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2. 爆速PDCAで進化し続ける「北海道ボールパークFビレッジ」

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ICC FUKUOKA 2025のセッション「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」、全6回の②は、野球に興味がない人でも楽しめる野球場「エスコンフィールド」を開業したファイターズ スポーツ&エンターテイメントの小林 兼さんが語る、スポーツIP×まちづくりで作る新しい「あたりまえ」です。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは ココナラ です。


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 5C
「あたりまえ」の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?
Supported by ココナラ

(スピーカー)

井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

工藤 萌
スープストックトーキョー
取締役社長

小林 兼
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
執行役員 開発本部 副本部長

福田 恵里
SHE
代表取締役CEO / CCO

松田 文登
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

(モデレーター)

嶋 浩一郎
博報堂
執行役員 エグゼクティブ クリエイティブディレクター

「『あたりまえ』の作り方 – 新しいアイデアやサービスを社会に浸透させ、ビジネスを加速するパブリック・リレーションズとは?」の配信済み記事一覧


嶋 というわけで、今日は「あたりまえ」を牽引した皆さんに、どういうところに苦労したか、どこがポイントだったか、お話ししていただければと思います。

では、まず最初は小林さんから、よろしくお願いします。

スポーツIP×まちづくりで新しい「あたりまえ」を作る、ファイターズ 小林 兼さん

小林 兼さん(以下、小林) ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの小林です。


小林 兼
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
執行役員 開発本部 副本部長

プロ野球球団・北海道日本ハムファイターズが2023年3月に開業した「エスコンフィールドHOKKAIDO」並びに「北海道ボールパークFビレッジ」の開発・企画全般を担当。32ヘクタールもの広大なエリア開発の旗振り役を担い、スポーツ・北海道の価値の融合による観光地化とまちづくりに取り組む。野球経験はないが「世界がまだ見ぬボールパーク」「共同創造空間」のコンセプトに惹かれ2020年4月に中途入社。前職は三菱UFJ銀行に所属し、十数年間に及ぶ海外駐在を通じて東南アジア地域における事業基盤の拡大に従事。地方都市の価値形成に一石を投じる事を目指し北海道に戻ってきた。1980年旭川市生まれ、北海道大学経済学部卒。

最初に少し申し上げたいのですが、「『あたりまえ』の作り方」というテーマを今回頂いたことで、一石を投じられたというか、そもそも自分が思っている「あたりまえ」とは何だろうとか、自分たちのビジネス、事業で「あたりまえ」とは何だろうということを考えさせられました。

ある意味、それだけで私としては、このセッションは大成功というか、非常に持ち帰らせていただくものが多くあります。

まず自己紹介をしますと、私は北海道のプロ野球球団、北海道日本ハムファイターズの人間です。

北海道生まれで、野球歴はなくて、写真では野球をやっている風ですが、これは球場で草野球をやらせていただいた時に撮ったもので、この後、エラーしています(笑)。

銀行員を16年続けて、5年前に野球界に入ってきました。

野球に興味がない人でも楽しめる多様な観戦環境

小林 こちらが我々のエスコンフィールドというファイターズの新しい球場で、2023年の3月にオープンしました。

色々な特徴がありますが、野球だけではなく、野球に興味がない人が来ても楽しい、多様な観戦環境を目指しています。

ご覧いただいている通り、色々な施設が入っていて、右下にビールがありますけれども、井手さんのヤッホーブルーイングと一緒にやっている球場内クラフトビール醸造レストラン(そらとしば by よなよなエール)があります。

あとは、子どもの遊び場がかなり大きく取られています。

我々としては、この多様な観戦環境と野球以外の副次的な目的作りに、全力で取り組んできました。

全体で言うと、ボールパークなので、球場だけではありません。

この32ヘクタールのエリアの中に、色々な施設が入っています。

北海道らしい自然を活かした遊びができますし、ちょっと変わっているのは、暮らしの機能が入っていることです。

マンションやシニアレジデンス、あとは医療機関が入っており、さらには子どもが遊ぶところも豊富に揃えていて、幼稚園もあります。

これをどのように表現しようかなと思ったのですが、我々が持っているファイターズというブランドのスポーツIP(知的財産)と、まちづくりを掛け合わせたことを、今やろうとしています。

▶︎【一挙公開】北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり(90分拡大版)(全5回)

今回、「『あたりまえ』の作り方」というテーマを頂いた時に、自分たちが世の中に対して展開できるものがあるとしたら何なのかと考えたところ、この「スポーツIP×まちづくり」かなと思いました。

後ほど、また触れさせていただきます。

野球観戦以外の来場者が右肩上がりにアップ

小林 先ほどファーストペンギンの話がありましたが、当初、周りの声として、「やる意味がないよ」「できるわけないでしょ」「場所が悪いから誰も行かない」など、非常に厳しい意見を頂きました。

