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ICC FUKUOKA 2025のセッション「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」、全6回の③は、障害のある人の一歩を踏み出しやすくする新たな価値観を作るヘラルボニー 松田 文登さんが登場。勝負をかけたコロナ禍の百貨店出店の意図、ヘラルボニーとのライセンス契約で確定申告をする作家が出現したことなどを語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ココナラ です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 5C
「あたりまえ」の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?
Supported by ココナラ
(スピーカー)
井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
工藤 萌
スープストックトーキョー
取締役社長
小林 兼
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
執行役員 開発本部 副本部長
福田 恵里
SHE
代表取締役CEO / CCO
松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
嶋 浩一郎
博報堂
執行役員 エグゼクティブ クリエイティブディレクター
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▶「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」の配信済み記事一覧
嶋 では、ヘラルボニーのお話をお願いします。
障害のある方が一歩を踏み出しやすい新たな価値観を作る、ヘラルボニー 松田 文登さん
松田 ありがとうございます。
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松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
ゼネコンにて、被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共にへラルボニーを設立。4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、福祉を起点に新たな文化の創造に挑む。ヘラルボニーの国内事業、主に岩手での事業を統括。岩手在住。双子の兄。Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」選出、第75回芸術選奨(芸術振興部門)文部科学大臣新人賞 受賞。著書「異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―」。
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岩手でまちづくりをしていく中で、絶対押さえておいたほうがいいと思い、エスコンフィールドに行って、勉強させてもらいました。
小林 ありがとうございます。
松田 「障害者」と聞いた時に、ネガティブな気持ちを連想する人の割合は84%です。
ヘラルボニーに出会う前と出会った後で、障害のイメージがどのように変わったか顧客アンケートを自社で取ったところ、より良い方向に変わったと言っている方々が、7割以上に上りました。
障害のある方たちや色々な方たちが一歩踏み出しやすい、そういう市場の拡張以上に、思想が拡張された先に市場があるのだという新たな価値観を強く作っていくことを目指しています。
ぶっちゃけトークをできたらいいなと思い、人生初のセレクトショップ展開の話をします。


「広告費として実績を購入する」ために、TOMORROWLANDとコラボレーションしたのは、会社の設立2年目で、勝負の時でした。
▶TOMORROWLAND × MUKU|全国のトゥモローランド店舗で販売開始! (ヘラルボニー)
フラッグシップショップのTOMORROWLANDで売れ行きが良ければ大量に発注をもらえると考え、色々な方々に連絡して、新しい「あたりまえ」を作っていくためにTOMORROWLANDで買ってほしいとお願いしました。
最終的にZOZOTOWNでハンカチの月間売上ランキングの2位を獲得しました。

全く実績のない時に、どういう形で新しいスタンスを強く作っていくのかは、非常に大事だと思います。
設立2年目のブランドながら一等地の百貨店で勝負
松田 コロナ禍で人がどんどん撤退していく百貨店は、新参者の設立2年目のブランドでも一等地で勝負できる状態でした。

あえて一等地で、「あたりまえ」に勝負できるんだというスタンスを提示していく意味で、勝負しました。
スタートアップとして新しく挑戦していく中で、どうやってそのモメンタムを圧倒的に強く作っていって、それを「あたりまえ」に見せられるのかも、非常に重要だなと思っています。
今はそんなことはもちろんしませんが、比較的人件費をかけずに、圧倒的なインパクトのある場所に出ていきました。

知的障害・自閉症の方が確定申告をする作家に
松田 「ヘラルボニーが参加権になる未来」というもの自体が、今だと「あたりまえ」に作品で見てもらえるようになり、色々な形でタッチポイントが増えていきました。
ここには、障害のある親御さんや色々な方々が「あたりまえ」に来ています。





