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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき2位に入賞した、バイオーム藤木 庄五郎さんのプレゼンテーション動画【ゲーム感覚でスマホ撮影した動植物のデータを、生物多様性の保全につなげる「バイオーム」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
藤木 庄五郎
バイオーム
代表取締役
HP | STARTUP DB | X(旧Twitter)
2017年3月京都大学大学院博士号(農学)取得。在学中、衛星画像解析を用いた生物多様性の可視化技術を開発。ボルネオ島の熱帯ジャングルにて2年以上キャンプ生活をする中で、環境保全を事業化することを決意。博士号取得後、株式会社バイオームを設立、代表取締役に就任。生物多様性の保全が人々の利益につながる社会を目指し、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業に取り組む。データを活かしたサービスとして生きもの図鑑アプリ「Biome」を開発・運営。経済産業省が認定する『J-Startup』、未来を創る35歳未満のイノベーター「Innovators Under 35 Japan 2021」に選出。環境省「2030生物多様性枠組実現日本会議行動変容WG」 専門委員。
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藤木 庄五郎さん 皆さん、こんにちは、株式会社 バイオーム代表取締役の藤木と申します。
僕がずっと取り組んでいるのは、「生物多様性を守る」ということ、こちらをビジネスとして成り立たせていくことに、チャレンジしています。
フナ釣りで生態系に興味を持ち研究者の道へ
元々、子どもの頃は、釣りがとても好きで、フナをずっと釣っていました。
フナ釣りをずっと続けていたところ、いつの間にか外来魚だらけになってきて、フナをまったく釣れなくなり、いろいろな生態系が崩れてきているということを、子どもながらに強く感じて、生態系そのものに非常に興味を持つようになりました。
そのまま流れで生態系について学べる大学へ進学し、「生物多様性を調べよう。生態系の研究者になろう」と思い、ボルネオ島のジャングルの中で、2年半ほどの間、キャンプ生活、野宿をしながら生物の調査をしていました。
約100万種の生物が絶滅の危機にある
実際、生物多様性の状況は非常に悪く、現在、約100万種の生物が絶滅の危機にあるといわれています。
現在、名前が付いている地球上の生物が175万種しかいませんので、これから大部分の生物が死んでしまうのではないか、絶滅するのではないかと考えられており、「大量絶滅」と言われています。
50%以上が絶滅の見込みなどと言われていますけれども、これほどまでに絶滅が進むと、インフラとしての地球は、もう機能しなくなるだろうと考えられており、非常に重大な問題になってきています。
環境を「壊せば儲かる」から「守ると儲かる」へ
実際、現場に行って、環境破壊の最前線のような場所を見て回っていました。
こちらの写真では、ピンと来づらいかもしれませんが、木が1本も生えてない熱帯雨林なのです。
木がすべて切り取られて、360°全方位で地平線が見える、木が1本も残っていないような状態の現場を見て回っていました。
なぜこのようなことが起こるのかとずっと考えていたのですが、答えはシンプルで、環境は「壊せば儲かる」のです。
「儲かる」ということのエネルギーの大きさを強く感じるようになり、この「儲かる」ということを考えずに環境問題に取り組むのはナンセンスなのではないかと、僕は思うようになりました。
そのため、環境を「守ると儲かる」仕組みを作っていくことが、僕の人生のテーマなのではないかと考えるようになり、研究者を辞め、株式会社として利益をきちんと出して儲けていく、環境保全で儲ける会社を作ろうということで、バイオームという会社を作りました。
そして、今、7年目になります。
この7年間は歯を食いしばりながら、どうにか生き残ってきた会社ではないかと思っています。
現在は、35名のメンバーに恵まれて、運営しています。
実際、生物多様性の状況は、少しずつ良くなってきています。
昨年(2022年)12月に、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」 という新たな国際目標も決まり、「ネイチャーポジティブ(※) マーケット」という言葉まで誕生しました。
▶編集注:「ネイチャーポジティブ」とは、自然再興を意味し、「2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させ、回復軌道に乗せる」方向性のこと。
「10兆ドル規模のマーケットなんて、本当だろうか」と思っていますが、少しずつ盛り上がってきています。
難易度は高いが生物多様性の数値化に挑む