我々の突破の仕方としては、そういう負の意見は流しつつ、そうでない浮遊層の人たちを味方につけようと思ってやってきました。

「どうなるかわからないけれども、頑張ってね」と言ってくれる人たちを巻き込みながらやってきたのが特徴かなと思います。

もともと使っていた札幌ドーム球場は野球観戦で200万人ぐらいの動員でしたが、初年度2023年には346万人、昨年1年間は419万人と、右肩上がりに増えていて、2024年に初めてイベントや観光目的のお客様が野球観戦の来場者数を上回ったというのが、野球界もしくはスポーツ界では、ある意味革命的な出来事なのではないかと思っています。

2023年3月開業・北海道ボールパークFビレッジ【ANNUAL REPORT 2024】(株式会社 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)

新しい「あたりまえ」というテーマで色々と考えて、まさに頭の中がかき回されましたが、こちらは私の家族です。

私が5年前に転職する時に、なぜ銀行を辞めるのかと、妻は非常に反対しました。

プロ野球はおじさんの世界みたいなイメージがあるから、野球なんてこれから斜陽でしょうと言っていたのですが、妻も子供もご覧の通り、むちゃくちゃはまっています。

これは、野球にはまっているというよりは、野球の周りに様々なものがあって、行ったら楽しいから行くというようになっています。

野球選手を応援しているというのはもちろん理由としてありますが、基本的には楽しいから行っています。

上に書いてある「プロ野球の存在意義は、そこの町に住む人たちの暮らしが彩られ、生活を豊かにすることである」という言葉は、新庄 剛志監督の言葉です。

これがまさに、「スポーツIP×まちづくり」ということにつながるのかなと考えています。

これからの「あたりまえ」は何なのかと考えた時に、スポーツ&エンタメのIPホルダーが、ハード×ソフトという掛け算に全力で取り組むと、その結果、まちづくりのプラットフォーマーになっていくという世の中が、すぐそこまで来ているのではないかと考えています。

日本全国でスタジアム、アリーナを作って、街の活性化をしていこうという案件が、今100ぐらいあります。

その100の案件の方々が、今我々の球場、ボールパークを見に来てくださって、自治体の方々、プロスポーツチームの方々とたくさん接点がありますが、皆さん、究極的にはこういうことを考えているのではないかと思います。

これが、2028年から2030年にかけての我々が持つイメージです。

「職・学・住・遊が近接したまちづくり」ということで、ポイントは遊ぶというエンターテイメントが入っていることかなと思います。

我々がやっていること、もしくはこれから色々なチームがやろうとしていることが、これからの社会課題の孤独、不安、退屈というものの解決や、地方都市のあり方に一石を投じていくような世の中が「あたりまえ」になればいいなと思っています。

見切り発車して、けもの道を進んできた

小林 我々がやってきたことを、少しだけ紹介します。

「爆速PDCA」という言葉を使っていまして、完成度4割でスタートして、その後、一気に盛り返していくやり方にしました。

完璧な状態でスタートしようと思ったらあと5年かかったのですが、見切り発車して、Twitter(現 X)でお客様から辛辣なものも含めて意見を頂きながら、それを爆速で打ち返していくことを1年間やってきました。

あとは「けもの道」という言葉をよく使っていまして、形になるかどうかわからないけもの道をたくさん引いた上で、行けそうな道を一気に舗装して広くするというやり方をしています。

けもの道の1つだったのが、バスケットボールのBリーグの試合を野球の球場で開催した出来事です。

Bリーグの史上最多となる1試合1万9,000人を動員、これを野球場でやったのが昨年末(2024年末)の出来事でした。

レバンガ北海道 Winter Classic@エスコンフィールド(北海道日本ハムファイターズ)

最後に、大切にしていることをお話ししますと、「組織も人も『自責思考』」と書いているのですが、要は「自分自身で考えて選んだ」という事実が、本当に苦しい時の最後の後押しになるというのは、我々がなんとなく自覚しているところです。

それにプラスして、資料を提出してから、「あたりまえ」を作るために何が必要か悶々と考えたのですが、我々がやっていることをデータやノウハウを含めて全部知りたいという方々に情報開示していくことで、「あたりまえ」になっていくと思います。

開示には勇気がいりますが、あえて我々はそれをやっています。

包み隠さずに言うことで、日本全国の案件がより活性化すればいいなと考えています。

嶋 一部の意見にまず寄り添うと、一部の人しか相手にしないみたいなところで、官庁や地域の行政などが絡んでくる時に、なかなか難しいところはありませんでしたか?

小林 ただ、5年経つと相手側は変わっていますよね。

自治体や官庁とお仕事する時に大事なのは、我々が10-0や9-1で勝たないことです。

向こうが6勝って、こちらが4負けるぐらいの着地点を見い出せると、上手くいくのではないかというのは、我々の体感として感じているところです。

嶋 自責思考はそういうところにも、影響しているのでしょうか。

小林 そうですね。

自分たちでやると決めたから、自分たちでやりきるしかないというところで、それが結果、「あたりまえ」になったらいいなというのは、今回考えさせられましたね。

嶋 井手さん、いかがですか?

当初よりはるかにすごいプランに進化

井手 直行さん(以下、井手) 小林さんは前職が銀行という堅い職業で、小林さん自身の性格もとても真面目という感じがするのですが、こういう常識にとらわれないプランを最初に聞いた時に、すぐ受け入れられたのですか?


