【NEW】ICC サミット KYOTO 2025 開催情報詳しくはこちら

日本発ウニ再生養殖技術で、世界の海を豊かにする産業創出に挑む「北三陸ファクトリー」(ICC FUKUOKA 2025)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

ICC FUKUOKA 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、北三陸ファクトリー 下苧坪 之典さんのプレゼンテーション動画【日本発ウニ再生養殖技術で、世界の海を豊かにする産業創出に挑む「北三陸ファクトリー」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】司法で社会の不合理を変える!“公共訴訟”に取り組む専門家集団「LEDGE」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2025)


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

下苧坪 之典
北三陸ファクトリー
代表取締役CEO
公式HP

革新的ウニ再生養殖技術「UNIVERSE SYSTEMS」を武器に、世界の水産業の未来を切り拓く北三陸ファクトリーを、2018年岩手県洋野町に創業。磯焼けで価値を失ったウニを、北海道大学等との連携で確立した独自技術で劇的に高品質化。単なる食害対策を超え、藻場再生による生態系回復、持続可能な漁業、そして地球規模の温暖化対策に貢献する。日本のみならず、豪州、北米へ進出し、日本発のウニグローバル産業を創出。世界に類を見ない「美味しい」体験を提供する。2025年大規模陸上養殖施設を推進し、気候変動に挑む、高効率生産体制を構築。水産業の常識を覆す私たちは、「HAGUKUMU-UNI」で海の可能性を極限まで引き出し、食卓に歓喜を、地球に未来を、次世代へ豊かな海の恵みを継承する。


下苧坪 之典さん 「北三陸から、世界の海を豊かにする」、北三陸ファクトリーの下苧坪(したうつぼ)です。

どうぞよろしくお願いいたします。

ミシュラン星付きレストランのシェフも選ぶ特別なウニ

こちらは弊社のキタムラサキウニです。

洋野うに牧場の四年うに(北三陸ファクトリー)

本州水揚げ量第1位を誇る、岩手県洋野(ひろの)町産です。

2018年の創業以来、ミシュランの星付きレストランを含めた、日本を代表するシェフの皆様から高評価を頂き、愛されてまいりました。

また、弊社工場は、昨年(2024年)、日本で初めて、ウニでEU HACCP(※) を取得し、世界中どの国へも輸出できる体制が整っております。

▶編集注:HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、製品の安全性を確保するための衛生管理の手法。EUに水産品を輸出するためには、最終食品に加工するまでの全ての加工施設などが、輸出元国の政府によるEU HACCPに基づく認定を受ける必要がある(JETRO参照)。

世界各国からの引き合いを、多数頂いております。

水産業の不透明なトレーサビリティ

市場規模は、右肩上がりとなっており、「マグロ、サーモン、次はウニだ!」と言わんばかりのマーケットが、世界に存在しています。

しかしながら、水産業には課題があります。

いつ、誰が、どこで採ったのかわからないものが流通され、消費され、生産者にまったく還元されていないというのが、日本の現状です。

日本の水産業界のトレーサビリティーの遅れは重大なリスクー「FAIRR 水産物の透明性に関するエンゲージメント(Seafood Traceability Engagement)」の結果から(SEAFOOD LEGACY TIMES)

私は、このような状況を、どうにか打破したい、夢も希望も持つことのできない水産業を変えていかなければならないと思い、本日、壇上に立っています。

海の健康と豊かさを保つ「藻場」が失われている

しかし、それ以上に、さらに大きな課題がこちらです。

「地球温暖化」です。

地球温暖化に伴う、海水温の上昇が原因で、海洋生態系が大きく変化しています。

そう、地球は今、悲鳴をあげています。

こちらは、15年前の写真です。

海藻が多く生えている場所のことを、「藻場」と言います。

海の健康と豊かさを保つために、重要な役割を果たしており、海中の様々な生き物に、住処や産卵場所を提供し、二酸化炭素の吸収源となっています。

まさに、海の生態系を支える大切な役割を果たしているのです。

今現在の様子です。ご覧ください。

海が、悲鳴をあげています。

海水温の上昇により、ウニが、非常に速いスピードで増殖し、活発に動き、海藻を全て食べ尽くしてしまっています。

この現状、海の砂漠化は、生物多様性に大きなインパクト(影響)を与えており、磯焼けは、今世紀、人類が直面している、世界最大級の問題なのです。

当然のことながら、国内のウニ漁獲量は右肩下がりです。

磯焼けの海で育ったウニは、写真のような実入りの悪い痩せウニになってしまいます。

一方、世界の藻場は、年間約75兆円の経済的価値を創出しています。

しかし、ウニを含む外的要因により、過去50年間で、約40~60%の世界の藻場が減少してしまいました。

藻場と痩せウニを再生する養殖技術を開発

北三陸ファクトリーは、こういった地球規模の課題を、「UNI-VERSE systems」で解決します。

全体像は、ご覧のとおりです。

第一に、沖からウニを水揚げし、第二に、ウニをカゴに入れて、我々が開発した餌を与えて太らせます。

第三に、(通常であれば)廃棄されるウニの殻は、多くの栄養素が詰まっているため、環境にやさしい天然ゴムと混ぜ合わせて堆肥ブロックとして海に沈めることで、藻場の再生を促す栄養源にしています。

