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9月6日~9日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2021。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、初開催となったICCデザイン・アワードの模様をお伝えします。「ライフスタイル分野」「テクノロジー分野」に分かれて、初日のキックオフ、ガイドツアーを経て決まったグランプリの行方は? こちらの後編では、2日目の最後のセッションで行われたグランプリ決定の模様と、受賞者のメッセージをお送りします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
▶前編「出展企業全ブース紹介」はこちら
https://industry-co-creation.com/report/73037
DAY2 ICCデザイン・アワード結果発表
前編でご紹介したようなガイドツアーや、一般観覧者のツアーが2日間に渡って行われたDAY2の最後のセッション、D会場には、キックオフと同様候補者たちと審査員たちが再び集結した。これから最終投票が行われ、グランプリが決定するが相変わらず和気あいあいとした雰囲気だ。まずは投票を終えた審査員たちのコメントから。
「ライフスタイルも、テクノロジーもあって、まさにうちのためのアワードじゃないかと(笑)」とZOZO NEXTの金山さん。
サツドラの富山さん「商品を見てもらって嬉しいという気持ちが伝わってきて、刺激になりました」。
「創業者から1対1で説明してもらえる贅沢さ! むちゃくちゃ楽しかったです。楽天の出店者には忖度しないといけないかな(笑)」と楽天の北川さん。
「どれも素晴らしくて、どこをデザインの美しさ・よさとして見るか、難しいところもありました」コエドの朝霧さん。
投票は、審査員19名と、一般参加者49名を50:50として集計し、各部門の上位組を発表。「最後のお願い」ならぬ、「最後の3分プレゼン」を行って、会場に集まった審査員により優勝が決定した。
まず<ライフスタイル分野>から選出されたのが、三星グループ、KAPOK JAPAN、ヘラルボニーの3組。
<テクノロジー分野>は僅差となり、ミラーフィット、Magic Shields、World Matcha、Sportip、インスタリムの5社が選出された。
ここからの3分プレゼンは皆、カタパルト登壇経験者とあってプレゼンのツボを押さえた巧者ばかりで、この時点でもいくつか票が動いたのではと思うほど。コアメッセージをダイレクトに伝える人、パフォーマンスを行う人、涙を誘うもの、各社のプロダクトとビジョンが審査員の心にしっかりと残ったのではないかと思う。
いよいよ決選投票
2日目のエクストリームカンファレンスを越えて、心地よい疲労感に包まれるDAY 2のまもなく19時に、最終投票が始まった。投票方法は……、
まさかの挙手! 先鋭的な事業を行う参加者が多いカンファレンスでの、あまりに原始的な決定方法に笑いが起こる中、候補者たちは壇上でしっかりと目を閉じ、運営スタッフたちは野鳥の会さながら、挙手を必死にカウントした。
初代グランプリ、発表!
そうして決まった初代のグランプリ、ライフスタイル分野は、ヘラルボニー松田文登さん。兄弟の崇弥さんも会場にいたため、一緒に壇上に上がった。「見分けがつかない!」という声に、慣れた様子で兄弟が答える。
崇弥さん「以前は前髪を下ろしたりして区別がつくようにしていたんですが、投資家の人からも、似せたほうがバリューが上がるよと言われて、髪型を寄せたりしています」
文登さん「みんな期待してるんだから、似せとかないと!って言われるんです」
口々に語る兄弟に、会場は笑いに包まれた。文登さんがマイクを握り直して続ける。
文登さん「半年前にソーシャルグッドとグランプリのカタパルトでICCに初めて参加させていただいて、そこから”共創”というのが加速してきました。brightwayとのコラボ、KAPOK KNOTとのコラボ、ヘラルボニーがどれだけICCとコラボができるかというのを、今、こだわりにして追っていきたいと思っています。
僕らとしては、志があるうえでタッチポイントをできるだけ増やしていくことで、障害のある方のアート作品を通じて、障害に対する概念を変えていきたいと思っています。ありがとうございました!」
続いてテクノロジー分野では、高齢者の転倒事故による骨折を防ぐ、歩いて凹まず、転んで着地したときに凹む「ころやわ」の必要性を最後の3分アピールで切々と訴えた、Magic Shieldsの下村 明司さんがグランプリとなった。
下村さん「皆さん親を思う気持ちがあるんだなと、このグランプリから感じました。投票ありがとうございます。
私には野望があるんです。転倒骨折は最初の事業にすぎなくて、世界中からこういった事故や暴力を無くしたいんです。だから早くこれを世界に普及させて、次の事業に行きたいと思っているので、応援宜しくお願いいたします!」
グランプリはこうして決定したが、初回ならではのカオス感と関わる人たちの熱意によって、結果発表ですら楽しげで、展示企業はおろか、審査員も一緒に最後に記念撮影してもいいかもしれないというくらいの一体感があった。
実物に触れて、話を聞くことで、知っていると思っていたことが裏切られた
Makuake坊垣さんが力を込めて言っていたが、このアワードの場で、今まで接点がなかった人たちが出会い、声をかけあって、お互いを訪ねる約束をしていたり、コラボしたいと言っている場面が数々見られた。リアルイベントならではの、異業種での出会い、五感でのコミュニケーションの強さは、共創をより素早く、より深く可能にさせる。
アワード終了後、審査員を努めたTakuram渡邉康太郎さんに、感想をうかがった。
渡邉さん「出展している企業の中でも知っているところがいくつかあったし、かつスピーチもあらかじめ聴いているから、『こんなもんじゃないかな』という予想があったんですね。
