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3.「修羅場体験」と「幸せ」の因果関係を考える

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「人生100年時代の幸せな生き方とは?(シーズン2)」7回シリーズ(その3)では、石川善樹さんから「ミスター修羅場」と呼ばれたココナラの南さんが「精神的に強くなると、修羅場が来ても笑えてしまう」と語ります。修羅場体験の積み重ねは、その人の幸せにどのように寄与するのでしょうか? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2018 プラチナ・スポンサーのクライス&カンパニー様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月4〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 5A
人生100年時代の幸せな生き方とは?(シーズン2)
Supported by クライス&カンパニー

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

澤 円
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長

仁禮 彩香
株式会社TimeLeap
代表取締役社長

(モデレーター)

南 章行
株式会社ココナラ
代表取締役社長

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最初の記事
1.「◯◯をしたら幸せになれる」という思考パターンから抜け出すために

1つ前の記事
2. 過去の“壮絶な経験”がポジティブさを生む? 幸せの国際基準「Well-being」調査が示した意外な真実

本編

石川 南さんは、子どもに幸せになってもらうために気を付けてることはありますか?

 子どもがやりたいことを、なるべく否定しないようにしています。

しかし、つい自分の基準で「それは駄目だ」「そんなことをしても意味がないのでは?」と言ってしまいます。

これは結構子どもを傷つけてしまうので、なかなか難しいと感じています。

ガチャガチャから学ぶ「幸せになるためのチャレンジ」

株式会社リバネス 代表取締役副社長 CTO 井上 浄 さん

井上 オモチャの「ガチャガチャ」ってあるじゃないですか。

最近「ドラゴンボールのガチャガチャ」が流行っているらしいんです。

その中には、通常より大きいオモチャが入っている特別なバージョンがあるらしく、うちの子どもがそれが欲しいからガチャガチャをやりたい!と言うので、

「欲しいオモチャが出るまでやるな? 本当に出るまでやるんだな?」

と言って、とりあえず4,000円くらいを100円玉に両替して、ずっとガチャガチャを回していたら、何度も小さなフリーザが出てくるんです。

僕は「出るまでやるって言ったよな!」と半ギレになってずっと回していました(笑)。

石川 どちらが子どもか分からないですね。

井上 子どもに「パパやめて!」と言われました。

しかし何回も回した結果、ついに出たんです、大きいオモチャが!

その時点ですごくお金を使っていたので、出た時には「まあ、出たんだけど…」といった感じにはなりました。

石川 あまり嬉しくなかったのですね。

井上 ただ、副産物としてフリーザが8体くらい出ました。

フリーザが8体集まると、むしろそれがすごいのです。

子ども達はそこに興奮して、欲しかったものが出たことよりも、8体のフリーザを持って帰って「ママーっ!」と喜んで報告するんです。

僕はガチャガチャにお金を使いすぎて、妻にはすごく怒られました。

ただ、その時に気付いたことがあります。

これまで僕は「チャレンジしないと新しいことが生まれない」というつもりでやっていましたが、もしかしたら幸せも、「自分でチャレンジしないとつかめないもの」なのかなということです。

「幸せと感じる前」と、「幸せを感じる時」「楽しい時」と「そうではない時」の差分を作るためには、自分でチャレンジしなければならないのです。

人生100年時代の中では、チャレンジして自分の幸せを作っていくということをしていかないと、幸せにはなれないのかなと思いました。

「小さな修羅場体験の繰り返し」が幸せにつながる?

株式会社TimeLeap 代表取締役社長 仁禮 彩香 さん

仁禮 チャレンジや体験について、企業の方々は、社員の幸福を実現するための手段として「修羅場体験が必要である」ということを、なんとなく理解し始めているようです。

しかし企業側が社員に「修羅場体験をさせよう」としてしまうと、ハラスメントに捉えられかねません。

修羅場体験に変わる経験を、間接的にもたらす方法というのはあるのでしょうか?