当事者や家族がここに来ていいのだという状態が、強く作られているのではないかと思います。

こちらは実際に、親御さんから頂いたメッセージです。

障害のある娘さんが生まれて、「私ってかわいそうなんや」と言っていた親御さんですが、阪急梅田で展示を見て、感動したと連絡をくれました。
今までは、障害のある方のアートとなった途端に、市役所の一角やカフェの一角という、どちらかと言ったらCSR、SDGs、ソーシャルデザインみたいな枠の中で飾られていました。
そうでない形をどう作っていけるのか、親御さんも求めていますし、そういう部分が作れるかなと思います。
こちらも知的障害、自閉症のある作家さんで、今では確定申告をする作家さんになりましたが、ずっと変な子だと言われてきたので、今の状態は夢のようだということでした。
これが新しい「あたりまえ」です。

昨日から確定申告が始まったのですが、その他にも続々とヘラルボニーから確定申告をする作家が現れ始めています。

今までのCSRやSDGs予算から、マーケの予算へ
松田 他社とのプロジェクトは、JALの機内食だったり、異彩のアート×ボールペンなどがあります。
▶JAL | HERALBONY 特設サイト (日本航空)
▶PILOT Juice up×ヘラルボニー 「異彩のアート×ボールペン」思うままに かく をこえる (PILOT)

トゥモロー・ウォーターは、買うたびに作家にアート使用料として還元されていく仕組みです。
▶ヘラルボニーとTIGRIS「明日をちょっと良くする」アートな天然水、10月1日よりNewDaysで販売開始(ヘラルボニー)
最近強いなと思うのが、大王製紙の生理用ナプキンで、今までトイレに行く時に隠して持ち運んでいた生理用品でしたが、むしろ隠す必要のない状態を作れると、SNS上で大きく話題になりました。

▶ヘラルボニーの契約作家7名のアートが個包装にあしらわれた生理用ナプキン、6月1日(土)より全国販売(ヘラルボニー)
その結果、今まではCSRやSDGs予算でしたが、今では7割以上がマーケやブランド担当者からご相談いただける状態に、ヘラルボニーは変わってきています。

売れるようになってきていることが、非常に重要だなと思いますし、ゼクシィもSNS上で非常にバズったのですが、LGBTQの方々が結婚の誓約書を書けるような仕組みをゼクシィさんと一緒に作りました。
▶『ゼクシィ』がヘラルボニーの契約作家とコラボ!全てのカップルが使える「ふうふの宣誓書」が付録に(PR TIMES)
実態はないけれども、それを良しとするような文化を作っていくところをご一緒するという、新たな「あたりまえ」をどんどん作っていきたいなと思っています。


以上です、ありがとうございます。

ネガティブをポジティブに変えるコラボレーション
嶋 工藤さん、スープストックトーキョーもすごくダイバーシティを大事にしていらっしゃる会社だと思うのですが、いかがですか?
工藤 萌さん(以下、工藤) 「あたりまえ」を作るということは合意形成だと、嶋さんの本にも書いてありました。
ヘラルボニーがやっていることは、ハンカチや絵を買ってくださいということではないので、ヘラルボニーは「何屋」だと思っていらっしゃるのか、聞いてみたいなと思っていました。

松田 何屋なのでしょう。
ネガティブをポジティブに変えられる会社だとは思っています。
例えば今回、エリエールのエリス・コンパクト・ガードがなぜ売れているかと言うと、もともとネガティブだったものをポジティブに変えられていて、そういうもののコラボは爆発的に売れるのですよね。
▶「エリス コンパクトガード ヘラルボニー企画品」新発売 (大王製紙株式会社)
思想をポジティブに変えられるコラボレーションがどんどん生まれていくと、多分結果としてそこを変えられるのかなと思いますね。
工藤 ありがとうございます。
スープストックトーキョーは、「世の中の体温をあげる」という企業理念を掲げてやっている中で、スープ屋だけどスープ屋じゃないと、常日頃からよく言っているのですよね。
▶︎「わたしたちの理念」世の中の体温をあげる(スープストックトーキョー)
では、何屋かと言うと、「体温をあげる屋さん」だと言っています。
普段から「あたりまえ」を作ろうみたいな感じで活動しているわけではないですが、自分たちが何屋なのかという自覚によって活動は変わるなと、改めてヘラルボニーのプレゼンテーションから学ばせていただきました。
松田 ありがとうございます。
丸くならずNOを突きつけるスタンスを示していきたい
井手 松田さんがICCサミットに初参加か2回目ぐらいの時のCo-Creation Nightで、僕がよなよなエールを飲みながら、松田さんと色々話をしたことがあります。
その時の私のイメージは、すごく面白いビジネスですごく社会性もあるのですが、1つだけ気になっていたのが、当時の松田さんのエネルギーのある一部は、世の中に対する反発や怒りみたいなものでした。
でも、やられていることが素晴らしいから、あまりそういうところを出すよりも、ポジティブなところを伝えたほうがいいと思って、ネガティブなところが見え隠れすることにちょっと違和感がありましたが、最近全然そういう匂いがしなくなっています。

