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ICC KYOTO 2025 スタートアップ・カタパルトに登壇した、amu 加藤 広大さんのプレゼンテーション動画【廃漁網のアップサイクルで、デザインもストーリーも同時に届く生地素材を作る「amu」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
▶【速報】生産加工の“かくれフードロス”をアップサイクルで解決する「ASTRAFOOD PLAN」がスタートアップ・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 1A
STARTUP CATAPULT スタートアップの登竜門
Sponsored by EVeM
加藤 広大
amu
代表取締役CEO
公式HP | 公式X① | 公式X②
大学在学中に株式会社Gaiaxで地域体験プラットフォーム「TABICA」立ち上げに参画。当時最年少で株式会社サイバーエージェントに入社し、AbemaTVの番組プロデューサーとしてチャンネル優秀賞を獲得。2019年に宮城県気仙沼へ移住し、廃漁網のアップサイクルに関心を持ち事業検証を開始。2023年5月、廃漁具を回収・再生するリサイクル素材ブランド「amuca®」を展開するamu株式会社を設立。漁具の回収から素材開発・製品化まで一貫して行い、地域資源の価値向上と海洋ごみ削減に取り組む。2024年には東洋経済「すごいベンチャー100」に選出、2025年には米誌Forbes「30 Under 30 Asia 2025」にてアジアを代表する30歳未満の若手起業家の一人に選ばれる。
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加藤 広大さん よろしくお願いします、amu株式会社の加藤 広大と申します。

気仙沼を拠点に漁具の再資源化に取り組むスタートアップ
私たちamuは、宮城県の気仙沼市でスタートしたスタートアップです。

何をしているかと申し上げますと、これです。

漁師が使い終えた廃棄漁具をアップサイクルして素材にする、そんなスタートアップです。
居酒屋で知った遠洋延縄漁業の世界
「なぜこんなことをしているの?」と、非常に多くの方からご質問をいただきます。
きっかけは、 気仙沼の居酒屋で出会った小松船頭という、遠洋延縄(はえなわ)漁業を50年されている方とお話ししたことです。

「遠洋延縄漁って、こんな漁なんだ」「こうやって世界を一周してマグロを追いかけるんだ」「漁師って、なんて面白いんだ」と思い、そのストーリーを誰かに伝えたいと思ったのがきっかけでした。
▶遠洋まぐろ延縄漁法(宮城県北部鰹鮪漁業組合)
それを伝えるためにも、彼らが使った、荒波に揉まれ、マグロを追いかけ、世界を本当に一周してきた漁具が、 燃やされて灰になって埋められるだけというのはもったいないと思い、この事業をスタートしました。

大量の漁具が海洋プラスチックごみに
何か事業にならないかと検証を進めていったところ、新しい事実も見えてきました。
「海洋プラスチックごみ問題」です。

実は、国内に漂着する海洋プラスチックごみの60%弱が漁業関連のごみだというレポートを環境省が出しています。
▶海洋ごみをめぐる最近の動向(環境省 平成30年9月)

海に流れた漁具は、いわゆる「ゴーストギア」と呼ばれる、海洋生物たちの命を奪ってしまう問題にもつながっています。
▶深刻な海洋プラスチック問題の原因「ゴーストギア」を無くそう!(WWFジャパン)

使い終えた漁具の行き場がない
ただ、ここで一つ疑問があります。
これは漁師が悪いのか。

私たちがさまざまな現場で多くの漁師と向き合って得た結論として、これはシンプルにシステムエラーだと思っています。

つまり、 今までは漁具を産業廃棄物として処理する以外の方法がありませんでした。それこそが問題なのではないかと思っています。
であれば作ってしまおうというのがスタートアップができることではないかと、私たちは思っています。
漁業の持続のために自分たちができることは?
そして、昨今海水温が上昇して魚が獲れなくなったり、担い手不足だったりと、いろいろな問題が漁師を取り巻いています。
何か、彼らにとってポジティブなことができないかなと思っています。
なぜそう思うのかともよく聞かれますが、それはかなりシンプルです。
美味い魚をもっともっと食べ続けたいという、ただそれだけです。

漁師はいなくなってほしくないし、漁業はこれからも続いていってほしい、そのために僕たちができることは何だろうと必死に考えた結果、産業廃棄物だった廃漁網を原料として漁師から買い取るところから事業をスタートさせました。

