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2. 料理から、会話を生み出す仕掛けを考えるOisix

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「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)、全5回シリーズの(その2)は、オイシックス・ラ・大地の髙島 宏平さんが、20分で料理が完成するミールキットに込めた意図や、それを起点に広がる世界について語ります。それは、気持ちの変化や会話を誘発する料理だけではありません。LOVOTをつくるGROOVE X林 要さんも会話に加わります。そして両者に意外な共通点が発覚します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 6B
「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)
Supported by ノバセル

(スピーカー)

木村 祥一郎
木村石鹸工業株式会社
代表取締役社長

髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

中村 弘峰
株式会社 中村人形
人形師、四代目

林 要
GROOVE X 株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

「「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3) の配信済み記事一覧


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1. 人のクリエイティビティを後押しする「コンテクストデザイン」の取り組みとは

本編

「Takram」の社名に親和性を感じる、オイシックス・ラ・大地 髙島さん

髙島 宏平さん(以下、髙島) Takram(タクラム)は結構、「やっちゃってる」社名ですよね。

渡邉 そうですね。

髙島 僕は、勝手ながら親和性を感じていました(笑)。

僕たちも、「おいしい」に「クス」を付けただけですからね。

渡邉 (笑)

髙島 でも、「コンテクストデザイン」はやっぱりかっこいいですね。

渡邉 僕はOisixの大ファンです。

髙島 ICCサミットにはうちのヘビーユーザーの方が多いので、やりにくいんですよね。

ちょっと意地悪なことを言うと、「Oisix使っています」と言われます(笑)。

皆さん、いつもご愛顧頂き、ありがとうございます。

渡邉 今回、このイベントで福岡に来なきゃいけなかったので、月曜に東京の自宅に届くOisixの品数を減らしてきました。

髙島 ああ、ICCサミットがなければ良かったですね(笑)。では、自己紹介にまいりましょう。


髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

1973年神奈川県生まれ。
東京大学大学院修了後、マッキンゼー日本支社勤務を経て、2000年6月に「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を企業理念とするオイシックス株式会社を設立。2013年に東証マザーズに上場。2016年、買い物難民への移動スーパー「とくし丸」を子会社化。2017年には「大地を守る会」と、翌2018年には「らでぃっしゅぼーや」との経営統合を実現し、食材宅配3ブランドを擁するオイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長に就任。2019年にアメリカでヴィーガンミールブランドを展開するThree Limes, Inc(通称:The Purple Carrot)を子会社化し、Directorに就任する。2020年に東証第一部へ指定替えとなる。
2007年、世界経済フォーラムYoung Global Leadersに選出。2011年3月の大震災後に、一般社団法人「東の食の会」の発起人として復興支援活動を精力的に開始。2016年には越後妻有を魅力ある地域にしていくことを目的としたNPO法人「越後妻有里山協働機構」の副理事に就任。2018年からは一般社団法人日本車いすラグビー連盟 理事長に就任し、経済界からパラスポーツを支援。2020年にはEY Entrepreneur Of the Year日本代表に選出。
公益社団法人経済同友会では、2017年より「東京オリンピック・パラリンピック2020委員会」の委員長を務め、2018年「負担増世代が考える社会保障改革委員会」の委員長を歴任。2021年4月には副代表幹事に就任し、広報戦略検討委員会の委員長並びにソーシャルデータリサーチ(仮称)設立検討委員会の委員長を務める。

