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9月4日~6日の3日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2018。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。こちらの記事は、初日の9月4日、注目度ナンバーワンのプログラム「スタートアップ・カタパルト」の登壇者を追ったレポートです。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18〜21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。
「スタートアップ・カタパルト」とは
「スタートアップ・カタパルト」は、その名のとおり、スタートアップや新規事業が、自分たちのビジネスのアイデアと事業の将来性をプレゼンして優勝を競うコンテスト。リアルテック・カタパルトが別途あるため、リアルテックを除くノンジャンル、「社会課題を解決するユニークなプロダクト/サービス」に関わるベンチャーが一堂に会して、7分間のプレゼンを行い、優勝を競う。
審査員は、現在トップランナーとして活躍する起業家を含む33名。普通に考えて、これだけの方々にプレゼンできる機会はスタートアップにはなく、優勝すれば注目度は一気に高まる。今年2月のカタパルトではMellowの柏谷泰行さんが優勝し、その後の活躍はご存知の人も多いかもしれない。最近では優勝結果がニュースとして報じられるようになった。
今回は3月から登壇企業の募集を募り、多数の応募の中から15社が登壇。いずれもこの日のためにプレゼン練習やスライド資料の推敲を重ね、この日を迎えている。
早朝からリハーサルを開始
9月4日の早朝7時30分。すでに会場には、カタパルト登壇者が数名到着していた。会場のライティングのチェック、マイクのチェックがすでに始まっており、いよいよ本番という雰囲気が高まってくる。
本番では、右の演台、左の演台で交代にプレゼンを行うため、奇数の登壇順はステージ向かって左側、偶数は右側の壁際の椅子に座っている。
会場のなかに、農家と消費者を直接結びつけるサービス「食べチョク」(ビビッド・ガーデン)の秋元 里奈さんを見つけた。
プレゼンは五十音順で行うため、彼女の登壇は1番目、声をかけづらいほど張り詰めた面持ちだ。ほどなくしてステージ担当から呼ばれ、演台へ向かった。
左右の演台でプレゼンが行われるため、1番目のビビットガーデンの秋元里奈さん、2番目のアイデミーの石川聡彦さんがスタンバイしてリハーサル
カタパルトの本番を支えるスタッフは大勢いるが、そのなかでも登壇者の強い味方は、以前にカタパルト・グランプリで優勝経験のあるe-Education三輪開人さんだ。今回はA会場のスタッフとして参加した三輪さんは、登壇者視点でリハーサルを行う壇上の登壇者に寄り添い、細かいアドバイスを送っていた。
リハーサルを終えた秋元さんに今の気持ちを聞いた。前夜のオープニング・パーティは出席したのだろうか?
「いいえ、ゆうべはひたすらホテルの部屋でプレゼンの練習をしていました。この2日間でスライドを見直して不要なものを削り、ガラッと内容を変えたのです。今日はすべてを出し切って、がんばりたいと思っています!」
登壇者に意気込みを聞く
プレゼンの最初のフレーズを言い、スライドが頭上のモニターにきちんと表示されるか確認するリハーサルが続いている。本番前の緊張感が漂うなかで、笑顔の登壇者がいた。AIで物流・配送ルート最適化を行うオプティマインドの松下健さんだ。壇上でのリハーサルを終えたばかりをつかまえて話を聞く。
「プレゼンは好きなので楽しみです! ゆうべはホテルのビールを飲んでからぐっすり寝ました。優勝商品のブライトリングがほしいです」
背筋を伸ばして椅子に座り、目をキラキラと輝かせている。
もうひとり、余裕を感じる人がいた。シリアル・アントレプレナーの久保裕丈さんだ。家具レンタルのCLASで登壇する久保さんは、時折プレゼン用のスライドに目を落とすが、基本的には自分自身の集中を高めているような面持ち。お話をとお願いすると、笑顔で意気込みを答えてくれた。
「がんばりたいです!定額家具レンタルのサービスを始めたときは、ビジネス性や収益性を疑問視する人が多かったのですが、捨てるにも買うにも、大物家具へのユーザーペインは大きい。それを取り除きたいと思っています」
プレゼンを聞く前に、サービスのねらいが伝わるような明快な説明をいただく。元バチェラーであり、有名人であることから「負けたくない」とライバル視する他のカタパルト登壇者もいるが、一筋縄ではいかないキレキレのプレゼンを見せてくれそうだ。
「個人的には耐久消費財は、すべてレンタルでいいと思っています。僕は持たない男です」
そう言われると、これは聞かないといけない。それは女性も?
