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日本全国で、地域活性や街づくり、産業振興に携わる登壇者による議論「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?(シーズン2) 」。全6回シリーズの(最終回)は、外出や観光が途絶えた2年間を経て、変化した価値観や、アフターコロナの地域活性について議論します。当事者たちが現在、目指しているものとは? 最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのTokyo Primeにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 7E
地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?(シーズン2)
Sponsored by Tokyo Prime
(スピーカー)
他力野 淳
バリューマネジメント株式会社
代表取締役
富山 浩樹
サツドラホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 CEO
中川 政七
株式会社 中川政七商店
代表取締役会長
山井 梨沙
株式会社スノーピーク
代表取締役社長
(モデレーター)
各務 亮
THE KYOTO
Editor in Chief & Creative Director
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最初の記事
1. 重要文化財、城下町など歴史的資源を活用した街づくりを進める「バリューマネジメント」
1つ前の記事
5 .「うちの地域は何もない」と絶望した人がいたら、そこに可能性はある
本編
各務 短期的には海外旅行が減るから国内観光客が増える、そしてその時に一過性でなくて観光もリピートにしていかないといけないというのが、今皆さんがおっしゃったことでした。
これからの観光の戦略性が見えたのですが、ではそういうお客様に提供すべき価値とは何か?を議論していきたいと思います。
「贅沢」の価値観が変わってきている
中川 それこそ、その土地にしかないものだと思います。
田舎に行くと、そこの旅館はいわゆる懐石っぽいものを出すじゃないですか。
それはたぶんお客さんは食べたくないんですよ。
それより、よく分からないけど漁師が七輪で焼いているあれを食べたいみたいな、そういうもののほうがいいことに気づければいいだけだと思うんです。
山井 そうですね。たぶん観光という価値観ではなくて、もっと暮らしや生活に近い価値観にシフトしていくような気がしています。
私は今年34歳という世代ですが、豪華絢爛なラグジュアリーみたいなところに、なんかあんまり自分が興味を持てないんです。
だったら今、中川さんが言ったように、地元の人の行きつけの定食屋で食べたいみたいな価値観は、すごくありますね。
富山 贅沢の価値観が変わっていると思うんです。
さっきの「キャンプ最強」の中にも含まれていると思うんです。
山井 ありがとうございます(笑)。
富山 「自然て贅沢だ」とか、「自然でこんなことができるなんて」というように、贅沢の価値観が変わっていると思います。
山井 本当にそうなんですよね。
正直、東京とかの地方集権化というのも、もう、ちょっと限界じゃないですか。
あれによって何が起きてしまったかというと、政府、企業、市町村、個人みたいな、すごく縦割りの組織になってしまっています。
それこそ、そこでのフラットな人間関係とかも、あまり東京に住んでいても築けないですし、地方のほうがやっぱり多様性がすごくあるじゃないですか。
個の集合体で、個のそれぞれが、それぞれの機能を果たしていくという、それこそ多様性だと思うのです。
中央集権化の組織的な暮らしや生活と、すごく多様的で有機的な暮らしを考えると、間違いなく未来の価値は後者にスポットが当たっていると思います。
うちでもローカルツーリズムのような体験開発をさせていただいていますが、それも「キャンプ最強」なんです(笑)。
神社の境内でテントを張ったり場所のしつらえをして、そこをベースに地域の農家さんが作ってくれた食事を食べたり、民謡を聴いたり、フィールドワークができるツアーですが、キャンプ最強な理由は、完全に撤収できることです。
原状復帰ができるのが最強で、私はそれこそ「住める」価値観というのも今後地方に作っていきたいなと思いますし、住めなくても週末に体験できる価値を広げていきたいと思いますね。
他力野 今のお話は、統治機構の限界じゃないですか。
やはり統治の論理だと思うんですよね。
その限界が来ているのと、一方で、東京はこのコロナで若干人口が揺れましたが、でもこの10年を見てもずっと増えているし、今のままでいくと未来も増えそうだというところが価値転換されるかどうかは、アフターコロナ、ポストコロナのひとつの見どころだと思うんですよね。
山井 そうですね。
他力野 一方、例えば自然がいいなとか、贅沢というお話がありましたが、贅沢というのは日常にないものを贅沢と感じるじゃないですか。
だからやっぱりギャップというのもあって、その統治の論理の中で生きている人たちが羽を伸ばす場所が自然だったり、歴史だったり、それ以外のものだったりで、そういったところに行きます。
それぞれのコミュニティの、改めて人ってこうやってつながっていて、こんなに豊かなんだというのは、普段ないから気づけるのもありますし、豊かさの定義があってそれに気づくセンシビリティ(感受性)もすごく大事になってきます。
ギャップがあるとセンシビリティがない人でも気づくし、本当の豊かさを知っているような人たち、よくWell-beingと言われますが、そういう本当の豊かさを知っている人たちはもう一歩踏み込んでいくのかなと、2つに分かれていくのかなというのは、なんとなく思っています。
東京一極集中は、アフターコロナで変わるのか?