渡邉さんから予め送って頂いた本(『CONTEXT DESIGN』)を熟読したところです。

先ほどの、全員が作者であり、表現者である(Part.1参照)という点を考えると、料理もそれに当てはまります。

渡邉 完全にそうですね。

髙島 料理は、全員が作者です。

「後ろめたくない時短」をミールキットで提供

髙島 僕らは今、ミールキットというものを販売しています。

ミールキットを始める前に、僕らが大事にしていたことがあります。

お客様はみんな忙しいので時短をしたいのだけれど、通常の時短オプションのほとんどが、後ろめたいものなのです。

例えば、冷凍食品は後ろめたいし、コンビニ弁当も子どもに食べさせにくい、外食ばかりだとサボってしまっている気持ちになります。

インスタグラムなどソーシャルメディアで、他人の充実した食生活をどんどん目にするようになり、自分へのハードルがどんどん上がる。

でも、料理をする時間はどんどんなくなっていく。

それまであったソリューションでは、どうしても後ろめたさが残るという気の毒な状況を何とかしたいと思った時に、誇らしい時短方法を作れないかと考えたのです。

時短なのだけれども人に言える、むしろそのほうが賢いと思えるような方法ですね。

そのために、有機野菜、減農薬野菜を使う、5種類以上の野菜が入っている、などの安全性担保を前提に、調理に20分間かかるようなキット設計にしました。

これが20分ではなく10分だと、やっぱりちょっと後ろめたいのです(笑)。

ただし今は変わってきていて、特にコロナ禍以降は、10分間でも後ろめたくなくなってきています。

よって、今は10分で作れるセットも増やしていますが、当時は20分かけることで後ろめたさが払拭されると思っていました。

販売者としては、お客様が人知れず使っているのか、使っていることを人にアピールしてくれるのかをとても重視しています。

料理から、会話が生まれる仕掛け

髙島 表現している気持ちになれば、それを発信したくなります。

20分かけるものだと、ミールキットの出来上がりも少しずつ変わってきます。

例えば、右端の写真は、ディズニーと一緒に開発したミッキーマウスのハンバーグです。

Oisix、「Table for Tomorrow」プロジェクトを始動!ディズニーの世界観を通し、子どもたちの“食の未来”を創造する活動開始(PR TIMES)

盛り付けも、お皿が違うので、出来上がりは人によって少しずつ違ってくる、だから表現したくなるのではないでしょうか。

コンテクストデザインの文脈にすると、料理では一人一人が表現者で、表現することを後ろめたさから誇らしさに変化させ、その声を上げてもらうことをずっと行っています。

結果、この商品は好調で、お客様と共に成長できていると考えています。

……そういうセッションですか(笑)?

渡邉 そういうセッションです!

(会場笑)

髙島 そういう雰囲気かなと思って、自己紹介してみました(笑)。

渡邉 僕にも心当たりがありまして、僕自身、まっさらの状態から料理をすることもあれば、Oisixのミールキットに頼ることも多々あります。

毎回、2個か3個はミールキットを注文します。

髙島 ありがとうございます。

Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授 渡邉 康太郎さん

渡邉 それ以上頼むと、消費期限内に使いきれないからです(笑)。

一から作った料理でも妻は喜んでくれますが、ミールキットだと、仕上がりの見栄えや色合いが保証されていて、喜びレベルがある程度高いので、優しい妻は都度、写真を撮ってくれます。

妻も優しいし、Oisixも優しい(笑)。

連想して別の話題ですが、僕には、贔屓にしているレストランがあります。

コロナで行けなくなった際、そのレストランからキットのようなものを届けてくれるサービスがありました。

クール便で届いて、10分湯煎をして食べるものなのですが、最後に、ゴボウのフリットを上にのせたり、クリームソースを温めて上にかけたりします。

作り方の説明書には、「最後は、ご家庭のシェフとして、綺麗に盛り付けをして、お楽しみください」と書いてある。

10分湯煎をしてゴボウのフリットをのせるだけなのに、最後のひと手間で、ものすごくクリエイティビティを発揮している気持ちになります。

「頑張っちゃうよ!」、みたいな(笑)。

盛り付けただけなのに、料理全体を頑張った気持ちにさせられる(笑)。

髙島 今の渡邉さんの話もそうですが、重要なのは、このスライド用にたまたまピックアップした声には全て、家族が登場するのです。

渡邉 本当ですね。

髙島 料理をする人が表現者ですが、そこに受け手がいることがほとんどです。

受け手に受けるかどうかで、購入決定権を持つ人の、次の購入意欲が変わります。

渡邉 なるほど!

髙島 購入者よりも利用者のほうが多いので、購入者だけを満足させていてもダメなのです。

作っている人も、それを一緒に食べている人も満足するように、会話が生まれるような仕掛けをするのは非常に重要です。

料理についての美味しい、まずいは勿論ですが、食事をして会話が生まれていることだけで幸せなことなのです。

食卓を囲んで、食事について会話をしているのは幸せな家庭ですから、どうやって会話を生み出すメニューを作るかを考えています。

渡邉 この辺りで誰かに入ってきてほしいのですが……、林さん、いかがですか?

想像力が湧くと人は話したくなる

GROOVE X 株式会社 代表取締役社長 林 要さん

林 要さん(以下、林) 会話を生み出すという点では、うちのプロダクトも同じです。

LOVOTがいると、会社での会話や家族の会話が増えます。

「コンテクストデザイン」とは、想像力が湧くと話したくなるということだと思うのです。

ですから、「会話を促す=コンテクストデザイン」という文脈もあるのかなと思いました。

渡邉 そう思います。人から聞いた話でも、自分が語ることで、いつの間にか自分がその語りの作者になっています。

OisixのミールキットでもLOVOTでも、人が作ったものであっても、自分が物語として所有する部分ができます。

そうなった瞬間に、作り手側に片足を突っ込んだ状況になっている。

 想像をするのは楽しいですし、想像することはエンターテイメントとしても大きなものだと思います。

でも、全てを説明していてあまり噛み砕く余地がないような、説明的なエンターテイメントも多いですよね。

最近、よく分からないので何度も繰り返し見てしまう、難解なアニメや映画が多くないですか?