このようなシステムを、7年の歳月をかけて、開発してきました。

これら3つのコア技術は、メイドインジャパン、かつ、オンリーワンのIPを有し、1個あたり5円の費用をかけて捨てなければならない、このような痩せウニを、わずか2カ月間で歩留まり率を15%にして、出荷できるレベルに仕上げています。

また、従来の漁業では、1シーズンわずか数カ月しか出荷できなかったウニを、ほぼ通年で生産し続けることが可能となり、約4〜5倍の収益を生み出すことが可能となります。

オーストラリアでジョイントベンチャーを設立

現在、私は、このシステムを、日本のみならず、オーストラリアに横展開しています。

豪州現地法人【KSF Australia Pty. Ltd.】を設立。2023.04.12 (北三陸ファクトリー)

そして、オーストラリアのタスマニア州に拠点を構えております。

タスマニア州は、空気と水が、世界で最も綺麗なエリアと言われており、食料自給率は、なんと250%です。

漁業は、トレーサビリティ(追跡可能性)を重視し、環境に配慮したサステナブルな漁法で水揚げされた水産物のみが流通する、先進的な仕組みが存在しています。

食は、本当に大切なのです。

食を大切にすると、国は豊かになる。

私たちが学ぶべき一次産業が、タスマニアにあります。

2023年、オーストラリアの水産会社 Richey Fishingとジョイントベンチャーにより、新会社Tasmania Blue Seafoodを設立、工場をM&Aしました。

北三陸ファクトリーの子会社が、豪州の水産会社と共にタスマニアブルーシーフード社を立ち上げ、2月7日に設立記念会見を実施(北三陸ファクトリー)

2030年代、タスマニア東部の藻場が消失の危機

しかし、ここオーストラリアにも大きな課題があります。

海水温の上昇により、十数年をかけて、オーストラリアのシドニー沖から、南部のタスマニア沖へ移動した、ウニの食害によって、藻場が消失し、2030年代には95%以上の藻場が消失すると言われています。

これにより、ウニが2,000万個、金額にすると年間547億円の経済価値の損失となっているため、オーストラリアの磯焼けもどうにかしなければなりません。

タスマニア産ウニを商品化

私たちは、この2,000万個のウニにインパクトを与えるべく、新たな取り組みを始めました。

これまで日本で培ってきた技術を、現地に継承し、製品化にもこぎつけ、オーストラリア国内市場はもとより、アジアへの展開も開始しました。

また、世界的な自然保護団体も交えた、産学官連携のR&Dも、現在進行中です。

本日は、タスマニア産ウニを使用した、ウニバタースプレッドを、ぜひ、お召し上がりください(※) 。お待たせいたしました。

▶編集注:プレゼン中に、審査員席にウニバタースプレッドが配布されました。

これらの取り組みは、現地の経済誌「The Australian Financial Review」にも大きく取り上げていただき、長年、抱えている、オーストラリアの磯焼け問題の解決策として、社会的なインパクトを与えています。

シリーズAラウンドの資金調達を完了

2024年、「J-Startup TOHOKU」にも選出していただき、アライアンスを組むパートナー企業との揺るぎない信頼関係を礎に、シリーズAラウンドに成功しました。

東北経済産業局 J-Startup TOHOKUに選出されました(北三陸ファクトリー)

本年(2025年)には、シリーズBラウンドへ、これからが、まさに正念場です。

現地ベンチャーとアメリカの藻場再生に挑戦

そして、本年、アメリカ西海岸ポートランドにあるシリコンバレー発のITベンチャー企業との連携(協業)により、念願の、アメリカでの挑戦がスタートします。

アメリカの仲間とともに、失われた藻場を再生し、アメリカの市場にインパクトを創出していきます。

ブルーカーボン造成で水産業に新たな収入源を

CO2排出をオフセットする藻場「Blue Carbon(ブルーカーボン)」「カーボンクレジット」は、企業による資金還流を実現するための仕組みとなり、グローバルマーケットにおいて、大きな期待が寄せられています。

▶︎ブルーカーボンとは(国土交通省)

地域の生産者の第三の収入源となるだけではなく、持続可能な水産業の未来へと繋がります。

2025年以降、100億円を投じて、UNI-VERSE MEGA FARMを世界で展開し、2030年には、世界規模で達成します。

曾祖父の代から水産業に貢献

ここで、私のDNAについて、お話しさせてください。

私の実家は、曽祖父の代から続く、岩手県の水産業を支える、豪商でした。

父親の代で倒産してしまい、非常につらかったです。

そのため、私は、もう一度、海藻で溢れ豊かな水産業が営まれていたあの時代を、取り戻したいのです。

日本発の産業で世界の海を豊かに

このようなウニを、世界のレストランで、より気軽に食べることができるようになれば、地域の海藻は守られ、そして、より良い未来が待っているのです。

ひとりでも多くの方に、この思いを届けたいと思っています。

最後になりますが、北三陸ファクトリーは、「UNIVERSAL(ウニバーサル)」な産業の創出によって、世界の海を豊かにしていきます。

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!