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「今、AIと漫画が熱い」【F17-5E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その10)は、表現者とビジネスの関係性について議論しました。世界観を持ったビジネスの留意すべき点やその承継など、世界観ビジネスの要諦を考えられます。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5E
安宅 x 佐渡島 特別対談!
「今、AIと漫画が熱い」
(スピーカー)
安宅 和人
ヤフー株式会社
チーフストラテジーオフィサー
佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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最初の記事
【新】ヤフー安宅×コルク佐渡島、特別対談「AIと漫画の交差点」【F17-5E #1】
1つ前の記事
【安宅×佐渡島】ビジネスの論理ではなく、好きなものを突き詰める【F17-5E #9】
本編
佐渡島 僕らは、LVMHの各ブランドのような、作家ごとの世界観を作り上げたいなという風に思っていて、その世界観というのに今悩んでいます。
作品を作る時に、世界観のコアを作る必要があるんです。
その世界観のコアがあると、作品だけではなくて、コアに惹かれた人たちのファンクラブみたいなものが存在できる。そうすれば、その他のものがかなり短時間で展開できるんですよ。
コルクは、作家の横にコミュニティを作って新しいビジネスでアパレルなんかを作れないかというところで、この4年間くらい四苦八苦していたのですが、やっと成果が見えて来ました。
安宅 さすがですね。
表現者にとっての「お金」とは
佐渡島 現状は、商品供給が全く間に合っていない状況なので、ここをある程度やっていくと3〜4倍まで広げることができるなと思っています。
安宅 もとより広がりますよ。だって面白いですもん。
ただ貼っておくだけでいけているじゃないですか。あそこまできちゃうと。
佐渡島 この閉じたところのコミュニティで本以外の様々な展開をしていくということの型が作れたら、それを新人作家でもやっていくことができます。
新人作家のところでも早い段階でコミュニティでの事業規模を作っていく。あとはそれでどれだけ大きくなれるかですね。
作家の心の中にある世界を問い続けて、最大限にしていくことが必要だと思っています。
安宅 そういう雑収入がまとまって入ってくると、作家は緩まないですか?
佐渡島 それで緩む人は一流の作家ではないですから。
安宅 そうか。むしろそれで安心して、より励める人がいいということですかね?
佐渡島 そうですね、安心というか、もう何も気にしていないです。
心の中に世界があって、それを描かざるを得なくて、
安宅 ああ、そういうことですね。もう溢れんばかりの。
佐渡島 そうです。
井上 だから全然違う人が担うのですね。どうやってそれを利益に変えるかというのは。
安宅 お金的な戦略や希望は、もう振り込んでおいてくれよと。
佐渡島 そうですね。
安宅 「毎月ボンボン入って来るな。以上。」って感じ?
佐渡島 そうです。
安宅 ははは。(笑)
紫と緑だけで「エヴァンゲリオン」になる
井上 収益に繋げる部分は、バンダイさんのビジネスモデルのような感じなのですかね?例えば、キャラクター・マーチャンダイジングであったり。
佐渡島 そうですね。だからバンダイさんの仮面ライダーは、映像が収益の柱ではないですよね。別の収入も確保されている。
バンダイの収入は、出版社の収入よりも大きいですよね。そのビジネスモデルが、今までは子供向けだったのが、これからはネット上のコミュニティで、大人向けもありえると思っているのです。
安宅 本当にそう思います。これって繊維の世界で生み出された画期的なモデルの一つなんですよね。「ブランド」と呼ばれるモデルです。先日、私の履歴書で高田賢三さんも語られていましたが、例えばKENZOというロゴを張ると、同じデザインのものでも当然数倍で売れる。もちろんロゴを貼るに値する商品の目利きは必須ですが。
まさにそれがキャラクターの世界で横展開されているということで。キャラクターだったら何にでも貼れてすごくいいと思いますね。
しかも、世界観を持ち込めるじゃないですか。
佐渡島 そうなんですよね。
『宇宙兄弟』は常に「未来」とか「宇宙」という世界観にいけるじゃないですか。
『ドラゴン桜』と『インベスターZ』は、「教育」と「学び」でいけるんですよね。
安宅 いけますよね。
『宇宙兄弟』っぽいTシャツなんて、見たこともなくても思い浮かんでしまいます。
『宇宙兄弟』っぽい携帯アクセサリーなど、浮かんでしまう感じ。
佐渡島 そうですね。ただ、僕が目指している商品は、そういう形とちょっと違います。
イラストを使わなくてもブランドがわかるようにしたいのです。例えば『エヴァンゲリオン』って、紫と緑だけでわかりますよね。
オレンジと黒で『ドラゴンボール』になるし、水色と白で『ドラえもん』になるんですよ。
『宇宙兄弟』には、まだそれがないんですよね。
安宅 青と白ではないのですか?
