8月31日〜9月4日の4日間にわたって開催されたICC KYOTO 2026。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、前夜祭の夜にレストランひらまつ 高台寺に開催された、ICCカタパルト10周年 記念プレミアム・ディナーと、過去10年のカタパルト優勝者・入賞者が選んだCATAPULT 10th Anniversary BEST PRESENTATION AWARDの模様をお伝えします。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
今年はICCサミット10周年アニバーサリーイヤー
2026年にICCサミットは開催10周年を迎えて、2月のICC FUKUOKA 2026ではその記念ディナーを開催した。
▶︎ICCサミットをともに創ってきた登壇者が集結、ICC10周年プレミアム・ディナーの温かな夜
ICC KYOTO 2026は、第1回目のスタートアップ・カタパルトが2016年の京都で開催されてから10周年となる。それを記念して、8月31日の夜、ICCカタパルト10周年 記念プレミアム・ディナーが、レストランひらまつ 高台寺で行われた。

来場者を待つ、夕暮れ時のひらまつの窓からは、京都の街が一望できる。おそらく10年前も、そして今も、この1000年の都の美しさは変わらない。
この会場に集まってくるのは、過去10年のカタパルト優勝者・入賞者たちの錚々たる顔ぶれ。全ての方々をお呼びすることはできなかったが、皆、今日あるICCサミットのカタパルト(ピッチコンテスト)をつくってきた、自分の事業で社会をいいものにしようと努める人たちである。


2016年の京都はスタートアップ、続いて2017年の福岡からグランプリ、2018年の福岡でリアルテック(現在はディープテック)が、2019年福岡でクラフテッド、2021年福岡でソーシャルグッドのカタパルトが誕生した。その間に、リテール、SaaS、D2C、ガーディアンなどさまざまなカタパルトが生まれては消えた。

久しぶりの再会と、「カタパルト」挑戦への共通体験が、彼ら・彼女らを盛り上がらせるのか、ディナーの前にカクテルが行われる最上階は、人数以上の音圧で、皆、声を張りあげて喋っている。


そんななか、ICC代表の小林 雅さんとこの夜ナビゲーターを務める荒木 珠里亜さんと司会を務める鈴木 梨里さんが現れ、集まった人たちにミニインタビュー企画が始まった。
実はこの日の前に、53名の参加者たちに向けて、アンケートが行われていた。その問いかけは「あなたにとってのカタパルトとは?」。それを受けて、稲とアガベ岡住 修兵さんが答えた。

「『カタパルトは起業家人生そのものである』と書きました。田舎で事業をしていると、世の中で頑張ってるのは俺しかいないのかというぐらい、寂しい思いをいつもしていたんです。
最初に参加したカタパルトでは、僕みたいな人間が出ていいのかとしゃべれなくなってしまい、惨敗でした。そこから田舎に逃げ帰ってチヤホヤされることは全然できたんですけど、この場所で認められるような企業家になりたいという思いが芽生えました。
2度目のクラフテッド・カタパルトで優勝したけれど、前回のグランプリでは2位で、上には上がいると思いました。カタパルトは、これからも頑張り続けないといけないと思わせてくれる場所です。栄光も、挫折も、未来も、すべて僕の原動力になっています」

「カタパルトは何かと言われたら、それは産業の定義であると僕は思っている。もう一つは、小林 雅が人生で一番やりたかったことなんじゃないかと、ずっと思っています。
気がついたらクラフテッドとかソーシャルグッドとかどんどん増えていき、それらが広がって産業が立ち上がってくる。僕はとにかくファンです!」

「番組に出していただいたことで、僕は起業家としても個人としても下駄を履いて見ていただくことがあるんです。でもカタパルトというか、ICCはいい意味で、劣等感に打ちのめされる場です。
起業家はおそらくみんな、実態は死ぬほどもがいて、何もかもうまくいかないようなストレスや苦悩とか、眠れない夜を過ごしていると思います。それでもICCで語られる話では素晴らしい成長だったりします。
僕はカタパルトで優勝はしておらず、参加したあと、いつも悔しい思いで帰っています。そんな健全な劣等感を抱えています。そして東京に帰ったら社員やスタッフと向き合い直す。そんな、1つの切り替えをさせてもらえる場だといつも思っています」
ICCで語られる成長やカタパルトの栄光は真実であっても一時のことで、経営者たちは普段、苦闘の日々を過ごしている。ICCでの再会は、仲間意識も健全なライバル心も刺激もないまぜになって、孤独な経営者たちを励ます力となっている。


