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3. 恐怖の感受性は腸内細菌が変える?リバネス井上 浄さんの免疫学講座

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恐れを感じると体には何が起きているのか。免疫学者・井上浄さんが、扁桃体の反応から腸内細菌叢と恐怖感受性の関係まで、科学的エビデンスをもとに解説するします社会不安障害の便を移植されたマウスは、なんと恐怖反応が増大するのだとか。さらに、自身の腸内細菌から作った”ジョーグルト”を会場ですすめる一幕も。 ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは青山スタイル / natです。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 2F 
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン15)
Supported by 青山スタイル/ nat

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井上 浄
リバネス
代表取締役社長 CCO

尾原 和啓
IT批評家

中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター

(モデレーター)

村上 臣
スマートニュース
VP of Consumer Product

『大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン15)』の配信済み記事一覧


村上 次は浄さんです。

浄さんはいつも科学的エビデンスを持ち出し、いろんな研究結果をもとに話をしてくれます。

10分以内でお願いします。

「恐れ」を感じた時の生理反応を解説、井上 浄さん

井上 皆さん、こんにちは。


井上 浄
リバネス
代表取締役社長 CCO

博士(薬学)、薬剤師。2002年、大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教、慶應義塾大学特任准教授を経て、2018 年より熊本大学薬学部先端薬学教授、慶應義塾大学薬学部客員教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所設立の支援等に携わる研究者でありアントレプレナー。
北里大学薬学部客員教授、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授、経済産業省産業構造審議会委員、文部科学省技術専門審査員、JST START-大学推進型およびスタートアップエコシステム形成支援委員会委員等を務めるとともに、多くのベンチャー企業の立ち上げにも携わり顧問を務める。また、株式会社リバネスナレッジ 代表取締役を兼務。

僕は薬学で博士号を取って、大学で研究しながらリバネスという会社を経営しているわけですが、今日は「恐れ」についてのイントロダクションとして、恐れを感じた時に体にどんな反応が起こるかについて、簡単にお話しします。

そのトピックに、要望がありそうだったので。

皆さんもご経験があるかと思いますが、恐れを感じた時、「戦おう」とか「逃げよう」という「闘争・逃走反応」の中で生理反応が起こります。

例えば、スライドに「本能的な防御システム」と書いていますが、自律神経やホルモンが連動し、全身を、戦闘もしくは回避モードに切り替えるということが起きています。

具体的にどんなことが起こるか、想像してみましょう。

例えば心臓や血管系だと、心拍や血圧が上がったり、呼吸が速くなったり、筋肉がこわばったり。

消化器系は一旦その作用を止めて他に備えるとか、瞳孔が開いて目がよく見えるようになったとか、こういった経験があるのではないかと思います。

善樹さんはなさそうですね(笑)。

石川 ないですね(笑)。

井上 恐れを感じない人もいると。

村上 さすが、Well-beingを極めると……。

井上 そうなんです。

もう、そもそも「恐れ」なんてないんですよ、きっと。

その話も、後でしようと思います。

「恐れ」とは「危険や脅威に対する反応」

井上 話を戻すと、恐れは、進化的には捕食者から逃げる、危険と戦うために必要だった仕組みなのです。

ですが、よくよく考えてみると、いわゆる「緊張」とは違うのか?と。

村上 確かに。

井上 あの反応を見ると、緊張とは何が違うの?みたいな。

恐れというのは、危険や脅威に対する反応であって、脳の反応で言うと、扁桃体という感情を司る、海馬の先についているアーモンドに似た形のところが活性化して、不安や恐怖を感じると言われています。

回避や防御が目的であり、めちゃくちゃ早い反応で、考えることなく起こります。

「こわっ!」と感じると、ブルブルってなりますよね。

あれです。

これは、生存優先モードというのが働いています。

尾原 命が大事。

井上 そうそう。

石川 よく人を川に連れて行くのですが……。

井上 なぜか、という質問は一旦省きますね(笑)。

村上 連れて行くのですね(笑)。

石川 橋の上から躊躇なく飛び降りることができる人と、恐れてしまって飛び降りられない人がいます。

僕はそれをみて、人間性を判断しています。

村上 それ、別に川じゃなくても判断できるのでは(笑)?

