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ICC KYOTO 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき4位に入賞した、マイシェルパ 松本 良平さんのプレゼンテーション動画【誰もがメンタルヘルス・ケアにアクセスできる社会を目指す「マイシェルパ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
松本 良平
マイシェルパ
代表取締役CEO
公式HP | 公式X
2001年京都府立医科大学卒業。 同大学附属病院にて研鑽を積み、同大学大学院卒業にて医学博士授与。 The American Journal of Psychiatryを始めとしたトップクラスの国際医学雑誌に論文が多数掲載されるなど、若手精神科医として国内屈指の業績を積み重ねる。 35歳で精神科病院の院長職を担う。マイシェルパの立上げと共に、自らクリニックを開設。現在、医療法人理事長としても複数のクリニックを運営し、月間4,000名近くの診療を統括。現在も自ら診療を行う現役の精神科医。
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松本 良平さん メンタルヘルス支援プラットフォームの株式会社マイシェルパ代表取締役CEO 松本 良平です。
みなさんは、「死にたい」「仕事を辞めたい」と、目の前で泣かれたことはありますか。
1回? 10回? 100回? いかがでしょうか。
私は、数千回以上あります。
私は、今も診療を続ける精神科医です。
そして、インパクトIPO(※)を目指す、スタートアップの経営者として、本日、この場に立っています。
▶編集注:インパクトIPOとは、事業成長でIPOを目指しながら当該事業の製品・サービスを通じてポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを創出すること。
「インパクト企業」/「インパクト上場企業」(SIIF)
年間自殺者数が2万人を超過し続けている日本
日本は、1976年以降、年間自殺者数が2万人を超え続けている、世界でも有数の自殺大国なのです。
20~80代まで、毎年、各年代で2,000名以上の方々が自殺されています。
では、この方々は、弱い人たちだったのでしょうか。
弱い人たちだから、精神疾患になるのでしょうか。
どのように思われますか。
この人は弱い人なのか?
まさに今週の月曜日にお会いした方のお話です。
お母様が、がんを再発し、末期となってしまいました。
ホスピスではなく、在宅ケアを希望されたため、その方は4ヶ月間、全力で付き添われていました。
お母様が亡くなられた後、動けなくなり、死のうとしました。
でも、怖くて、しんどくて、死ぬことができませんでした。
彼女は、診察中、ずっと泣き続けていました。
私は、いつの出来事ですかと、彼女に尋ねました。
実は、お母様が亡くなられたのは、2年前のことでした。
うつ病の診断基準とは?
うつ病の診断基準について、見てみましょう。
9症状のうち、5項目以上がどれほどの期間続くと「うつ病」と診断されるのでしょうか。
それは、わずか2週間なのです。
彼女はお母様を亡くされてから、うつ病になり、2年間も苦しまれた後、私の治療を受診されました。
精神科医として、「目の前の患者さんを治療するだけでは追いつかない」「もっと早くケアを受けてほしい」と、日々思っています。
幸い彼女は自殺をせず、私の治療を受けに来てくださいました。
しかし、もっと早く、しかるべきケアを受けていれば、うつ病を防げていたでしょうし、2年間も苦しむ必要がなかったはずなのです。
そう、誰もがメンタルヘルスケアへ早期にアクセスできる仕組みが、必要なのです。
医療ではカバーしきれないメンタルヘルス有病率
メンタルヘルス疾患の有病率を、見てみましょう。
直近1年で10.5%の方が、苦しまれています。
生涯で30%超の方が経験すると、言われています。
日本では、1,300万人以上がメンタルヘルス疾患を抱えており、また、360万人の方が通院していますが、約950万人の方がケアやサポートを受けられていないのです。
この圧倒的な現実に対して、医療のみでは、もはやカバーしきれないのは明らかです。
では、どのようなケアやサポートが必要なのでしょうか。
残念ながら治療薬においては、1960年代以降、大きな突破口を切り開くことができていません。
また、2010年以降、メガ・ファーマ(大規模な製薬会社)の撤退が、相次いでいます。
エビデンスからわかったカウンセリングの有効性
一方、心理療法においては、認知行動療法の発展が目覚ましく、エビデンスも蓄積されています。
そう、結論は出ています。
各国の診療ガイドラインでは、うつ病や不安症に対しては、軽症であればカウンセリング(心理療法)が第1選択なのです。
では、カウンセリングのベストな実施方法とは、どういったものでしょうか。
有効性・コスト・リソースも考慮すると、オンラインカウンセリングの一択なのです。
カウンセリング市場について、日米を比較しながら、見てみましょう。
実は、全医療費に対する、精神科医療費の割合は、米国も日本も、同率6.2%です。
しかし、米国では、年間2.5兆円規模のカウンセリング市場が毎年成長していますが、日本は年間300億円と、明らかにいびつなのです。
求められるオンラインカウンセリング市場の創出