富山 東京一極集中論で言うと、東京一極集中は止まらないと思うんですよね。
このコロナ禍でも人口は全然減っていなくて、どちらかというと関東圏の周辺に人は移動したけれども、関東からは出て行っていないので、東京一極集中も過疎化も人口減少も、この流れは不可逆なのは間違いないなと思っています。
ただ、多様性みたいなところで、こういう暮らしや、ライフスタイルにしたいといったときに、地方が選択肢になることは十分あるなと思っています。
だから大部分の人が、たくさんの人が地方に移動しましたとか、そういう大きな流れはなかなか止まらないなとは思うのですが、ただそういう価値観を選びたいと思った人が選択できる先になったり、質を高めたりできる受け皿には、地方はなれるのではないかと思います。
中川 まさに最近、豊かさって何なんだろう?と考えたときに、選択肢があることだなと思ったんですよね。
今の危惧としては、東京一極集中になってしまって、地方が選択肢から外れてしまう、選択しようがなくなるのがまずいことなんじゃないかと思うので、僕たちのような地方に本社がある会社が、少しでも選択肢を残すことが、大きな視点で見たときには意味があるのかなというふうに思いますね。
各務 今、皆様の話を聞いていて、地方にはユニークで、オリジナルな、今までの豪華絢爛とは別の贅沢さ、先ほどの話だと漁師の食事のようなものがあって、そんな選択肢があることが豊かさということ、よく分かりました。
地域の方は、そんな地域独自の魅力を見つけて発信することが大切。同時に他力野さんがおっしゃるように、社会の価値観といいますか、世の中ががそこに気づくことが同時に大切になっていくのかなと感じました。
従来の固定概念に縛られずに、新しい価値観・選択肢に積極的にシフトしていく、スノーピークさんはキャンプの世界でまさにそういったことを先導して、価値観の啓蒙をしていらっしゃると思いますし、この4名の方がお集まりになれば、次の地域のための価値観のムーブメントを起こせるのではないかなと、僕なんかは期待してしまいます。
新しい豊かさ、新しいラグジュアリーを、世の中に価値として発信していくときのポイント、社会に気づいていただくときのポイントを、最後に皆様から聞いて、本日のセッションを閉めさせていただきたいと思います。
他力野さん、いかがでしょうか?
街の人たちの心に火を点けるムーブメントを起こしたい
他力野 僕たちは街の機能を保存することと、それを価値転換して発信することをセットでやっています。
残念ながら価値があると言っても有形のものと無形のものと、あとは街を統治する機能とがある中で、税金で守ってきた街が人口減少のため税収で再分配できなくなり守れなくなっています。
それをなんとか民の力や産業の力で、外からお金を稼いで残していくことをできないかというのが、僕たちがやっていることなんですよね。
それで残るかもしれない街の再開発にチャレンジをしているのですが、アイコンを作って、何かプロダクトにして発信していく、サービスでお金を手に入れる、発信していく、の繰り返しをしています。
もう一方で、外部のお金を落とす先に対する発信はしていますが、街の人たちに火がつかないと意味がないと思っています。
僕たちが次にやらないといけないのは、「本質的に、皆さん、今気づきましょう! まだ間に合う」みたいなことのムーブメントを起こせるかだと思っています。
先ほど最後のスライドを飛ばしてしまいましたが、今、超短期的なKPIを街に作って、街の人たちみんなでそのKPIを達成したいと思えるような流れを作れないかと考えています。
5年後に5つの先進事例、50事業者が入ってきて、働く若者が500人増えるという。
目に見えて何か変わったと分かると参加したくなる私たち、みたいな流れを街の中に小さくてもいいから、正しく目に見える火を作れないかなと思っています。
キャッスルステイも、先進事例の中の一つでしかなくて、城に泊まるなどはアイコンですが、何かそういうものを5つ作って、この街は日本一、この街でもやれるんだぞみたいな、そういうものをみんなに気づいてもらうような仕掛け、そういう意味での発信をやらないといけません。
ある意味、外への発信なんですが、街の人たちへの発信で、それを聞いた人たちの外部へのIターンやUターンが増えるような、特にIターンが増えるような形になってくると、面白くなるかなと思っています。
各務 そういう成功事例を、地域の皆様が見て、「あれでできるのだったら、われわれも真似することができる」みたいなものを、他力野さんたちが地域の方と一緒に創ってくださるということですね。
他力野 そうです。そういうことを街としてやっている感じです。
各務 ありがとうございます。
点を面にして、地元の人も行きたいと思える個性ある場所に
富山 いろいろなキーワードが出たと思いますが、僕は各地域が面になることが重要だと思います。
そこのグランドデザインみたいなものがないので、奈良にお金を落とさないで通ってしまうみたいなことが起き、おそらく点になってしまっていて、そこの目的地が一つになってしまっているのだと思います。
あとは地元の人も行きたいと思える場所にしなければいけないし、そこにちゃんと旗振り役がいて、外部と内部が一緒になってちゃんと面にしていくことができた地域は、格差は出ると思いますが、少しチャンスがあるのではないかと思います。
そのモデルを見て、うちの街も頑張れるのではないかと、それもいろいろな多様な形で、同じ頑張り方ではなくて取り組みを行えるといいと思います。
ワーケーションと言ったら、みんな一気にワーケーションと言って、自治体に任せるとみんな同じふうに頑張ろうとしてしまいます。
だけど、わが町はこうなんだという多様性が出せていくといいのではないかと思います。
各務 そうですよね。
グランドデザインを描くというと、どうしても行政の仕事みたいになりがちですが、それをサツドラさんのような地域の一番星企業がリードしていらっしゃるのは、すごく良いケースになるのではないかなと思います。
引き続き学ばせてください、ありがとうございます。
では順番で中川さん、よろしいですか?
