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「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)、全5回シリーズの(その1)は、シリーズのモデレーターを務めるTakram渡邉 康太郎さんによる、コンテクストデザインの解説からスタート。「Context」のラテン語の語源通り、「共に編む」ことで、受け取り手を含む関わる人すべてがクリエイティブになる、その意図を語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 6B
「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)
Supported by ノバセル
(スピーカー)
木村 祥一郎
木村石鹸工業株式会社
代表取締役社長
髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長
中村 弘峰
株式会社 中村人形
人形師、四代目
林 要
GROOVE X 株式会社
代表取締役社長
(モデレーター)
渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授
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▶「「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3) の配信済み記事一覧
本編
渡邉 康太郎さん(以下、渡邉) こんにちは。
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渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC 特別招聘教授
使い手が作り手に、消費者が表現者に変化することを促す「コンテクストデザイン」を掲げ、組織のミッション・ビジョン策定からコアサービス立案、アートプロジェクトまで幅広く活動。主な仕事にISSEY MIYAKEの花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの本屋「森岡書店」、日本経済新聞社やFM局J-WAVEのブランディングなど。同局で自身の番組「TAKRAM RADIO」のナビゲーターも務める。慶應SFC卒。近著『コンテクストデザイン』は青山ブックセンター2020年総合ランキング二位。趣味は茶道、茶名は仙康宗達。。
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タイトルが「『コンテクストデザイン』を考える」とわかりにくいにも関わらず、この4人が集まってくださった。この時点で、もはやセッションは成功したと思っています。
▶渡邉さんによる「コンテクストデザイン」の詳しい解説はこちら
9. “誤読”で生み出された「時間の測れない砂時計」の物語(「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)」より)
事前に皆さんには、コンテクストデザインの本(『CONTEXT DESIGN』)を読んでいただいており、妄想を膨らませているのではないかと思います。自己紹介と「コンテクストデザイン」への解釈をお話しいただききましょう。
「ずっと自己紹介が終わらない」というセッションになってもいいなと思っています(笑)。
かつ、誤読歓迎、割り込み歓迎、混乱歓迎です。
誰かの自己紹介中に、「それにはちょっと思うところが……」と入ってきて頂くのも、ウェルカムです。
まずはイントロということで、「コンテクストデザインとは」について簡単に話し、皆さんにバトンを渡しますね。
Takram 渡邉さんが目指す「コンテクストデザイン」とは
渡邉 「コンテクストデザイン」は、コンテクストをデザインすることだと思う人も多いと思いますが、実はそうではありません。
企業が伝えたい文脈を、ブランディングやマーケティングの形で世に放つこととは、むしろ真逆です。
ラテン語で「共に編む」という意味の「Con + texere」が、コンテクストの語源です。
できあがったものを、ノイズのない状態で人に届けることがしたいわけではなく、むしろ受け取った人が独自のノイズを紛れ込ませつつ、その人自身の「誤読」をすることで新たな価値が生じる状況を作りたいと考えています。
「一人ひとりから、それぞれの『ものがたり』が生まれるような『ものづくり』の取り組み」を通して、「読み手を書き手に、消費者を創作者に変えていきたい」ということです。
ですから皆さん一人一人から、自分の仕事ならこういうことだ、というような話が聞ければいいなと思っています。
