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ICC KYOTO 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇した、TENT 青木 亮作さんのプレゼンテーション動画【遊ぶような制作プロセスからヒット商品を連発。ものづくりに笑顔が溢れる風景をつくる「TENT」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
▶【速報】規格外食材や地域課題を美味しく詰めこんだ“現代ソーセージ“をつくる「ハヤリソーセージ」(流行)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
青木 亮作
TENT
共同代表 / プロダクトデザイナー
公式HP | 公式X① | 公式X②
1979年名古屋市生まれ。オリンパスイメージング株式会社、ソニー株式会社にて録音機器やカメラ、PCおよび周辺機器のプロダクトデザインをはじめ商品戦略や企画を行う。2011年にTENTを設立。NHK Eテレ「へんしんダンコちゃん」にも参加。TENTは2011年に治田将之と青木亮作の2人によって結成され活動を開始したクリエイティブユニット。そもそも何を、どう作り、どう伝えるかの全てに関わり、STAN. by zojirushi、DRAW A LINE、フライパンジュウなど、各企業にとって転換点となる大ヒット製品を数多く手がける。ドイツのiF DESIGN AWARD金賞をはじめ、GOOD DESIGN AWARD BEST100、Red Dot Design Awardなど国内外のデザイン賞を数多く受賞している。
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青木 亮作さん TENTです、よろしくお願いします。
TENTは、二人のプロダクトデザイナーが創業したクリエイティブユニットです 。

▶編集注:写真左は、ともに代表取締役を務める治田 将之さん。
私が青木です。
製品のカタチだけでなく、なにをするか、どう作るか、どう伝えるか、その全てに関わっています。

ゴールは「ものづくりで新しい風景をつくる」こと
これまでに関わった製品の一部をご紹介します。
家電、家具、文具、ボードゲームなど、さまざまなジャンルでさまざまな商品を作ってきました。

これらに共通して目指したゴールがあります。
それは、「ものづくりで新しい風景をつくる」ことです。

メーカーから寄せられる相談は多種多様
具体的な例を挙げていきます。
あるフライパン工場から相談がありました。
「ヘラ絞り(※)でつくる鉄フライパンで、何か面白いことできない?」
▶︎編集注:ヘラ絞りとは、ヘラ絞り機という機械にセットした素材にヘラを押し付けることで形成するプロセス。写真など藤田金属の商品サイトに詳しい。

私が提案したのが、こちらです。

「つくるとたべるを一つにするフライパンジュウ」。
「フライパンがお皿になる」という新しい風景をつくり、口コミだけで10万枚を突破しています。

ある突っ張り棒メーカーからは、こんな相談がありました。
「主力商品の突っ張り棒はオワコンなので、なにか他のものを作りたい」と。

私が提案したのが、こちらです。

「一本の線からはじまる新しい暮らし DRAW A LINE」。
「『便利グッズ』だった突っ張り棒を『家具』にする」という新しい風景をつくり、シリーズ累計で40万本を突破しています。

また、ある家電メーカーからこんな相談がありました。
「昔から続く炊飯器、今の子育て世代に向けてなにかできないか」

私が提案したのが、こちらです。

「あなたの暮らしにスタンバイ 象印のSTAN.シリーズ」。
「家電をそのまま食卓に出しておける」という新しい風景をつくり、シリーズ累計64万台を突破しています。

商品開発のスタートは会話しながらのアイデア書き出し
そんな新しい風景をどうやって実現しているのか、ある事例を詳しく見ていきましょう。
「金属の溶接技術を生かして、ホウキとチリトリを作れないか」という相談がありました。

「現代にホウキとチリトリ…、どうしようかな?」
仲間と会話しながら、A6の紙に向き合って、たくさんのカードにアイデアを書いていきます。

当時、私は腰を痛めていたので、しゃがんで掃除をするのがすごく辛かったのです。

しゃがまずに使える掃除道具を作れないかという悩みを書きました。
これに限らず、たくさんの悩みを書いていきますが、この悩みに対しては、例えばホウキとチリトリを合体させてどうにかできないかと思いつきました。