石川 そこで躊躇なく飛び降りられる人は、新しいことや意味の分からないことにもどんどん……。

村上 理解する前に行動する、ファーストペンギン的な要素がある。

石川 そういう人とは、一緒に過ごしやすいというか。

村上 なるほどね。

井上 でも、その違いがあるのは何で?と思うでしょ。後半は、それについて話そうと思っています。

“考えながら”反応するのが「緊張」

井上 緊張の話に戻すと、試験や発表などの重要な出来事、パフォーマンス状況への備えということで、前頭前野と扁桃体が動き出します。

「やや認知的」と書いていますが、集中最適モードという感じで、少し考えています。

簡単に言うと、恐れは「まず反応、あとで考える」、緊張は「考えながら反応する」、こういう違いがあります。

例えば、大きな声で「おい!」と呼ばれてすぐさま「はい!」と反応するシーン、ありますよね。

まず、何も考えずに行く、これは恐れです。

どちらが良いということではないです。

結局、そういう場においては良いパフォーマンスであれば良いと思います。

緊張は考えながら反応するので、考えることなく起きたものがおそらく恐れなのだろうなと思います。

不安や恐怖と免疫との関連性

井上 これが緊張と恐れの違いですが、なぜこういう反応をするか、体側の話を少しします。

例えば、同じ状況下で、恐れを感じる人と感じない人がいます。

さきほど善樹さんが言ってくれた、あれです。

あれはどういうことなのだろう。

いわゆる、反応前の自分の体の状態が人と違っていたらどうか。

自分の調子がいい時、悪い時にその反応が起きると、体はどう受け止めるのか。

つまり、皆さんの体の中の状態と、その時にどんなことが起こるのかについて、僕は疑問に思うわけです。

僕の専門は免疫学です。

村上 そうだった。

井上 みんな忘れていると思いますが、免疫学なんです。

免疫と、不安や恐怖には関連があるのか。

皆さん、どう思います? 話を出すくらいなので、関連はあるのですが。

尾原 免疫が高まるイメージがあります。

村上 防御となると、免疫を高めようみたいになるのかなと。

井上 そう、不安を感じた時の免疫反応はもちろんあります。

でも、免疫がどういう状態だと不安になるのか、という話です。

村上 筋トレをすると免疫が下がりますよね。

井上 それは炎症反応が大きいということで…、まあそれは置いておいて。

論文が細かくて申し訳ないのですが……。

村上 一言で説明してください。

免疫反応が進むと不安に陥りやすい?

井上 病気で不安になる仕組みを発見した、という話です。

村上 どういうこと?

井上 みなさんは、小野薬品工業のがん免疫療法薬「オプジーボ」をご存知でしょうか?

ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生が発見した「PD-1」という体内の分子は、本来は免疫の働きを抑えて、激しい炎症が起きないようにブレーキをかける役目を持っています。

このPD-1がかけているブレーキを外し、免疫の力でがん細胞を攻撃できるようにしたのが、オプジーボという抗体医薬品なのです。

▶︎PD-1の適度な調節でがんを強力に抑制(京都大学)

このPD-1を持っていないマウスを作ることができます。

そのマウスは免疫抑制系が外れていると思ってください。

つまり、体の中でずっと免疫活性が起きているということで、その場合、マウスの恐怖の反応が亢進しているのです。

皆さんの体の中でも、炎症反応が激しく起きていたり、免疫反応が進んでいたりすると、もしかしたら不安に陥りやすい状況かもしれないのです。

ですので、病気によって不安になる仕組みがあるということです。

体の中で免疫細胞が「活性化する」というのは「増える」ということで、それにはめちゃくちゃエネルギーを使います。

その時、例えばここに書いているトリプトファンとかチロシンという物質をたくさん消費しますが、これらはドーパミンやセロトニンの前駆体です。

つまり、脳で使う前、生成する前に、免疫細胞のところでそれらが使われて枯渇してしまっているので、結果、不安を感じる方に向いてしまう可能性があることを示した論文です。

この論文が発表されたのが、もう9年前です。

免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムの解明-病気で不安になる仕組みの一端を発見-(理化学研究所)

つまり、僕らの体の状態によって受ける不安が違うようになっている、人間というのは面白い、こういうバランスが取られているのだなということです。

腸内細菌叢と「恐怖の感受性」の関係

井上 もう一つ、こちらは、先ほど腸内細菌の話が出ましたが、社会不安障害(SAD)の方の便と健康な人の便を、腸内細菌をなくしたマウスに移植した実験です。

Social anxiety disorder-associated gut microbiota increases social fear(PNAS)

尾原 糞移植。

井上 そう、便移植ですね。

この便移植をした後、マウスたちがどういう反応をするのかは、大変興味深いですよね。

興味ありますよね?

村上 ありますね。

井上 ありますよね。

どうしますか? この辺で、「続きはウェブで」にしておきますか。

村上 (笑)いえ、ざっといきましょう。

井上 はい(笑)。

SAD患者由来の微生物を移植したマウスは、社会恐怖条件付での恐怖反応が有意に増大するということが分かりました。

村上 変わるんですね。

井上 そう、変わるの。

これはなぜかということを調べていくと、やはり免疫反応やオキシトシンのシグナルが変わっているのです。

つまり、言いたいことの一つは、自分の体の状態によって受けるものが違うということを認識するのが大事だということです。

尾原 じゃあ、川に飛び込めない人の便を善樹さんに移植すると、川に飛び込めなくなると。

井上 そう、そのほうがWell-beingかもしれない(笑)。

村上 (笑)