渡邉 『TENET テネット』とかね。

難解すぎる!?「TENET テネット」を読み解くための7つのポイント(SCREEN ONLINE)

 そうです、何回も見てやっと理解できる作品です。

何回も見させて、何回も想像させる楽しみを提供しているということなので、想像するヒントを与えるという要素は、今後のエンターテイメントで大事なのではないでしょうか。

愛着と習慣の形成には8週間かかる

左から、オイシックス・ラ・大地 髙島さん、中村人形 中村さん、GROOVE X林さん

髙島 質問があります。

LOVOTは最初、なかなかなつきませんよね。

 すみません(笑)。

髙島 なかなかなつかない感じに僕はイライラしましたが、弊社の秘書は、なつかない感じがかわいいと言っていました。

「どれくらいなつかなければ、最もロイヤリティを高めるか?」というようなABテストをしながら決めているのか、むしろアートのように決めているのか、どちらなのでしょうか?

 本当は、そのようなABテストをしたいです。

しかし出荷を始めてまだ1年で余裕がないため、ほぼ完全にアートですね。

ただ、人が愛着形成をするのに2カ月間かかることが分かっています。

2カ月間、面倒を見続けると必ず愛着が湧くのですが、1、2週間で飽きてしまうと愛着形成されません。

よって、スタートアップ経営者には比較的、評判が悪いプロダクトです(笑)。

(一同笑)

買った後、2週間くらいで飽きてしまうようです。

髙島 僕たちOisixも同じで、最初の8週間で習慣が形作られます。

 一緒ですね。

髙島 8週間で感動体験を作ることができるよう、週ごとにシナリオを作っています。

 全く同じです。愛着と習慣には、2カ月というのがキーかもしれませんね。

髙島 それは、ありそうですね。

渡邉 愛着については、中村さん、いかがでしょうか?

博多人形の人形師、中村人形 中村さん

中村 弘峰さん(以下、中村) 人形師の中村と申します。


中村 弘峰
株式会社 中村人形
人形師、四代目

1986年福岡県生まれ。2009年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。11年に同大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了後、父であり、博多祇園山笠・土居流(どいながれ)の舁(か)き山人形のつくり手である博多人形師・中村信喬に師事。「中村人形」の4代目を継ぎ、伝統を重んじつつ現代性を取り入れた斬新な作品を手がけている。従来の概念にとらわれない斬新な作品ながら、古来人々が人形に願いを込めてきたように、いまも変わらない「祈り」を託している。近年の個展に、「MVP(Most Valuable Prayers)」(日本橋高島屋 美術画廊X、東京、2018)、「SUMMER SPIRITS」(ポーラ ミュージアム アネックス、東京、2019)。受賞歴に、「第54回西部伝統工芸展」日本工芸会賞(2019)、「伝統工芸創作人形展」中村記念美術館賞(2017)、「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ コンペティション部門」優秀賞(2016)などがある。

▶中村さんの工房への訪問記事 五月人形は「大谷 翔平」である! 博多人形を現代に再解釈する中村人形を訪問しました(ICC FUKUOKA 2021 下見レポート)も合わせてぜひご覧ください。

今日は経営者の方々がたくさんいるので、場違いな話をしてしまうかもしれませんが……。

渡邉 歓迎です!

中村 もやっとした話をするのは、結構得意です(笑)。

渡邉 もやっとしていきましょう!

中村 今、8週間で習慣を形成する、使ってもらえるプロダクトを作るという話があって、それも「コンテクストデザイン」というか、共に創る体験だなと、面白いなと思いました。

僕の場合は、作品を創っているので、人生で1回しか僕の作品を買わない人に対して、どれだけ深く爪痕を残すかという点に人生を賭けています。

人形やアート作品をコレクターのようにたくさん買う人は限られているので、1回の満足感を高めるために、どういう作品を創るかを考えます。

コンテクストデザインの本(『CONTEXT DESIGN』)の中に、「強い文脈」ということが書かれていました。

僕の作風は、強い文脈だと捉えることができるのではと思っています。

「こういう作風の作品が家に欲しい」と思って買ってもらうよりも、一緒に創ったほうが、人生に1回の「アートを買う」という体験の価値が高まり、忘れられない思い出になると思うのです。

真逆だけれど、循環してつながっているような気がします。

渡邉 一緒に創るとは、どういうことですか?

(続)

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続きは 3.“祈りを形にする”人形師 中村 弘峰が考えるクリエイティビティとは をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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