「本社所在地は地方でもやれる!」という空気を作りたい
中川 はい、本当にどこの地域も可能性があります。
僕は風土という言葉で表現していますが、工芸だけではなく食文化も含めて、その土地、その土地のものがあるので、それを信じるということと、あとはそういうことを形にしていける人たちがどれだけ入ってくるかだと思います。
他力野さんの話につながりますが、成功事例がないとみんなやはり「地方じゃ無理だよね」という空気になってしまいます。
今日もこんなにセッションを聴きに来ていただいていますが、やはり地域というのはメインテーマではないと思うんですよね。
たぶんほとんどの企業の本社所在地は東京なんだろうなと思うのですが、そこを「全然地方でもやれるよね!」と、起業するときに、本当に東京にするかどうかみたいなことを考えるような空気になっていけるように、僕たちもそれを担う一翼だと思うので、やっていければいいなと思いますね。
各務 中川さんが推進されている経営者のキャンプの話ですとか、ピッチの話とか、ああいったことが実を結んでくれば、間違いなく成功事例になっていくと思いますので、引き続きぜひいろいろと学ばせてください。
ありがとうございます。
では山井さん、お願いいたします。
お客さんの笑顔とフィードバックがやりがいにつながる
山井 豊かさを提供するためには、地域の人たちにとっても豊かなことでないと、たぶん実現しないと思っています。
よく地方創生で現地に足を踏み入れますが、みんなやはり基本的に疲弊しているんですよね。
「こんな所に人なんて来ない」とか、そんなことばかり言っているのですが、地域で活動している中で現場側が変わってきたなと思うことがあります。
われわれの事業のミッションは、自然の中で人と人とをつなぐことですが、東京や大阪など大都市圏からのお客さんが、地域に行けば今までの価値観と違う豊かさを体験できます。
また、実際にお客さんが来て、なるべく生産者さん、地域の事業者さんと直接つなぐようにすると、お客さんから地域の方たちへ、直接フィードバックがもらえるんですよね。
自分たちの存在意義が今まで分からなかったけれど、お客さんが来て笑顔になって、「もうめちゃくちゃ楽しかった」「お陰様ですごく貴重な体験ができた」と直接言ってくれることがすごくやりがいにつながってきて、それこそ豊かになってきたなという実感がすごくあったんですよね。
私もその地域に行く時に一番心がけていることは、あまり大企業としてドカドカ大人数で行かずに、まず1人で行って現地の人たち一人一人と信頼関係を作った上で、信頼関係のもとに何ができるかというステップを踏んでいます。
それは地域の人たちにとっても、何て言うんでしょう……大きい企業が攻めてきたという心構えではなくて、「同じ仲間だから一緒にやりたい」という、すごく前向きな価値に変わっていくんです。
そういう細かいことの積み重ねなのですが、やっぱり取り組む先、取り組む地域にとっても一番いい豊かな形で双方で取り組んでいくことが、これからの自然志向のライフスタイルや新しい豊かさを実現していくために、本当は一番大事な気がします。
各務 本当にありがとうございました。
今日のお話を聞いて、すべての地域には魅力がある、だからまだまだ地域には可能性がある、何なら来年は海外の代わりに国内交流が大きく期待できると感じました。
その時に大事にしなくてはいけないのは、人と人のパーソナルな交流、人間関係なのでしょう。
消費される一過性のものを売るのではなくて、人と人とのつながりを大切に築いていけば、まだまだ地域はこれからやっていけることを皆様から学ばせていただきました。
今日ご参加くださっている会場の皆様も、そういった課題意識をお持ちでいらっしゃると思います。他力野さんがおっしゃったように、できる方から成功事例を作っていくことが何より大切だと思いますので、皆様ともご一緒できればと思います。
本日は本当にありがとうございました。
ご登壇いただいた皆様に拍手をいただければと思います、本日はありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美
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