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「テックベンチャーとオープンイノベーションの実際」全7回シリーズの(その4)では、モーションセンサー「キネクト(Kinect)」を開発し、2014年にアップルへ事業売却を果たしたプライムセンス社の成功例について。知財弁護士の鮫島さんは、プライムセンス社の戦略を「かなり高度な知財と法務の能力がないとできないこと」と解説します。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 9D
世界を変えるテクノロジーを生み出そう!テクノロジー大学発テックベンチャーとオープンイノベーションの実際
Supported by Honda R&D Innovations
(スピーカー)
鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士
松下 健
株式会社オプティマインド
代表取締役社長
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO
森本 作也
Honda R&D Innovations, Inc.
Managing Director
(モデレーター)
永田 暁彦
リアルテックファンド 代表 /
株式会社ユーグレナ 取締役副社長
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最初の記事
1. Honda×リバネス×AIテック×知財弁護士が徹底議論!オープンイノベーションのリアル
1つ前の記事
3. 大学発テクノロジーで起業、「CEO」に就任するべきは誰か?
本編
永田 成功するオープンイノベーションには、きっとそれぞれ「要件」があるはずです。
僕は、その要件の本質は愛や好奇心なのではないか、という仮説を持っています。
皆さんがやってこられた中で、「これはうまくいきそうだな」「心地よくできそうだな」「うまくいっているな」と思える要件とは何なのか、何が揃っているとそう思えるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
森本さんは、大企業側から見ていかがでしょうか?
イスラエル発「キネクト」はオープンイノベーションの最高の成功例
Honda R&D Innovations, Inc. Managing Director 森本 作也さん
森本 大企業側からというより、僕が見た実例です。
オープンイノベーションの最高の成功例だと思ったのは、自分ではなくて自分の競合だったのですが、イスラエルのプライムセンス(PrimeSense)という会社とマイクロソフトの協業で、キネクト(Kinect)というデバイスが出たときです。
普通、アメリカの大企業がベンチャーのテクノロジーを使いたいと思ったときは、買収してしまうのが早いです。
しかしプライムセンスは、独立したままライセンスとチップだけをマイクロソフトに売り、巨額の富を得ました。
マイクロソフトによるキネクトの販売数は2,400万台にも及びます。これは記録的な数字です。
そしてその後、マイクロソフトはプライムセンスを買収するかと思いきや、結局プライムセンスはアップルに買収されるのです。
つまり、両方で大成功している例なのです。
これはどういうことかというと、プライムセンスは、ソフトウェア・ライセンスとチップの権利をきれいに分けて、「マイクロソフトはここからここまで」、「自分たちはここからここまで」と独立を守ったので、そのような関係が構築できたのです。
同じことをアップルとやって、今、キネクトはiPhoneの三次元顔認証技術に利用されています。
混ざり合いとは逆に、常に権利というものにきれいに線を引けたのが成功の鍵だったと思います。
これは欧米の例であって日本の例ではありませんが、とてもうまくいったオープンイノベーションの例だなと僕は見ていました。
永田 ベンチャー側は、会社によっては売却したい意向が強い場合もあり、また自立した道を望むパターンもあるわけです。
森本さんの仮説で結構なのですが、結局そこではどちら側のどのような意思が働いたと思いますか?
キネクトはなぜ、マイクロソフトに買収されなかったのか?
森本 僕の仮説では、プライムセンスの人たちは、単純にもっと高く売りたいと考えたのだと思います。
マイクロソフトはたぶん買収のオファーをしたと思いますが、彼らが企業価値を最大化しようとしたときに、提示された金額では足りないと思ったのではないでしょうか。
鮫島 全く同意見です。
内田・鮫島法律事務所 代表パートナー弁護士・弁理士 鮫島 正洋さん
たぶんベンチャーの中に、「ここに達するまではこの権利とこの権利をこのように切り離して、このようなビジネスモデルをやるけれども、この一線を超えたら売却してもよい」という、確固たる意思のようなものがあったのだと思います。
これは、かなり高度な知財と法務の能力がないとできないですね。
森本 なおかつ、産業における自分たちの価値を見切れていないとだめですね。
自分たちよりはるかに高い、身の程知らずの価値をイメージしても全然相手にされないわけですから。
そこがきちんと見えていないとできないだろうと思います。
永田 逆にマイクロソフトがそれだけ技術ソーシングをして技術DD(デューデリジェンス)をして必ずいけると思っていたのであれば、最初に全部買ってしまってからバリューを上げていく、という選択肢もあったのかなと思ったのですが。
森本 マイクロソフトがどのように最終的な判断をしたのかは知らないですが、実は、僕が前にいたベンチャーとプライムセンスは競合で、マイクロソフトは最初のソリューションにプライムセンスを選んで、次のソリューションに我々を選びました。
ということは、最初の段階ではまだプライムセンスの技術はそこまでではないと判断して、生かしておいてリスクを下げたのでしょう。
だから自分たちのリスクを取らなかったのです。
でも後で商品化して大成功したから、普通だったら買収するのが普通ですが、その段階では我々の技術を再判断して、こちらの方がチャンスがあるなと選んだのでしょう。
大企業と連携する上での「文化的擦り合せ」と「線引き」
永田 今、ベンチャー側の意思という話がありましたが、松下さんは大企業と連携する上での線引きや自分の中での軸のようなものはありますか?
松下 まず混ざり合いという点で言うと、文化の混ざり合いはすごく大事だなと感じています。
ベンチャー側からすると「Slackも使ってくれない」「messengerもできない」というような話がよくあります。
先方には先方の都合がありますし、最初に文化の交流をした上で、お互いが融通を利かせるラインを見つけ出すことが、すごく大事ではないかと思います。
「メールしかできないのであれば、そこは我々も覚悟します」「その代わりこの部分はベンチャーに合わせてください」というように、お互いが譲歩して良いところで均衡が保たれると、とても進みやすくなると感じています。
その上で「線引き」について言うと、私たちは「知財を含めて権利は全部こちらです」と、最初に明確に伝えることを心がけました。
ただ、我々はデータを用いて地図を構築しているので「データがなかったら地図は作れなかっただろう」と言われれば、一緒に作った地図はどちらのものなのか? という話になってしまう難しさがあります。
しかしそこは最初から譲っていただいていたので、すごくやりやすかったです。
永田 先ほど、オープンイノベーションとは「出す」ものだという発想がありましたが、逆に向こうからもらったもので、良かったなと思ったものはありますか?
松下 データと人、そしてやはり資金力ですね。
永田 データは分かりやすいですが、人という点では何を受け取ったことが良かったのでしょうか?
松下 これは日本郵便さんの例ですが、オープンイノベーションの最中に草加郵便局で実証実験を行ったときに、草加郵便局長の下にいらした担当者さんが、1カ月後ぐらいに本社の我々の担当部署に異動されました。
実証実験の現場でずっと一緒にやってくれた人なのですが、この期間が終わればそれまでかなと心細く思っていたところだったので、すごく嬉しく、心強く思いました。
(続)
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続きは 5. コア技術を大企業に提供してもらおう!大企業とベンチャーの“一心同体型”コラボレーションとは? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成
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