日本のメンタルヘルスのあり方を変えるには、年間7,700億円のカウンセリング市場を創出し牽引していくことが求められているのです。
では、担い手は、誰でしょうか。
私のような精神科専門医は、すでにキャパオーバーで、充足される見込みはございません。
一方、臨床心理士や公認心理師といったメンタルヘルス・プロフェッショナルは、有資格者数は多いものの、活躍の場がなく、また、専門医のサポートのもとで学び、安心して働きたいと言っているのです。
そのような声に応えるべく、私は、オンラインでカウンセリングを提供するメンタルヘルス支援プラットフォーム「マイシェルパ」を立ち上げました。
私たち専門医は、クオリティマネージメントに徹し、臨床心理士や公認心理師は、365日、オンラインでカウンセリングを提供してくれています。
企業の健康管理で最重要、従業員のメンタルヘルス
では、このようなプラットフォームを携え、メンタルヘルスという広大な山々を、どのように登り、どのように啓蒙し社会に浸透させたらよいのでしょうか。
まず、企業という山があります。
企業の健康管理で最も大切なのは、「圧倒的」にメンタルヘルスです。
55歳以下においては、がんではなく、圧倒的にメンタルヘルス(精神疾患)による損失が大きいのです。
企業活動の源泉は、「人」ですよね。
15%以上の方々が、高ストレス状態=うつ状態にあり、パフォーマンスが上がりません。
休職・離職も止まらないため、あらゆるコストがかかり続けています。
米国企業でカウンセリングが普及しているワケ
こういったことに対して、米国企業では、従業員向けカウンセリングの導入がスタンダードとなったのです。
Fortune500(※)においては、95%以上が従業員向けカウンセリングを導入しています。
▶編集注:Fortune500とは、米国のフォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つで、総収入に基づいてランキングされた全米上位500社のこと。
なぜ、これほどまで、米国で普及したのでしょうか。
答えはシンプルです。
投資として優れているから、です。
カウンセリングサービスのROIは、3~10倍です。
特に、採用コストが上がれば上がるほど、ROIは高くなります。
本日、この場にいらっしゃる経営者の方々にも、ぜひ合理的な判断をお願いしたいです。
「マイシェルパ」は、現在、法人向けに従業員数に応じた、完全定額制のサービスを提供しております。
そちらのQRコードと団体コードをシェアするだけで、明日からでも社内での展開が可能なのです。
このような取り組みが、少しずつ実を結び、昨年(2023年)シリーズAラウンドを実施しました。
本年2024年の5月に、導入企業が300社を超えました。
スタートアップ企業から上場企業まで、様々な企業に、ご利用いただいております。
実は、本日の登壇者の方にも、また、審査員の方にも、私たちの顧客の方々が、いらっしゃいます。
では、「マイシェルパ」にアクセスできる労働者の対象者数は、いかがでしょうか。
現在、10万人に達しようとしていますが、私たちは、増加のペースをより加速させなくてはいけないと思っております。
なぜなら、全労働者のわずか0.1%しかカバーできていないからです。
精神科医療機関のない自治体をサポート
では、次の山として、自治体について、お話しさせていただきます。
人口2.5万人以下の自治体には、精神科医療機関がございません。
約950自治体が該当します。
では、どうしたらよいのでしょうか。
住民の誰もが、「マイシェルパ」にアクセスできるようにすれば、解決できるのではないでしょうか。
まだ小さな一歩ですが、福島県や埼玉県の自治体が、市区町村全体で「マイシェルパ」を導入してくださっています。
このような、自治体による導入を、今後、全国の自治体へと展開していきます。
周産期うつの改善など女性支援にも貢献
では、その次の山として、周産期(妊娠22周目から、出生後7日未満の期間のこと)の女性支援についてです。
▶️周産期医療とは(東京都保健医療局)
周産期の女性の15%が、うつ病に陥っています。
埼玉県上尾市では、2024年9月から150件以上ご利用いただいており、「周産期うつ」を次々と改善しております。
このような意義のある取り組みも、全国展開していきたいと思っております。
本日はお時間の関係でご紹介できかねますが、株式会社マイシェルパは、まだほかにも多くの登るべき山々に、チャレンジしております。
誰もがメンタルヘルス・ケアにアクセスできる社会へ
最後になりますが、私が精神科医を志したのは、1996年4月、19歳のときでした。
それから四半世紀以上が経ちましたが、残念ながら、課題感は何も変わっていません。
私は、精神科医としてのキャリアを、十分に重ねてきました。
そして、メンタルヘルスへの情熱は、より高まっています。
必要なTech(技術)も、そろってきました。
そして、志をともにする仲間も、集まってきています。
株式会社マイシェルパのメンバーも、また、「マイシェルパ」を利用してくだっている方々も、そして、本日、この場で、株式会社マイシェルパを応援してくださっている皆様も、一緒に、メンタルヘルスという広大な山々を登る、パートナーです。
ともに、登りましょう!
ともに、登り続けましょう!
誰もが、メンタルヘルス・ケアへアクセスできる社会の実現のために、株式会社マイシェルパ 代表取締役CEO 松本 良平でした。
ご清聴、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成