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山岳遭難事故の減少に貢献するモバイルサービス「TREK TRACK」【F17C-TRT #1】

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博報堂アイ・スタジオ 川崎順平さんのプレゼンテーションをお届けします。山岳遭難事故の減少を目指すモバイルサービス「TREK TRACK」の仕組みや、位置情報を活用したアウトドア×テクノロジーの今後の展開についてお話し頂きました。

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017「カタパルト」IoT/ハードウェア特集 supported by Makuake プレゼンテーションの書き起こし記事です。ぜひ御覧ください。

本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」「カタパルト・グランプリ」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 6B
CATAPULT(カタパルト) -IoT/ハードウェア特集-
Supported by Makuake

川崎 順平
株式会社 博報堂アイ・スタジオ
クリエイティブテクノロジスト

研究開発職「フューチャークリエイトラボ」所属。VR・MR/人工知能/ブロックチェーンなど先端のデジタルテクノロジーを駆使した様々なインタラクティブコンテンツの企画・制作を手掛けながら、社会課題の解決を目的としたオリジナルプロダクトや新規事業の開発を行う。現在は山岳地帯における遭難安全対策事業「TREK TRACK」において事業の全体統括を担当。また、クリエイティブチーム「K-(ケーマイナス)」、「HACKist(ハックイスト)」に所属し、個人制作も行う。手掛けた制作は総務省オープンデータコンテスト最優秀賞、グッドデザイン賞2016、PRアワードグランプリ2016などを受賞。

山岳遭難事故の減少に貢献するIoTデバイス「TREK TRACK」の配信済み記事一覧

川崎順平氏(以下、川崎) 博報堂アイ・スタジオの川崎と申します。よろしくお願いします。

これからご紹介させていただくのは「TREK TRACK」という、テクノロジーでアウトドアライフスタイルに革新をもたらす事をビジョンとしたサービスです。

「TREK TRACK」を簡単にご説明させていただきます。

今は登山だけが対象になっていますが、様々な条件下での人の行動をデータに変えて、遭難や迷子といった社会課題の解決や、新しいサービスを生み出すための導線設計を生み出します。

人の動きに特化した新しいデジタルインフラを提供することを目指しております。

簡単に動画でご説明いたします。

インターネットが届かない環境でも使える

登山者の人はデバイスを持って歩くだけで、このように、トラッキングデータというのがどんどんたまっていきます。

このデバイスが数分に1回GPSの情報を取得して、クラウドのサーバーにあげていますので、本当に何も意識せず、いつもどおり山登りをしていただくだけで、安心と安全が手に入るというようになっております。

「TREK TRACK」の特徴はNo Internet環境の独自ネットワークを設置している点です。インターネットが届かない環境にネットワークをつくることによって、人のデータを集められるIoTデバイスを開発しました。

そして、収集したデータを活用しています。

「TREK TRACK」のIoTデバイス

「人の動き」のデータを集めるために使用するIoTデバイスですが、こういった小さい形のものになっております。

これは試作機の2号機目で、実際の製品では単四電池で2〜3日間連続稼働いたします。

電源を入れて持って帰っていただくだけで、そのまま充電をしなくても、数日分のGPS情報を自動的に取得して送信してくれます。

僕らが目指しているのは有事の際の早期救助です。例えば午後3時に遭難をした場合、家族がそれに気づくのはだいたい夜11時ぐらいです。

そこから通報が行われても、行政が動けるのは翌朝からになります。問題が発生してから救助がたどり着くまで、かなりの時間がかかります。

実際に救助となっても、山のどこにいるかが分からない場合、ローラー作戦的に探すかたちになりますので、僕らはこのデバイスの中にヘルプボタンというのを設けました。

実際にヘルプボタンを押すと、僕らの方で24時間365日システムが監視しておりますので、「この場所でこの人が救助ボタンを押しました」というかたちで早めに行政と連携して、早期救助という、今までされていなかったものを実現しようとしております。

遭難に対する早期救助が今まで行われていないということから、テクノロジーを用いた早期救助を実現するということと、それが当たり前になるようなデジタルインフラを整えていければと思っております。

