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8.「自分探しのバイク旅。人の優しさに触れ、“人が好きだ”と気づいた」ヤッホーブルーイング社長・井手直行さんのキャリア論

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「人のつながり とは何か?(シーズン2)」全9回シリーズ(その8)は、人気クラフトビールを手掛けるヤッホーブルーイング社長、井手直行さんの“人のつながり”の物語です。元パチプロという異色の経歴をもつ経営者の井手さんですが、その前に過ごしたバイク旅の日々が、ビールを通じて“人のつながり”を生み出す現在の仕事につながったと語ります。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーのリンクトイン・ジャパン様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 3F
人のつながり とは何か?(シーズン2)
Sponsored by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

吉藤 健太朗
株式会社オリィ研究所
代表取締役CEO

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 全ビジネスパーソン必見!仕事や人生を豊かにする「人のつながり」とは何か?

1つ前の記事
7. キャリアの“現在地”を知り、今何を身につけるべきかを把握しよう

本編

岡島 てんちょ(井手さん)は、強いところも弱いところも全てを開示されていますよね。

井手 そうですね。

社内でもそうですが、メディアから取材を受けても全てをオープンにお話ししています。

元々そうだった訳ではないですが、隠していても仕方がないから全てオープンにしました。

特に悪いこと、つまり上手くできないことを隠さずにお話しすると「お前もなんかいい奴じゃないか!」という風に言ってもらえるようになってきた気がしています。

ですから石川さんの今のお話を聞いて、なるほどなと思いました。

村上 そういう意味では、てんちょのキャリアストーリーはすごく面白いんですよね。

ということで、この流れでぜひお聞きしたいと思います。

ごめんなさい、これは僕が勝手に作ったてんちょのスライドです(笑)。

井手 僕が何も資料を送らないものだから、臣さんが気をつくって作ってくださいました。

(会場笑)

村上 左上の電話を持っている写真はおいくつの時のものですか?

井手 これは、20歳か21歳くらいですね。

村上 若い!

「一人旅をすれば、自分が見つかる」と思っていた

株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手 直行さん

井手 私は高専(高等専門学校)出身で、最初はエンジニアでした。

20歳で高専を卒業して、エンジニアになって工場に勤務している時の写真です。

その後、結構仕事ができるようになったからといって天狗になり、5年くらいで環境アセスメントの会社に転職したら、思っているところと全然違って挫折して、半年くらいで辞めました。

当時、僕の世代の若者たちには“自分探しの旅”をしている人が多かったので、僕も「よし、自分を探しに行こう!」なんて言って、数ヶ月間、テントを持ってバイクで日本中を旅しました。

石川 自分がどこかに落ちていないかと?

井手 旅をすればきっと自分が見つかると思っていました。

見つかるまで帰らないぞと思って、キャンプ道具をバイクにくくり付けて出かけました。

川があったら「今日はここで寝よう」なんて言って空き地にテントを張って釣りをして、魚が3匹くらい釣れたら「よし、食事にしよう」なんて、そういう生活を何ヶ月かしました。

そしていよいよお金が少なくなって、これはいけないと思って帰ろうとなった時に、やはり“自分”なんて見つかる訳はないよな、と気づいたのです。

石川 魚が釣れただけだったと(笑)。

人の優しさに触れ「人が好きだ」と気づく

井手 でも旅を振り返って気づいたのは、自分は人が好きなんだなということと、自然が好きなんだなということでした。

人が好きになったのは、色々な人に出会って親切にしてもらったからです。

バイクで旅をしていたある日、雨が降ってきたので空き地にバイクを止めてそこで寝ようとしていたら、おじさんが通りかかって何やら騒いでいるんですよ。

おじさんの土地なのかなと思って「ごめんなさい」と謝ったら、「兄ちゃん、今台風が来ているのを知ってっか?」と言うんです。

「いや、バイクで旅をしているので知りません!」と言ったら、「ここはまずいぞ。うちに来い!」と言われて見ず知らずのおじさんの家に連れて行かれて、「兄ちゃん、濡れているから風呂入れ」と。

そしてお風呂に入ってご飯をご馳走になりながらビールをいただいていると、子どもたちが「この人誰?」と。

村上 (笑)

井手 「お父さんとさっき知り合ってね」なんて。

そんな風に色々な人にお世話になって、エンジニアをやっていたけれど人が好きだから人とつながりがある仕事をしようということで、軽井沢の広告代理店に転がり込んで営業の仕事を始めました。

でもそこでは、経営者と喧嘩してクビになってしまいました。

広告代理店を退職、パチプロを経て新設のビール会社へ

井手 クビになってふらふらしていたら、前職の時のお客さんが「井手さん、仕事をしていないのだったら一緒に仕事しないか?」と声をかけてくれました。

それが、親会社の経営者で創業者でもある、星野リゾートの星野佳路だったのです。

その時はパチンコをして生計を立てていたので…

村上 それはそれですごいですね(笑)。

井手 調べていただくと分かるのですが、僕は日刊SPA!で4面くらい割いて紹介されていて、見出しが「元パチプロの経営者が語るビール業界」のようになっていました(笑)。

元パチプロの“ビール伝道師”が「よなよなエール」で会社を成長させた秘訣(日刊SPA!)

