ICC FUKUOKA 2024 カタパルト・グランプリに登壇いただき2位に入賞した、Solafune 上地 練さんのプレゼンテーション動画【衛星データの解析技術で、グローバルサウスの国家プロジェクトに取り組む「Solafune」(ICC FUKUOKA 2024)】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。
▶【速報】不要品の回収から選別・再流通まで一気通貫の循環インフラを構築する「PASSTO」(ECOMMIT)がカタパルト・グランプリ優勝!(ICC FUKUOKA 2024)
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)- 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング
上地 練
Solafune
代表取締役CEO
HP | X(旧Twitter)
University of California, Berkeley (カリフォルニア大学バークレー校) 応用数学科。在学中にシードからレイターステージまで、スタートアップを中心にソフトウェアエンジニア、データエンジニアを勤める。2019年にIoT領域を中心にシード・アーリーステージの会社に投資を行うベンチャーキャピタルABBALabにてアソシエイト職に従事。2020年に「Hack The Planet.」をミッションに衛星データ解析事業を行う株式会社Solafuneを創業し代表取締役CEOに就任。2021年に衛星データ解析技術の開発でMicrosoftと、2023年にStable Diffusionを提供するStability AIとの協業を発表。ICC 2023 Fukuoka スタートアップカタパルト準優勝。Deep Tech Venture of the Year 2023 Japan 受賞。
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上地 練さん こんにちは、地球規模のイノベーションを生み出す衛星データ解析プラットフォーム「Solafune(ソラフネ)」の上地です。
本日はよろしくお願いいたします。
このように現在、地球の周りには大量の人工衛星が打ち上げられています。
人工衛星の数は昨今、急激に増加しています。
衛星が小型化したことによる製造コスト縮小や、打ち上げコストの縮小が、その主な要因です。
その中でも、地球観測衛星は様々なセンサーを介して、あらゆる場所のデータを取得しています。
このような衛星データ分野から宇宙産業の商用化が始まっており、私たちはその衛星データの解析技術を提供しているスタートアップです。
クライアントは、グローバルサウスの政府機関
私たちのお客様は、アジア、アフリカ、中東、南米などグローバルサウス(※)と呼ばれる、著しく経済成長している国の政府です。
▶︎編集注:グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカ、南米地域の新興国・途上国の総称。北半球の先進国と対比して使われる。
世界の約130カ国が対象です。
このような国々での衛星利用のニーズは急速に高まっています。
一方で、これらの国には宇宙産業がありません。
そのため、宇宙産業へのアクセスが難しく、衛星データ解析に必要な技術がない、産業がないので人がいない、とはいえ政府は幅広い分野の課題に、網羅的に取り組まなければいけないという状況に陥っています。
私たちは、世界中から優秀な技術者が自然と集まってくる仕組みを使い、世界トップクラスの技術を集め、グローバルサウスの政府が直面している課題に取り組みます。
アルゴリズム開発をオンライン競技化
それが、私たちの提供する衛星データ解析プラットフォーム「Solafune」です。
▶【アジア初】衛星データ解析コンテストプラットフォーム「Solafune」が国内からサービス提供を開始! 2020年10月12日 (PR TIMES)
Solafuneでは、AI開発をオンライン競技形式で行っています。
私たちが独自に収集、購入した衛星データをオープン化し、世界中の技術者、研究者が、競争して技術開発を進める仕組みです。
私たちは、「アルゴリズムを評価するアルゴリズム」をクラウド上に用意しており、彼らがアップロードした各技術は自動で評価され、スコア化され、ランキングとしてまとめられています。
上位に入賞した場合、賞金と引き換えに私たちがソースコードごと権利を譲渡いただき、社内に知見や知財として蓄積して、私たちの提供するサービスにそれらが組み込まれていくという仕組みです。
現在Solafuneは、世界74カ国で利用されるサービスに成長しています。
この仕組みでこれまで、14,000以上のアルゴリズムが開発されました。
受け取ったアルゴリズムは社内で調整が加えられ、ソフトウェアサービスになっていきます。
資源の違法採掘に、衛星データ解析技術で対抗
例えば、衛星データから世界の鉱山を検出するアルゴリズムをベースに作られた、「MineXplorer」を見てみましょう。
簡単なUIの操作で、世界中のどこで採掘が行われているのか、高精度に検出することができるものです。
次に、より高度化した実際のユースケースをお見せします。
これは、アフリカのコンゴ民主共和国にある鉱山を解析している様子です。
色がついているところが、実際に掘られている鉱山です。
鉱石の種類や時系列の違いによって色付けされています。
コンゴ民主共和国はコバルト、ダイヤモンド、銅などでトップ生産国ですが、資源の違法採掘に困っています。
また、土地台帳を管理する仕組みがないので、私たちは衛星データ解析技術を通して、その課題に取り組んでいます。
日本政府・コンゴ民主共和国間で資源外交
何だか遠い国の話のように聞こえますが、実はこれは、日本の産業や私たちの生活にも密に関係している問題です。
コンゴ民主共和国は、半導体や電気自動車、リチウム電池の開発に必要不可欠であるコバルトにおいて、世界シェアの73%を持っています。
▶DRコンゴ:2022年のコバルト生産量が世界1位、供給量は73%を占める(JOGMEC)
この資源の調達をめぐって今、各国が競争しています。
日本の産業にも欠かせない資源の調達は、誰が担っていると思いますか?
