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7.どうすれば海外でスケールし、世界ブランドを創ることができるのか?

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「日本から世界ブランドを創りあげるには?」9回シリーズ(その7)は会場からの質問で、ベンチャーの海外展開への難しさについて、登壇者が回答します。ブランド作りの肝を語る、ファクトリエ山田さんのコメントも必見です。是非ご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCカンファレンス FUKUOKA 2018のダイヤモンド・スポンサーとして、Motivation Cloud (Link and Motivation Inc.) 様に本セッションをサポート頂きました。

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【登壇者情報】
2018年2月20日・21日・22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 6E
日本から世界ブランドを創り上げるには?
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)

(スピーカー)
朝霧 重治
株式会社協同商事/コエドブルワリー
代表取締役 兼 CEO

岩佐 大輝
株式会社GRA
代表取締役CEO

矢島 里佳
株式会社和える
代表取締役

山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社
代表取締役 / ファクトリエ 代表

(モデレーター)
各務 亮
株式会社 電通
プロデューサー

「日本から世界ブランドを創りあげるには?」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.日本から世界ブランドを目指す「コエドビール」「ミガキイチゴ」の挑戦

1つ前の記事
6.海外進出だけがグローバルブランド化ではない

本編

質問者1 ドリームインキュベータの宮宗と申します。お話ありがとうございました。

先ほど岩佐さんがシンガポールのいちごのシェアについて、アメリカが50%、韓国が30%、日本が少しということでした。

我々も色々なベンチャーさんと話して問題だと思っているところです。

当然ニッチでとても良いものを手がけるということもありますし、インバウンドということもありますが、海外の方とお仕事をしているとすごく残念なのは、日本の場合、伝統的な大企業さん以外規模化が難しいということです。

皆さん突破されて時間軸ができてくれば、いずれ規模化はすると思いますが、こういったものがあればベンチャーとしても規模化が早いとか、経験から感じられているものがあればご教示ください。

答えにくい質問だと思いますが規模化は大事だと思っています。

ベンチャーはどうすれば海外でスケールできるか?

朝霧 ビールは一本を売ってもせいぜい200〜300円で、ラクジュアリーブランドや高価格帯の商品ではないので、規模化は必ず必要です。

だから実際はやはり規模でいっています。だから少し皆さんと背景が違うかもしれません。

写真左から 朝霧氏、岩佐氏、矢島氏

実はビールは日本の文化ではありません。

もともとはヨーロッパで文化となったものをアメリカ人が再解釈して、クラフトというとてもイノベイティブなものになり、再評価が世界中で進んでいます。

感覚としてはビールはラーメンだと思います。

もともと中国で誕生した中華そばが日本に来て、日本人が独自のイノベーションを繰り返して、世界にいったらラーメンはフロムジャパンだというふうになっています。

それにしてもたくさん作ってたくさん売るということをやらないと、ビジネスとして成立しないので、ビールについては例外かもしれませんね。

質問者1 朝霧さんのビジネスでいうと、たぶんディストリビューターの方とトップ交渉して、シェアをもらうことが規模化の鍵だと理解してもいいでしょうか。

朝霧 そうですね、ビールビジネスの場合、ディストリビューターサイドも一箱売ってもしょうがないので、きちんとしたスケールで商売を育てていこうというリスクを取ってもらわないといけません。

「売れるか売れないか分からないけれども、40フィートのコンテナで買うよ」というところからスタートできるかどうかが、パートナーシップを開始できるかどうかのポイントだったりします。

岩佐 私たちはハイエンドのいちごを出していますが、シェアを取っているアメリカや韓国もかなり類似しているものを、浸透価格戦略というか、そのような価格で出してきているので、いつのまにか日本の良さそうなところを模倣していくわけです。

伝統産業は少し違うかもしれませんが、これは山田さんにも聞きたかったところです。

ファッションや食でいうとハイエンドだけを取ろうとすると、やはりマーケットは限られたスケール化まではたどり着けません。

だからやはり最終的に日本も価格、つまり製造原価に思い切りテコ入れして、ミドルに降りていかないとスケール化できないのではないかというのが、最近の結論というか危機感です。

上に楔を打ってブランドを作る

山田 ブランドとして話をすると、必ず一度ハイエンドに行ってから降りなければいけないというのが鉄則です。

コムデギャルソンが何で稼いでいるのかといえばプレイのTシャツですね。

このように一度上には行ってインパクトをきちんとつけなければいけません。

上から下は行けますが、下から上はなかなか行けません。

ユニクロが今からラグジュアリーブランドになるのは多分無理だと思います。

だから、まずはそこにちゃんと楔を打つことです。

ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 / ファクトリエ 代表 山田 敏夫氏

また先ほど矢島さんが言ったことが、ヒントになるのではないかと思っています。

僕らはまだやりませんが、やはり家具の職人がこういう物を作りたいとか、きちんと自分たちに哲学があってそれが通えば、ファッションの場合はその横展開は結構できていくと思っています。