このように現場にコミットし、汗臭く、泥臭く活動をしています。

設立して2年で宮城の気仙沼を飛び出し、全国の漁港を回って漁具の回収をしておりました。

回収した廃漁具から作る素材ブランド「amuca」
回収した漁具で、amucaという素材ブランドを作っております。

特徴は、3つあります。
1つ目、石油由来の素材と同等の価格です。
能力、スペックも同じです。
2つ目、高い環境、社会貢献性が内包されています。
3つ目、抜群のトレーサビリティを誇っています。
廃漁具から商品になるまでの思いを語るブランドタグ
抜群のトレーサビリティについて、お話しさせてください。
こちらはビジネスモデルです。

漁師から漁具を回収し、一次処理し、リサイクルし、素材を製造して、ブランディングし、ブランドやメーカーに直接販売するという、一気通貫モデルが特徴です。
だからこそ、先ほど申し上げたコストメリットも出せますし、バリューチェーンの透明性も抜群です。
そして、何より、ストーリーのチェーンも切れていません。
だからこそ、私たちの事業ではブランドのタグが重要になります。

全ての商品にブランドタグ(amuca®︎タグ)を用意しています。

いつ、どこの誰から、何を回収し、どのように素材にしたかのデータが全てあるので、ストーリーテリングをしながら商品を届けることができるのです。
私たちスタッフが作った素人仕事で大変恐縮ではありますが、皆様のお手元にあるしおりも、端材で作ったものをプレゼントさせていただきました。
▶︎編集注:審査員席にはブランドタグのついたしおりが配布されました。
柄に意味も込められているので、ぜひ、それを感じとっていただければと思っています。
ファブリック生地を販売開始
今年(2025年)の4月から、やっとamucaのファブリック生地(amuca® Fabric)の販売を試験的にリリースすることができました。

▶廃漁網の回収から製品化まで一貫して可視化したリサイクル生地「amuca® Fabric」を本格販売開始
おかげさまで、かなり良いスタートダッシュが切れています。
トラクションですが、THE NORTH FACE、HELLY HANSENのブランドをお持ちのゴールドウインとの協業がスタートしています。

東北で最大級の水族館である仙台うみの杜水族館の10周年のユニフォームに私たちの生地を採用いただいたり、大阪・関西万博でURBAN RESEARCHとセットアップを開発したりしました。

▶漁網から新ユニフォーム。廃漁網由来生地が仙台うみの杜水族館の新ユニフォームに初採用(PR TIMES)

▶廃漁網由来生地がアーバンリサーチの製品に採用。URBAN RESEARCH EXPO2025 STOREで限定販売(PR TIMES)
素材ブランドなのでto Bがメインですが、私たちの考えややりたいことを消費者にも伝えていきたいため、Makuakeでクラウドファンディングにも挑戦しました。

▶大海原を旅した漁網があなたの相棒に。廃漁網を再生したコレクションを、気仙沼から。(Makuake)
ファッションやアパレルで、目標金額1,000万円はなかなかに高い金額ですが、初日で500万円を達成し、今67%の達成率(2025年9月時点)なので、残り1カ月弱をしっかりと走り切りたいと思っているところです(※目標金額を達成して終了)。
「環境によい」だけでは売れない
結論、言いたいことは「環境によい」だけでは売れないということです。


右脳に語りかけるデザインにしっかり向き合ったのか、その上で、購入の意思決定に至る、左脳で深めるストーリーをセットで届けられているのかが、これからのリサイクル素材に求められることではないかと思っています。

これをしていないから、リサイクル材は高いけれど売れないという認識になってしまっているのだと思います。
僕たちは、それをぶち壊しにいきます。
回収場所は海外へと拡大
そして、戦い抜いた先の市場は、かなりのブルーオーシャンだと思っています。

先ほど申し上げたように、私たちは石油由来の素材と同じ価格で提供できます。
つまり、ナイロン素材が使われている業界全てに、僕たちの素材をインストールすることができるのです。
私たちがいかに漁具を回収できるかが、私たちの売上の天井になりますので、回収に力を入れています。
日本国内での回収をしていますが、先日、中国にも行ってきました。

日本とは数百倍も規模が違い、漁法も新しいので、そのストーリーがとても面白かったです。
海外に積極的に飛び出していきますし、 中国だけではなく、インドネシア、マレーシア、ベトナムの調査もして、今回収を進めています。

私たちの挑戦は、「いいことは儲からない」という既成概念をぶっ壊すことです。

いいことをしてガッツリ稼いで、全員で幸せになることを目指しています。
いらないものはない世界をつくる
最後に、私たちのビジョンです。

「いらないものはない世界」を実現するためには、漁具だけでなく、漁具以外の資源にも目を向ける必要があります。
だからこそ、私たちは漁具以外の素材にも新たな価値をつけていきたい。
そして、自分たち1社だけでなく、みんなで価値を生み出せるプラットフォームへと育てていきたいと考えています。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成


