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「モバイル動画メディア/広告はどのように進化するのか?」【F17-10C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その4)は、モバイルだからこその動画コンテンツの「フォーマット」は何か?ということを議論しました。Candee新井さんによるスマホゲーム市場との比較で見るモバイル動画市場の解説が興味深いです。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
▶「モバイル動画メディア/広告はどのように進化するのか?」の配信記事一覧
明石 動画の再生時間が2秒、3秒というのでは、バナーと何も変わらないと僕は思っています。
3秒だけ見られた動画の再生回数1回というのは、バナーと何が異なるのかという問いに対して、真摯に答えていかないと、動画という産業自体が嘘っぽいものになってしまうと私は思っています。
ですので、今後は再生された秒数が、KPIの主役になるのではないかと思っています。
Facebookなども今はミッドロール動画という、動画広告の対応など、いわゆる視聴秒数が長いものをアルゴリズムで上に出すようにしましょう、というような変化がプラットフォームの側でも起きています。
私は今年(2017年)はこれを押していく、という決意で挙手をしました。
再生回数よりもエンゲージメントで勝負すべき
高松 ちなみにですが、ファイブ社もそうだと思いますし、弊社もそうですが、広告側は既に秒数での提示をしています。
100%視聴率がどのくらい、75%、50%、25%と全部出しますよね?
ですので、問題はコンテンツ側がこれまでそういうことを言ってこなかったことだと思います。
坂本 ここでカウンターが!
高松 それで企業価値(時価総額)などを上げたりしているので。
再生回数なんて買えるだろうと。
明石 もっと言っちゃえ~(笑)。
ファイブの松本さんにも話を伺いたいのですが、YouTubeなどでも広告側はそこを非常に真摯にやっているので、6秒のYouTubeバンパー広告を出して、いわゆるスキップできない長めの広告は止め始めています。
秒数が大事だという観点については、そちら側からはどのように捉えられていますか?
松本 そうですね、秒数が大事と言われると、広告側からは違和感があります。
例えば、AppLovin社がやられているような動画リワード広告を取り上げると、あれは基本的にユーザーがゲーム内の通貨を欲しいから、ゲーム内通貨を得るために動画を最後まで見るというモデルです。
それと比べると我々はアウトストリームでやっており、どう頑張っても勝てないというところが正直あります。
ですので、再生秒数などをKPIに置いてしまうと、例えば、特にリワードもなく、全画面表示しても視聴を完了するまで消せないというようなフォーマット、つまりユーザーにとってあまり好ましくないフォーマットが出てきてしまいそうだなと思います。
先ほど高松さんがおっしゃったような、やはりブランドリフトの調査というものでしか計れないのではないでしょうか。
高松 ブランドリフト = コンテンツ側ですとエンゲージメント指数で、このエンゲージメント指数を高らかに言う人がもっと出てこないと、コンテンツ側は危ういと思います。
私自身も今後もっと積極的に発言していこうと思っていますが、お金で解決されている感じがして、誰かがどうにかしないと危ないですよ、本当にそう思います。
坂本 これまで挙がった点は、いわゆるPC動画でも近いことが言える、あまりプラットフォームがモバイルだからということには関係がなかったと思うのですが、今度はモバイルだからこそという方向へ話題を移していきたいと思います。
モバイルだからこそのフォーマットとは?
坂本 新井さんにまずお伺いしたいのですが、モバイルだからこそ、他のフォーマットと違って、コンテンツにこういうところが求められるよね、ウケるよね、逆にこれは例えばテレビなどの他の媒体では受け入れられているけれど、モバイルだとだめだよねなど、そういった違いはどのようなところにありますか?
新井 まずひとつ大前提として、今回の広告という話でいうと率直に言って、広告は「ウザい」という話が大前提にあると思います。
新井 私が意識していることは、対象としているデバイスとの距離感です。
テレビとテレビを見ている人の距離は例えば2メートル、そこそこの距離感があります。
PCだと恐らく1メートル弱、サイズも大きいので少し離れています。
スマホに関して言えば、至近距離です。
結局、自分の体に近づけば近づくほど、「ウザい」ものに対する嫌悪感というのが大きくなると思っており、ウェアラブルになればなるほど、それこそMR(Mixed Reality / 複合現実)などになってくると、どんどん「ウザい」ものを許せなくなると思っています。
そうなると、テレビだったら許容されたものがどんどん許容されなくなるだろうと、何となくですが私は広告についてそのように考えています。
「ウザい」広告をウザくなくするためには、結果的にエンゲージメントが高いもの、コンテンツとして楽しんでもらえるものといったコミュニケーションの仕方を目指していかないと、ウザいものを1秒で排除できてしまうデバイスがほとんどである以上、しんどくなるだろうなということは意識しています。
これが1点目です。
2点目は、スライドを1枚持ってきているのですが、スマホのゲームは素敵なイノベーションが起こっていたのではないかなと思います。
まさにデバイスの変化とともにユーザーが変化していった事例です。
モバイル動画は未だ「新しい体験だがチープ」
スマホも最初は、移植もののゲームばかりが登場し、例えばプレステのゲームができるようになりましたとか、そういう世界だったと思います。
しかし、スマホでそのような複雑な操作はしたくないですし、タッチパネルなんだからそれらしいものにしてよ、ということで大して流行りませんでした。