食も将来あるかもしれませんし、家具や陶磁器なども現代風にやっていくということもあるかもしれません。

横展開はしやすいし、上のマーケットだとしても横展開できるし、ちゃんと上に楔を打った上で一個降りるというのは結構重要なのかと思っています。

海外に関してはやはりイメージが大きいです。

僕たちは今アマンリゾートというところでやっていますが、アマンリゾートでマレーシアも、どこどこも、と広がっていったり、世の中は大きなところでそのようにつながっているので、この横展開は僕たちにちゃんと哲学さえあれば広がって行くのかなと思っています。

職人を育てながら面で規模化する

矢島 ご質問にお答えすると、規模の論理をどうするかですよね。

例えば、『こぼしにくい器』は2012年から2017年の5年間で、累計で4万枚以上お届けして(売れて)いる器です。2013年にグッドデザイン賞もいただきました。

すべて手仕事でありながら、4万枚以上の器を生み出せた秘密は、一つの工房ではなく日本全国の工房でお作りいただいているからなのです。

青森であれば津軽焼の土や釉薬(ゆうやく)、愛媛なら砥部焼の陶石と釉薬など、地域性を出しながら形状を同じものにして、こぼしにくい器シリーズということで47都道府県展開を目指している商品です。

先ほどのお話に近いと思いますが、一社でやろうではなくて、面で考えれば製造の規模は広げていけますし、なおかつこぼしにくい器シリーズ職人さん同士、同じ形を生みだすために、協力していただく事もあります。

「こぼしにくい器の形状は難しいよね。でもこの器を作り続けて腕が上がったんだ」という話で盛り上がってくださったり、職人さんたちが産地を超えて「こういう形状の道具でやるとうまくいくよ」と、職人さん同士で技術を教えあってくださいます。

なぜならそこで競争しても意味はなく、皆で日本の伝統を赤ちゃんや子どもたちに届けようというお仕事なのです。

そうすることで伝統産業界の規模の論理を、過剰な設備投資等なく、既存の設備でそれぞれができる範囲内で生み出していくという仕組みを作っています。

質問者1 ありがとうございます。とても参考になりました。

コミュニティや大企業との連携を活かす

各務 僕も伝統工芸や伝統文化の海外展開をやらせて頂いますが、一番のネックは流通コストの高さです。

非常に物語性と精神性の高い製品ゆえに、それを現地で販売しようとすると高くなります。

例えば5万円のお茶碗は、向こうに行くとだいたい2.5倍〜3倍の15万円になります。

それをしっかりと売り抜くためには向こうで相当な愛情を持ってそれをお伝えくださるパートナーが必要です。

商売的に見ると、それを海外においてやる必然性が持ちにくいというのが現状です。

伝統工芸品や文化性の高いものを海外でやると非常に流通費が高いのです。

株式会社 電通 プロデューサー 各務 亮氏

それであれば矢島さんのおっしゃるように日本に来てもらった方が経済合理性がよっぽど高いです。

日本の方が舞台が整っています。例えば京都であれば京都という舞台装置を使いながらプレゼンテーションできます。

それでも海外での展開を諦めたくはないと思っています。

例えば、japan handmade事業では定期的にミラノ、パリ、ニューヨークなどと海外展示会に行きます。そこでやっていることは人間関係の構築です。

先ほどのコミュニティと非常に近いと思いますが、そのようなものを熱狂的に愛してくださるアートコレクターやデザイナーさんは世界中でつながっています。

ミラノ、ニューヨーク、パリに行っても、そのような方達は世界中でつながっているので、その人たちのコミュニティで常に顔を覚えてもらうというか、ファミリーに入れてもらうというようなことをしています。

世界中の一定の層の人たちはコミュニティ感強いので、そこの人たちと常につながりを持ち続けていることには、しっかりとコストをかけてやっていくことが大事だと感じています。

また、工芸品や中小企業のお手伝いをさせて頂いて、生産能力の限定的なものを世界に持って行くときにオーダーはあるけれども応えられない、という課題も結構多いです。
いざ、まとまったスケールのオーダーが来た時に応えられない。ここはもどかしいです。

これは一朝一夕では変えられないので、少しづつ改善していくとして、同時に社会的にインパクトを産むために意識的に挑戦しているのが大企業との連携です。

パナソニックさんであったり、大企業と中小企業が連携することで、生産能力を上げたりインパクトをより作っていくという事業を生むことに挑戦しています。

(続)

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続きは 8.伝統産業は「匠の技×IT×英語」で世界に羽ばたく をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝

【編集部コメント】

都内では輸入食材店が増えていますが、案外商品の入れ替えがあります。消えたあの商品は単に売れなかったのか、それとも規模化に成功しなかったのだろうか……と考えてしまいます。(浅郷)

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