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スタートアップの必修科目! 事業成長の実践知をプロに学ぶ「グロースキャンプ」に潜入【ICC FUKUOKA 2022レポート】

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2月14日~17日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回はDAY3の最後のセッション、D2C&サブスクカタパルトの登壇者たちが大勢参加した「グロースは総合格闘技!D2C &サブスク特化型 グロースキャンプ開校」初開催の模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


グロースキャンプ、開校!

最後日まで濃いプログラムがぎっしりと詰まったICC FUKUOKA 2022。メイン会場最後のプログラムは、2月17日の15時半から「グロースは総合格闘技!D2C &サブスク特化型 グロースキャンプ開校」と銘したワークショップが開催された。

講師はICCサミットでもおなじみのお二方、GrowthCamp山代 真啓さんと、クリエーティブ・ディレクターの北尾 昌大さん。過去のイベントでもICC参加者向けに、TVCMの作り方や、グロース戦略会議といったテーマで、惜しみなく知見を語ってくださっていたが、ついにICCサミットで2人のタッグによる特別ワークショップが開催された。

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山代 真啓
株式会社GrowthCamp
共同代表

2007年、P&G Japanに入社。 マーケティング本部にて、紙おむつブランド「パンパース」やヘアケアブランド「パンテーン」のブランドマネージャーとして日本およびアジア市場のマーケティングを牽引。2017年、株式会社メルカリに入社。 TVCM・獲得型デジタルマーケティング・CRMなど、IPOまでのマーケティング全般を統括。2018年からは株式会社メルペイにて、マーケティング・グロース責任者として、事業の垂直立ち上げを行う。2020年、株式会社GrowthCampを設立。アーリーからレイトステージまでのスタートアップ企業を対象に、プロダクト改善や大規模なマーケティング施策など幅広くハンズオンでのグロース支援を行っている。


北尾 昌大
株式会社北尾企画事務所
代表取締役
Creative Director

クリエーティブ・ディレクターとしてベンチャー企業のブランディングからナショナルクライアントの世界キャンペーンまで150社以上の企業の広告コミュニケーションに従事。650本以上のTVCMを制作。電通、Incubate Fund経て、独立。2018年英Leeds大学にてMBA取得。ドメインは「ビジネス」x「クリエーティブ」による事業成長支援。企業のクリエイティブ顧問などを歴任。http://kitao.tokyo/

彼らが口をそろえるのは、どんな施策も「グロース(事業成長)のために」ということ。マーケティングで顧客を熟知するのも、視聴者の心に刺さるCMを作るのも、すべてグロースのため。当然のように思えるが、質を高めたいあまり、いつのまにか手法に囚われてしまうというのはよくあることだそうだ。

マーケティングを熟知した山代さん、誰もが知るTVCMを多数手掛ける北尾さんは、今回のようなワークショップを二人で開催するのは初めてというが、知見がつまった約2時間は、エクストリームカンファレンスの最終日にふさわしい、最後の最後まで学びの宝庫であった。

頼りになる二人の講師

山代さん「トップラインが伸びないと、事業はきつい。”all for growth”が信念です」

北尾さん「とにかくシンプルにすることが一番大事。複雑にすることは簡単だから」

この言葉が信条だという2人、D2C&サブスクカタパルトの登壇者を始めとするD2Cサービスに関わる参加者たちに向けて、グロースのために重要な考え方や取り組むべきことについてを、数々の具体例を紹介しながら解説してくださった。

「シンプルかつ有用な理論はたくさん世の中に出ていますが、それを運用、実行することこそが難しい。今日はスタートアップ対象ということで、理論の話もしますが、どう実践するかに力点を置いて、明日やってみようというものを持ち帰っていただければと思います」

2人が考え抜いたグロースのための10のセオリーがこちら。パッと見るだけでもすでに考えさせられるが、これをもとに、ワークシートに取り組んだり、具体例てんこ盛りのオフレコ解説があったりして、文字から想起されるよりも10倍、20倍の内容がある。ワークショップに出席したみなさんも同意されるはずだ。

その一部をご紹介しよう。

ワークシートに自分の事業を書いてみる

「実践に重きを置く」という言葉の通り、参加者たちがまず取り組んだのが、PCを閉じて、ワークシートに自分の事業を10分で書き込むこと。

まずは自分のサービスについて1行で説明し、次にどういうシーンで、なぜ使われているかなど代表的なユースケースを、WHOで誰の課題を解決するのか、WHATでどんな課題を解決するかを簡潔に書く。もし自分で事業をしている人がいたら、まず書き出すことをやってみてほしい。