また、気候変動と並ぶ、世界2大環境問題として、生物多様性が挙げられるようにもなってきました。
ただ、この領域には、数字で評価することが非常に難しいという課題が、常にあります。
生き物が豊かであることを、数値化するというのは、大変に難易度が高いのです。
いろいろな種類の生物があらゆる場所にいて、それぞれが違っているからです。
そういった、あらゆる場所の生物を全部データ化していく必要がある、そして、これが僕の仕事なのではないかと思い、生物多様性を数字にして活用できるようにしていこうと取り組んでいます。
泥臭い作業ではありますが、地球上のあらゆる場所の生物をデータとして記録していきたいと思っています。
ゲーム感覚で動植物のデータをコレクションするアプリ「Biome(バイオーム)」
そのためには、世界に40億台以上も普及しているスマートフォンが最適ではないかと思い、スマートフォンを通してデータを集める仕組みを構築しています。
スマートフォンは、ユーザーが個人のため、個人がきちんと使えるように、「ポケモン GO」(※) のリアル版のようなゲーム感覚で、生き物を楽しく見つけてコレクションしていく体験を軸にしながら、釣りや登山と肩を並べられるような、新しいアウトドアの形として、楽しいアクティビティを提案したいと思っています。
▶編集注:「ポケモン GO」とは、位置情報を活用することにより、現実世界そのものを舞台としてプレイするゲームで、ふしぎな生き物「ポケットモンスター」略して「ポケモン」を捕まえたり、バトルさせたりすることができる。
写真を撮ると名前がわかるAIも開発して、撮影すると生き物の名前がわかって登録でき、コレクションをしていくような仕組みを作っています。
▶バイオームの使い方(バイオーム)
利用者は85万人、約600万個体を発見!
現在、約85万人の方々が使用してくださっていて、実際、データが数多く集まっています。
おかげさまで、現在は、1日1万件前後のデータが、毎日、日本中からアップデートされています。
600万個体を超えており、いろいろな生き物の現状を、おそらく、日本で最も把握している組織だと思います。
国よりは、データを持っていると思います(笑)。
それほどまでに、生物の状況を把握できるようになってきました。
生物のリアルタイム分布の把握で保全活動
こういった仕組みを使って、さらに、生物の天気予報のような形のサービス「Biome Viewer(バイオーム ビューアー)」という生物多様性マップを作り、4万種以上の生物のリアルタイムの生息域を監視して、把握していこうとしています。
このサービスが実現すれば、地域ごとに、今、このエリアにはこの生物が生息していて、この場所は守るべきだといったことや、守らなくてもよい、つまり、開発しても大丈夫な場所であるといったこと、あるいは、企業による活動で、どのような成果が出たかということがわかります。
そういったことを、すべてリアルタイムで観測することができる仕組みにまで、どんどん拡大してきています。
先ほどご覧いただいたような、様々な仕組みの中で、「TNFD」(※) という企業の情報開示ツールもできあがってきています。
▶編集注:TNFDとは、Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)の略称。自然環境の変化や生物多様性が企業の業績にどのような影響を及ぼすのか、つまり「自然資本」に関する情報を企業や金融機関などが情報開示するために、必要となる枠組みの構築をするための組織、またはフレームワークそのものを指す(FUJITSU 「TNFDとは?背景やTCFDとの違い、対応事例について知ろう」参照)。
こちらに、きちんとサポートできるようなツールも提供しようと考えています。
環境省や企業との取り組み
例えば、環境省とは、地球温暖化の影響を市民で調査しようということで、3万人近い方々とともに、温暖化の影響を調べています。
鉄道会社JR3社とは、JR沿線にある生物の状況を把握して今後の開発につなげていく取り組みをしています。
また、イオンの各店舗で植樹している、「イオン ふるさとの森」というものがあるのですが、これらをしっかりと調査して今後につなげていこうという活動もしています。
生物多様性の保全活動は1枚の写真撮影から始められる
すでに、300件以上の保全に関するプロジェクトを立ち上げており、産官学民と連携しながら事業として展開するといった活動をしています。
生き物に楽しく触れ合ってコレクションし、楽しんでいたら、いつの間にか生物を守ることができる仕組みを作りたいと思い、このような形で、産官学民をつないで取り組もうとしています。
本日、こちらの会場にいらっしゃる企業の皆さんとも、ぜひ一緒に取り組めることがあれば嬉しく思います。
たとえ協業ができなくとも、本日のICCサミットが終わったあと、屋外に出て、道端の「雑草」の写真を撮ってみてください。
それだけでも十分なのです。
Biomeを使って、ともに活動していただけませんか。
本日は、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子