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ICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇し、見事優勝に輝いた T-ICU 中西 智之さんのプレゼンテーション動画【Doctor to Doctorの遠隔医療で、患者を救う、医療従事者を守る。遠隔ICUの「T-ICU」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 6B
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)
– 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング
(プレゼンター)
中西 智之
株式会社T-ICU
代表取締役社長 / 医師
公式HP | STARTUP DB
2001年京都府立医科大学医学部卒業。心臓血管外科医として6年、麻酔科医として2年の経験を積んだ後に、都内救命救急センターに勤務。東日本大震災の際にはDMAT隊員として発災当日から岩手県大船渡市や陸前高田市での医療活動に従事。その後麻酔科医のフリーランスとして多くの病院の手術室や集中治療室(ICU)で勤務をした際に、集中治療専門医の存在の有無による病院間の診療格差に課題を感じ、遠隔集中治療(tele-ICU)の普及に取り組む株式会社T-ICUを2016年に設立。設立後は三菱総研、500×KOBE、田辺三菱製薬×0→1Booster、ひょうごクリエイティブ起業創出事業など数々のビジネスプランコンテストやアクセラレーションプログラムで賞を獲得。Doctor to Doctorの遠隔医療の確立と普及に努める。集中治療専門医、救急科専門医、麻酔科専門医、日本DMAT隊員。
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▶「ICC FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧
中西 智之さん T-ICUの中西と申します。おはようございます。
私は救急や集中治療を専門とする、19年目の医師です。
医療界には医師不足や医師の働き方改革、国民の医療費の増大などの問題があります。
これらの問題を私たちは「遠隔医療」で解決します。
ICUでは、70%の確率で専門医の治療が受けられない
私が専門とするICU(集中治療)の分野においては、「70%」という数字があります。
この数字は、例えば皆さんが病気や怪我でICUに入っても、70%の確率で専門医の治療が受けられないことを意味しています。
専門医の不足や偏在が原因で、専門医が病院に配置できていないからです。
どのぐらい不足しているかと言うと、現在日本に医師は約32万人いますが、ICUの専門医は全体の0.5%にあたる約1,700人しかいません。
さらに、ただでさえ少ない専門医は、東京や大阪に偏在しており、鳥取県には4人しかいません。
東京に237人専門医がいると言っても、そもそも人数が少ないので大学病院にしかいません。
東京の方はよくご存知の病院かと思いますが、大規模な医療機関の一つである虎の門病院にも、ICUの専門医を十分には配置できていないのが現状です。
ICUの設備は約1,000病院にありますが、そのうち700病院には専門医がいません。
300施設に偏在している専門医の力・時間を有効活用して、700病院をサポートしようとの試みが、私たちの取り組む「遠隔ICU」です。
少ない専門医を有効活用する、米国の「遠隔ICU」事情
こちらの写真は米国のAdvanced ICU Care社のものです。
サポートセンターと呼ばれる場所に専門医を集め、各病院をインターネットで結んでいます。
そして心電図モニターや検査結果を共有した上で、該当病院にアドバイスをするという仕組みになっています。
私たちのシステムはテレビ会議システムを改良したもので、顔を見ながら会話をし、心電図モニター、CT、MRIのデータを共有して、専門医が一般医に治療方針を提案できるようになっています。
もう一度、先ほどの写真を見てみましょう。
一番手前に白衣の医師が座っていますが、彼の前に10以上のモニターがあります。
日本では、1人の専門医は自身の所属する病院の1つのICUしか管理できませんが、彼の目の前には30病院分のICUのデータが出ています。
少ない専門医を30倍の効率で有効活用できるのが、遠隔ICUです。
遠隔ICUの導入は、コスト面でも経済合理性が高い
遠隔ICUのコストについてご説明します。
通常、24時間365日シフトを組んでICUに対応するには、5人の医師が必要です。
1人あたり1,500万円の年俸だとしても、医師の年俸だけで7,500万円かかります。
しかし私たちのサービスでは、24時間専門医がサポートして、年間1,000万円程度でサポートできます。
米国では、遠隔ICU導入で患者の死亡率が減少している
米国では、実は遠隔ICUが20年前から始まっています。
2000年と言うと、イチロー選手がシアトル・マリナーズに入団した年です。