「なるべくインタラクティブな形にしたい」と会場を歩き回る山代さん

山代さん「せっかくなので、D2C&サブスクカタパルトウィナーの西野さんに、ワークシートを書いてみて難しかったと思うことを聞いてみましょう」

【速報】継続率97%!通院不要の新しい歯列矯正体験を提供する「Oh my teeth」がD2C&サブスク カタパルトの初代王者に輝く!(ICC FUKUOKA 2022)

Oh my teeth西野さん「歯並びが直せるサービスですが、対象となる人が多く、改めて誰のため?と考えるのが難しかったところです。

1行説明は『自宅で歯並びが治せるサービス』。ユースケースは、忙しくて歯医者に通えない・100万は高くて払えない・目立つ矯正のワイヤは嫌だ という人で、そのうえで歯並びを直したい人です。

WHOの一番は、『歯並びは気になるが100万は払いたくない』という人で、WHATは3つ、通院、価格、続けられない、です」

トラーナ志田さん「ユースケースと言われているのに、課題とユースケースがごっちゃになってしまいました。課題ばかり書いてしまい、もしかすると自分の中で整理ができていなかったのかもと思います。そこが難しかったです」

プレゼンで伝えることを磨いてきた参加者たちでも、シンプルな言葉にすることに苦戦しているようだ。さまざまな想いを込めたプロダクトゆえに、むしろ難しいのかもしれない。

スタートアップの競合とは何か?

山代さん「大きな戦略を作るうえで僕が大事にしている考え方は、『スタートアップであれば、競合はいないはず』です。

競合は『既存の習慣』であり、それを競合だと定義したときに、どうやってカテゴリーを伸ばすのかが大事だと思っています。

僕のいたP&Gは、特定の成熟した消費財市場がある中でのシェア争いでしたが、スタートアップはほとんどがシェア争いではなく、何かしらの既存の習慣があり、それをどう変えるとカテゴリー自体が伸びるのかということに、まずは力点を置いてほしいのです。

シートに書いてもらった一行説明は、実はカテゴリーのことを言っています。

そのカテゴリー自体をどうやって伸ばせばいいかをまず最初に考え、変えるべき既存の習慣は何かと考えると、そのカテゴリの定義が非常にシャープになってくると思います。

このカテゴリーを体験するお客様をどれだけ増やし、伸ばしていくかが、グロースの一番の根幹の部分です」

目が覚めたように、頭が上がる参加者たち。自分が今、書き出したものはグロースのときに意識すべきカテゴリーを指しているか、ワークシートを見て再確認している。

いかに伸ばすかに加え、戦う場所を見極めることも大事と説明した山代さんは、続いてN1インタビューで拡張性のあるユースケースを見つけることの重要性や、「差別化は無意味」というドキッとするような発言まで、マーケティングで気をつけるべきことを次々と解説していく。

ここまでで30分も経っていない。目からウロコの学びの連続に、参加者たちは目に見えて前のめりになっている。

「新しい価値を考え出すのではなく、本当の価値を探り出す」

北尾さんにバトンタッチした次の学びは、実際に具体的にどうやってクリエイティブを作っていくのか。

プロダクト、プレイス、プライス、プロモーションというマーケティングの教科書にある「4P」のすべてを使ってグロースのお手伝いをしているという北尾さんは、マーケティングは企業と社会のコミュニケーションと捉えている。

北尾さん「グロースのためには、この『4P』のWHO、WHAT、HOWを考えまくることだと思います。今回のWHOは誰か、HOWはどうか。そしてそのPDCAを回していくことだと考えます。同じプロダクトのCMでも、テレビ、タクシーの中、ウェブで見せるには違います。WHO もWHATも変わってくる」

山代さん「WHO、WHAT、HOWは万能な整理ツールです。誰に何をどう伝えれば、自分のカテゴリーは伸びるのか。それをシンプルに考えることができたら、絶対に事業は伸びます。まだきれいに説明ができないならば、WHOとWHATの見極めが足りないです」

CM製作を依頼された企業にヒアリングをする際に、どうやってWHO、WHATを深く理解をしていくか。手掛けた例を上げながら、北尾さんの思考とアクションのプロセスを丁寧に説明していくくだりは、腹落ち度満点だ。北尾さんの経験によると、発注元でもWHOとWHATが決まっていないことは多いという。