松田 本当ですか。棘が抜けているみたいな言い方ですが、棘はあります。
井手 2年か3年ぐらい経って、その時の印象とだいぶ変わったなと思いましたが、何かあったのですか?
松田 いえいえ、そんなことはないです。
逆に、もっともっと自分たちのスタンスを大事にしていこうと思っています。
昨日もヘラルボニーの全社会がありましたが、今年(2025年2月)のスーパーボウルでケンドリック・ラマーがどれだけスタンスを示し続けていたかという話をしました。
スーパーボウルのハーフタイムショーでは、白人たちが誰も出演しない状況のなか、ケンドリック・ラマーが今のトランプ政権に対しての色々な皮肉から、何かを表現していたのではないかと言われています。
▶徹底解説:ケンドリック・ラマー、スーパーボウルハーフタイムショー (discovermusic.jp)
私たちも同じように、ちゃんとNOを突きつけるスタンスを示していかないといけません。
社会性のあるブランドの難しさは、丸く、丸くなってしまうことです。
本当に丸くなってしまって、誰にも刺さらないものになることを避けるために、圧倒的にとがる姿勢を、社内に示すことを、最近非常に意識していますね。
嶋 てんちょ(井手さん)のおっしゃったことは、本当に感じますね。
以前はもっとソーシャルなことに軸足を置いていた感じでしたが、今は単純に、「これ、いい商品でしょ?」と、1個1個の商品が素敵で良い商品という、売るものをちゃんと作ることに軸足を置いているように聞こえることが、すごく心地良くなっていると思います。
松田 そうですね、確かに。
売るまでの伴走をするという感じなので、出して終わりではない状態を作りたいなと思っているので、よろしくお願いします。
井手 一番最初、飲んでいた時に覚えているのが、役場の入り口かどこかにすごく失礼なポスターがあって、その出来事に対して、松田さんが怒りをあらわにして、「こういうのはだめだ!」と言っていました。
それはそれで一理あるのですが、「だめだ!」と言う表現の仕方から、「もっとこの人たちを活躍させたい」という表現でポジティブに変換して、世界中に共感してくれる人が多くなっている感じもあって、勝手に、そんな風にちょっと見ておりました。
松田 ありがとうございます。
嶋 言葉の転換は大事だと思います。

福田 ヘラルボニーは、「あたりまえ」を変えるブランドアクションを矢継ぎ早にされていますよね。
この間話題になった、異彩(イサイ)の日のリリースが出たと思ったら、もう次は違うことをしていて、アイデアの量を担保するのは松田兄弟がずっとやっているのか、社内で仕組化がされているのか、どういう形でやっているのですか?
松田 結構、双子の突発でということが多いかもしれないですね(笑)。
そういう意味でのPR脳というか、双子揃ってヒップホップがすごく好きなので、社会へカウンターを出し続けるという姿勢、ファイティングポーズを取り続けるという部分を出すことが、結果としてヘラルボニーのファン層を圧倒的に強固にしているなと思います。
そのファン層がSNSの拡散層なので圧倒的な拡散層になっていて、それを通じて色々な方たちが買うという状態に徐々になってきているのかなと思います。
嶋 松田さんは兄弟でとおっしゃるけれど、部下の方々とお仕事をさせていただくと、必ずみんなアイデアを出してきます。
松田 そうです、素晴らしいですよ。メンバーは、本当にみんなそうですね。
嶋 次々やっていこうという意識が、会社の中に浸透している気がします。
松田 そうですね。色々企画を作る会社だという感じはあります。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


