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ICC FUKUOKA 2025のセッション「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」、全6回の④は、ビールを中心としたエンタメ事業で新しい「あたりまえ」を作るヤッホーブルーイング 井手 直行さんが登場。クラフトビールファンに美味しさと幸せを届けながら、世界初エンタメブルワリー開業に挑むヤッホーの取り組みを、ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ココナラ です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 5C
「あたりまえ」の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?
Supported by ココナラ
(スピーカー)
井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
工藤 萌
スープストックトーキョー
取締役社長
小林 兼
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
執行役員 開発本部 副本部長
福田 恵里
SHE
代表取締役CEO / CCO
松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
嶋 浩一郎
博報堂
執行役員 エグゼクティブ クリエイティブディレクター
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▶「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」の配信済み記事一覧
嶋 では、てんちょ(井手さん)に、ビールのお話をしていただければと思います。
クラフトビールで幸せを届ける、ヤッホー 井手 直行さん

井手 僕らにはクラフトビールのよなよなエールという看板ビールがあって、それ以外にも色々なクラフトビールを作っているのですが、ミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」で、これを一番大事に思っています。
昔はビールと言うと画一的な味しかなかったのですが、色々な味のバラエティを提供して、ただ美味しいだけではなくて、人生に幸せをお届けしたいという思いがあって、ビールを中心としたエンタメ事業と括っているのが我々です。
実は今日の登壇者の皆さんよりだいぶ前に創業していて、なかなか苦戦して、この「あたりまえ」を作ろうとして、もう28年ぐらいやっています。

自己紹介ですが、フラフラしていて、創業時に入社しました。
ビールを造っている会社ですが、例えばGreat Place To Work®に、働きがいのある会社として9年連続で選んでいただいたり、有名なコトラーアワードジャパンという(“マーケティングの神様”フィリップ・コトラー氏が開催する)アワードの最優秀賞を取ったり、ポーター賞という戦略の賞を取ったりと珍しい会社です。
▶「働きがいのある会社」9年連続ベストカンパニー選出(ヤッホーブルーイング)
▶日本初開催「コトラーアワードジャパン 2018」 でヤッホーブルーイングが最優秀賞を受賞(ヤッホーブルーイング)
▶ヤッホーブルーイングが2020年度「ポーター賞」受賞(ヤッホーブルーイング)
組織とマーケティングと戦略の話が後でつながるので、紹介させていただきました。
まず「とりあえずビール」をやめたかった

井手 嶋さんからお題を出されたので、新しい「あたりまえ」とそれが実現した社会を僕らなりにどう考えているのか、キーワードを挙げてみました。
ミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」ですが、20年ぐらい前は、大手さんのいわゆるご存知のビールしかなかったのですね。
同じ味わいでちょっとずつ味が違うというビールではなくて、色々な味のビールをつくっていきたいなと思ったわけです。
そういう世の中になると何が起きるか考えてみて、「とりあえずビール」をまずやめたいなと思ったのです。
ビール会社には大手4社があるのですが、「とりあえずビール」というのは、最初の一杯目は銘柄を指定せずに「とりあえずビール」と言うわけです。
外国の旅行者が「とりあえずビール」と日本人が言うから、「とりあえずビール」というブランドを1つお願いします、とか、そんなオチもあるような時代がずっと続いていたのですが、そんなことがもうなくなりました。
「香りがすごくいいビール」「酸っぱいビール」「フルーツ味のビール」「苦味がすごいビール」のように、ちょうど今日の気分に合った美味しいビールがあるような世界を作っていきたいなと思っています。
ただ、ビールとして味が美味しいだけでなく、そのビールを通してその人の人生が幸せになるような色々な環境をお届けしたいなと思って活動しています。
でも、それは結構大変で、本当に長くやっていても未だに大変です。

