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【安宅×佐渡島】AIに漫画は作れるか?【終】【F17-5E #11】

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「今、AIと漫画が熱い」【F17-5E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その11)は、漫画を含めた”クリエイティブ”(創作活動)がAIにできるかどうかを議論しました。囲碁や将棋といったゲームを超え、AIが人々の創作を代替する時代はくるか?いよいよ最終回です。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5E
安宅 x 佐渡島 特別対談!
「今、AIと漫画が熱い」

(スピーカー)

安宅 和人
ヤフー株式会社
チーフストラテジーオフィサー

佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長

(ナビゲーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル

「今、AIと漫画が熱い」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】ヤフー安宅×コルク佐渡島、特別対談「AIと漫画の交差点」【F17-5E #1】

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【安宅×佐渡島】作家ごとの世界観を創り上げたい(コルク佐渡島)【F17-5E #10】

本編

安宅 ご質問は何だってお受けしますよ。会場で聞いている方からの質問でもよいですし。

質問者1 せっかくなのでよろしいでしょうか。すごく興味深いお話をありがとうございます。

私は今、ベンチャーキャピタルで働いていて、色々なスタートアップに投資をしています。

今日のテーマが「AIと漫画」ということで、どんなお話になるのかなと思って聴いていました。

安宅 AIと漫画の話あまりしなかった!

(会場笑)

質問者1 私も人工知能には興味があって、画像系で結構AI活用が進んでいますし、あとは最近クリエイション側で音楽を作曲したりとか、簡単な小説のプロットを書いたりとか、クリエイティブに人工知能を使うような話もグローバルで出てきているような気がします。

まさに今日は「AIと漫画」というテーマなので、人工知能を使って単純に画像を認識して処理するだけではなくて、何か新しいものを生み出すとか、そういう分野についてお二人のお話を是非伺いたいなと思ったのですけれども。

AIにクリエイティブは作れるか?

安宅 それは多分僕が喋らなければならないのですが。

まず、知覚というのは、対象のイミを理解すること、入ってきた情報を統合し解釈することです。ここで、衝撃的なことは、我々は描線を見ただけでそれは何を意味しているのか分かるということです。

だから漫画を読むときには、結構普通ではないことが、我々の脳の中では起こっています。

例えば、横顔を見ただけでその人であるということが分かって。

このレベルの捨象的なイミ理解力というのか把握力を、機械に与えることができるかが、一つのブレイクスルーになる可能性が高くて。

どこかでできると思いますけれども、いつかが分からないです。

この本質的な実現のためには、情報処理のアウトプット側で情報の識別、分類することをベースで行ってきた機械学習を、インプット情報のassociation(連関)側に大きく振らないといけない。

しかし、形や質感など、情報のメタ処理をしないでいきなりキカイに放り込む今のやり方ではかなり限界がある。

とはいうものの、素朴なレベルで良ければ、意外と早い可能性があります。5年以内に起こる可能性は6、7割くらいあると思います。

今のは識別的な情報入手側の話で、次に、クリエイティブとなったときに、それに類するものを生み出す力がどこまであるかですけれども。

今でも横顔から正面の顔を作るという技術はあって、写真であればできるのですけれども、漫画の世界というのは結構トリッキーというか描き手によって色々な画になったり世界観になってしまっているので、あのようなものをあの程度のデータ量でできるのかは、僕には分からないです。

ただ、できるようになる可能性がないとは、言いません。

今、学習過程でちょっとしたデータ拡張の動きが起こっています。

例えば、先ほども少し触れたAlphaGo(アルファ碁)の試合、「魔王」とまで言われた世界のトップ棋士の一人、イ・セドルが、Google DeepMind(グーグル・ディープマインド)というGoogleが4億ポンドで買った会社の作ったAIと戦い、4対1で敗れました。

AlphaGoのトレーニングは、最初は16万局のデータを基に行われています。

これをもとに約3000万局面を用いて学習したことになっていますが、この過程においては、各局面を回転させたり、鏡像をつくったりして学習可能局面を増やしたと言われています。

さらに、途中まで自己対局させて、一手だけランダムに打ち、その後、またAIに打たせて局面データを自動生成することも行われたと言われています。

このように技をうまく使って、1のボリュームのデータを10倍とかそれ以上にしてトレーニングさせるという研究が今、進んでいます。

だから、意外に「宇宙兄弟」の100画像くらいで1,000画像分くらいを教えこむ時が来る可能性、もしくは1万のN倍くらい教育ができる可能性があって、そうなると、こんな感じで画がポンポン入ってくる日はあり得ます。

