既存の産業構造を変える為に規制や既得権益とどう向き合っていくべきか?【SP-MN2 #4】 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

既存の産業構造を変える為に規制や既得権益とどう向き合っていくべきか?【SP-MN2 #4】

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これまでに配信した、経営に関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 から、「新しい成長分野を創る経営とは何か?」を9回に再編集してお届けします。9回シリーズ(その4)は、日本交通の川鍋さんのお話しから、既得権や規制とどう向き合い働きかけるか?ということを議論いたしました。是非御覧ください。

▶本セッションでモデレーターとしてご登壇頂いた岡島悦子さんの著作『40歳が社長になる日』(幻冬舎)が出版されました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。


登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 5A
「新しい成長分野を創る経営とは何か」
 
(スピーカー)
川鍋 一朗
日本交通株式会社
代表取締役会長
 
川邊 健太郎
ヤフー株式会社
副社長執行役員 最高執行責任者
 
田中 良和
グリー株式会社
代表取締役会長兼社長
 
(モデレーター)
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

「新しい成長分野を創る経営とは何か?」配信済み記事一覧

【前の記事】

【本編】

川鍋 昔うちでは観光バスもやっていたのですが、観光バスは虚しいなと思ったことがあります。

上に旅行代理店が入っているので、いっくら乗務員を教育したり、いくらいいバスを買ったりしても、「それで、おいくらですか?」で終わってしまうんですよ。

そうすると、下請けの悲哀みたいなところに入ってしまって。

そういう意味では、ニューヨークのタクシーキングで「俺の血は黄色い」と言い張っている男がいて、そのロン・シャーマンという男に、3年前こう言われたんですよ。

「一朗、お前は東京のタクシーキングか? 頑張れ。俺はニューヨークは守る」と。

▶︎編集註:NYには「イエローキャブ」と呼ばれる黄色いタクシーが走っています。

「だけど、ボストン、シカゴの俺らの友達は皆生ける屍だ」と。そして、「シリコンバレーにいる奴はとにかく頭が良くて、死ぬほど金を持っている。普通にやったら勝てないぞ」と。

「俺は俺の城を守る。お前はお前の城を守れるように頑張れ」と。

激励されているのだか何だかよく分からなかったのですが、要はニューヨークのタクシーだと、ニューヨークシティーなので、市議会議員60人くらいおさえると、相当おさえられるということですね。

市長を抱きこむという相当なロビーイング能力があるんですね。これで色々戦えるんですよ。

そして東京に帰ると、全国一律の業界なので、これまた戦い方が色々と難しいのですが、要は、まともにぶつかったら勝てない、ではどうやって勝つかというのを考えなければならないんですよね。

ただ、日本は、労働環境やタクシー業界の成り立ち自体が、やはりちょっとガラパゴス的なんですね。諸外国だと、タクシー運転手自体がそもそも業務請負で、雇用ではないんですよ。

海外のタクシーは、プロのタクシー運転手向けのレンタカー会社みたいな感じです。そうすると、運転手が速攻でUBERなんかを配車しても、タクシー会社は文句を言えないんですよ。

日本は雇用して正社員なので、UBERで配車したら「就業規則違反だ」と言えるんですよね。

川邊 まさかこういう会話で既得権益の守り方を聞けるとは思わなかったですね。(笑)

(会場笑)

川鍋 すみません。(笑) イノベーションですね。

川邊 いや大事ですよね。

「既得権益」や「規制」との向き合い方

川鍋 そうすると、日本の中でのタクシーアプリのイノベーションというのは、やはりタクシー側をおさえることだと思った訳です。

それで、今、タクシーのアプリだけではなくて、タクシーのメーターや、タクシーに必要な様々なデバイスを作っているところなんですよね。

そうすると、安く売るとかなり喜ぶし、そこに今的に言うところのIoTなんですけども、例えば、運転の荒い運転手さんがいたら、それを自動的に検知して「荒くするなよ」と言って、彼のコストが下がるとか、そういう風に持っていけるんですよね。

