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ICC KYOTO 2025 カタパルト・グランプリに登壇いただき3位に入賞した、J-CAT 飯倉 竜さんのプレゼンテーション動画【持続可能な観光モデルで、日本の伝統文化を未来へ繋ぐ「J-CAT」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)- 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング
飯倉 竜
J-CAT
代表取締役
公式HP | 公式X
慶應義塾大学経済学部卒。2012年に住友商事株式会社に入社し、海外IT製品のトレード営業や新規事業の立ち上げを担当。2017年からは米シリコンバレーに駐在し、ベンチャー投資業務、CVCファンドの設立、アクセラレータプログラムの立ち上げに従事。2019年末にJ-CAT株式会社を創業し、日本の魅力を”感動体験”として届ける「Otonami(国内顧客向け)」、「Wabunka(インバウンド顧客向け)」を提供・運営。会社ミッションは「テクノロジーとクリエイティビティで、魅力あふれる日本の姿を世界へ」。2025年5月にシリーズBにて11.3億円を調達。トラベルテックNo.1スタートアップを目指す。
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飯倉 竜さん 日本の魅力を世界へ発信するJ-CATです。
私たちは、観光を通じて日本の文化や想いを未来へ繋ぐ、そんな挑戦をしています。

今、日本は外国人観光客であふれています。

円安の影響もありますが、「日本の文化と魅力に触れたい」、その強い想いこそが、彼らが日本を訪れる最大の理由です。

消えゆく文化と担い手たち
この魅力を、これまでつくってきたのは、何百年もの歴史を持つ由緒ある文化の担い手たちです。

彼らこそが、真の日本の魅力の主役たちです。

しかし今、その主役たちが次々と廃業に追い込まれ、文化の灯が消えようとしているのはご存知でしょうか?

約20年間で、伝統工芸の担い手は半分以下に減少し、ホテルは増えている一方、旅館は30%減少しました。

インバウンドはこんなに盛り上がっているのに、主役である文化の担い手にはお金が届かない、そんな「いびつな構造」が、今の日本の観光産業にはあるのです。

「やりたくても、できない」、担い手の事情
私は、とある事業者に、こう尋ねました。
「インバウンド向けに、特別な体験を提供してみればよいのでは?」

すると返ってきたのは、「やりたくても、できない」、そんな言葉でした。

なぜなら、事業者だけでは、ノウハウやリソースもなければ、多言語対応やプロモーションの知見もありません。

提供されているのは表面的な体験型コンテンツ
そして何より、既存のプラットフォームは、価格とレビューが重要です。

歴史ある事業者は、価格勝負はできず、レビューを貯める時間もありません。
ブランドを損なうため、サイトに掲載すらできません。
なぜなら、彼らは観光専業ではなく、歴史ある「文化を紡ぐこと」が本業だからです。

その結果、旅行者が本物の日本文化を求めても、見つかるのは外国人向けにつくられた表面的な観光体験です。
しかも売上の多くは、外資プラットフォームへ流れます。

それが、今の日本の観光産業のリアルです。

日本の魅力を再認識できる国内向け体験予約サイトをオープン
私たちはこの構造を変え、価値ある事業者をエンパワーし、特別な体験を世界中の人へ届けたいと思い、J-CATをスタートさせました。

しかし創業翌月、新型コロナウイルスにより、苦しい始まりとなりました。
こんな時だからこそ、日本人にこそ日本の魅力を再認識してほしい、そう思い、国内向けの厳選されたハイエンドの体験予約サイト「Otonami(おとなみ)」をスタートしました。

事業者とともに特別な企画をつくり、その想いを高品質な記事で届けました。

その結果、国内会員は10万人を超え、予約の半数以上がリピーターとなる共感と信頼のプラットフォームへと成長しています。

需要が急増、インバウンド向けサイトをリリース
そして2022年、ようやくコロナ禍後の海外渡航者の受け入れが再開しました。
そして、海外からの需要が急増します。
Otonamiの思想をそのままに、インバウンド向けサービス「Wabunka」をリリース。

高品質な英語で記事をつくり、彼ら(事業者)の想いを世界へ届けます。
プロの通訳ガイドも当社から派遣し、英語が話せない事業者もサポートしています。

その結果、売上はここ3年間で40倍に成長しました。
今期の売上は、16億円の見込みです。
インバウンドの平均単価は、10万円強です。
顧客満足度も高く、集客は広告に頼らず、海外代理店やホテルからの送客が拡大しています。
他社OTAにはない、850以上の「ここだけの体験」
事例です。
こちらは、山梨県の工房で花火職人とともに、自分だけの打ち上げ花火を制作できる企画です。
▶Enter the World of Traditional Wabi Fireworks in a Crafting and Launching Experience(Wabunka)