 「修羅場体験」というと、「富士山麓の自衛隊訓練に行かせる」というものがありますが、それはものすごく意味が無いと思います。

匍匐前進ができるようになったからといって、背筋が若干強くなるくらいで、ビジネスが上手く回る訳がありません。

人為的なものだとあまり意味がないと思います。

仁禮 そうですね。修羅場体験というのは結局、仕事などを通して「成功を体験する」ということです。

教育の現場で言えば、子ども達が成功体験をする機会を提供して、彼らが自発的に気付くまで待つしかないと思っています。

 加えて、「早めに失敗させる」というサイクルが大事だと思います。

日本は「失敗しないための教育」が得意です。

正解がある前提で教えるので、子ども達は失敗しないように育ちます。

そうではなく、まずは答えがあるかどうか分からないものをやってみて、「早めに失敗させる」というカルチャーを取り入れると、失敗することでプチ修羅場を経験できます。

そのサイクルが少し大きくなっていくと、修羅場のレベルが上がります。

そういった「修羅場体験を繰り返すことで成長していく」というカルチャーを作っていくのが良いかと思います。

修羅場体験と幸せの因果関係を考える

石川 ここでもやはり「因果関係の罠」があると思います。

例えば、「修羅場をくぐり抜けている派遣労働者はハッピーだ」ということが分かったとします。

そうすると、すぐに「修羅場を経験させろ!」という話になってしまいます。

しかし、「幸せってそういうものなのだろうか」と思うんです。

修羅場をくぐっていなくても幸せな人というのは沢山います。

だから、「ミスター修羅場」としてご意見ください、南さん。

(壇上笑)

 ミスター修羅場じゃないですが(笑)。

(写真右)株式会社ココナラ 代表取締役社長 南 章行 さん

今日は朝一番で『俺たちのHARD THINGS 「あの時」を乗り越えて今がある』というセッションに登壇してきました。

「知らない間に社員を鬱にしている可能性がある」とか「知らない間に自分が鬱になっていた」とか、そういう話題があがってきました。

社員にはあまり修羅場を経験させたくないですし、当然自分も好きで修羅場をくぐっている訳ではありません(笑)。

ただ不思議だなと思うのは、精神的に強くなると、修羅場が来ても笑えてしまうんですよね。

石川 慣れてくるんですよね。

 そうなんです。慣れてくると「またこれで俺は強くなれる!」と思ってしまいます。

ドラゴンボールのサイヤ人になりかけているんです。

ドラゴンボールの登場人物は最初「死ぬのが嫌だ」と思っていますよね。

ところが、一度死にかけてより強くなって復活すると、「もう一度死ぬような体験をすればもっと強くなれる」と考えて、自ら「精神と時の部屋(※)」 に入って行くんです。

▶︎編集注:精神と時の部屋とは、漫画『ドラゴンボール』に登場する異空間。薄い酸素、高い重力など非常に過酷な環境であり、外界での1日がこの部屋の中では1年間に相当する。そのため孫悟空などの主要キャラクターは強敵の出現に伴い、短期間でのパワーアップを目的にしばしばこの部屋で修行を行う。

「自分を追い詰めればもっと強くなる」というサイクルに入っているんです。

しかし、入口を間違えると結構大変ですし、加減を間違えると潰れてしまいます。

映像による修羅場の疑似体験は、幸せに寄与するか?

井上 失敗は、実際に体験させなければならないのでしょうか?