「ハハハ……良い質問ですね(笑)。ノーコメントです」
審査員が続々と到着
審査員が続々と到着し、場内の熱気が高まってきている。すでに知り合いの方々も多いようで、早速話に花が咲いている。審査員の方々に、スタートアップ・カタパルト登壇者への期待をうかがった。
グロービス・キャピタル・パートナーズ高宮慎一さん「KLabの真田さん(今回はSOICOの新規事業で登壇)はズルいと思いますが(笑)、よりすぐりのスタートアップを一挙に見られるのを楽しみにしています」
日本アイ・ビー・エム荒川朋美さん「視点がユニークで、即ビジネスに使えるような企業に期待しています!」
今回、優勝者には高級腕時計のブライトリング、クロノマットJSPの日本限定モデルが送られることになっている。ブライトリングの村上智宏さんにも一言いただいた。
「革新的で、イノベーティブな企業に獲ってもらいたいですね」
優勝者には前回同様、FABRIC TOKYOのオーダーメードジャケットと、今回からオフィスおかん賞として社食1年分のサービス、そしてファイナリストの15社に、日本アイ・ビー・エムから1年間のクラウド無料使用権が送られることになっている。
高まる熱気、満員の会場
気がつくと会場の椅子はすっかりと埋まり、立ち見まで出ている。会場の左右にスタンバイしている登壇者たちのすぐ横まで、カタパルトを見に来た人たちがびっしりと座っている。どんな面白いアイデアを持った企業が登壇するのか? 今回優勝するのはどの企業か? その期待感はきっと登壇者にも伝わっているに違いない。会場の熱気が高まってくる。
会場左右に座っている登壇者たちの表情にも緊張が感じられるようになった。まもなく、社運をかけた、人生をかけた戦いが始まる。
左からドクターフェローの林久美子さん、600の久保渓さん、ニューロープの酒井聡さん、Super Duperの鈴木知行さん、AROMASTICの藤田修二さん
「スタートアップ・カタパルト」いよいよ始まる
定刻をまわったころ、ナビゲーターを務めるICC代表の小林雅がカタパルトの開会を宣言。会場に集まった全員が立ち上がり、これからプレゼンテーションを行う15名にエールを送る。
期待感、高揚感、緊張感が入り混じった割れんばかりの拍手、すでにクライマックスともいえる盛り上がりだ。
登壇者のプレゼンテーション
そして間髪入れずにプレゼンが始まった。ヘッドセットマイクを着け、満員の会場に向かって語りかけ、訴えかける登壇者たち。ICCのオフィスで練習を行っていた時点で、すでに完成度の高いものが多かったが、この日のプレゼンテーションはそれに加えて、自分たちの問題意識と課題解決法を伝えたいという、熱い気迫がこもったものだった。
詳しくは映像でご確認いただきたいが、15社とも渾身のプレゼンテーションを行っている。
ビビッドガーデン(公式ページ)秋元 里奈さん
アイデミー(公式ページ)石川 聡彦さん
600(公式ページ)久保 渓さん
クラス(公式ページ)久保 裕丈さん
ニューロープ(公式ページ)酒井 聡さん
SOICO(公式ページ)真田 哲弥さん
Super Duper(公式ページ)鈴木 知行さん
VAAK(公式ページ)田中 遼さん
ドクターフェロー(公式ページ)林 久美子さん
マッシュルーム(公式ページ)原 庸一朗さん
ソニー(公式ページ)藤田 修二さん
オプティマインド(公式ページ)松下 健さん
Sparty(公式ページ)深山 陽介さん
Azit(公式ページ)吉兼 周優さん
審査員がプレゼンにコメント
全社のプレゼンテーションが終了し、あとは審査員の投票の集計を待つだけとなった。その間、前回の優勝者・Mellowの柏谷泰行さん主演による日本アイ・ビー・エムのスペシャルムービーが披露され(内容については別レポートにて)、投票が終わった審査員がプレゼンの感想を語った。
及川さん「初めて審査員をさせていただきますが、迫力あるプレゼンばかりでした!個人的にはファッション系など、グローバルに成長したいという企業を応援したいと思っています」
高宮さん「すごく大きなトレンドが出ているカタパルトだったと思います。ウェブサービスで終わりというより、リアルに飛び出していって、既存の業界を変えていく。最先端のトレンドが凝縮されているなと思いました」
永田さん「みなさんソニー(AROMASTIC)が出ているのをどう思いますか?と僕は問いたいです。僕はめちゃくちゃ素晴らしいことだと思いました。ベンチャーは、新しいことを創るのは大企業ではなく、自分たちだと思っている。だから15社の中に大企業が割り込んだことをどう捉えるかが大切だと思っています。
新しい産業を創るという意味で、ICCはもっとこれをやるべきだと思う。大企業とベンチャーのせめぎあいがもっと起こるべきだと思うし、ベンチャーキャピタルが投資のためにやっているわけではないICCだからできる、最高の素晴らしさだと思います。あと、個人的にはソニー非公認のAROMASRICアンバサダーです!」
武田さん「個人的にはドクターフェローにドキドキしました。ものすごくポテンシャルがあると思います。あとAROMASTICもいいですね。とても可能性を感じました。ソニーの中でどう育っていくのか気になります。あともう一点いいですか? 今まで真田さんがプレゼンしているのを何十回と見ているのですが、今日ほど生き生きしているのを見たことがないですね(笑)」