星野からはある人を介して誘っていただいていたのですが、最初は、星野リゾートにはお世話になったけれどもあまり興味がないからと断っていました。

でもある日パンチンコから帰宅して留守電が入っているから何かなと思ったら、星野からのメッセージで「一度会って話をしようよ」ということでした。

仕方ないなと思って話を聞いたら、今度ビール事業を立ち上げるということを聞いて、「お~!」っと一気に舞い上がったのです。

今まで興味がないと言っていたのに、少し話を聞いただけで即「入社させてください!」とお願いしました。

村上 やりますと。

井手 はい。星野が何度も声をかけてくれたおかげで今の会社に入れたのですが、星野が途中で諦めていたら、今の自分はありませんでした。

その後、ビール事業は8年間ずっと赤字で泣かず飛ばずの時代がありました。

その時に何ができるかと色々考えて、長くなってしまうので端折りますが「ファンイベントをやってみよう」ということになりました。

村上 この参加者の中から結婚したカップルも生まれたということでしたね。

「よなよなエール」は、人と人がつながるためのツール

井手 そうなんです。僕たちはよなよなエールを飲みながらファンイベントをする時に、ただビールを飲むだけではなくて、一緒に会場に来た人たちが友達になれるようにニックネーム制にしたり、ゲーム大会をしたり、「ちょっとそこでチームになってクイズ大会をやろう」なんていうことをします。

そして上手くいったら「やったー!」みたいな感じで、会が終わる頃には皆が仲良くなって、初対面の人が集まって二次会に行ったり、中には結婚する人たちも何人か出てきたりするのです。

村上 すごいですよね。

井手 僕たちもそうしたファンの方々にインタビュー調査をしたことがあるのですが、実は社交的ではない人の方が多いんですよ。

でも、よなよなエールという共通の好きなものを通して集まって、お酒の力も借りてちょっとフレンドリーになって、僕たちも楽しい空間を作っているから、よりそういう機会を得られるわけです。

「なぜよなよなエールが好きなのですか?」と尋ねたところ、皆さん「美味しいからです」おっしゃるのですが、その先にある深層心理を分析すると、5つのベネフィットがあり、そのうちの一つが「仲間をつくる」なんですよ。

自分では気づいていないのですが、味が好きなだけでなく仲間ができるからよなよなエールが大好きになるのです。

そういうことを、今これを見ながら考えていました。

ビールが無かったらその人たちはそんなにフレンドリーにはなれないのだけれども、それがあるとつながれる。

つながるツールのような感じで使っているのです。

ビールを通じて「人のつながり」「人の幸せ」をつくる

井手 酒屋さんやスーパーで弊社のビールを取り扱っていただけないので、ファンの方と一緒にイベントでもやってみようというのが当初の発想でした。

それで10年くらい前に約40人のファンイベントをしたらとても盛り上がって、北海道から夫婦で来てくださった方や、大阪から夜行バスで来てくださった方もおられました。

それをきっかけに、僕たちはビールを作っているけれども、ビールを通して人のつながりや人の幸せをつくっていることに気づいたのです。

製造業だけれど、もっと違う力もあるということに気づいて、40人のファンイベントから100人、200人、500人、1,000人、4,000人、5,000人と大きくしていって、一昨年はついに5,000人のファンイベントを開催しました。

村上 すごいですね。

東京お台場で開催された「よなよなエールの超宴2018」

”よなよなエールの超宴”でブランディングの真髄を体験!井手さん、運営スタッフみんなで乾杯してきました【活動レポート】

井手 去年は5,000人のイベントを2日続けてやろうと、1万人のイベントを企画していたら、台風で10月がNGになりました。

ビールの味が好きなだけだったら、世の中には他にも色々なビールがあります。

もっと安いビールがあるし、どこでも買えるビールもあるのですが、その中でなぜ「よなよなエール」を買って支持してくれているかということです。

このビールは、人とのつながりをつくってくれます。

僕らはビールを通して色々な人たちに幸せになってもらいながら、こうやってイベントでつながったり、社員もプライベートと仕事を分けることなく楽しみながら仕事をしています。

岡島 ワークアズライフですね。

井手 そうそう。皆、プライベートでも家族のような感じで一緒に遊んだりします。

ファンとメーカーの間にも垣根はないし、社員も公私混同は大いにあるといった感じになっています。

石川 なるほど。

村上 面白いですね。

まさに「人のつながり」が井手さんの人生を変えたわけですが、井手さんの周りにいる皆さんの人生も、何らかの形で変わっていますよね。

人のつながりというのは面白くて、つながることで、その人の人生を変えるような「イベント」が起こりえます。

僕自身も仕事が変わって色々と人生が変わっているのですが、人とのつながりがそういうパワーを持っているというのが非常に面白いところです。

井手 もう一つお話しさせていただいてもいいですか?

村上 どうぞ。

井手 私もオリィさんとこの3人(石川さん、岡島さん、村上さん)の中間くらいの感じで、話せば話せるのですが自分から話しに行こうとは思わない人間です。

でもこのような体験を繰り返していくうちに、今では随分、場数を踏んだというか、色々な方とお話をすることが好きになってきました。

村上 段々変わってきたということですよね。

つながりが人生を変えることについて、ぜひオリィさんにもお話をお聞きしてみたいと思います。

(続)

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続きは 9. 人のつながりが、人生を変える【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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