完成した花火は最後に職人が打ち上げ、鑑賞することができます。

約20万円の高単価ながら、開始してわずか半年で売上はすでに数百万円を突破し、花火職人は新たな収入を得ることができています。
そして東京、青梅では、職人と日本刀をつくる刀鍛冶体験ができます。

外国人旅行者に人気で、年間1,000万円以上の売上を生み出し、刀鍛冶の想いを世界へ伝える力にもなっています。

こうした“ここにしかない”エクスクルーシブな体験プランは、現在850以上あります。

他社OTA(Online Travel Agency)には一切卸さず、すべてが自社限定です。
従来までネット掲載をしていなかった、できなかった、日本のトップの事業者たちが結集したプラットフォームとなりました。

文化を残し、地域と発展する「継承モデル」で成長
既存のプラットフォームは、「売れるものを効率的に販売する」思想です。

量、価格、効率性が優先され、事業の成長ドライバーも「量的拡大」にあります。
一方、私たちは事業者と伴走し、希少性やストーリー性を大切にした唯一無二の商品をともにつくっています。

成長ドライバーは「質的拡大」です。
私たちのサービスが既存のものと大きく違うのは、効率的に数を多く捌く「大量消費モデル」ではなく、「三方よし」で文化を社会に残し、永続的に地域とともに発展する「継承モデル」であることです。

持続可能な観光モデルをここ日本から発信
これまで観光の指標は、観光客数でした。

従来のサービスも、その数で成長してきました。
しかし今、世界の人気観光地では、量の限界が明らかにきています。


だからこそ私たちは、質を重視し、今の日本にこそ必要な「世界の観光の未来をつくる日本発のモデル」をつくり、(オーバーツーリズムを)解決していきます。


体験を軸とした手配旅行で多数の実績
今後の展開です。

日本の魅力は、体験事業者だけでなく、宿泊、飲食、ガイド、地域全体などにも同様に、想いやストーリーがあることに気づきました。

そして、それらすべてが感動体験の一部です。
そんな旅の要素をシームレスに統合し、旅全体をストーリーとして届けます。
すでに実績もあります。

例えば、先ほどの花火づくりですが、山梨県では、交通、宿泊、飲食の手配は欠かせません。
多くの地域で1組100万〜300万円規模の手配旅行を多数受注し、ハイシーズンでは受け入れを断るほど需要が拡大しています。
この実績から、体験を軸にした高付加価値の旅のパッケージを提供することで、平均単価は5〜10倍に向上します。
すぐそこに売上100億円超となるポテンシャルがあります。
「体験予約」から「旅全体をデザインする」サービスへ
マーケットにも大きな可能性があります。
日本の高付加価値旅行市場は1兆円規模です。

たった5〜10%でも1,000億円です。
今後さらに、この市場は拡大が見込まれます。
そこで今月(2025年9月)、私たちは体験予約サイトから旅全体をデザインするサイトへとリニューアルしました。
▶約110カ国のゲストが利用する「Wabunka」、「体験予約サービス」から「旅全体をデザインするサービス」へ(PR TIMES)
私たちが目指すのは、体験を起点に地域全体をストーリーとして届ける、そんな高付加価値観光の未来です。
そしてさらには、将来、事業継承や自社ブランドの施設展開も視野に、高利益体制のビジネスとして拡大していきます。
私たちのチームです。

シリコンバレーでベンチャー投資をしていた私、飯倉と山下(有紀COO)は、観光スタートアップを楽天に売却し、イグジットしました。
牧野(雄作CSO)は一休の創業期メンバーで、観光地の有識者です。
この経験豊富なチームで挑んでいます。
文化を守る人たちの想いを未来へ繋ぐ
最後に、なぜ私がこの事業を始めたのか、お話しさせてください。

私の母は書道家で、私は母子家庭で育ちました。
決して裕福な家庭ではありません。
母は「世界中に書道の魅力を伝えたい」と思いながらも、なんとか家計を支えるため、深夜に寝ないでホームページをつくり、生徒集めに奔走していました。
「やりたくても、できない」

その言葉を最初に言ったのは、私の母でした。
母に限らず、文化を守る人たちを、ITの力で支える会社をつくりたい。
その想いを世界へ届け、未来へと繋げたい。

それがJ-CATの原点であり、私たちの使命です。
「文化は儲からない」

そんな常識を、私たちは変え始めています。
しかし、まだまだ日本には失われていく伝統や地域があります。

私たちは文化が経済をつくり、日本で受け継がれてきた想いや技や価値が、もう一度世界を牽引する未来を信じ、これからも挑戦していきます。

ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/原口 史帆/正能 由佳/戸田 秀成