井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

ニックネームは『てんちょ』。国立久留米高専を卒業後、電気機器メーカー、広告代理店などを経て、1997年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。地ビールブーム終焉の後、再起をかけ2004年楽天市場店の店長としてネット通販事業を軸にV字回復を実現。2008年より現職。フラッグシップ製品『よなよなエール』を筆頭に、個性的なブランディング、ファンとの交流にも力を入れている。『ビールに味を!人生に幸せを!』をミッションに、新たなビール文化の創出とクラフトビール業界の盛り上げに人生をかけて奮闘中。

小林 最初は事業収支はどうなのかとか、細かいところから入りそうになったのですが、いや、待てよと。

私はサッカーをやっていたのですが、サッカーに育てられたという思いが強くて、スポーツっていいものだし、スポーツで新しくスポーツだけではないことをやろうとしているのだったら、上手くいくかもしれないと思いました。

自分がサッカーを見に行こうよと友達を誘っても、サッカーには興味がないから行かないという人が多かったのですが、サッカーもあるし、その他にこれもあるよと言ったら、意外と来てくれるかなということの究極系だと思ったので、堅い銀行員としてもいけるのではないかと思いました。

井手 もう1つ、質問してもいいですか。

エスコンフィールドがオープンしたのは2年前ですが、そのさらに2年ぐらい前から僕らは小林さんと一緒にやりだしました。

森を切り拓いてまだ本当に何もない、こんなところに球場ができるのかなと思いましたが、その時に聞いていた話よりも、4年ぐらい経って、はるかにすごいプランになってきている気がします。

当初描いていなかったような「あたりまえ」が、さらに変化しているように見えるのですが、そこはどうですか?

小林 進化を止めないという言葉をよく社内で使っているのですが、まさに進化を止めないでやってきた結果、思ったよりいいものができたと思います。

ただ、これからやろうとしているのは観光地化とまちづくりで、観光地化は今ある意味できているのです。

700万人ぐらいのお客様が2028年には来るだろうというイメージは湧いているのですが、まち化していく時に、ただ単に住む場所があればいいとか、学校があればいいということではなくて、コミュニティや町の方々にとって日常の場所になっていくためには、何が必要なのかという課題もあります。

楽しい場所にはなったけれども、落ち着く場所にしていくために何が必要なのかというところをやりきった時に、またちょっと違う「あたりまえ」が生まれたらいいなとは思っています。

嶋 福田さん、いかがですか?

農業学習施設など野球とは遠いところから埋めている

福田 恵里さん(以下、福田) 私はもともと野球に興味関心がなかったのですが、父が巨人ファンで、私が学生だった時に、巨人・阪神戦に私と妹を連れていってくれました。

行ってみたら、球場のみんなで応援歌を一緒に歌うみたいな雰囲気や、ちょっとしたスナックを買ってみんなで食べるとか、ああいう体験全体が楽しくて、野球というものの自分の概念が変わったという経験があります。

小林さんの話を伺って、野球観戦、スポーツというところだけではなく、価値観や楽しさみたいなものを拡張して提供していらっしゃるところに、「あたりまえ」の概念の変化を感じたなと思っています。

先ほどまちづくりで、「学」という、スポーツとの関連が遠いところにも展開されていくというお話をされていましたが、その関連性をどのように作っていかれようとしているのですか?

小林 なるべく野球とは遠いところから、埋めていっています。

ボールパークに大手製造メーカー・クボタさんの農業学習施設 KUBOTA AGRI FRONTがあるのですが、農業と野球はあまり関係がなさそうじゃないですか。

でも、北海道という補助線を引いた時に、北海道の主要産業である農業と野球をくっつけて何かやろうという色々なアイデアが生まれてきて、クボタさんもいいねと言ってくれましたし、我々としても北海道にはたくさん農業に関わっている方がいらっしゃるので、やれることがあるかもしれないと思いました。

例えば、農業のオフシーズンの時に来てくれるような施設を作ればいいのではないかという発想がありましたし、野球以外の事業で興味を持っていただける方は基本的には多いと思いました。

海外で野球や他のスポーツを観戦した時に、試合結果はあまり覚えていないものですよね。

球場に行った経験が楽しくて、経験だけは覚えているのですが、試合結果はどうだったっけ?ということがあります。

応援する球団に勝ってほしかったけれど、試合結果を覚えていないなという人がめちゃくちゃ増えたら、上手くいっているのかなという風にも思います。

嶋 面白いですね。

吉見 俊哉(※)さんだったと思うのですが、いいお店やいい街は来ている人が全部違う目的で来ているということをおっしゃっていました。

▶編集注:都市論が専門の社会学者、東京大学名誉教授

まさに野球観戦に行っている人もいるし、ビールを飲みに行っている人もいるしというように、同じ場所に来るという意味で同じ行動をしているのですが、それぞれやっていることは違うところが面白いなと思いましたし、まさに色々な人が楽しめる場所を作るという感じがしました。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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