ICCに初期から参加している人たちが、京都の夜景を眺めながら昔語りするのを聞くと、彼らが7分間で事業を伝えていたころから、現在の社会での存在感の変化に感慨を覚える。今日この日、初めて出会い、ジャンルを越えて語り合う経営者たちを見ていると、どんな未来へつながるのかと期待せずにはいられない。

カタパルト10周年 記念ディナーがスタート

参加者たちがディナー会場に移動すると、メインイベントである10周年記念ディナーが始まった。過去の入賞者たちに加えて、カタパルトの運営に関わるメンバーも6名、各テーブルに散って加わった。カタパルトも最初のころは5〜6人で運営していたが、現在、ICC KYOTO 2026では25人ものスタッフが関わっている。
登壇者対応や、ステージ周りやプレゼンスライドの対応、備品、全体のオペレーションなど、役割は細分化されており、受付や誘導、速報を出すチームなども含めると本当に多くのメンバーが、人生を変える7分間を応援すべく関わっている。
カタパルトのナビゲーターでおなじみの荒木さんが、ディナーのナビゲーターを務め、代表の小林さんが挨拶を行った。
「カタパルトも10周年ということでありがとうございます。みなさんにいただいたアンケートを見てグッときて涙し、前回の10周年パーティー同様に、一人ひとりに手紙を書きました。

10年といっても、以前を含めるともっと長くて、20年ぐらいピッチコンテストをやっています。もう数も数えられないぐらいです。
本番前のリハーサルでは、短いですが素晴らしい起業家の方々と時間を過ごすことができ、本当に幸せなことだと思っています。ベンチャーキャピタルの時は、僕が担当している投資先は1年で2、3件でしたが、今は1回のサミットで55人。多くの人と触れ合う機会があるのは幸せなことです。
最近ではカタパルト必勝ワークショップや公開リハーサルなどがあり、初期の頃とは考えられないぐらい、よくここまでみんなやるなというマニアックなイベントになっています。これは皆さんたちのような先人たちのおかげなんです。
おそらく皆さんは会場にいると、プレゼン動画を見て勉強しましたとか声をかけられると思います。皆さんが作った歴史、プレゼンテーションそのものが、これからの日本とか世界の産業を作っていくことに貢献すると、自分に自信を、自負をもっていただければと思います。これからも末長くよろしくお願いします」
それから、2016年、第一回目カタパルトの優勝者である、当時ファームシップ、現フレンズの安田 瑞希さんが乾杯の挨拶をした。安田さんは件の53名のアンケートを分析した傾向を語った。

「AIと一緒に頑張ってみたところ、『あなたにとってのカタパルトとは?』という質問に対して、皆さんの回答は大体4つの言葉に集約されます。
- 自分と向き合う場
- なぜやるのかを何度も自問自答する
- 自分たちの可能性を小さく望まなくていいと教えてくれる
- 人生を変える機会
カタパルトは、事業以上に、人生が打ち上がる発射台なんだと思います」(※カタパルトは発射台という意味)
それに深く同意するこの場の人たちは、安田さんに大きな拍手を送った。小林さんがそれを受けて、ICCのカタパルトに参加するメリットとして挙がることの多い「小林 雅とのリハーサル」の誕生について明かした。
「以前開催していたピッチコンテストの応募は100何件と集まった中から選んでいたけれど、ICCで最初に公募したときは16件しか集まらず、その中には、よくわからないのもたくさんあって。どうしようかと思ったけれども、ICCには実績がないから、しょうがないと思いました。
それならばとにかく実績を作るしかない。プレゼンをうまくなるしかないと、リハーサルでフィードバックしまくって、その第一号がこの人(安田さん)です」

CATAPULT 10th Anniversary BEST PRESENTATION AWARD発表
乾杯の後は和やかなディナーが始まった。料理が運ばれ、各テーブルで談笑がひとしきり終わったあと、この日のメインイベント、CATAPULT 10th Anniversary BEST PRESENTATION AWARDが始まった。

ノミネートの12組は小林さんの独断で決定。各テーブルに分かれた候補者たちの名前が発表されると、それぞれが自信たっぷりに立ち上がり、会場を煽った。ここにいる全員が投票済み。そのためノミネートが発表され、順位が発表されるたびに会場は大いに盛り上がった。

▶︎ノミネート12組プレゼン映像のリストはこちら
CATAPULT 10th Anniversary BEST PRESENTATION AWARD NOMINEES(YouTube)










