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ICC FUKUOKA 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、森林ノ牧場 山川 将弘さんのプレゼンテーション動画【「森林ノ牧場」は、放牧酪農で未利用資源に新たな価値を創造する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
山川 将弘
森林ノ牧場
代表取締役
公式HP | 公式X
1982年生まれ、埼玉県出身。東京農業大学畜産学科卒業。森林ノ牧場株式会社 代表取締役。岩手県の中洞牧場で放牧酪農と6次産業化を学び、アミタが立ち上げた京都府京丹後の「森林ノ牧場」に参画。その後、栃木県那須町での牧場立ち上げを経て、2011年に森林ノ牧場株式会社を設立し、代表取締役に就任。未利用森林を活用したジャージー牛の放牧飼育や乳製品の加工販売を手がけ、持続可能な酪農モデルを確立している。2021年には栃木県益子町で耕作放棄地を活用した第二牧場を開設し、地方の未利用資源を活用するモデルケースを全国展開することを目指している。自然との調和と生産性を合わせた生物多様性酪農の実践を目指す。
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山川 将弘さん こんにちは、森林ノ牧場の山川です。
今日は、放牧酪農で未利用資源を価値に変える私たちの挑戦についてお話しします。

田舎暮らしへの憧れと夢
森林ノ牧場は、2009年に栃木県那須町にできました。

ジャージー牛を放牧で飼育し、乳製品の加工・販売をする牧場です。

私の出身は埼玉県川越市、実家は酪農家ではありません。
将来の夢は、田舎に住むことでした。

これは、中学校3年生の時の写真です。

北海道で見た牛の放牧風景は、田舎への憧れを絵に描いたような光景で、この時以来、夢は牧場で働くことになりました。
そこで入学したのが、東京農業大学の畜産学科です。

ここで学べば、牧場で働けるだろうと入学をしました。
酪農家の85%超が牛を牛舎で飼育
しかし、学ぶことは憧れの風景とは違い、牛は牛舎で飼育され、牧歌的な放牧風景はほとんどなかったのです。

実際、日本の放牧酪農は13%ほどと言われています。

どうすれば放牧酪農が成り立つのか。

これが私のライフワークになっていきました。
酪農家の仕事は牛の命の価値を高めること
一般的な酪農は、牛舎で牛を飼育し、効率化を重視し、生産量を高め、コストを下げることで利益を生み出します。
一方、放牧酪農は、価値を高め、価値を創造することこそが大事だと考えています。

森林ノ牧場では、酪農家の仕事を「牛の命の価値を高めること」と定義をしています。

牧場の牛には1頭ごとに名前があり、呼ぶとやってきます。
このように、個性のある牛たちの価値をどう高めるかが、僕らの仕事です。
未利用森林を価値に変える
森林ノ牧場では、名前の通り、森林を活用し酪農を行っています。

日本の国土の68%は森林です。
この森林が活用されておらず、土砂崩れや獣害対策など、コストをかけて管理しているのが実情です。

そんな未利用の森林に牛を放牧し、牧場をつくりました。
牛は、人間が食べられない草や葉っぱを食べる草食動物です。
我々が食べられない草を食べてミルクを生み出します。
人間が活用できないものを価値にしてくれることこそ、酪農の本質だと考えています。
放置されている森林を牧場で価値にすることが、酪農の大事な価値になると考えているのです。

そして、そこから生まれる美しい風景や牛たちの個性や可愛さといった背景も含めてお客様に伝えるために、牛を飼育するだけではなく、乳製品を加工し、販売まで行う6次産業で酪農の価値を高めています。



すっきりとした後味の季節感を味う牛乳
もちろん、取れるミルクは高品質で、成分が高く濃厚なのはもちろん、低温殺菌で後味がすっきりとしています。

牛たちが食べる草は、季節で種類や成分が変化します。

そのため、ミルクにも季節感が生まれます。
牛乳は、1本500mlで680円で、普通の牛乳の5倍以上の価格ですが、牧場の人気商品です。
▶森林ノ牛乳(森林ノ牧場オンラインショップ)

森林ノ牧場のアイスクリームが味わえる場所
乳製品は、那須のお土産品屋や道の駅でソフトクリームとして販売されています。
都内でも三ツ星レストランのL’Effervescenceや無印良品のアイス、ソフトクリームに牛乳が使われています。
▶素材を生かしたアイス ジャージー牛乳(無印良品)


直営店として、牧場内のカフェなど3店舗を運営し、売上はオープン以来コロナ禍も含めて着実に増え続けています。


1頭あたりの売上は、一般的に年間120万円強ですが、森林ノ牧場では年間840万円と約7倍です。

価値を高める酪農の成果が出てきました。
第二牧場は栃木県の耕作放棄地
そして、ありがたいことに、生産するミルクが足りないという課題が出てきました。

そこで、生産量を増やすために牧場の規模拡大ではなく、あえて別の場所に第ニ牧場をつくり、新たに価値の創造の拠点をつくることにしました。

場所は、陶器の町、栃木県益子町の耕作放棄地です。

耕作放棄地は森林同様に、人口減少や担い手不足で地方の課題となっています。

牛が草を食べて開拓をしてくれるので、耕作放棄地での酪農が課題解決になると考えました。
「生物多様性酪農」で人の集まる牧場が生まれる
外来種の草に覆われていた先ほどの場所も、このように牛を放牧して2年後には、多様な草が生える放牧地になりました。

「生物多様性酪農」という言葉をつくり、より自然を豊かにする生き物が集まるような牧場を目指しています。
生物多様性の取り組みや牧場の開拓は、参加者を募ってイベントにしています。
延べ300人以上が集まり、耕作放棄地が人の集まる牧場になりました。

日本の田舎には、管理に困り放置され、手に負えない未利用の森林がまだまだあります。

一方で、食料やエネルギーの多くは輸入に頼り、牛の飼料も75%が輸入です。

酪農の力で未利用資源を活用し、自然の価値を高めていきたい。

これが我々の思いと取り組みです。
地産地消のミルクへの夢
今はまだ那須と益子の2カ所ですが、森林ノ牧場は未利用資源の活用を進めるため、牧場を全国に広げていきます。

九州には九州で採れたミルクを出せるようにしたいのです。
森林ノ牧場ができることで、未利用だった自然に人が集まり、自然からミルクが生まれ、牧場ならではの生態系が生まれます。

このつながりをつくる力こそ、酪農の魅力です。
牛は関係性をつくる生き物なのです。
森林ノ牧場で関係性を再構築し、田舎らしい豊かな暮らしが広がることを私たちは目指しています。

未利用資源を活用し価値をつくる牧場
牧場とともに歩んできたこの森林ノ牛乳は、オープン当初では考えられないほど、たくさんお届けできるようになりました。

第二牧場ができたのも、牛乳が増えたから。
未来を創るため、この牛乳一本に私たちは真剣に取り組んでいます。
そんな牛乳を、ぜひ皆様お召し上がりください。
未利用資源の価値を高めて関係性をつくる森林ノ牧場に、ぜひ皆様もご参加ください。

ご清聴どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成