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ICC FUKUOKA 2025のセッション「-Well-beingビジネスの今後(シーズン6) -〜2025 くるぞ、ウェルビーイング〜」、全5回の③は、Halu 松本 友理さんが登場。Haluは「インクルーシブデザイン」というアプローチで、障害者と健常者がともに使えるプロダクトを提供しています。紹介するのは、障害の有無にかかわらず使用できる姿勢サポート付子ども用ポータブルチェアです。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 7E
-Well-beingビジネスの今後(シーズン6) -〜2025 くるぞ、ウェルビーイング〜
Sponsored by 住友生命保険
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▶「-Well-beingビジネスの今後(シーズン6) -〜2025 くるぞ、ウェルビーイング〜」の配信済み記事一覧
藤本 先ほど、デザインの分野でも、環境配慮は当たり前で、次はWell-beingへの配慮だという話が善樹さんからありました。
Well-beingデザインと言えば、松本さんの領域かと思いますので、松本さんにお話ししていただこうと思います。
障害者と健常者がともに使えるインクルーシブデザイン

松本 よろしくお願いします。
私たちHaluは、「インクルーシブデザインで多様性を価値に変え、分断のない世界をつくる。」を掲げているスタートアップです。
解決したい社会課題は、障害者と健常者の分断です。
現在の日本においては、生涯にわたって、学校や会社など、遊びや学び、仕事の場が分かれているので、両者の交流の機会がほとんどないと思います。

社会における多様性の欠如は、全ての人の生きづらさにつながるのではないかという課題意識を持っています。
その解決手段として、インクルーシブデザインというアプローチで、障害者と健常者がともに使えるサービスやプロダクトを提供し、多様な人々の交流機会を増やすことに取り組んでいます。

インクルーシブデザインという言葉は、ユニバーサルデザインに比べると、まだ聞きなれないものです。

ユニバーサルデザインでは、デザイナー主導で、みんなが使いやすいものを作っていきます。
一方、障害者や高齢者、外国人など、従来のデザインプロセスで見過ごされがちな人たちのそれぞれのニーズに着目し、当事者とともに作っていくのが、インクルーシブデザインです。
スライドにある、ナイキのスニーカーはよく例に挙げられます。
脳性麻痺があって靴紐をうまく結べなかったアメリカの高校生が、「靴紐を一人で結べないけど、自分だけの力で靴を履きたい」という手紙をナイキに書きました。
このスニーカーはヒンジのようになっており、足だけで着脱できます。
▶ナイキ ゴー フライイーズ (Nike)
私もよく履いていますが、例えばこどもを抱っこしていて両手が使えない時や、腰を曲げるのが難しい高齢者が履く時など、いろいろな人に便利です。
マイノリティのニーズを起点としつつ、当事者の課題解決だけではなく、より多くの人たちにとって価値のあるイノベーションが生まれるマーケット拡張のポテンシャルを秘めていると、私たちは考えています。
インクルーシブデザインへの期待が高まっている
藤本 ユニバーサルデザインとの違いについてですが、ユニバーサルデザインはいろいろな人が使えるデザインですよね。
インクルーシブデザインは、特に取り残されている人の課題を解決することでみんながハッピーになれる、ということですよね。
ユニバーサルデザインはみんなが50点取れるものだとすると、インクルーシブデザインはどうなるのでしょうか?
松本 インクルーシブデザインの定義は、「個々のニーズを起点に、当事者とともにつくるデザインアプローチ」です。
ただ、そこにとどまってしまうとビジネスとして成立しないので、マジョリティ向けに拡張する意識を持つことが大事だと私たちは考えています。
どちらかと言えば、ユニバーサルデザインは一つに収束します。
みんなにとって50点、80点となるので、それぞれにとっては少し使いにくい部分が残ることがあります。
インクルーシブデザインはあくまでもデザインプロセスの定義なので、アウトプットとしてはもう少し柔軟性があり、それぞれに応じたバリエーションがある、ということもあります。
私たちが会社を始めたのが2020年ですが、今、このインクルーシブデザインも波が来ている気がしています。

最初はみんな知らない状態でしたが、最近は評価していただける機会も増えてきて、資金調達額は1.8億円で、シリーズAに向けて実績を積んでいます。
2024年末には、首相官邸で行われた内閣府のバリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰の場で、首相にプレゼンさせていただきました。
WE ATでも表彰していただきましたし、インクルーシブデザインというアプローチの持つ可能性や、それを広げる私たちの取り組みに対して、すごく期待していただいていると感じています。

障害のある人を取り巻く環境を知って
松本 私がこの事業を始めた背景をお伝えします。
私はトヨタ自動車に新卒入社し、車の商品企画の仕事をしていましたが、小学2年生になった息子の出産が、人生の転機となりました。