井上 まあ、言いたいのは、「腸内細菌叢の組成が、社会的恐怖反応の感受性を変える可能性がある」ということです。

調べてみると、他にも実はたくさんあるのです。

Nature誌などに出ている他の論文もありまして、今回は詳しく説明しませんが、我々人類は無菌マウスというものを作ることができるのです。

腸内細菌などの菌を持っていない、まっさらな状態のマウスたちはどういう反応をするかと言うと、実は恐れに対して、記憶できなくなるのです。

恐れを感じていても、同じ行動をバンバン繰り返す。つまり、腸内細菌叢が恐怖の感受性を調整している可能性があるということが、マウスに関しては分かっているということです。

村上 ちょっと怖い話ですね。

井上 はい、ですので、腸内細菌原理主義者であるメタジェンの福田(真嗣)さんの主張は、もしかすると一部正しいのかもしれない。

脳腸相関と、体の中がどういう状態になっているのか。

ここまでは、エビデンスに基づく話です。

不安を低減する“人類の素晴らしい発明品”とは

井上 では、何が良いのかと。

自分たちは何を取り込めば、逆に不安というものが低減するのかというテーマの論文もあるのです。

2つの菌が挙がります、「ラクトバチルス」と「ビフィドバクテリウム」。

「ラクトバチルス」は乳酸菌で、「ビフィドバクテリウム」はビフィズス菌ですね。

村上 聞いたこと、ありますね。

井上 ということで、皆さん、ヨーグルト。

(一同笑)

人類の素晴らしい発明があったのです。

村上 なるほど、もうあるんですね、世の中に浸透しているものが。

井上 良かった。食べている人?(挙手を促す)

あんまり食べてないなあ、不安ですね、それは。

尾原 ヨーグルトを食べれば、川に飛び込めるんだ。

井上 うーん、人ではまだそこまで分かっていないです(笑)。

村上 ヨーグルトの話をしましょうか。

腸内環境の個別最適化を目指すスタートアップ「bacterico」

井上 ご紹介したい会社があります。

グリコの研究員だった方(菅沼 名津季さん)が立ち上げた、bactericoという会社です。

皆さん、どんなヨーグルトを食べていますか?

食べているものが本当に自分に良いか、食べた乳酸菌やビフィズス菌がずっとお腹の中にいるかと言うと、なかなかそうではないです。

簡単に言うと、この会社は、それぞれの人に合ったビフィズス菌を、その人の体から取り出して増やして食べるのが一番良いのではないかと言っているのです。

つまり、お腹の中に既にいるものを外で増やして食べるということです。

そんなベンチャーを立ち上げ、自分の菌を摂取する提案をしています。

ベンチャー立ち上げ前からサポートしていまして、タイミングよく、僕の教え子が、僕の便からビフィズス菌を取り出しました。

尾原 (笑)

井上 それがビフィドバクテリウム・ロンガムだったのです。

それを増やして飲んでください、と言われました。

村上 なるほど。

井上 飲みました(笑)。

グラフにある通り、普通のヨーグルトで摂った菌は、食べなくなると1週間くらいで消えます。

このような現象は、他の研究でも論文になっています。

一方で、僕から取り出した僕の菌は、結構長いこととどまります。

村上 へー。

尾原 免疫から除外されにくいのかね。

井上 適した環境というのもあると思います。

村上 合っているということですね。

井上 過ごしやすいのでしょうね。

村上 自分の中にあったものですからね。

井上 そうそう、これは臨床試験としてきちんと行いました。

Day 0からの28の変化(改善)ということでは、疲労感、肌の状態、ストレスですね。

自律神経の回復の指標が上昇したので、ビフィドバクテリウムを摂り続けるとそうなるのだなと。

ただ、これはまだ1例なので、これが確かであるということを、これからきちんと証明していかなければいけないです。

浄さん由来の“ジョーグルト”を披露

井上 僕由来のビフィズス菌をね。

村上 これ、浄さん(笑)。

井上 そうです、飲むタイプですね。

だからこれは、ヨーグルトではなくて、“ジョーグルト”ということで。

(一同苦笑)

……イマイチでしたね。

村上 もうちょっと、ドッカンといくかと思いましたが(笑)。

井上 もう1回やりましょうか。

村上 もう1回やりましょう。

井上 これが、飲むジョーグルトです。

村上 いや~!

(一同拍手)

井上 はい! ということで、実は僕のビフィズス菌のロンガム株については、論文で全ゲノムを公開しております。

村上 原理主義者の名前も載っていますね(笑)。

井上 もちろんです、共同研究者ですから一緒に出しています。

村上 共同研究者ですね。

井上 そして、カプセルにもしました。

固形のジョーグルトも作ってみました。

今日、欲しいぞという人がいるのではないかと思って、持ってきています!

村上 おお~。

井上 ここに、僕のビフィズス菌がたくさん。でもこれは自己責任でお願いしますね 。

尾原 川に飛び込めなくなるよ。

井上 ということで、引き続き、まだまだ研究が必要だということです。

さぁ研究だ! !

また、追っていろいろとご報告できればと思います。

村上 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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