そうすると、やはり運転手さんの運転が荒くなくなり、きちんと統一のとれた感じになってくる、という風に非常なるイノベーションが起きるんですよね。

それは、このガラパゴス的な環境の中でのイノベーションの仕方だと勝手に思っています。

田中 私も今のお話に感銘を受けるところがあります。

先程、広義の生活産業と言いましたが、これから大きなビジネスを日本でやるためには、仰ったような市議会議員がどうなっているのかということから、その産業がどういった歴史を経て存在しているのかを知らないことには産業に大きなビジョンなんてできる訳がありません。

私は今みたいな話こそ、まさにこのウェブ業界で広めていかなければならないと思っています。

これがイノベーションだと思うんですよね。

岡島 その業界のプラットフォームを取っていくようなことをすると、絶対に規制や既得権益とぶつかるじゃないですか。

多分、川鍋さんはそこを中にいる立場から戦っていらっしゃるのですね。

川鍋 そうです。自分の立ち位置からの戦いですよね。

岡島 でも、田中さんが仰っていることはすごく正しくて、あまりナイーブにそこを「いやいや、既得権益が」と議論しても仕方がなくて、ゲームを変えていくみたいなことで言うと、きちんとパワーをとっていくみたいなことなのでしょうか。

川邊さん、いかがでしょうか。

インターネットという新大陸から政治へどう働きかけるか?

川邊 今まで我々はインターネットという新大陸の上で好き勝手にやっていて、それがある程度膨れるところまで市場が膨れて段々成熟してきたので、もっと他の所へ行こう、と。

1つがスマートフォンですよね。違うデバイスに行こう、と。

もう1つが、今、田中さんや川鍋さんが仰っている、既存の事業にインターネットを持ち込んで、何か新しい価値を生み出そうということです。

ここは、もともとやっていた人たちがいる分野ですから、当然、規制があり既得権益者もいます。

これを調整しているのは、実は政治な訳ですよね。

だから、政治に対して我々が今まで無関心でいられたのが幸せであって、むしろ政治に対してきっちりと意見を言っていかないといけないと思うんですよ。

Yahoo! JAPANでは、これまで政策企画本部という部署が、政治というより、官僚に対しての働きかけを担当してきました。

政治に対しては、唯一三木谷さんだけが、やはり新経済連盟を作ってそれなりの働きかけをしています。

やはり三木谷さんは偉いと思いますよ。

別に、私が上から目線で「偉い」なんて言う必要はないのですが。(笑)

ですから、新経済連盟からきちんと議員を出すとか、あるいは今いる既存の議員の方と、お話して、こうやって規制をかけない、あるいは規制緩和をすれば日本の市場にもっと付加価値が出るということを、政治に対して説明していくことが必要だと思うんですよね。

岡島 ネット側で私たちがやっていると、どうしてもサイレントマジョリティになりやすいですよね。

人口分布上で考えると、実はサイレントマジョリティになる人たちの方がすごく多いのに、何となく既得権益者の声と戦わないできてしまっているというところがありますよね。

川邊 守っているのがカッコ悪いといった、そういう感覚は我々の中に間違いなくありますよね。

けれども、それは生きるために守っている訳で、そこに入り込もうとしている訳だから、こちらも戦わないとダメですよね。

だから、そういう時に政治が果たしている役割というのは、相当大きいとは思います。

川鍋 私、今服装的にも真ん中にいる感じがしています。

実は、今朝、議員会館で◯◯党の先生に会う必要があったので、スーツかなと思ったのですが、ここにスーツで来たら俺は負けだと思ってですね。

さっきまでネクタイをしていたのですが。

言えることは、新大陸も旧大陸も、どちらも真実だということです。

けれども、意外と行き来が少なくて、それをどうつないでいくかというのは、これから特にコンシューマー向けとか、IoTもそうだと思うんですよね。

それってそこの戦い方、例えばファイナンスとか、そういうものの一つとして、やはり政治との向き合い方とか、行政とのやりとりというのは1科目としてあるはずで。

インターネット的考え方だと、素晴らしいプロダクトを出せば自然発生的に売れるはずだというような感覚があって、あまり人と会って話したり、ロビー活動をしたりするのは潔くないというような感覚があるのだと思います。

