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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただき同率5位に入賞した、Alazi Dream Project下里 夢美さんのプレゼンテーション動画【妊娠で6人に1人が退学、西アフリカの女の子が夢を持ち努力できる社会を創る「Alazi Dream Project」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
下里 夢美
特定非営利活動法人Alazi Dream Project
代表理事
HP | X(旧Twitter)
2014年 桜美林大学 国際協力専攻 卒業 2014年 日本ファンドレイジング協会 准認定ファンドレイザー資格取得 2017年 特定非営利活動法人Alazi Dream Project 代表理事 就任 2021年 シエラレオネ現地法人JaSiLe Foundation Director 就任 2021年 筑波大学 非常勤講師 2023年 TEDxKeioU 出演 / 青年版国民栄誉賞ファイナリスト 選定 高校2年生の時にテレビでシエラレオネについて知り衝撃を受け、国際協力を仕事に。 「誰もが夢に向かって努力できる社会の実現」をビジョンに、世界最貧国シエラレオネ共和国で「電子マネーによる現金給付」をベースとした子どもの教育支援を実施。現在までに、2,004名の子どもが復学している。
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下里 夢美さん 西アフリカに、世界最貧国と言われるシエラレオネ共和国という国があります。
その国で、“誰もが夢にむかって努力できる社会へ”をビジョンに活動しているNPO法人アラジ(正式名称:特定非営利活動法人Alazi Dream Project)代表の下里 夢美です。
皆さんは、子どもの頃、どのような夢を描いて、今日この場へ辿り着きましたか?
学校から姿を消す女の子たち
世界のどこに生まれても、男女関係なく教育を受け、夢を描く権利があります。
しかし、世界では毎年1,200万人の「女の子だけ」が、学校から姿を消しています。
なぜか、ご存じですか。
答えは、「妊娠と出産」です。
10代で妊娠する1,200万人のうち、1割が早すぎる妊娠により、命を落としています。
たとえ無事に出産しても、貧困により学校に戻れず、大勢の女の子が夢をあきらめています。
私たちは、日本の裏側にあるシエラレオネ共和国で、そのような女の子たちを学校に復学させるために、民間で初めて、そして、独自の活動をスタートしました。
なぜ遠く離れたシエラレオネなのか
本日は、皆さんに、10代のシングルマザーの女の子たちの夢を応援していただきたいと思っています。
まず、私が活動を始めたきっかけを、お話させてください。
実は、7年間活動してきて、5,000回ほど受けた質問があります。
「なんでシエラレオネなの?」という質問です。
きっかけは、高校生の時に、テレビ(『世界がもし100人の村だったら』」で偶然に知ったから、ただそれだけでした。
シエラレオネ共和国では、私が生まれた1991年から11年間も続いた内戦によって、ここ京都府の人口と同じ程度の200万人以上が難民になりました。
テレビに映っていたのは、8歳の男の子、アラジ君です。
内戦で両親を殺されたアラジ君の夢は、「学校に行って勉強すること」でした。
勉強をすれば、兄弟を養うために、もっとよい職に就くことができるからです。
実は、私は、子ども時代ずっと母子家庭で育ち、児童手当と生活保護を受けていました。
しかし、シエラレオネ共和国では、貧しくても生活保護すら受けられないのです。
勉強ができる環境にあること、努力ができる環境にあることは、実は恵まれていることだったのだと、私は気づきました。
アラジ君の現状に衝撃を受けた私は、17歳でシエラレオネ共和国の教育支援を決意します。
大学卒業後、就職せずに、テレビで観たアラジ君の名前を取って、「アラジ」というNGOを創りました。
周りの猛反対を押し切って、活動をスタートしたのです。
妊娠を理由に6人に1人が退学
実際に訪れたシエラレオネ共和国では、想像をはるかに超える人数の女の子が学校に通えていないことがわかりました。
先ほどお話ししたように、大勢の女の子が妊娠によって退学していました。
それも、6人に1人という、驚きの数字なのです。
私は、15歳のお母さん、マリアツという少女と出会いました。
マリアツは、看護師になりたいという夢のために、一生懸命に勉強していました。
しかし、家が貧しく、年上の男性から性交渉の代わりにお小遣いをもらうことで、自分で学費を捻出していました。
妊娠がわかると、男性とは連絡が取れなくなってしまったそうです。
法律で禁じられている中絶
「まだ学生なのだから、中絶はできなかったのか?」と思いますよね。
