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子どもから高齢者まで地域の“ごちゃまぜコミュニティ”で、目の前の人を笑顔にする「えんがお」(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、えんがお 濱野 将行さんのプレゼンテーション動画【子どもから高齢者まで地域の“ごちゃまぜコミュニティ”で、目の前の人を笑顔にする「えんがお」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】“インパクトヒーロー”を育成し、世界中で小さな革命を起こし続ける「Earth Company」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

濱野 将行
えんがお
代表理事
公式HP | 公式X

地域で活動していく中で、「高齢者の孤立」という現実に直面。一生懸命生きた人生の最期が孤立なら、若者は未来に希望を抱けない、との想いのもと、孤立の予防と解消を目指し2017年5月「一般社団法人えんがお」を設立。その後、孤立は全世代の課題であり、多くの社会課題の根源であることを現場で学び、全世代が日常的につながり、共に支援し合う地域コミュニティを目指す。現在、年間延1200人以上の若者を巻き込みながら、徒歩2分圏内に9軒の空き家を活用し、高齢者サロンや学童保育、フリースクール(不登校支援)・地域食堂・シェアハウス・障害者向けグループホーム、放課後等デイサービスなどを運営。子供から高齢者まで、そして障がいの有無に関わらずすべての人が日常的に関われる「ごちゃまぜの地域づくり」を行っている。


濱野 将行さん 皆さん、こんにちは。

栃木県大田原市より参りました、えんがおの濱野と申します。

よろしくお願いいたします。

世代や立場をこえ関わり合う地域コミュニティ

私たちは、認知症などの病気や障がいがあったり、学校に行っていなかったりといった、子どもから高齢者までをみんな“ごちゃまぜ”にして、かつ、お互いがお互いを支援し合う地域コミュニティを作っている団体です。

私たちのコミュニティでは、不登校の子どもが認知症のおばあさんを助けたり、精神障がいのあるおじいさんが子どもたちに麻雀を教えることで、引きこもっていた子どもが家から出られるようになったりといったことが、日々起きています。

日々のスナップをご紹介

こちらは、本日の会場の雰囲気とは、少し合わない写真のように思いますので、飛ばします。

(会場笑)

こちらも、やめておきましょうか(笑)。

こちらは、助けたおばあさんから、なぜか中指を立てられるという、私の好きなワンシーンです。

徒歩2分圏内に9施設、出会いと助け合いを生む仕組み

具体的にどのような活動をしているか、お話しします。

徒歩2分圏内という非常に近距離にある9軒の空き家を活用し、子どもの居場所や不登校児の居場所、障がい者の施設、若者のシェアハウス、高齢者のたまり場などを運営しています。

すべてが近距離にあることにより、街の至る所で、出会いと助け合いが、自然発生しています。

私たちが向き合っているのは、あらゆる世代の孤独・孤立というテーマです。

地域の現場で、つながりがなく、「困っても、誰にも助けてもらえない」という人に、何人も出会ってきました。

えんがおで週4日働くきくえさん

この状況を変えようと試みましたが、何度も挫折してきました。

どうしたらよいのか考え続け、そしてようやく、このような活動に、たどり着きました。

例えば、こちらの写真でナスを持っているのは、85歳のきくえさんです。

きくえさんは旦那さんを早くに亡くされ、私が出会った頃は、「毎日ひとりぼっちの時間が長くて」と言っていました。

それから6年が経ち、現在は週4日以上、えんがおで働いてくれています。

きくえさんの隣にいるのは、ゆあちゃんです。

ゆあちゃんは、感情のコントロールが苦手で、疲れてイライラすると、大きな声を上げたり、手を出してしまったり、家の壁を壊してしまったりします。

しかし、きくえさんがいれば大丈夫です。

きくえさんは、子どもを落ち着かせるプロなのです。

自分はそこに居るだけで喜ばれる存在

きくえさんと肩を組んでいるのは、先日、20歳になったショウタです。

もちろん、本人の許可を得たうえで、お話しさせていただきますが、ショウタは、一度、高い橋から飛び降りたことがあります。

しかし、当たりどころがよく一命をとりとめ、もう一度、再スタートしたいと考えていた頃に、私たちと出会ってくれました。

そして彼は、自分のような若者は、毎日ひとりぼっちで過ごしているおじいさん、おばあさんにとっては、居るだけで喜ばれる存在なのだと気づきました。

自分もいろいろな人を助けられると知った彼は、そのあと、徒歩圏内にあるえんがおのシェアハウスに住み、今も毎日、誰かのために活動してくれています。

現在の彼の目標は、高齢者向けの庭師になることです。

地域密着NPOとして黒字化を達成

こうした物語が、私たちのコミュニティには、無数にあります。

病気や障がいといった、さまざまな生きづらさを支援するだけでは、社会全体として限界があります。

支援し合う・支援する側に回るといったことが、重要です。

では、こうしたコミュニティは、持続可能なのでしょうか?