でも、創業者の方から話を聞きながら、たとえば三星さんのウールに触ったり、KAPOKさんのダウンジャケットを着てみたりすると、『あっ、こんな手触りなんだ』『こんな軽いんだ』となって、自分が知っていたと思っていたもの、知っているはずのものが知らなかったと気づく。それが一番楽しいなと思ったんですね。
そういうふうに開けていくことが、なんか一番経験を豊かにするんじゃないかなと思いました。
ライフスタイル部門もテクノロジー部門も個人的に応援している2社がグランプリを獲って、すごく嬉しかったですね。
デザインといったときに、それが審美性のみに偏らず、世界への貢献の仕方、方向性がたくさん広がっていて、その中でも社会とどう接続するか、たとえば怪我をなくすとか、障害者の人の活躍の場を増やすというような多様なデザインの活躍のしどころというのが広がってきているのを、僕自身もデザイナーなので、それを楽しく受け止めました」
優勝した2社についての感想を聞くと、渡邉さんはMagic Shieldsの下村さんを以前から知っていたという。
渡邉さん「下村さんは、彼が独立する前、ヤマハ発動機で働いていらっしゃるとき、実はお仕事をしたことがあります。
初対面のときから、『僕は世の中から事故っていうものをなくしたい』と熱く語っていらして、プロジェクト以外の熱意を仕事の場で語ってくれる人とあまり会ったことがなかったので、すごく印象に残っていたんです。何年間を経て、この場で再会して、僕の投票の有無にかかわらずグランプリを獲られて、もう感無量です。
ヘラルボニーさん、これもちょっと話が長くなりますが、障害者の方のアートって、ここ数年ちょっと興味があったんです。というのは、今(慶應義塾)大学で教えていて、学生の中に、家族に障害者の人がいるんです。
障害者の当事者の方が自ら表現する。それをいかにプロダクトにするか? たとえばアクセサリーとかアートピースにすることに取り組んでいる学生の人がいるんです。僕自身それをどういうふうにアドバイスしたらいいのかがわからずにいて、ちょっと戸惑っていました。
こういう取り組みが増えることで、僕たちの認識がアップデートされていくとか知見が広がっていくということによって、やっぱり僕たち、社会全体の知識レベルを上げていって、その共感の幅を広げていきたいなというふうに思いました」
独特の価値観、シナジー、セレンディピティがある場
改めて初回グランプリを飾った2組に、優勝と今回のICCサミットの感想をうかがった。
下村さん「私たちもいろんな所に行って営業したり展示したりしますけれど、ICCには独特の価値観だったりシナジーとかセレンディピティがあるなって思って、すごい楽しかったです。特にビジネスマンが多く集まるところで、ずらっといろんなものが集まるというのは非常に面白かったなと思います。
このような機会で、また皆さんに少し知っていただけるようになりましたが、これからもっともっと知っていただいて、転倒骨折は予防するものだというのが、当たり前の常識だというのを新たに作っていきたいです」
夢物語を実現するために、全速力で走りたい
文登さん「障害のある方の皆さんのおかげ、アーティストの皆さんのおかげで獲れたと思っています。自分たちとしては支援しているという上から目線じゃなくて、単純にフラットにアーティストの作品が評価される未来を創ることによって、障害のある方たちや福祉関係の皆さんの自己肯定感が高まっていくとか、目線が変わっていくことにつなげたいです」
崇弥さん「私たちが契約させていただいている作家さんは、重度の知的な障害のある作家さんがほとんどでして、今までの資本主義という構造の中だと、はみ出していた、なかなかレールの上に乗れなかった人たちです。
そういう人たちが、ヘラルボニーがあることによって、そのレールに乗って、一緒に電車みたいに走っていける、そんな未来を、本当に夢物語みたいな話を実現できるんじゃないかっていうのを、この優勝を通じて思えたので、本当に全速力で走りたいなと思いました。
昨今ダイバーシティだとかインクルージョンだとか言われていますが、そのダイバーシティ・SDGsという文脈だから広がっているというよりも、アーティストのアート作品というものが本当の価値として認められるというところを目指したい。
そこを超えて行くのが、僕らの今からの壁だと思っているので、このICCを通じてもっともっとステップアップして、二段先、三段先を一歩先ずつじゃなくて、飛び越えていきたい。本当にありがたい機会だなと思います」
◆ ◆ ◆
ICCデザイン・アワードでは、これまではカタパルトを中心に、いかに自社のプロダクトが優れているかを言葉と動画で表現してきた登壇者たちが、実際にプロダクトを手に持って、それを訴えかけた。
実際に現物を目の前にして得られる情報量は桁違いで、「見て初めてわかった」と改めて腑に落ちたり、または渡邉さんのように、「わかっていたつもりなのに、わかっていなかった」という発見があったりする。しかも創業者や経営者という”最高のCS”が、どんな質問にも答えてくれるのだ。
審査員を始め、投票者として参加した人や見学者にとっては学びが多く、また出展企業にとっては、プロダクトや事業への理解がさらに深まる機会になったのではないかと思う。グランプリの喜びも、日頃からブランドやプロダクトデザインについて考え尽くしている投票者たちによるものだから、ひとしおだったに違いない。
こうして2日間に渡るICCデザイン・アワードは終了した。アワード企画立ち上げ当初から何度も運営ミーティングを重ねたスタッフ、準備日からブース設営に尽力いただいた展示企業の方々、審査員、投票に参加してくださった方々の共創で、非常に盛り上がる第1回目となった。次回はさらにパワーアップして開催の予定である。
▶前編「出展企業全ブース紹介」はこちら
ICCおなじみの登壇者たちが、自慢のプロダクトを展示プレゼン! 第1回ICCデザイン・アワード全ブースを紹介<ICCデザイン・アワード前編>【ICC KYOTO 2021レポート】
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成
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