2002年を起点として右肩上がりの中央のグラフは、「遠隔ICUで管理されているベッド数」を表しており、増加し続けていることが分かります。
現在、全米のICUの20%は遠隔で管理されています。
また、遠隔ICUの導入前後を比較すると、死亡率が26%下がったとの論文も出されています。
20万人分の患者さんのデータですので、信頼性が高いのではないかと思います。
厚生労働省・日本集中治療学会も「遠隔ICU」を推進
私たちは、遠隔ICUを、国内では京都大学をはじめとした大学と協力しながら進めています。
次のスライドの右側は日本経済新聞で、厚生労働省が遠隔ICU(Tele-ICU)を推進することを伝える記事ですが、青枠で「質高め」とあります。
質を高めることにより、当然救命率も上がります。
専門医が関わることで合併症が減り、その分の治療費が減ることによる「医療費抑制」が検討されています。
それに伴い、「Tele-ICU体制整備促進費用」として令和元年度の予算で5億円、令和2年度も5億円の予算がつく予定です。
また、日本集中治療医学会にも遠隔ICU委員会(AdHoc)ができ、遠隔医療を推進しています。
私は、委員会内のICU AI プロジェクト ワーキンググループのメンバーとしても活動しています。
このように、厚生労働省と学会が進めている遠隔ICUですが、プレーヤーは私たちT-ICUだけです。
高度な知識と経験が必要なため、誰にでもできるものではありません。
ICUの枠を超え、専門医の“Doctor as a Service”を展開
私たちは、現在、15病院と契約して遠隔ICUを始めています。
そして今後は、ICUだけではなく専門医を集めて“DaaS(Doctor as a Service)”と呼ばれるサービスを展開していきたいと考えています。
これまで、専門医は病院に所属して自分の能力を発揮してきました。
しかしこれからは、自分の所属病院だけではなく、その他の場所で専門医療を必要としている患者様や、色々な企業様、そして海外の方々にもサービスをご提供できるようなプラットフォームにしていきたいと思っています。
スカイマークと提携、神戸空港での医療サポートを開始
そこでまず、私たちはスカイマーク株式会社さんと提携をし、神戸空港で搭乗前のお客様の具合が悪くなった時に遠隔でご相談いただくというサービスを、2020年2月から開始しました。
こちらは、2月3日の日本経済新聞です。
プレスリリースも出させていただき、スカイマーク株式会社の佐山展生会長、神戸市の久元喜造市長からもコメントをいただきました。
遠隔医療×救急、在宅、災害…そして海外展開を目指す
海外への展開も進めてまいります。
すでにネパール、バングラデシュ、カンボジアに赴き、遠隔医療の提供について話を進めています。
日本では遠隔ICUだけで300億円程度の市場規模があると言われています。
これを、遠隔×救急の分野、遠隔×在宅医療の分野、そして海外にも展開していきます。
2022年の遠隔医療の市場規模は、世界で4兆円と言われています。
これは再生医療と同じ市場規模で、私たちはここの市場をねらっていきます。
社内には私とCOO/CFO、CTOがいて、専門医が30名います。
また、現役の医学部の教授で集中治療がご専門の先生方からも、応援をいただいています。
専門医がどれくらい遠隔医療を必要としているかを示すものが、ここにあります。
私たちは、専門医を集める際にあまり声掛けをしていませんでしたが、ホームページの問い合わせフォームを通じて、多くの面識のない専門医の先生方から連絡をいただきました。
特に、米国にいる医師からは「米国で遠隔ICUを行っているが、日本にはない。実際に米国で有効だから手伝いたい」というメッセージをいただき、続々とメンバーが増えている状況です。
このように、専門医は遠隔ICUの必要性を感じています。
日本でアカデミックに遠隔ICUに取り組んでおられる昭和大学の大嶽浩司教授も、社外取締役として関わっていただいています。
▶T-ICU、取締役に大嶽浩司教授就任(昭和大学病院副院長兼eICU室長)!早田和哲取締役CMO、ニック・バルア取締役も就任(PR TIMES)
遠隔ICUで、患者を救い、医療従事者を守る。
現在、新型コロナウイルス感染症が話題になっていますが、遠隔で診療することによって医療従事者を守れるのではないかと考えています。
感染症が重症化した時には、どうしても専門医が必要です。
1,700人よりさらに少ない感染症専門医を、遠隔でシェアできないかとのご相談もいただいています。
今後、遠隔医療はさらに必要になってくるでしょう。
私たちは、今、資金調達を考えていますので、ご協力いただければと思います。
導入が必要な病院様のほか、システム開発も考えていますので、そのご協力もいただければと思っています。
私たちには、救える命があります。
ありがとうございました。
(終)
▶こちらもあわせてご覧ください。
遠隔集中治療推進プロジェクト (著)『ICU・集中治療室物語ープロフェッショナルたちの静かな闘い』(星湖舎)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成
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