日本では、経済産業省や、経済産業省の中にあって通称JOGMECと呼ばれるエネルギー・金属鉱物資源機構が担当しており、現地の資源調査や技術支援を通して資源の安定確保を図る、戦略的外交「資源外交」が行われています。
▶西村経済産業大臣がコンゴ民主共和国ンサンバ鉱山大臣と会談し、鉱業分野の協力に関する共同声明に署名しました(経済産業省)
コンゴ政府とリモート先進技術開発
実は世界で唯一、コンゴ民主共和国政府のリモート先進技術の開発を担う民間企業が、日本に存在します。
世界で1社です。
皆さん、どの企業か知っていますか。
それは私たちSolafuneです。
10年単位の長い時間軸で動き、年間数十億円サイズのプロジェクトが始動しています。
もちろん日本政府とも連携しています。
ハイパースペクトルセンサー(※)等を活用した新資源の探査技術開発をはじめ、我々はこの分野で日本の資源外交の一役を担っていきます。
▶︎編集注:ハイパースペクトルセンサー:太陽光が地上に当たって反射する可視光や赤外線を捉え、100以上の連続した細かい波長域に分けて観測できる光学センサーのこと。
現地政府しか保持していないデータや情報を扱うための信頼関係を築いていることで、 工業分野以外にも、農業、災害分析、防衛など幅広い分野の依頼を受けています。
また、政府向けのサービスはデータ機密性の観点からスイッチングコストが異常に高く、一度決まるとひっくり返すのは非常に困難です。
私たちは、その他のグローバルサウスの国への展開も進めています。
既にいくつか、プロジェクトを仕込んでいます。
国家プロジェクト受注で成長を目指す
私たちがベンチマークにしている企業は、ピーター・ティールが創業したPalantir(パランティア・テクノロジーズ)です。
Palantirは、政府や大企業向けの総合的なAIソリューションを提供している企業です。
▶米パランティアは過去最高益、AI需要で4半期連続の黒字-株価急伸(Bloomberg)
今年(2024年)の営業利益予測は1,200億円を超える見通しで、話題になっています。
実はPalantirの売上の54%は、政府向けAIサービスによるものです。
アメリカ政府を中心に国家プロジェクトを受注することで、大きく業績を伸ばしています。
そこにはもちろん、衛星データ解析も含まれています。
私たちSolafuneは衛星データという尖った技術をフックに、グローバルサウス版のPalantirを目指しています。
日本の地政学的な強みを活かし世界展開
なぜ私たちが選ばれるのか?
グローバルサウスの国には宇宙産業がないとお話ししました。
宇宙産業が商業化し始めているのは、アメリカ、中国、ロシア、インド、日本、ヨーロッパ諸国くらいです。
そのため、グローバルサウスの国は、それらの国から技術輸入をする必要があります。
しかし、衛星技術は軍事利用されます。
昨今の国際情勢が大きく影響し、アメリカから技術輸入すると中国やロシアから反感を買ってしまうリスクがあり、その逆もまた然りという状況です。
そのため、地政学的にも政治的にも非常に安定している日本の技術が選ばれる傾向があるのです。
我々はこの一時的なチャンスを逃さずに一気にグローバルサウス各国に展開し、大きな国家プロジェクトを作ることで5年でグローバルサウスの50%を押さえ、Palantirのような事業体を作る計画をしています。
UCバークレー応用数学科在学中に起業
なぜ私たちが衛星データ解析に挑戦するのか?
私はカリフォルニア大学バークレー校の応用数学科で、世界で起こることを数式でモデル化することに取り組んでいました。
そして、地球を見ているセンサーと解析する技術があれば、この地球で起こっていることをモデル化して解明できるのではないかと気づき、在学中22歳の時にSolafuneのサービスを作って起業に至りました。
研究開発をリードするPushkar Kopparlaは、カリフォルニア工科大学でPhDを取得した惑星物理学者です。
衛星データ解析や気候変動の研究で、10年以上の経験と実績があります。
メンバーのほとんどが日本人以外で構成されるグローバルチームで、英語で経営しています。
地球上のあらゆる事象をソフトウェアで記述する
最後に、私たちのミッションは、「Hack The Planet.」です。
地球上で起こるあらゆる事象を解析する技術で、世界の大きな課題に取り組んでいきます。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
編集チーム:小林 雅/森田 竜馬/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成