コンテクストと言ったとき、「読み解く文脈」としてのコンテクストではなく、「共に編み込む文脈」として考えていきたいです。
例えば、石庭は波紋を表現する造形なのに、そこに水そのものはありません。でも、観る人一人ひとりの中に浮かび上がってくる水面のイメージをそこに投影するわけです。
そういう、一人ひとりが生み出す物語を考えたいと思っています。
一人ひとりのクリエイティビティを高める
渡邉 「デザイン」に関しては、デザイナーがクリエイティビティを発揮するだけでなく、周囲にいる人みんなのクリエイティビティが高まるような状態を目指しています。
一人ひとりが生来のクリエイティビティを持っている。それを刺激するには。大人になるにつれ、「私はクリエイティブではない」という見えない足枷を負っている人は多いものです。いかにそこから自由になれるか。
こういう話をした時、ミニマル(Minimal -Bean to Bar Chocolate)の山下(貴嗣)さんが、「ミニマルという会社自体が作品である。ちいさな完成品よりも、偉大なる創作物であり続けたい。ガウディのサグラダファミリアのような、常に未完のものとして会社を捉えている」(※)と話していました。社員やファンとともに編んでいく作品、というイメージでしょうか。
▶ICC FUKUOKA 2020「『コンテクストデザイン』を考える(シーズン2)」登壇時の発言。
作り手と使い手がストーリーでつながる「コンテクストデザイン」の重要性(LEXUS)
このように、「共に編む」ことにまつわる、色々なお話を皆さんから伺えればと思います。
贈り手が創り手になる仕掛け
渡邉 ここで、少しTakramの取り組みを通してコンテクストデザインの紹介をします。
ISSEY MIYAKEとつくった花と言葉の贈り物、FLORIOGRAPHYというものがあります。
胸元に飾る花型のコサージュで、ギフト用のプロダクトですが、包み紙に仕掛けがあります。
包み紙を開くと、手紙が出てきます。ギフトの贈り手から受け手へのメッセージです。
LINEやFacebook Messengerの時代に、手書きの手紙を書くのは気が重いかもしれません。
でも、この紙には、予めいくつかの単語がエンボスしてあります。夕飯、コーヒー、美術館など、日常茶飯の単語です。こういった言葉をきっかけにしながら、2人の間の思い出を振り返ったり、次の約束を交わしたりしてほしいと思っています。
贈り手と受け手の間でだけ意味を持つ、「いつもの場所」に丸をつけたり、「木曜日」に丸をつけたりすることから、二人の関係性を反芻し、言葉を紡ぐきっかけを作れれば、という考えです。
空白部分には手書きのメッセージを書けますが、ここをあえて狭くしてあります。そこまでたくさん書かなくてもいい、一言でもいい。
普段手紙を書かない人が書きたくなるような、または、書くためのクリエイティビティを後押しできるようなものになればと考えてつくりました。
ISSEY MIYAKEとTakramが作ったものではありますが、贈り手がこれを手にして手紙を書き始めた時に、既にその人は単なる消費者ではなく「作り手」の側に立っている──そう考えています。
効率やお金だけに依らない価値基準を世の中に増やす
渡邉 なぜこういった共創関係を築きたいのか。僕なりの目的意識を言語化してみます。
この目的には、4つの段階があります。
まず、共創関係を生むようなプロダクトやサービスに触れると、一人ひとりにとって、個人的な意味がプロダクトやサービスに宿ります。それが一つ。次に、それによっていつの間にか人が作り手、作者になっていく。これが二つ目です。
例えば、この花と言葉のギフトを贈る過程で、プロダクトの中に個人的な思い出と意味が宿るし、 意味づけによって人は作者化する。
プロダクトやサービスに触れる人が増えると、いつのまにかみんなが表現者になります。
そして次第に、社会全体のクリエイティビティが高まっていく。何かを表現したいという個性の爆発が無数に起こるといいな、と思います。
すると、効率やお金の多寡だけに依らない価値基準が世の中に増えることになるのではないでしょうか。そんな愉快な世界を見たいと考えています。
そこに少しでも貢献するものの1つとして「コンテクストデザイン」がある。デザイナーやアーティスト以外の人もクリエイティビティや自分らしさを発揮する後押しをしたい、という思いがあります。
以上のイントロを踏まえ、ここからは皆さんの自己紹介+αをお願いします。
まずは髙島さんから、お願いします。
(続)
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続きは 2. 料理から、会話を生み出す仕掛けを考えるOisix をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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