TREK TRACKの通信方法

TREK TRACKのサービスを実現するためインターネット通信ではなく、LPWA(LowPowerWideArea)という無線技術を導入しています。

この、LPWAは、低電力の長距離無線通信で、だいたい数キロメートルから数十キロメートルぐらい届く無線になっております。

それに加えて、通信コストもデバイス自体のコストも、非常に安くできるメリットがあります。

デメリットとしては、通信回線がすごく細いため、軽いデータしか送れないという問題があります。

でも、僕らが扱うのは人のGPSのコードデータだけになりますので、この問題もクリアして、現在、実証実験を終えたところまでいっております。

TREK TRACKの管理画面

次にこちらが、本人やご家族、行政の人が見る管理画面です。

Webのビジュアライズというかたちで、Webにアクセスするだけで、誰がどこにいるかというのを、3Dの地形データでわかりやすく見ることができるものになっています。

出所:TREK TRAK Website

WebVisualizeのデモ版は実際にこちらからご覧いただけます。

この「TREK TRACK」の使い方ですが、非常に簡単にしております。

Webで申し込みをすると自宅のポストに配送され、あとはもうデバイスを持って山に登り、下山したら返送封筒に入れてポストで返却というかたちになっております。

山岳遭難者の増加問題を解決する

川崎 こちらは日本での山岳遭難者数のグラフです。

山岳遭難者の数は10年間ずっと増加傾向にありますが、実際には20年前ぐらいからずっと増え続けております。

それに対する策というのが「遭難をなるべくしないように呼びかける」という、アナログなものがほとんどです。

実際に遭難をした場合、通報されてから救助されるまでに12時間ぐらいかかるというインターバルの長さとか、救助にかかる費用を誰が負担するかという問題が、解決されていないのが現状です。

この課題に取り組むのが「TREK TRACK」なのです。

実証実験を経てサービスインへ

TREK TRACKは、2016年と今年(2017年)の1月に、山岳での実証実験(電波強度や耐久性など)をずっと重ねております。

冬のマイナス20度になる雪の所でも大丈夫ですし、雪崩などを想定して、雪の3メートル下に入れて実際に電波が届くかを試したところ、無事に電波が届くというところまで計測できています。

実際に山の中に1個だけ置く基地局で、これを置くだけで、だいたい半径10キロメートルぐらいの範囲に独自のネットワークを作ることができます。

これも試作機ですので、実際にはこれの4分の1ぐらいの大きさで、モバイルバッテリーでも十分稼働するようなものになります。

仮に救助に行く場合は、救助に行く人がこの小さいデバイスを持つことで、動く基地局となり、仮に電波が届かない場所であっても、発見が早くなるというメリットがあります。

今までは実証実験でしたが、つい先日、サービスインの日程も決めました。

二つに分かれていますが、一つ目が2017年の8月18日です。まずは山梨県北杜市の瑞牆山から夏の山の登山者に向けて提供を行います。

二つ目は2018年の1月11日です。新潟県のかぐらスキー場という、バックカントリーが盛んなスキー場での提供を行うかたちになっております。

一番初めは、デバイスの製造台数がどうしても限られているので、レンタルというかたちで、なるべく安く広く使っていただくのを想定しております。

今後の展開:ウェアラブル化

来年(2018年)以降の第2弾では、アウトドアウェアに埋め込んだ、ウェアラブルのアウトドアギアというかたちでの提供を目指しております。

2018年にはもう一つ、先ほどの、こちらの基地局の携帯性をもっと上げて、基地局自体を登山者に持っていただくことを実現したいです。

登山者同士で電波を送って助け合う、シェアリングエコノミー的な考え方を、この「TREK TRACK」で持ち込んでいきたいと思っています。

こういったかたちで、僕らの「TREK TRACK」は、今のところアウトドア×テクノロジーという領域で広めていくというところがあるのですが、当然この技術は他の分野にも応用ができると思っております。

もしこの位置情報を使ったIoTで何かをされたいという方がいましたら、ぜひ、お気軽にお声がけいただければと思います。

以上です。ありがとうございました。

博報堂アイ・スタジオ川崎 順平さんのプレゼンテーション動画をぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/平井 裕

【編集部コメント】

位置情報を使ったIoTには様々な可能性がありますね。TREK TRACKが起点となってCo-Creationが起きそうです。(横井)

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