手を動かしてアイデアを形に
わからないので、とりあえず作ってみようと言うことで、手元にある段ボールを使い、すぐ試作をしました。

これは当時作ったものです。
作ってみると、使いづらいし、カッコ悪いしで、いいとこなしだったのです。
だめだと思ってそのままにしておいたのですが、しばらく経って眺め直した際、別の構造を思いつきました。
それで作ったのが、こちらです。

職人と何度も繰り返す試作
これは良いのではないかという手ごたえを得たので、詳細な構造を考え、このようなスケッチをもとに、職人と何度もやりとりを重ね、とにかく試作を作ります。


掃除道具で新しい風景を実現
そうしてできあがったのが、こちらです。

このようにホウキを取って使い、ゴミを集め、マグネットの力でチリトリに付け、持ち運んでゴミを捨てに行くことができます。
そのまま立てておけるので、ブラシも歪みません。
TRIANGLEというホウキです。
「手の届く場所に置いておきたくなる掃除道具」という新しい風景を、実現しています。

TRIANGLEをはじめとするこのシリーズは、「つくる人の創造性に磨きをかけるBRUSHUP」です。

ドイツのiFデザインアワードのゴールドアワードも受賞しております。
▶友安製作所が、掃除道具シリーズ「BRUSHUP」で「iF デザインアワード 2025」の最高賞を受賞(友安製作所)
試作と製品の差が重要なポイント
さて、今お見せした試作と製品の間には、大きな差がありますよね。

実はこの差が、新しい風景をつくる上で非常に重要なポイントであると私は思っています。

手を動かして雑に試作しまくることの効果とは
今は、デジタル全盛の時代です。

皆さん、目と頭ばかりに頼りすぎていませんか?
頭だけで判断せずに、手を動かして雑に試作しまくる、そこにある効果を解説します。

考えを脳みその外へ荷下ろしできて、使用環境へ置いて外から眺められて、実際に触ったり使ったりできて、誰かに貸して会話ができて、置いておけばいつだって目に入る。

つまり、目と頭ではなく、体験からアイデアをメタ認知できるのです。

試作を通して職人とのやりとりを繰り返す効果とは
そして、資料だけでなく、試作を通して職人とやりとりを繰り返す、そこにある効果を解説します。

非言語の力を引き出すことができて、お互いにリスペクトし合えて、みてみてって自慢したくなって、周りの人も自然と巻き込まれて、楽しさがお客さんまで広がっていく。

つまり、目と頭ではなく、体験からコミュニケーションを広げることができるのです。

頭ではなく手だから、資料ではなく試作だから、想像もつかない成果を生むことができました。

「パパのしごとはだいたいあそびに見えます」
ところで、私には2人の子どもがいます。
娘が小3の頃に書いた作文を読みたいと思います。

『パパのしごとは、だいたいあそびに見えます。たとえば、図を描いていたり、工作している時などです。パパは自分でよく「やっぱ天才!」と言っているので、毎回なんど言ったらほんとに気がすむんだ。と思っています。わたしも、あそんでいたらお金がもらえればよかったなと思います。』





ということで、これは仕事中の私ですが、子どもからは遊んでいるように見えるみたいなのです。

職人技が活きるものづくりのプロセスとは
この、雑に試作しまくる体験重視のものづくりは、実際、遊んでいるみたいに楽しいのです。

日本のものづくりと言うと、技術力、職人技、生真面目さばかりにフォーカスされますが、技術力、職人技は、試作と体験を重視した、遊んでいるみたいなプロセスでこそ活きると私は考えています。


新しい風景を一緒につくっていきたい

見てください、これらは関わったプロジェクトの皆さんですが、日本のものづくりにこんな笑顔が溢れる新しい風景をつくりませんか?

家、農産物、お菓子、遊具、私たちTENTの活動領域は広がり続けています。

どんなジャンルにも、まだまだ新しい風景はつくれます。

一緒につくっていきましょう!
ものづくりで新しい風景をつくる、TENTでした。

ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成