息子には脳性麻痺の障害があります。息子との生活を通して、障害のある人を取り巻く環境を知り、「なぜこれは解決されていないのだろう」と気づいたことがたくさんあったのです。特に、障害の有無で生活の場が分かれており、障害者と健常者の交流の機会が極端に少ないため、私もそうでしたが、自分と異なるニーズを持つ人たちの存在に気がつけないことを痛感しました。
そこで、自分がそれまで携わってきたものづくりのアプローチで、何かできることがあるのではないかという思いで、Haluを2020年に立ち上げました。
ブランド名はIKOU(イコウ)、会社名はHaluで、違ってややこしいのですが、実は、ハルというのは息子の名前です。
息子の成長とともに現れるであろうさまざまな課題を解決したいという思いで、この社名を最初につけました。
弊社には、アパレルや消費財など、大企業でモノづくりに携わってきたけれど、障害のある子どもが生まれて一時的に仕事を離れていたメンバーも複数います。

メンバーは全国に散らばっており、完全オンラインで働いています。
一般的に、子育てをしていると急な発熱などいろんなハードルがあると思いますが、障害のあるこどもを育てる場合、リハビリや入院などがあり、より働きづらいです。
これから労働力が減っていくのに、能力やモチベーションがすごく高くても働けないのはすごくもったいないので、障害児を育てながら働く事例を作っていきたいと考えています。
当事者ネットワークを活かし、障害児を含む子育て中の家族がプロジェクトに常に参加してくれるので、タイムリーに率直なフィードバックを得られるのが強みです。
小さい子どものいる家族の課題を解決するポータブルチェア

松本 私たちがこれまで作ってきたプロダクトをご紹介します。

こちらは、私たちのメインプロダクトであるIKOU ポータブルチェアです。
2022年にグッドデザイン賞を受賞し、今年度のACCのデザイン部門でもブロンズを受賞しました。
先ほど石川さんがおっしゃっていた波の恩恵を、私たちも受けていると感じています。
このプロダクトは、まさに私自身の課題から生まれました。

脳性麻痺という障害のあるこどもは、自分で自分の体を支えられないので、レストランなどにあるような、一般的なキッズチェアには座れません。
生後6か月頃までの赤ちゃんは、自分で座れず、倒れることがありますよね。
その状態が、大きくなっても続く感じで、スライドにあるような専用の福祉機器の椅子を使います。
すごくがっしりと体を支えてくれるので、家で使う分には非常に機能するのですが、すごく大きくて20kgくらいあるので、これを持って出かけるのは難しいです。
結果的に、行きたい場所ではなく、車椅子やベビーカー、バギーなどで行ける場所を選ばざるを得ないという課題があることに気づきました。
IKOU ポータブルチェアは、スライドの下の写真のようにコンパクトに折りたたんで持ち運びができますし、障害のある子どもでも座れる、姿勢をサポートする機能があります。

これがあれば、外出先での座る場所の確保を気にせず、行ける場所ではなく行きたい場所に出かけられるようになります。
行きたい場所ではなく行ける場所にしか行けないというのが、障害のある人を街であまり見かけない理由の一つだと思います。
ですので、交流を生み出すこともこのプロダクトの目的の一つです。
ただ、外出先での座る場所の確保というのは、障害児だけではなく、小さい子どものいる家族の共通課題です。
IKOU ポータブルチェアは障害児専用ではなく、全ての子どもを対象にすることでマーケットを拡張し、オーダーメイドではなく、金型を作って量産することで販売価格を下げています。

従来の福祉機器はオーダーメイドで高額なため、国や自治体からの補助金を利用して購入しますが、、IKOUポータブルチェアは障害児も使える一般のキッズチェアとして販売しているので、誰でも、欲しい時にオンラインで買えます。
このように、新しいマーケットを開拓することに取り組んでいます。
実際に使っていただいた方からは、「障害のある娘と一緒に座って外食ができたことが本当に嬉しかった」というような内容の、直筆のお手紙をよく頂きます。

この椅子があることで、障害のあるなしにかかわらず、小さいこどものいる家族はみんなお出かけしやすくなって多様性が可視化された状態を目指しています。

2025年1月末時点で、全国93カ所に導入していただいています。

バンテリンドームナゴヤ、Jリーグのサンフレッチェ広島、Bリーグのアルバルク東京などスポーツチームやスタジアム、飲食店などでの活用が進んでおり、阪急電鉄車内でも導入いただいていてます。
子どもが訪れるあらゆる場所に導入ポテンシャルがありますし、ポータビリティや姿勢サポート機能で競合優位性があるので、海外展開も今後考えたいと思っています。

(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成