどんどん加速していきます。

ゼオライトDACでグローバル No 1、APAC DACでNo 1、DACの世界シェアも30%を取り、排出量実質ゼロに貢献することを目指します。

Industry Co-Creationをジャパン発、オールジャパンでしていきたいと思っています。

次世代に美しい地球を残そう

最後に、娘が去年(2023年)生まれました。

ちょうど今月1歳になります。

次世代にぜひ美しい地球を残すため、皆さん、ご支援をお願いいたします。

ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

編集チーム:小林 雅/原口 史帆/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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