地ビールブーム終焉後、ネット通販や新しい市場を開拓

井手 そもそも、1997年に創業した時は地ビールブームが起こり、全国各地に地ビール会社ができたのですが、ブームが終わって、すぐに売れなくなったのです。
スーパーや酒屋さんでも売れなくなって絶望している時に、一番前の席に座っている楽天の小林 正忠さんが、楽天の事業を一生懸命やるかということで声をかけてくれて、楽天市場さんと一緒に協業しながらネット通販に取り組みました。
スーパーの商圏にファンは1人か2人ぐらいしかいないけれど、インターネット上だったら色々なところでビジネスに値するぐらいの売上が取れたので、これをきっかけに、また口コミでジワジワ酒屋やスーパーで扱い始めてくれました。
今でも覚えていますが、いち早く2006年にローソンさんが、「君たち面白いビールを売っているね、ローソンでやろうよ」と言って、たまに置いてくれるようになりました。
今は、ローソンの90数%のお店でうちのビールを何種類か置いてくれているので、ローソンに行けばほぼ今うちのも含めたクラフトビールが買えるように少しずつなってきています。
今、ビールを中心としたエンタメという形で、世界を作ろうとしている一つの例が、先ほど小林さんがお話しされたファイターズのエスコンフィールドです。
センターのバックスクリーンの一番良いところに、世界で初めて、そこでビールをつくって、観戦までできるレストラン(そらとしば by よなよなエール)を、こんな長野県の田舎の小さな会社に声をかけてもらって一緒になって作りました。
「僕らはただのビール屋ではなくてファンを喜ばせるファンイベントもやるし、ブルワリー見学ツアーもするし、何だったら北海道の人たちをみんな集めてコミュニティも作るし、世界中の観光客をクラフトビールの魅力で連れてきます!」なんて大きなことを言って、仲間になっていったようなことが、だんだん今各地で起きてきているというのが現状です。

あとは体験と知恵ということで、今まで長くやっているのですけれども、新しい市場や既存の市場の常識では生まれない、一昔前の大手さんの味わい以外のビールとして、よなよなエールはかなりスタンダードになってきました。
色々な味は、昔は受け入れられなかったから「売れないよ」と言われましたが、そこで諦めずに色々なバラエティがある味を出しました。
価格は高くなりますが、高くても売れます。
「よなよなエールなんて、変な名前だから売れないんだよ」「なよなよしているから売れないんだよ」と言われたりしましたが、今は「いい名前だね」と、27年経って、昨年日本ネーミング大賞を取ったのですよ。
▶「よなよなエール」が日本ネーミング大賞優秀賞を受賞(ヤッホーブルーイング)
嶋 おめでとうございます。
(会場拍手)
井手 ありがとうございます!
流通も、「インターネットなんかでは売れないから」と言われましたが、楽天市場と協力して、インターネットで口火を切りました。
大企業ではないので、だいたい小さく生んで大きく育てるというやり方をしてきました。
ビジョンが「ワクワク」というのは、20数年前のまだ小さな企業だった時は、オリオンビールをイメージして、僕らはオリオンビールみたいになると言っていました。
ビール好きはみんな、よなよなエールを知っていて、飲んだことがあるみたいに想像して、そんな話をしていたのです。
「未来は『抽象的』」というのは、ファイターズさんと組んだり、来年、泉佐野市さんと組んで関西空港の次の駅のところに、まだ誰もみたことがないエンタメブルワリーを作ったりすることです。
▶大阪にできる体感型ブルワリー「よなよなビアライズ」ついに着工!(よなよなの里)
ビールをつくりながら、楽しいテーマパークを泉佐野市さんと一緒に作っているのですが、「5年後には何をやっているかわからないけれど、ビール中心のエンタメで、みんなが喜ぶことをやっているんだ」みたいなことを最近は社内で言っています。
それに共感した人しか採用しません。
ブレイクスルーポイントは、地ビールブームのほかにも色々あって、コロナ禍で大手が苦戦している時に、家で美味しいこだわりのビールを飲みたいという巣ごもり需要がずっとあり、ものすごく成長しました。
そうやって、歯を食いしばって食らいついてきました。
1社では無理でも、共感する人を巻き込めばできる