もともと会話が弾んでいたが、順位発表の行方に会場が一体となってさらに盛り上がり、大拍手と大歓声が上がる。そして第5位から2位までが、カタパルト同様に発表され、全カタパルト経験者が緊張するあのカウントダウンムービー最新版が流れ、発表されたのは、1位は既報の通りヘラルボニーの松田 文登さんだった。
▶︎CATAPULT 10th Anniversary BEST PRESENTATION AWARD、過去入賞者たちが選ぶベストプレゼンは「ヘラルボニー松田 文登」!(ICC KYOTO 2026)

ベスト・オブ・ベスト・プレゼンとして、仲間たちから選ばれた5名は前方に並び、短いスピーチを行った。速報では松田さんのコメント中心にお送りしたが、ここでは5位のみなさんを紹介しよう。

yuni ( サステブ )内橋 堅志さん「(e-Education)三輪さんにプレゼンを教えていただいたところから、大きく変わりました。ここにいる素晴らしいみなさんのプレゼンは、それぞれ違うけれど、どれも心に残るものがある。僕はカタパルトというものに本当に感謝しています」

サグリ坪井 俊輔さん「私はICCにスタッフから関わり始めました。本当に優勝したいという思いで、挑んで砕けてを繰り返しました。グランプリで優勝して、僕の涙の写真がTwitterで流れましたが、その写真は本当に自分も本当に3本の指に入る、自分の人生の中での思い出の写真になっていますし、優勝で人生が変わりました。
ICCとともにスタートアップをやってきて良かったと思っていますし、今後もコミットし続けます」


稲とアガベ岡住さん「僕はみなさんに負けてないことが2つあります。カタパルト3回、アワード3回、ローカル・コネクテッドでも優勝しています。合計7回ICCに挑戦していて、挑戦の数では誰にも負けていないと思います。
あとは、たぶんCo-Creationの数は圧倒的に多いと思います。この会場にいらっしゃる3分の1は、男鹿に来ているんじゃないでしょうか。(小林)雅さんには、エモいプレゼンはもうやめて、事業で示せと言われます。20周年では、僕が1位になります!」

e-Education三輪さん「ICCといえばオリィさんと私は、いつも隅でヒソヒソ話をしていたのを思い出します。2017年に呼んでいただいたとき、本当になぜこんなところに来てしまったんだろうと思いました。その時は20人が、1人12分でプレゼンをするという長丁場でした。
ICCスタンダードの『一生懸命やりきる』という言葉が、僕は本当に大好きで、ずっと救われてきました。以前に(小林)雅さんが読み上げた、『あなたの一生懸命さを、私たちは笑わない。』という言葉がありますが、ここでは本当に笑われません。
一生懸命になって生きることに立ち返られるのは、ICCだと思っています。愛のある場所って、本当に幸せだなと思います」

ヘラルボニー松田 文登さん「三輪さんのプレゼン動画は140万回再生ですが、私は4万回です。双子の崇弥はグランプリ優勝でも、まだ8,000回。だから我が家では僕の方がすごいです(笑)。
私たちが目指していることは、障害をもつ兄が喜べばいいわけではなく、兄のような人たちが幸せに生きる未来を作ること。そう強く思っています。その信念だけは曲げずに続けたいと思っていますし、それを本心から伝え続けていきたい。 10年100年続いていくヘラルボニーであり続けたい。
兄が発したこの会社名も、検索結果が0件だったのが、今は80万件くらいになっています。初めてソーシャルグッド・カタパルトに自薦で応募したときは、スタートアップという言葉すらわかりませんでした。
ICCがあったから、今があるといえるように、頑張りたいと思います。皆さん今後もよろしくお願いします!」

トップ5の記念撮影に大きな拍手が送られた。カタパルトの審査員たちから選ばれるのも嬉しいが、戦友ともいえる仲間たちから選ばれるのもまた、嬉しいに違いない。
運営を担うカタパルト・チームからの挨拶
ディナーに加わったカタパルトを運営するメンバーからも挨拶を行った。最も古くて2018年の福岡参加から、一番浅いメンバーで2024年、新陳代謝を繰り返しながら、ICCサミットの6つのカタパルトを運営している。

最も古いメンバーであるカタパルト統括の濱田 凛さんのスピーチは、運営中に多かれ少なかれ、失敗をしたことがあって、それでもなおスタッフを続けているメンバーの気持ちを代弁するものだった。
濱田さん「濱田と申します。2018年の2月から参加をしているので、今回で18回目になります。こんなスピーチの場は、9年間で1度もなく初めてで大変緊張しています。
この9年間を振り返ると。本当に良かったことや楽しかった思い出はたくさんあるのですが、それ以上に僕が思い出すことは、とんでもないミスをやらかしたこと。正直、ICCで一番最初に思い出してしまうことを話したいと思います。
忘れもしない2023年、福岡のソーシャルグッド・カタパルトで、大きなミスをしました。