「ワークシートの『一言説明』を機能から価値に置き換えてください。

新しい価値を考え出すのではなく、本当の価値を探り出す。

ビジョン・ミッションを作ってくださいという依頼も多いのですが、起業家の中にその答えはある。

広告の便益訴求ならば、お客さんはなぜ使っているかを考えればいい」

WHATの決め方で「何を言えば価値と感じるかな?」が大事、というときの北尾さんの説明だ。こういった金言が次から次へと出てくる。

彼らの目には、自分たちの事業はどう見えるのか。参加者たちは質問したいことでうずうずしている。

KAPOK JAPAN深井さん「事業の拡張性をどう解釈すればいいか。市場規模や強い競合など」

Spir大山さん「日程調整のサービスは数多ある、カテゴリーをどの軸で絞ればいいか?」

SEAM石根さん「差別化と独自性の違いとは? 独自性をどう探せばいいか」

「事業の成長に従って、ターゲットを広げていくときの難しさ」
「ユースケースを2パターン見つけたときに、WHOとWHATも2パターンある。その方向性が違うときに、どうブランディングをコントロールすべきか」
「ブランドとして伝えたい層と、想定していた層と違う層が売れているとき、ファウンダーはどちらを選ぶべきか」
「訴求を機能から価値へシフトしていくときに、どういう考え方をすればよいか」

次々と参加者たちから質問が飛ぶ。経営者たちの切実な課題に「自分ならばこう考える」と北尾さん、山代さんは交互に回答していくが、ときには二人の回答がそれぞれに根拠があってばらけることも。考え方は一つではなく、決まった正解はないというのもまた学びではないだろうか。

実践インプットも多数

ICCサミットでもおなじみのairClosetBASE FOODのCMも紹介され、解説を聞くとCMが変わって見えてくる。参加者たちはこの日を境に、CMの短いフレーズに何が込められているのか、この場面は何を訴求しようとしているのかなど、WHO、WHATは?など、気になるポイントが変わったはずだ。

消費者向けのコミュニケーションの基本的な考え方のインプットもあれば、事業グロースに関する実践的なインプットもあったもあった。

LTV(顧客生涯価値)やCAC(顧客獲得費用)の考え方、「指名して検索される」ことの重要性、モーメンタムの組み立て方、トライアルの機会提供(メルペイのおにぎり11円キャンペーンの話など、興味深いエピソード満載)、顧客が顧客を呼ぶ仕組み(招待キャンペーンの例)、デジタルとテレビなどのマーケティングをどう掛け合わせていくか、etc.……。

次から次へと、知りたいことのオンパレード。施策のメニューは知っていても、それをいかに効果的に使うかはやり方次第。最高の施策があっても、何をKPIにするのがよいかなど、効果検証まで具体的な解説があった。これはワークショップでぜひ学んでいただきたいため詳細はオフレコとしておく。

当初2人が予定していたことは、最初に書いたワークシートを最後にもう一度書き直すことだったが、参加者たちの質問したそうな雰囲気を察して、最後は再び時間いっぱいまでQ&Aとなった。

「奇抜なCM案を出されたとき、それでOKといえる自信がない」「ユーザートライアルのKPI、何ができたら成功だったと考えるべきか」こういった質問でも、さまざまな事例を加えて回答していく。もし成長戦略で悩みがあれば、このワークショップで解決し、起業家たちの共有知としてほしい。

最後に記念撮影

北尾さん、山代さん共々「仕事でなくても考えて答えるのが好きなので、気軽に声をかけてください」と口を揃えており、ワークショップが終了したあとも、話をしたい人たちが2人を取り囲んでいた。2人ともカタパルトをしっかりと見ており、プレゼンに対してかなり具体的な感想もフィードバックしていた。

今回は初開催で、カタパルトと連動した企画であったためD2C縛りであったが、次回のICC KYOTO 2022は、DAY1のスタートアップ・カタパルトの裏の時間帯でワークショップを開催する。

スタートアップに非常に学び多きワークショップだが、あらゆるステージの企業にも学びがあり、あらゆる施策の課題に対する学びがあること請け合いだ。もし出席できなくても、お二人の言葉に甘えるならば、会場で見かけたら事業成長の悩みを相談してみてはいかがだろうか。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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