井手 最後ですが、「あたりまえ」を実現するのに何が大事なのかというお題を頂いた時に、「やりたい動機と信じる力」を挙げました。
人はできない理由を言いたがるものですが、そうではなくて勉強することが必要です。
なぜ売れないのかを勉強し、マーケティングがいけていないとわかったらマーケティングを勉強し、戦略がいけていないとわかったら戦略の勉強をしました。
一人で頑張ってもだめだから、いいチームを作らなければということで、働きがいがある会社を目指し、というように1個ずつ、諦めないために、あの手この手でやってきました。
「用意周到にやれば、時間がかかっても実現できるはず」「諦めなければ失敗はない」と、ここまで書いて、スライドを提出したら、昨日、移動中の空港ラウンジで、NewsPicksに「あたりまえ」についての動画が2本上がっていて、先ほど嶋さんが話していたことが出てきました。
これを大前提に、皆さんが持ち帰りやすいように、もう1個ブレイクダウンした大事なことを言います。
真ん中に「仲間」と書きました。
僕たちのビールや新しい世界に共感してくれた方がファンになり、ファンがどんどん増えていった時に、それをつなぐようなファンイベントを、僕らはやり出しました。
そうしたら、ローソンさんも「面白いね、一緒にやるか」と言ってくれて、流通にかかわる方々、最近ではファイターズさん、自治体の泉佐野市も仲間になってくれました。
ブレイクダウンして言うと、1社ではできないことを、共感する人を巻き込みながらやることが、今日のテーマに合う内容で、大事なことかなと思います、というところで、終わりにしたいと思います。
嶋 ありがとうございます。
今のお話は学びがたくさんあって、「あたりまえ」は、ここで完成ということがないですからね。
ずっと長年やっていて、変化していく中で、一番良い状況を作り続けるということだと思います。
“相互送客”のメリットを実感
嶋 あとはマルチステークホルダーの話で、価値観の違う人たちが一緒になった時のほうが強いという点で、ファイターズの立場として、小林さんは今楽しいですか?
自分だけではできないことが、たくさんできているのではないですか?

小林 楽しさとビジネス的な利点があり、相互送客が本当にあるのだなと感じています。
よなよなエールのファンが球場に来てくれたり、逆にファイターズファンが初めてよなよなエールを飲んでファンになったりという実際のメリットもあって、すごいことをやったのだなと感じますね(笑)。
井手 一昨年3月に球場ができて、年末にファイターズの役員の前沢(賢)さんや三谷(仁志)さんのところにご挨拶に行って、実働部隊で一番偉い人たちに、「我々は結構頑張って、いい感じで盛り上げたと思いますが、期待値に対してどれぐらいでしたか? 正直に言ってください」と恐る恐る聞きました。
そうしたら、「200%です!」と言っていただいて、震えるぐらい嬉しかったです。
ありがとうございます。
小林 ありがとうございます。
嶋 工藤さんの会社も、同じ目標、同じ未来を目指して、異なる価値観のプレイヤーと一緒にされていることも多いと思いますが。
工藤 そうですね。
私たちも産地の方や実際にスープを作ってくださる仲間は、同じ目的に向かって、共感者を増やしていると思っています。
私は、井手さんのポーター賞の受賞時の動画が大好きで、何回も見ていますが、そこでご自身のビジネスをエンターテイメント事業であると定義をされていたと思います。
▶ポーター賞受賞企業スピーチ ヤッホーブルーイング井手 社長&コメンテーター 一橋ICS教授 楠木建‗競争力カンファレンス program4-3(Porter Prize YouTube)
「自分たちのビールを売ってください」では誰も共感しないけれども、エンターテイメントであるという定義の広げ方をすることで仲間が増えていって、熱狂し、共感が増えていくのだなと、改めて勉強させていただきました。

(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