ストーリー設計や新たな描画手法の開発は奇跡に近い

質問者1 ありがとうございます。

完全な、ド新規の漫画を1巻分全部作るというのは最終かもしれませんが、もうちょっと簡単に言うと、例えば鳥山明さんの画を沢山入力したら、それっぽい画を取り敢えず1枚書いてくれるといったステップがあるのかなと。

安宅 ですね。そこがまず起きるでしょう。そっくりに見えても、絵に魂が入るかは微妙ですが、、。笑

でも、ストーリー作りには遥かに厄介な問題があって、これは結構きついと思います。

この間、星新一賞に応募されている名古屋大学の佐藤理史先生とも対談的なことをしたのですが、生成系によってストーリーラインを作る道はかなり遠そうでしたね。

いわんや、今、佐渡島さんがおっしゃったような「泣きボタン」なんか、訳がわからない。(笑)

井上 郵便受けを開けたら涙が出て来るとかいうのは、難しいですよね。(笑)

安宅 カスタマーエクスペクテーションを下げながら落とすとか、訳わからないことをAIに打ち込み始めると、ちょっと遠いかもといった気はします。

質問者1 そういう部分というのは、人が生み出す最もレベルの高い作品だと思うので、そこまで全部人工知能に取られてしまうと残念なので、しばらくはそういう分野というのはあるのかなという気はします。

井上 佐渡島さんの過去のお話で大変印象的だったのは、要はAIなどの新しいテクノロジーが出てくると、結局クリエイターが最も重要なクリエイティブを生み出すところに時間が使えるようになると。

逆に言うと、そこの部分というのは残っていって、ただ、例えば同じような画を描く時に、AIを活用してバンと画ができる、そこはどんどん代替されるみたいなことをおっしゃられていて、当面はそういうことなのかなと。

安宅 漫画って、あの画を描くこと自体がすごい知的作業だと思うんですよね。

現象として入ってくる情報の中で、描線として抜くというのはとんでもないカリキュレーションであって、大変な訳ですよ。

あれってある種の魔法なんですよね。奇跡に近い。

何かおかしなことが起きている訳です。

新しい芸風を生み出したりすることは、しんどいかもしれないですよ。

でも、芸風を学んで漫画の型を手伝うのはあり得る。ストーリーの雑ラインを書くくらいは手伝えると。

ただそこでパンチのある世界や、「泣きボタン」のようなものは、全てしばらくは無理でしょう。

そうではないかなと思うのですが、どうでしょう?

AIを使えば感情表現への研究により時間を割ける

佐渡島 そう思います。

ただ、ある種のストーリーの型があったりする方が、そこから深く考えられるので、型作りの一部は人工知能に頼ったりした方がいいだろうなという気はしているんですよね。

例えば、役者に話を聞いた時に、「どういう風に能力を高めたいですか」と質問したら、台本を一瞬に記憶したいと言っていて。

どうしてですか、そんなに記憶するのに苦労するのですかと聞いたら、自分の練習時間のほとんどを台詞の記憶に使っていて、感情の再現に使っている時間が短いから、一瞬で覚えられる人間の方が結局はよい演技ができるのだ、と言っていたんですよ。

安宅 それは人間が攻殻化して(編集注:攻殻機動隊のような世界となって)解決すると思うんですよ。キカイと人間の融合。

もう、チップを人体に埋め込む時代が来ますから。それは恐らく、多くの人が思うほど遠くない未来です。

佐渡島 役者と作家も、究極は一緒かと。

だからストーリーラインよりも、そこでどういう表情をさせるか、どういう仕草をさせるか、どういう間をとるかみたいなところの方に、時間をかけた方が面白いものができる。

安宅 なるほど。そうでしょうね。

佐渡島 『SLAM DUNK』って、あらすじを言ってしまうと、バスケに出会って上手くなって勝ったという話ですからね。

でも演出によって最高に面白い訳です。演出を練れる時間を増やしたいですよね。

安宅 画が素晴らしいじゃないですか。

芸術ですよね。あのくらいまでいっちゃうと、もう。あの画風な感じ。

最後は、歌うたい(プロの歌手)って「声が全て」みたいなところがあるじゃないですか。

だから、こんな感じの画、こんな感じの声みたいなところは、相当長く価値として残るのではないでしょうかと思います。

質問者1 ありがとうございます。

井上 お話は尽きないので残念なのですが、お時間になりました。

今日は大変ありがとうございました。

安宅 おお、そうですか。今日は佐渡島さんの質問にお答えできない局面が何度もあり、すみません。

佐渡島 いえいえ。面白かったです。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子

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