例えば「免許更新の時に見せられる悲惨な交通事故の映像」があります。

自動車と人の接触事故が起こり、人がはねられてしまうといったものです。

僕はあのような映像を結構真剣に見てしまうタイプなんです。

その後、車に乗って安全運転で家まで帰ることができた時、ものすごく幸せを感じます。

もしも映像と音で「修羅場の疑似体験」ができて、その疑似体験と現実の「差分」で幸せを感じられるのであれば、そういった体験はこの世の中にたくさん作れるのではないかと思います。

ですから、自社の社員に絶望的な映像を見せて「今日も何事もなくてよかった」と感じてもらえれば、それはある意味「幸せ」なのかもしれません。

石川 会社に来たらまず朝一番に、「全ての取引に失敗して、社長が廃業を宣言して終わる」という絶望的な映像をみんなで見て、「おはようございます!今日もがんばりましょう!」と業務をスタートする。

 「あの映像に比べたら現実は随分いいぞ」と思わせるということですね。

石川 そうです。

井上 「絶望的な映像を見た時」と「通常時」の生体データを比較し、健康に寄与する部分はそれほど変わらず、気持ちが落ちた分だけストレスマーカーの値がちょっと変わるくらいだとします。

その状況を正常に復活させることで幸せを感じ、それがやる気につながるのであれば、「絶望的な映像による修羅場の疑似体験」は良いのではないかと思います。

石川 井上さんがおっしゃっていることはすごく重要だと思います。

心理学の最新トピックに「人間は、未来をどのように認知するのか」というものがあります。

これまでの心理学では、「過去」のことや「現在」のことばかり考えてきました。

過去だったら「記憶」、現在だったら「モチベーション」などです。

しかし我々は、1日のほとんどの時間を「過去」や「現在」ではなく「未来」について考えて過ごしています。

そうした「未来」を、人がどのように考え、イマジネーションしているのかについては、これまでほとんど研究が進んでこなかったのです。

先ほどのお話は「最悪の未来を想像させることで、現実との“差分”で現実が明るく見える」というシミュレーションを行うということであったかと思います。

こうした「どう想像してもらうのか」については、科学が全く手がついていない分野です。

「相談」とは「明るい未来を作るための会話」である

写真左から、石川さん、井上さん、澤さん

井上 日本人に「楽しい人」「幸せな人」が少ないのだとすると、あまりに幸福な未来を想像し過ぎているということなのでしょうか?

 考えていないのではないでしょうか。

考える時間を取っていないという方が正しいように思います。

「働き方改革」という現在のバズワードがありますが、僕はそれが大嫌いです。

しかしそれをテーマに年間100回以上プレゼンテーションしています。

石川 一番嫌いなことをテーマにしているんですね(笑)。

 依頼が来てしまうのです(笑)。

働き方改革のキラーワードは「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」です。

「報告」と「連絡」というのは、それぞれ「過去」と「現在」のことです。

「報告」は「過去に起きたこと」、要するに「先月までの売上が幾らか」ということです。

「連絡」というのは「今日はお客さんのところに行きます」といった「現在」のことです。

そして「相談」というのは「未来の話」です。

だから「ほうれん(報告・連絡)」は全てツール化・自動化し「パッと見れば分かる状態」にしておく。

そして「そう(相談)」の部分だけはface to faceで会話をし、未来のことを考えましょうというのが僕のロジックです。

「相談に時間を割くと、明るい未来を作るというところに時間を割けるからハッピーですよね」と言うと、皆さんにすごく納得して頂けます。

しかし、なかなか行動を起こしてしてくれません。

なぜなら、やったことがないからです。

一見「相談」に見えるけれど、結局「報告」「連絡」に近いことをしてしまい、過去の掘り起こしに時間を使い過ぎているのです。

やはり「これから起きるハッピーな未来について会話する習慣を作る」ことが大切だと思います。

一方で、日本人がすごく得意なことがあります。

それは「起きてもいない不幸に備える」ということです。

起きていないにも関わらず、「ああなってはいけない」「こうなってはいけない」と考えます。

だからモノづくりにおいても、ものすごく過剰に色々な予防線が張られていて、すごく使いにくい製品が出来上がるといったことがよくあります。

「未来を作る相談事は、明るい未来を作るための会話なのだ」という習慣付けはすごく大事だと思います。

石川 極めて本質的なことですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/三木 茉莉子/尾形 佳靖/戸田 秀成/Froese 祥子

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