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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、見事3位に入賞した、トラベルドクター 伊藤 玲哉さんのプレゼンテーション動画【「トラベルドクター」は病気で諦めていた旅行を叶え、最期まで自分らしく生きる環境を作る】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。
▶【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム
伊藤 玲哉
トラベルドクター株式会社
代表取締役 / 医師
医師・旅行医。これまで医師として、多くの患者さんの“最期の瞬間”に立ち会う。ある終末期患者さんの「旅行へ行きたい」という言葉をきっかけに「 医療×旅行=旅行医 」をめざす。 1人でも多くの願いを叶えるため、病気を抱えていても安心して旅行ができる「医師のつくる旅行サポート会社」の設立を決意。 「旅行へ行きたい」を通じて「今を生きたい」人を応援します。
昭和大学医学部医学科卒業。グロービス経営大学院 2019期生。経済産業省/JETRO主催「始動 Next Innovator 2019 」にて米国シリコンバレー派遣に選抜。東京都コンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY2019」にて1803件の応募から最優秀賞を受賞。
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伊藤 玲哉さん(以下、伊藤) こんにちは。医師の伊藤玲哉です。
私がお話しするテーマは、病気で諦めていた「旅行」を叶える、医師の作る旅行サポート会社トラベルドクター(株式会社)です。
よろしくお願いします。
年間100万人が医療機関で最期を迎える
早速ですが、こちらの写真は何かわかりますか?
こちらは、病室の天井です。
この写真が意味するもの 、それは、年間100万人もの人が人生の最期に見ている景色です。
現在、日本では年間140万人の方が亡くなっており、そのうちの75%が医療機関で最期を迎えています。
つまり、この写真の景色は、皆さんが将来75%の確率で人生の最期に見るかもしれない、ということです。
なんだか寂しくありませんか?
私はこれまで、医師として多くの方の最期の瞬間に立ち会ってきました。
ある日、ひとりの患者さんに、このように言われました。
「旅行へ行きたい」
この方の最期の願いをどうにかして叶えたいと考えましたが、残念ながらその願いを叶えられないまま、この方は病室で最期を迎えました。
医療従事者として、もっと他に何かできたのではないか、これが最後のチャンスとわかっていながらも「また今度にしましょうね」と伝えた時の患者さんの寂しそうな顔が今でも忘れられません。
病気を抱えて旅行するのは難しい
皆さんに、もう1つ質問です。
もしも、あと100日しか生きることができないとしたら、皆さんは最期に何をしたいですか?
「美味しいものを食べる」、「温泉に入る」、「思い出の場所に行く」、「お世話になった人に会いに行く」、そして「家族や大切な人と大切な時間を過ごす」など、きっと一人ひとりに特別な思いがあると思います。
もし私自身の場合であれば、先ほどの患者さんのように旅行がしたいです。
しかし実際には、病気を抱えながら旅行ができている方はほぼいない、というのが現状です。
そこで私は、旅行と医療の両方の知識を持った旅行医として、患者さんが病気だからと諦めていた旅行を叶えます。
「何かあったら危ない」で旅行を諦める背景とは
そもそも、なぜ患者さんは旅行ができないのでしょうか?
患者さんは、様々な不安を抱えています。
「どのような準備をしたらよいのだろか」、「誰かに迷惑をかけてしまうのではないか」、「もし途中で体調が悪くなったらどうしよう」といった不安です。
また、旅行をサポートする側も不安があります。
医療従事者は旅行のことがわからず、旅行会社や航空会社は医療のことがわかりません。
例えば「Airway(エアウェイ)」という言葉は、医療では気道、航空会社では航空路を指し、同じ言葉でも全く別の意味を持ってしまいます。
こちらはあくまで一例ではありますが、異業界間の連携は非常に複雑で、なかなか上手くいっていないというのが現状です。
結果として、「何かあったら危ないのでやめておきましょう」となってしまい、患者さんは誰にも相談をすることができません。
状態に合わせた安全な旅行プランを作成
こうして時間だけが過ぎていき、準備だけで時間切れとなってしまうわけです。
この「何かあったらどうしよう」の“何か”を具体的にして解決する、それが旅行医の役割です。
旅行前にはご本人や家族から叶えたい願いや医療面での不安をヒアリングし、その内容をもとに旅行医療チームによるカンファレンスを実施します。
さらに、旅行会社や航空会社、宿泊施設とも連携をすることによって、一人ひとりの状態に合わせた安全な旅行プランを作成します。
また必要に応じて、医師や看護師などが旅行に同行し、旅行中も医療を継続します。
さらには主治医の先生との連携だけでなく、旅行先の医療機関とも事前に情報共有することで、もし途中で体調が悪くなった場合にもスムーズな医療連携を可能にします。
これらの方法で旅行中の医療の空白を埋めることにより、病気を理由に諦めていた旅行を医療の力で支えます。
業界を超えた繋がりを増やし会社を設立
私はこれまで、複数のボランティアに参加し、経験を積んできました。
しかし、ひとりでは願いを叶えられる患者さんの人数に限界がありました。
50年間、週にひとりの患者さんの旅行を実現し続けたとしても、2,500人です。
日本では1日に4,000人が亡くなっており、自分ひとりの力では全く及びません。
そこで、まずは仕組みを作るべきだと考えました。
私は、大学病院を退職し医師としてのキャリアを捨て、経営学を学びながら仕組み作りを考えてきました。
また、全国の医療従事者だけでなく、旅行会社や航空会社、保険会社など、業界を超えた繋がりを増やしてきました。
患者さんの旅行を叶えることができなかったあの日から約6年、2020年12月、ついにトラベルドクター株式会社を設立しました。
まず第一歩として、先ほどお話しした、諦めていた旅行を叶える「旅叶(たびかな)プロジェクト」を実行しています。
半年間をかけて旅行プロジェクトを実行していく中で、「病気を抱えていても旅行ができる」ということを多くの人に知ってもらいたい、そういう思いでスタートしています。
プロジェクト中は、患者さんから料金を頂かず、資金はCAMPFIREのクラウドファンディング『病気で諦めていた“旅行”を叶える!』医療で旅行を叶えたい!~たびかな~で調達をしました。
旅行を通じて最期まで自分らしく
最後に、なぜ旅行なのかについて、お話ししたいと思います。
私にとって、旅行はあくまで手段であり、本当に大事なことは、その中での体験だと思っています。
なぜなら、人は大切なものを失って初めて、その本当の大切さに気づく生きものだからです。
もう誰にも後悔をしてほしくありません。
諦めていた旅行を叶えることによって、普段、家では言えないような「いつもありがとう」、「あの時はごめんね」といった言葉を自然に伝えることができます。
旅行を通じて「大変なこともあったけれど、いい人生だな」と感じることができれば、最期まで自分らしく生き続けることができます。
「旅行をしたい」という言葉には、「今を生きたい」── そういう願いが込められていると思います。
私は、病気で旅行を諦めていた全ての人が、安心安全に旅行ができる環境作りを目指し、医師人生をかけて実践していきます。
今を生きるあなたへ、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/中村 瑠李子
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