佐渡島 宇宙服はそうなんですよ。青、白、赤といった感じで。
青、白、赤って、『ドラえもん』もそうなんですよ。
安宅 でも大丈夫ですよ。『ドラえもん』はもう、この国の空気ですから。(笑)
佐渡島 状況が違いますからね。
でも、横展開していく中で、その辺まで全て設計していかなければならないなと思っています。
安宅 いいですね。相当、未来があるなあ。
質感なども一緒に入れたらいいと思います。
佐渡島 そうですね。
井上 私はAppleに所属していた時期があり、セールスにいましたが、先ほどすごくはっとしたのは、Appleの中では常に、ラグジュアリーブランドのマーケティングであれと言われて。
絶対にAppleのブランドの世界観を崩すことを許さないと、大げさに例えるならば、超恐怖政治みたいなものがありました。
セールスは、勝手に喋るなと。だからキーノートは絶対作ってはいけなかったんですよ。
なぜならば、メッセージがブレるから。
マーケティングの作ったメッセージをひたすら伝えるだけだと。個人レベルではつまらないと感じる面もあったのですが、企業として考えると、さすがなだとすごく学びました。
安宅 よく分かります。
世界観の本尊がなくなったApple
佐渡島 それって、本来的には、キャラクターやストーリーが楽なのは、それを読ませるとかなり多くの人が世界観を理解できるからなのですよ。
井上 確かに。
佐渡島 Appleの“Think different“だと、やはり再現した時に皆違う物ができてしまったりするし、デザインもAppleっぽいものをと100人のデザイナーにやらせると、ちょっとずつ違ってくると思うのです。
僕は作家の頭の中をパブリッシュするのがうちの会社のミッションだと定義しています。Appleは、スティーブ・ジョブズが生きている時は自分の頭の中をパブリッシュできたのだけれども、スティーブ・ジョブズがいなくなった今、それができない状態になってしまっていて。
スティーブ・ジョブズの頭の中でAppleっぽいものは閉じられてしまっている。
井上 そうですね。やり方だけは残っているのですけれども。
色々なイベントで語るのではなくて、一回だけのキーノートのイベントだけでCEOが直接世の中にコミュニケーションするというのがまさにそれで、スティーブ・ジョブズが直接喋って、それがその瞬間になるべく多くの人に届けられる。一番効率の良いマーケティング手法だと思います。
安宅 歪まないしね。
井上 それが一番雑音が入らない。そのやり方は残しているのですけれども、肝心の…
佐渡島 元のところの世界観がない。
安宅 ご本尊が空になってしまった。
佐渡島 ジョブズのプレゼンテーションは、皆の生活がどういう風に変わるかというのを言っていました。
それが、ティム・クックに変わってからは、手元のスペックについて言うように変わったじゃないですか。
「世界観」から「機能」のことを言うようになって、Appleから世界観が失われていったんです。
井上 スティーブ・ジョブズは本人が喋りたいことを喋っていたけれども、ティム・クックは、色々な人が考えたものを話しているという印象があります。
そのプロセスには、そもそも左脳のプロセスが入ってしまっているから、やはりちょっと違うんですよね。
作家さんが漫画で表現している世界というのは、表現したいものを表現しているからそパワフルなのだと思いますけれども。
安宅 残念ですね。Appleについては仕方がないですけれども…。僕がアメリカにいた頃、倒産しかかっていて、それでも株を買って、二年に一度はマシンを買い替えていたぐらいのファンなので、かなしいです。
世界観は天才だけのものか?
井上 でも、ある種割り切っているんだと思いますよ。
もうスマホ以上のビジネスってなかなかできないから、iPhoneを中心とするエコシステムの中で、できるかぎり長く、収益を獲得するという戦略にシフトしている面もあると思います。
安宅 もうSONYと同じですよ。井深大、盛田昭夫の両氏を失った時のSONYみたいな感じです。
あのような天才は簡単には生まれないですよ。
井上 再現性がないからこそ天才だという。
安宅 そうですね。
でもヨーロッパのデザイン事務所なんかは、どうしているのでしょうか?
グッチとか、シャネルとかね。
テイストを守り続けるじゃないですか。
井上 そうですね。
アパレルは、アウトプットの形態が多岐に渡るし、それがロングタームに続くという違いがあるのかもしれません。
安宅 ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)のような才能のある若者をどんどん雇い入れてやるじゃないですか。
テイストを守らせながら、新規性を入れるじゃないですか。
佐渡島 テイストを守りながらも新規性があって、入れているデザイナーによって相当浮き沈みがあるんですよね。
安宅 確かにありますね。
佐渡島 こちら男性には分からないですが、全く変わったとか言っていたりして。
安宅 でもやはりディオール(Dior)とかシャネルとか、世界観はものすごくいいじゃないですか。
もう100年くらいやっているから。
佐渡島 そうなんですよ。
だから僕は、世界観ビジネスになってくると思っていて。
その世界観ビジネスの時に、デザイナーの持つ世界観って、継承するのがキャラクターに比べて難しいと思っています。キャラクターの持っている世界観を大人にもいけるようにデザインした方がいいだろうなと思っています。
安宅 なるほど。面白いですね。
井上 大変面白いお話なのですが、終了10分前になってしまいました。
安宅 ご質問は何だってお受けしますよ。会場で聞いている方からの質問でもよいですし。
(続)
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続きは 【安宅×佐渡島】AIに漫画は作れるか?【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
最後の世界観のお話しは、1100年の歴史を持つ太宰府天満宮の権宮司・西高辻さんの「変わらないように見せるために、いかに変わるか」という言葉を思い出しました(榎戸)
次回が最終回です。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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