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「薪をくべ続けると、火が大きくなっていく」NOSIGNER太刀川 瑛弼氏が語る デザインによる防災支援【C16-2 #2】

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ICCカンファレンス CONNECTION 2016においてaugment5 Inc. 井野 英隆 氏、NOSIGNER株式会社 太刀川 瑛弼 氏、そしてPARTY 中村 洋基 氏の3名と、P&GやDeNAでマーケティングをリードしたBloom&Co.彌野 泰弘 氏をモデレーターとしてお迎えし、「クリエイティブの力で世界を動かす」をテーマに議論しました。4回シリーズ(その2)はNOSIGNER 太刀川さんに東日本大震災からの防災にまつわるこれまでの活動をご紹介頂き、その中で太刀川さんが考えるデザインの役割についてお話頂きました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016
Session 2
「クリエイティブの力で世界を動かす」

(スピーカー)
井野 英隆 augment5 Inc. Founder / Film Producer
太刀川 瑛弼 NOSIGNER株式会社 代表取締役
中村 洋基 PARTY Creative Director / Founder

(モデレーター)
彌野 泰弘 株式会社Bloom&Co. 代表取締役

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【本編】

NOSIGNERの活動紹介

彌野 有難うございます。それでは、太刀川さんよろしくお願いします。

太刀川 瑛弼氏(以下、太刀川) NOSIGNERというデザイン会社をやっています太刀川です。


太刀川 瑛弼
NOSIGNER株式会社 代表取締役

慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。在学中の2006年にデザインファームNOSIGNERを創業。現在、NOSIGNER株式会社代表取締役。ソーシャルデザインイノベーション(社会に良い変化をもたらすためのデザイン)を生み出すことを理念に活動中。建築・グラフィック・プロダクト等のデザインへの深い見識を活かし、複数の技術を相乗的に使った総合的なデザイン戦略を手がけるデザインストラテジスト。その手法は世界的にも評価されており、Design for Asia Award大賞、PENTAWARDS PLATINUM、SDA 最優秀賞、DSA 空間デザイン優秀賞など国内外の主要なデザイン賞にて50以上の受賞を誇る。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。内閣官房主催「クールジャパンムーブメント推進会議」コンセプトディレクターとして、クールジャパンミッション宣言「世界の課題をクリエイティブに解決する日本」の策定に貢献。 University of Saint Joseph / Department of Design 客員教授 慶応義塾大学SDM 非常勤講師 法政大学工学部建築学科 非常勤講師

デザイン全般の色々なことを行っている会社です。

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3つくらい紹介して下さいということだったのですが、僕が普段考えていることが如実に反映されたのは、震災関係のプロジェクトが多かったので、その話をしたいと思います。

先ほどデザインについてお2人がお話していて、(PARTYの)中村さんがお話していた通りなのですが、デザインは「表現」として認識されることもあるけれども、表現の裏側にある「何でそれを創らないといけないんだっけ?」とか「それを創ることによって、どういった縁、関係が生まれるんだっけ?」といったところから逆算していったときに、ある意味、どういうデザインが選び取られるのかということなんですよね。

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災害が増える傾向にあって、歴史上最大なハリケーンなど、歴史上最大の災害がどんどん起こっている中で、その中でも、いわゆる3.11は史上最大の災害だったと言って間違いないと思うんですよね。でも、それ以上の災害もこれから起こるかもしれません。

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3.11のときにやったことですが、とにかくクリエイターというのは、クオリティーを上げる仕事であるものの、この時は、為す術がない中で速くやるということで、緊急対策をしようとしたときにクオリティを上げるために時間を使うというのは、あんまり機能しなかったんですよね。

色々考えあぐねて当日やり始めたことは、Twitterで、ホームレスの人がどうやって暖をしのいでいるのかをシェアしてみたら、それに共感してくれる人や、僕たちに近い情報を発信している人がたくさんいることに気が付きました。

そこで、震災から40時間後に、OLIVEというWikiをオープンしました。非常に有り難いことに、無力感を感じている人がたくさんいたからだと思うのですが、このWikiが結構広がって、その月の終わりの3週間後に、100万PVぐらいになりました。

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ここに仮設トイレやマスクの作り方など、色々な情報が投稿されていって、それが被災地にシェアされていきました。

例えば、これは右のように缶を使ってろうそくでご飯が炊けますという投稿です。

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その後、被災地に行ってモノや情報を届けに行きましたが、だんだんと役割が収束に向かっていく中で、本を出版したり、ワークショップを開いたりしました。

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色々な被災地支援をしたのですが、こういうことをやっていく内に、東北との縁が強くなっていき、緊急支援のプロジェクトの役割が終わった後考えたのが、どうやら東北には産業が全然ないということでした。