おそらく、持続可能です。

私たちがえんがおを立ち上げてから8年が経ちますが、毎年成長して黒字化しています。

地域密着のNPOではありますが、今期(2025年度)も約1.1億円の黒字の見込みです。

シニアの集まりで作る惣菜から助け合いが自然発生

しかし、こうした活動は、お金の話だけでは、本当の意味は伝わりません。

どういうことかと言いますと、こちらのとても雰囲気の良い写真は、惣菜作りのおばあさんチームの打ち上げの際の写真です。

おばあさん方が作ったお惣菜は、パック詰めされて、徒歩圏内にある、私たちが運営する学童保育で販売されています。

その結果、日中に暇な時間のあるおじいさん、おばあさんが、忙しく働くお父さん、お母さんを助けることにつながります。

お金は大して循環していませんが、お金以外のあらゆる資源が循環して、この街で暮らす方々の暮らしを豊かにしていきます。

これらはいわば、「地域の余白と可能性が循環する経済圏」であると、私たちは思っています。

海外諸国から視察にお越しいただいたり、内閣府の孤独・孤立対策のモデルにしていただいたりしたことをきっかけに、全国に広げるための活動(中間支援事業)もしています。

同じような取り組みをしたいと話す方々のネットワークは、登録者1,700人を超え、その中で約50団体の創業支援・伴走支援も行ってきました。

関わりから生まれる本当の価値とは

最後にもうひとつ、皆さんに聞いていただきたい、最近あった嬉しかったことをお話しさせてください。

先述のゆあちゃんの手を握っているのは、さとみちゃんです。

さとみちゃんは、小学校の頃に、家族がいなくなってしまい、家族がいない子どもとして、児童養護施設で生きてきました。

里親に預けられたこともありましたが、里親からも虐待を受け、ひとりで生きてきました。

さとみちゃんが自分を保つための方法は、自傷行為です。

薬を飲むときに1瓶80錠すべてを飲むことがあったり、手首を10~20針も縫うほど切ることがあったり、飛び降りたこともあります。

これまで何度も、私は一緒に夜中に救急車に乗りました。

そのようなさとみちゃんですが、疲れてイライラしそうなゆあちゃんと初めて会ったとき、彼女が眠れるまで、隣で手を握ってくれていました。

さとみちゃんが支援者になっているのです。

素敵なことですよね。

この日の夜、さとみちゃんが何と言ったと思いますか?

「次にゆあちゃんに会える日曜日まで、生きようと思う」と、言ってくれたのです。

私は、この言葉を聞いて、すごいと思いました。

どのような専門職や資格を持っている人でも、里親から虐待を受けて、家族がおらず、毎日どのように死ぬかを考えている人に、「1週間、生きよう」と言わせることはできません。

ゆあちゃんは、本当にすごいです。

こういったことが、私たちにとってのインパクトであり、価値なのです。

規模は小さくても社会は変えられる

私は、いつも不思議に思っていることがあります。

社会は豊かに経済成長して、モノであふれているにもかかわらず、なぜ子どもの自殺者数は減らないのか?

どうして一生懸命に生きてきた高齢者が、最後に孤立して生きなければならないのか?

どうしたらよいのかと考えたときに、私たちが出した答えは、規模は小さいかもしれませんが、この地域密着の活動でした。

数的な価値で見ますと、このように、死にたいと思っていた人が誰かのためにもう一度生きたいと思うことは、「1」でしかありません。

しかし、この「1」は、社会の中に静かに染み込んでいき、経済合理性のみにとらわれすぎている私たち社会の価値観を、静かに変えてくれると、私は信じています。

こうした活動は、知名度もまだ低く、小さな活動です。

本日、会場にお越しの方、YouTubeでライブ配信をご覧になっている方など、あらゆる方々に知っていただき、応援していただいて、皆さんとともに、さまざまな方々が生きやすい社会に少しずつしていくことができましたら嬉しく思います。

皆さんが、とても熱心に聞いてくださったり、泣いてくださったりして、途中、熱が入ってしまいました。

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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