その結果何が起こったかというと、個人の側から、スマホってこうじゃない?ということで新しい開発が行われるようになったのです。
ゲームとしてはチープなのだけれど、体験としては新しいというような。
このような変遷があり、最終的には、いわゆるスマホらしい遊び方というのを、プロのクリエーターたちがひたすら作り込んだ結果、爆発的にマーケットが大きくなったというストーリーがあったと思います。
ではエンターテイメント系全般に言えることは何かというと、映像というのはまさに一発目というのは、いわゆる映画とかテレビでやっているコンテンツの移植もの、具体的にはNetflix、Hulu、GYAOなどのサービスが一気に流行りました。
2番目に、ネットらしいもの、スマホらしいものって、こうじゃないの?と個人が新しいコンテンツフォーマットを開発していきました。
これが映像でいうといわゆるYouTuberであったりします。
ネットってこういうことでいんじゃない?と。
チープだけど新しい、というところがあると思います。
映像はまだこのフェーズにあると考えています。
我々の信じている仮説でいえば、次にやってくるのはスマホらしいクリエィティブさであり、今後はスマホらしい新しい映像体験というのをひたすら開発し続けないといけないと思っています。
まだ「0から1」をやり続けてようとしている会社が日本には圧倒的に少ないので、我々はぜひこのポジションを取りたいと思っており、どちらかというと、今は制作に重きを置いているところです。
坂本 なるほど、言ってみれば、最初に「糸通し」みたいなのが流行ったあとに、パズドラ(パズル&ドラゴン)が出てきて、モンスト(モンスターストライク)が出てきて、その後コナミやバンナム(バンダイナムコ)など、ああいうところが後から入ってきたと。
そのファーストムーバーのようなところを目指していると。
新井 そうですね。
新しい発明で時代の要請に応える必要がある
明石 同意見です。
弊社はニュースの動画をやっていますが、皆、結局スマートフォンのタイムラインで見ているわけです。
そうすると音を出して見ている人が、実は10%もいません。
テレビの映像は音が出ていることを前提に編集しているので、例えばCMなら、(ゲーム機の)「PlayStation」にしても最初に独自の音が出て始まるようになっていますし、柔軟剤であれば「ファーファ」とか、音で引き付けて見せるという手法を取っています。
しかし、スマートフォンではそれができないという前提で、音を出さずに引き付けねばならないと。
極めてリッチな紙芝居のような話なのですが、そういうものをやらなくてはなりません。
これをやるにあたって、印象に残っている言葉があり、社員に対して話す時にもよく引用するのですが、映画プロデューサーの川村元気さんという方の言葉なんですけど。
川村元気さんは『君の名は』や『モテキ』などのヒット映画のプロデューサーです。そんな人が、「僕はお客様に1800円払って見てもらうものを作るために、時代の要請に応えるクリエイティブをやっているんだ」とおっしゃっています。
とてもいい言葉だと思っていまして、時代の要請に応えるというのは、ユーザーひとり一人の要請に応えるのとは微妙に文脈が違っています。
昨日 別のセッションでも同じことを話したので少し重複してしまいますが、どうしても伝えたいので、繰り返したいと思います。
私はカレーがとても好きでして、”東京カレー番長”というカレー作りで有名な人がいるのですが、その人が飴色玉ねぎを10分で作る方法を編み出しましたということで、動画を上げているんです。
1分くらいの早回しの動画で見られると思いきや、尺を見ると11分あって(笑)。
坂本 11分間、玉ねぎを炒めていると。
明石 そうそう、リアルタイムで、今弱火にします・・・とか(笑)。
これは、普段飴色玉ねぎを1時間かけて作っている人からすると本当にイノベーションなのですが、今の私の料理を作るスタイルからすると、全然合っていないんです。
要するに、時代の要請に応えていない動画です。
早回しの動画というのは、テイストメイド(Tastemade)というアメリカの動画の会社が最初に作ったのですが、ハリウッドにある会社で、もともとは非常に高品質なカメラで、「ヘイ、今から飴色玉ねぎを作るよ!」というような動画を作っていたのです。
しかし、スマートフォン向けの動画を作成するにあたって、著しくスタイルを変えてきたんですね。
はっきり言って、料理を作る主婦などにユーザーインタビューをして、どういう料理動画がいいですかと聞いたら、恐らく「レシピが分かり易い」とか「材料がはっきり分かる」、「いい先生が教えてくれる」というような、そういう意見しか出てこないと思うんです。
それはまさに、自動車ができる前にフォードがユーザーにインタビューしたら、返ってきた答えは「もっと速く走る馬車が欲しい」だったという話のようなもので、それでは自動車は生まれないんです。
自動車を作るということは、時代の要請に応える、つまりユーザーが何をしているかを俯瞰的に捉え、発明していくというようなマインドが必要であり、我々動画の分野でも同じことが強く求められていると思っています。
そういうところに真摯に向き合っている会社でありたいと思っていますし、新井さんの会社もそうだと思いますが、そういう会社がもっと動画業界に増えない限り、おもしろいコンテンツが増えていかないだろうと思っています。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵
続きは 「最初の3秒で魅せろ」スマホユーザーの心をつかむ動画とは? をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その5)では、ファイブ松本さんを中心に、ユーザーを惹きつけるモバイル動画コンテンツについて技術的な側面から議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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