松本さん「コマースやマーケットプレースが好きなので、耐久財のCLAS、領域的にスタートアップがあまり入っていないのですが消費財のSparty。大きな市場にストレートに別のビジネスモデルを持って入っていくところに可能性を感じて投票しました」
Drone Fund千葉功太郎さん「プレゼンでドローンが飛んでいたのがうれしくて投票したいと思っています。リアルでのCLAS、Aidemy、Azitが潮流を掴んでいるなと思って投票しました。見ていて楽しかったですね」
XTech西條晋一さん「すごいプレゼンばかりでしたね!特徴的だったのは、真田さん含む35歳以上のミドル層、シリアルの起業家が多かったことで、AIやIoTがリアルに落ちてきているのを感じました。投資したいです」
金坂さん「事業会社目線でいくと、地味ではありつつtoBで確かな生産性や労働力の解決があるというところで、マッシュルームさんやオプティマインドさんに可能性を感じました。そのふたつがつながった世界で、新たな付加価値が広がっていくのだろうなと感じました」
ここで集計が終了。登壇者たちは再び壇上へ呼び戻された。
いよいよ投票結果が発表に
集計システムは、33名の審査員が1人4社まで投票ができ、2重丸が1社で2点、◯が3社で各1点の加点となる。登壇者には投票者が公開されるため、この会期中に自分を高く評価してくれた審査員と親交を深めることも可能だ。
審査の結果は既報の通りだが、優勝はオプティマインド、大接戦だったため2位が4社。僅差ということで、後日6位としてオフィス向けキャッシュレス無人コンビニの「600」が追加発表された。
優勝:AIによるルート最適化で“ラストワンマイル”の物流に革命をもたらす「オプティマインド」
準優勝(第2位 4社):
・ファッション特化型AIを展開する「ニューロープ」
・7つの質問に答えるだけで“私のためのシャンプー”を提供する「MEDULLA」(Sparty)
・月額500円から始められる家具レンタルサービス「CLAS」
・シェアライディングサービスで移動手段の格差を解消する「CREW」(Azit)
6位:オフィス向けキャッシュレス無人コンビニの「600 」
続いて優勝の授賞式が行われ、FABRIC TOKYOの森 雄一郎さんがオーダーメードのジャケットを、おかんの沢木恵太さんが社員1年分のランチを、そしてブライトリングの村上さんが時計を贈呈。松下さんは意気込みで語っていた通り、見事ブライトリングを獲得した。
「ビジネス最前線の熱気を感じる」
プレゼンテーションを終えた登壇者たちのまわりには、授賞式が終わっても人だかりができていた。感想を伝える人、質問をする人、今後の取り組みのための話をする人など、早速交流が始まっている。その後、カタパルトパークの自社の展示スペースに戻った600の久保さんに感想を聞いた。
「緊張しました! これからもオフィスが多くて、高層ビルが多いという場所をはじめ、コワーキングスペースや、待ち時間の長い携帯ショップなどにも注目しているので、積極的に展開していきたいと思っています」
後日6位入賞が発表されたため、この時点ではその感想を聞けなかったが、爽やかなミントグリーンのTシャツに負けないぐらい、すがすがしい笑顔だった。続いて同じく、自社の展示スペースにいる松下さんを発見。プレゼン前より一際笑顔が輝いている。
「今までにこういうコンテストは一度しか出たことがないのですが、『スタートアップ・カタパルト』は熱量が全然違いました!審査員の方々もメディアで見るようなすごい方たちばかり。ほかの登壇者の方々もレベルがとても高くて驚きました。ビジネスの最前線だと感じました」
全力を尽くした15社に今後も注目を
この夜のパーティーの席で、入賞したSpartyの深山さん、ニューロープの酒井さんにも登壇の感想を聞くことができた。お二方とも最初に「悔しい」と言っていたのが印象的だ。
深山さんは「プレゼンテーションを練って練習し、本番では全力を尽くせたし、届いたという手応えがあった」と言う。酒井さんは「カタパルトでは同じ土俵で戦ったが、実際のビジネスのフィールドは違う。自分たちは社会に必然性のあるビジネスではないので、弱いかもしれないと思っていた」と言いながらも、自分たちに何ができるかを語る様子は、クールな外見から想像つかないほど熱い。
早朝からあれだけの全力投球をし、まだどこにエネルギーが残っているのだろう?
悔しいと言いながらも表情はすがすがしく「自分はまだこれだけではない」という新たなエネルギーが満ちている。おそらく登壇したどの企業も、そう思っているはずだ。
終了後のアンケートでも「登壇者・参加者の熱気がすごい」「過去最高のレベル」「刺激を受けた」「最先端のトレンドを知り、学びになった」「協業の可能性がある」という声が多く寄せられている。見る側も真剣に、各社のプレゼンテーションに見入っていたからこその感想だ。
「7分間の、人生をかけた戦い」と冒頭に記したが、「スタートアップ・カタパルト」はスタート地点に過ぎない。ここからが始まりで、これから産業を、未来を創っていく。会場の熱気に真正面から立ち向かい、ひたすら全力投球尽くした15社に今後も注目をしてほしい。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子
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