皆さんご存知と思いますが、1位の発表の前に司会が 『1位を発表します』と言うと会場が暗転し、カウントダウンムービーが流れて発表されると、再び照明が点いて明るくなります。そういう凝った演出で、スタッフからするとミスれない緊張感ある一瞬なんです。私はそこで、動画とスライドの操作を担当しています。
僕のキューで真っ暗になった会場に、動画を自分の指で押して再生すると、音が一切流れないのです。真っ暗な会場にただのF1の動画が流れている。とんでもないことになりました。
この光景を、本当に年に2回か3回ぐらいは夢で見ます。2023年のソーシャルグッド・カタパルトで、HelloWorldの富田(啓輔)さんのときです」
富田さん「今、どこの回の話だろう? 僕の次かな?と思って聞いていました(笑)」
会場はどっと笑ったが、濱田さんは笑わない。自責の念で、おそらく今も思い出す悪夢なのだろう。
濱田さん「そんな感じで9年やっていて、続ける理由もたくさんあったのですが、そういうショックで辞めるに値するぐらいのこともまた同時にあったなと思っています。
それでも自分がこのICCに関わり続けた理由は何だろうと考えたときに、やっぱり最大の理由はここにいらっしゃる経営者の皆さんと同じように、自分もリスクをかけて、全身全霊で社会を前に進める存在であり続けたいという、そういうピュアな思いでICCに関わってきました。
2023年からは自分の会社もやっていますが、皆さんと同じように挑む人として、毎日生活しています。
プレゼンする人も聞く人も、人生を変えてしまう、そんな力のあるカタパルト、今回10周年ということで、とんでもなくいいカタパルトにしたい、そんな思いで我々とチーム、そして皆さんと一緒に10周年を大成功させて、雅さんとICCにでっかいはなむけをできたらいいなと思っています」

ますますテーブルでの会話が賑やかになり、各テーブルでは自主的に記念撮影も始まった。発射台を経て、これからさらに勢いを増していこうという経営者たちばかりで熱気がある。この夜は、まだストーリーの初めのほうの通過点に過ぎない。










クロージングスピーチは再び小林さんがマイクを握り、パワフルに締めくくった。
「プレゼン練習で、初めは何を言っているかわからないようなところから始まり、事業を伝えられるようになり、経営者としてテレビに出るようになるのを見る。そういうのを見ると本当に嬉しいと思っています。やればやるほどその数が増えて、やってきてよかったと思います。

いろんな産業には転用できるようなヒントがありますが、皆さんはそのヒントを知らない。
J-CATのリハーサルで聞いてすごいなと思ったことを、Oh My Teethの西野さんに伝えて、事業のヒントになったりする。
浅井(雄一郎さん、浅井農園)くんから聞いたゼスプリモデルの話を、知っていたかのようにCULTAの野秋(収平)さんに伝えたりする。
僕は皆さんの現場の学びを発見して、分かりやすく伝えて、価値還元をする。
全て本当に、皆さんにいちから教えてもらって今の僕がありますし、 ICCがあると思っていますので、偉そうにせず、知らないことはちゃんと謙虚に知る、学び続けることがすごく大切だと思っています。
投資をしていた時は、いかにリターンを出すかが大事だったのですが、今となってはカタパルトで登壇した人が世の中で活躍し、社会に価値を還元する存在になることが大切だと思っています。
これからも現役でやりたいと思っていますし、皆さんに伝えたいのは、過去の必勝ワークショップ含め、皆さんの経験値そのものが次の世代を育成する財産ですから、それをぜひ還元し、自分たちは成功するだけじゃなくて、周りの後輩にも目をかけてあげてください。
それだけで世の中少し変わってきますので、ぜひそういったことをしてください。盛り上げていきましょう!」

一人ひとりの経営者の想いから立ち上がった事業の、一つひとつが成長し、社会に少しずつ広がっていく様を私たちは10年、本当に目の当たりにしてきた。カタパルトがあったからこそ生まれた共創、Co-Creationは枚挙にいとまがない。経営者の日々の努力はいうまでもないが、プレゼンを磨いて、事業を社会に伝えようとすることで、世の中は、自分の人生は確実に変わっていくのだ。
まだまだやれる、もっとできる、未来を変える。社会に飛び出すことを恐れぬ挑戦者たちと、そんな発射台を支える仲間たちは、言葉にするまでもなくそう思っている。この10周年パーティーは、自分たちの力を信じる仲間たちが、それを再確認する夜となった。

(終)
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成