けれども、やはり正しいことは口に出して伝えないと伝わらないし、しかも伝える人…よくインターネット業界の人が、「これはね、自民党のナントカ先生が素晴らしいと言ったので、政治的にOKです」といった話をしていて、「いや、そういうものではないよ。政治家なんて700人もいるのって知ってる?」みたいな。

要するに、政治家の中でも意思決定プロセスみたいなのがある訳です。公民なんかに書いてあるので、そんなに難しいものでもありませんが。

基本的に政治家の先生も、行政の人たちも、決して馬鹿ではないですし、既得権益を守ろうなんてあまり考えていないですよ。

むしろ、既得権益を守ろうというのは業界の人たちで、行政なんかは、むしろ崩したいと思っている方なんですね。

ただ、そこに正しいタイミングで、正しい人にアプローチをして、きちんと話を入れていかなければなりません。

一生懸命来てくれて話を説明してくれて聴いてくれたら、そちらにシンパシーが行ってしまうということは、やはりある程度重視していかなければなりません。

私も、友人に「日本でUBERが広まらないのって川鍋さんが止めているんだって?」のようなことを時々言われるのですが、「いやいや、そうではないんです」という。

川邊 やはり最後は、日本経済団体連合会と新経済連盟でどちらのロビーイング力が高いのかという勝負になってしまうんですよね。

ちなみに、Yahoo! JAPANは新経済連盟に入っておらず、日本経済団体連合会に入っているのですが。(笑)

(会場笑)

川邊 内から入るべく、入っているんですけれど。

だから、本当に既存のビジネスをやるというのはそういうことなので、ありとあらゆる方向から、そういう力をつけていかないといけないですよね。

田中 川鍋さんのお話に興味があるので、私も質問をさせて頂きたいです。

私がまさに同じような仕事をしていたらどうしようと、誠に勝手ながら想像しています。明日からタクシー会社をするように言われたらどうしようと、よく妄想しているのですが。

下手をすると例えば農業界でよくあるように、アメリカから来たんだけれど、短期的には日本の法規制などで色々と防御というか守り切っているんだけれど、守り切って守り切っている間に衰退して、最後に飲み込まれる時に、壮大に飲み込まれてしまって、だったらとっとと外圧に屈するか、デジモンを作るのかした方が長期的に生き延びられたのに、というパターンも今までの日米通商構造だとあると思うので。

私も一概に、色々な安全を守るために、UBERが全ていいんだと言うつもりは全くありません。

とはいうものの、巨大なアメリカ資本、アメリカパワーとどうやって戦っていくのかという中で、上手く最終的には折り合いをつけていかないと、よくない日本のパターンとなる可能性もあるなと思っています。

それについてはどうお考えですか?

川鍋 そこは日々ジレンマですね。

何が正義なのか、何が世のため人のためなのか、ということには日々悩んでいますよ。

私の立場は、何となく攻めたいというか、もっとやりたい気持ちもあるけれど、自分は東京のタクシー協会の会長ですし、全国の副会長としても、そうはいってもやはり3代目なので…

岡島 まさにイノベーションのジレンマというものでしょう。

川鍋 村の人たちが死んでいく中で、私だけがあちらの船に乗り換えて、さよならと言って行けないな、と。

では、外圧によって死屍累々になるのがよいのか。

外圧を利用しながら中を変えるという手法もあるんですよね。

恐らく健全な競争みたいなものもあるので、そこはルールに則ってやればいいと思っていますね。

▶本セッションでモデレーターとしてご登壇頂いた岡島悦子さんの著作『40歳が社長になる日』(幻冬舎)が出版されました。ぜひ御覧ください。

(続)

続きは 既得権益との戦い方は経営者のキャラ次第 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子/藤田 温乃

【編集部コメント】

続編(その5)では、その4に引き続き、既存の制度や権益等との向き合い方について議論を深めました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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