だけど、世界一の災害があった場所だし、それで有名なのだから、防災産業の拠点として、東北が立ち上がっていくのは面白いのではないか、と思いました。

世界一の防災産業の拠点は、世界一の災害があったところであることの何が悪いのだ、と思って、市の職員の方など色々な方に聞きながらパートナーを探し始めました。

色々な縁がつながって見つかった仙台市の高進商事さんという、地元のほとんどモノを売ったことがないような工場機械の卸問屋さんが、「やりたい」と言って下さって、防災キットを作りました。

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この防災キットがおかげ様で結構売れて、最近自動車用も発売しました。2013年に最初のが発売されたので、2011年の3.11から2年ぐらい経ってしまっているのですが、継続的に色々なプロジェクトを投下しながら、なんとなく震災のプロジェクトが出来上がっていくわけです。

これが最近発売した自動車用のモノです。

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これは公園の中に作るWiFiやバッテリーが入る屋根がついている建物です。

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僕は横浜から来ているのですが、本や防災キットを出していたら、スイスの保険機関を調べると災害被害額という意味で、東京と横浜は世界一危険な都市とされていることがわかりました。

そんな東京の、先日辞任してしまった某都知事が、そのことに胸を痛めて、「何かやらないといけないのではないか?」ということで考えたのが、何がしかの防災情報を含んだ本を作って全世帯に配るというのはどういうことか?というのを電通に調査を依頼しました。

その電通が、僕らのOLIVEの本を見つけていて、「これはすごくよいね、一緒に作りませんか?」ということで出来たのが、東京防災という本のプロジェクトでした。東京から来た人は持っているかもしれません。

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都レベルでの号令があったものなので、最初からたくさん作ることが決まっていました。なので、最終的にこの本は、670万世帯に配布されて、学校にも配布され、しかも法人にも配布されたので、750万部が全戸に届けられました。

それは今の政治状況ですと、大炎上しかねないこともあってヒヤヒヤしつつも、どうしたら本当に人を動かせるかということを考えてプロジェクトを進めていました。結果的には、ものすごく日本中に広がって、今は増刷して色々なところで買えるようになっています。累計770万部になりました。

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一連の話は繋がっていて、最初のTwitterで何となくつぶやいているような状況から、最終的には史上最大の防災計画に発展していきました。

同じビジョンの火の元に、薪をくべ続けていると、だんだん火が大きくなっていく。何かムーブメントが生まれるために、一回でなく何度も繰り返して問い続けることが有効だ、という意味でケーススタディーになったのかなと思っております。

色々なことをやっているのですが、以上をとりあえず僕の紹介とさせて下さい。

彌野 有難うございました。また少しPARTYの中村さんとトーンが違いますけど、デザインで問題解決をするというところが一緒でしたね。

中村さん、太刀川さんのプロジェクトやデザインを見られて何かコメントありますか?

中村 すごいですね。東京防災のプロジェクトをされていたんですね。全然知らなかったです。

太刀川 有難うございます。

中村 うちにも届きました。700万部ですよね。

太刀川 750万部です。訳分かんないですよね。20億ページです(笑)。

彌野  750万部というと、通常は物理的に配る規模ではないですよね。物理的に配るものとしては、とても多い。

中村 ベストセラー作家の水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」が全シリーズで300万部。超ベストセラーでそれなので、750万部はすごいです。

彌野 本みたいな物理的なモノで、100万部を超えたら大ヒットですけど、750万というのはデジタルの世界の規模ですね。

太刀川 だけど、選び取られて750万部な訳ではなくて、最初からその規模を作ると決まっていたので、本当に欲しがってもらえるようなものにしないと、いい迷惑になってしまいます。

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防災の小さな冊子などの行政の資料は、消防署を始め色々なところが作っていて、様々なものがあるのですが、基本的にどれもつまらないですよね。

中村 教習所で配られる教科書とか。ものすごくつまらないですよね。

太刀川 そういう感じです。

彌野 問題なのは、つまらないから、もらったらすぐに捨ててしまうんですよね。そうすると、せっかく配っても、それこそ無駄ですよね。ただ、不思議と少し可愛いと本棚やリビングに置いておこうかなと思って、結果としてリーチが増えたり、読む人が増えたりするので、優れたデザインの価値は大きいと思います。

750万部配って、全部捨てられたら、意味が分からないですよね。

中村 たしかに。

彌野 特にテーマ自体が「防災」という重いテーマなので、エンタメのように面白いものではないですから、余計に端に追いやられてしまいがちなものなので、防災というカテゴリが持つ課題がデザインで解決されているように思えます。

(続)

続きは地域の魅力を世界に発信するaugment5 Inc.井野 英隆氏が手がける「True North, Akita」をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/management/4601

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃

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