しかし、シエラレオネ共和国は、イスラム教を信仰する国で、中絶が法律で禁止されています。
レイプされても、中絶できないのです。
実は、イスラム教では、結婚前の性交渉も禁止されています。
そのため、学校や家庭で、避妊方法を教えてもらえないのです。
貧困により、売春、そして、妊娠してしまうと、中絶できずに出産するしかありません。
転校ができない切実な理由
ただし、シエラレオネ共和国の人々は皆、大家族です。
マリアツにも、日中に赤ちゃんの面倒を見てくれる家族はいるのです。
しかしながら、学校に戻ることのできない決定的な理由があります。
結婚前に妊娠すると、イスラム教の戒律を破ったとして、クラスでいじめられてしまうため、転校しなくてはいけないのです。
けれども、貧しくて、新しい学校の制服代金、たった3,000円を払うことができないのです。
マリアツは、「背が高くなる前に転校したかった」と言っていました。
仲よくなった友人と離れて、転校してでも学びたいと言っている女の子は、シエラレオネ共和国だけで30万人います。
だから、今すぐに学校に戻してあげたいのです。
同じ境遇にある子たちが一緒に転校
そこで私たちは、独自に3つの取り組みを始めました。
「転校支援」「生活保護」、そして、「性教育」です。
まず、行政と連携して、確実に転校できるようにしました。
女の子たちは、10代で妊娠したことを世間に知られたくありません。
そのため、彼女たちを探し出すのは非常に大変です。
産婦人科、警察の家庭支援課と連携し、女の子を探し出します。
教育省と連携のもと、できるかぎり、2~3人の女の子が一緒に同じ学校に転校できるようにしました。
電子マネーによる生活保護を実現
そして、現金給付によって、生活保護を受けられる仕組みを作りました。
仕組みを可能にしたのは、格安の携帯電話を使用した、電子マネー送金です。
シエラレオネ共和国現地の送金システム会社「Afrimoney」(アフリマネー)と連携して、女の子たちに支給した携帯電話に、初回は5,500円、その後は毎月1,500円の電子マネーを送金します。
▶【民間初】電子マネー送金で、100人の10代シングルマザーを学校に戻すプロジェクト!西アフリカのシエラレオネ共和国で貧困家庭の女の子をサポート(NPO法人アラジ)(JANIC)
女の子たちは、転校先の制服や教科書を買うことができ、その後は、毎月、家計の収入の5分の1を支える送金で、赤ちゃんの養育費などを賄うことができます。
シエラレオネ共和国における、銀行口座の普及率は1割、電子マネーの普及率は3割ほどです。
しかし、現金受け渡しには、限界があるのです。
赤ちゃんは、2歳までに10回以上も熱を出します。
そのため、現金を受け取りに来られない、また、移動時に事故に遭うリスクも、日本より高いのです。
ですから、私たちは、電子マネーによる生活保護の事例を初めて作り、転校先で学び続けられるようにしました。
教育省提携で男子中高生に性教育を実施
とはいえ、女の子だけが子育てをして転校しなくてはいけない社会――これは、おかしいと思いませんか。
このような社会を変えるために、男子中高生に性教育を届けています。
性的同意や避妊具の使い方を学ぶなど、早すぎる妊娠を減らすことを目標に、2万人以上の男子中高生に性教育を届けています。
性教育を提供した学校で、シングルマザーの女の子へのいじめがなくなったという成果もありました。
月額3,000円で1人の女の子の夢を応援できる
私たちがサポートを届けることができている女の子は、まだ66人です。
私たちアラジは、3年後までに、ケネマ県の2割の10代シングルマザーの女の子1,000人を学校に復学させ、事業のロールモデルを構築します。
1,000人支援のロールモデルができるまでは、皆さんからのご寄付に頼らせていただきたいです。
皆さんも、個人や企業による月々3,000円のマンスリーサポートで、1人の女の子の夢を応援できます。
シングルマザーの女の子たちは、平均で中学2年生のときに学校を去っています。その学年をやり直すことから高校を卒業するまでの5年間を、応援していただけないでしょうか。
小学校卒業と、高校卒業では、生涯賃金が約4倍も違います。高校まで卒業することができれば、5年間のサポート金額合計よりも、夢を叶えることができるうえ、生涯年収を上げることができるのです。
「誰もが夢にむかって努力できる社会」をともに実現しよう
さらに、2030年までに、ロールモデルをもとに、インパクト投資や海外助成を獲得して、シエラレオネ共和国行政とともに、活動を全国で実施します。
そして、事業のノウハウのすべてを、英語で全世界に公開します。
世界中のNGO、企業とCo-creationを生み出していきます。
“誰もが夢にむかって努力できる社会”を、ともに創りませんか。
それが、私の夢です。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子