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協業加速!「リージョナルフィッシュ」は品種改良とスマート養殖場で、日本の水産業の再成長に挑む(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 カタパルト・グランプリに登壇いただき、見事優勝に輝いた、リージョナルフィッシュ 梅川 忠典さんのプレゼンテーション動画【協業加速!「リージョナルフィッシュ」は品種改良とスマート養殖場で、日本の水産業の再成長に挑む】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。

【速報】世界で戦える日本の水産業をゲノム編集で実現する「リージョナルフィッシュ」がカタパルト・グランプリ優勝!(ICC KYOTO 2025)


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)- 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

梅川 忠典
リージョナルフィッシュ
代表取締役社長
公式HP | 公式X

デロイトトーマツコンサルティング株式会社にて、経営コンサルティング業務に従事。 株式会社産業革新機構に転職し、大手・中堅企業に対するバイアウト投資および投資先の経営に従事。 2019年4月、リージョナルフィッシュ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。 「J-Startup」「J-Startup Impact」や「京都・知恵アントレ大賞」 「大学発ベンチャー表彰」経済産業大臣賞など多数受賞。 NTTとの合弁会社を設立し、NTTグリーン&フード株式会社取締役CSO。


梅川 忠典さん 水産物の品種改良で、「日本の水産業」を世界で戦える産業に!

リージョナルフィッシュです。

突然ですが、美味しいのはどちら?

突然ですが、「天然のマダイ」と「養殖のマダイ」は、どちらのほうが美味しいと思いますか?

「天然」と思った方が、多いのではないかと思います。

では、これはどうでしょう?

「天然イチゴ」の野いちごと「栽培イチゴ」のあまおう。

これは、当然「あまおう」ですよね?

この違いは、品種改良が進んでいるかどうかなのです。

農作物と畜産物は1.2万年かけて品種改良された

我々は、オーロックスという天然の牛、これは400年前に絶滅していますが、長い時間をかけてオーロックスから黒毛和牛を作りました。

イノシシから豚へ。

鶏は成長性が6.5倍になりました。

テオシントというトウモロコシは、手の指の太さくらいでしたが、今は腕の太さくらいになっていますし、苦かったニンジンは、甘いニンジンに変わっていきました。

農耕、畜産、1.2万年の歴史の中で、皆さんが普段食べている農作物と畜産物は、ほとんどが品種改良されていて、三つ葉の一部だけが天然種と呼ばれています。

ただ、水産物は「天然ものが美味しい」と言われています。

それはなぜかというと、「完全養殖」といって、卵から大人(成魚)にして卵を産ませ、次の世代を紡げるようになって、まだ50年なのです。

そのため、30年かかる品種改良を行うだけの時間がなかったので、「水産物は天然ものが美味しい」と言われるように、品種が変わっていないのです。

ただ、将来的には、水産物であっても品種を変えたほうがいいよねと言われる未来が来るのではないかと信じています。

「品種改良」とは「ゲノムを変える行為」

普通通りに品種改良をすると30年かかるところを、我々は、例えば「ゲノム編集」という技術を使って、2〜3年で品種を作っていくことに取り組んでいます。

こちらの成長性1.9倍のトラフグは、我々が作り出した新しい品種です。

「ゲノム」というと、皆さん、怖いイメージをお持ちです。

しかし、ゲノムは「生物の設計図」で、それが変わる時に、生物の特性が変わるのです。

天然のバナナはスライドの左下のように種だらけでしたが、今のバナナはゲノムが変わったことによって種無しになっているのです。

この過程のことを、我々は「品種改良」と呼びます。

「品種改良」とは「ゲノムを変える行為」だったのです。


この設計図は、昔は読むために13年間、費用は4,000億円以上かかっていましたが、今は2日間、15万円で読める時代になったのです。

これによって、設計図が読めるし、その設計図も自由に変えられるようになったのです。

京都大学と近畿大学の研究成果を背景に設立

こういった京都大学の水産物のゲノムを変える技術と、近畿大学の完全養殖技術を入れたことによって、世界でも唯一、我々が水産物の品種をどんどん変えることができるようになりました。

チームですが、産業革新機構出身の私、梅川が事業面を見ながら、水産物のゲノム編集の権威である京都大学の木下(政人さん)、近畿大学の家戸(敬太郎さん)とともに共同創業しました。

今では、世界でゲノム編集分野第2位の広島大学最年少教授(佐久間 哲史さん)も大学を辞めて、転職してきています。

グループの社員は180名、博士号取得者は25名超と、世界で戦える体制を構築してきました。

世界初のゲノム編集「動物」食品、可食部増、飼料減の品種改良に成功

問題意識としてあるのは、この30年で水産物の生産量は世界では倍増したのに、日本は3分の1に減少し、世界1位から11位に落ちていることです。

これをテクノロジーによって、もう一度世界No.1の産業に生まれ変わらせたいと思っています。

ゲノム編集で最初に作ったのは、食べられる部位(可食部)が1.2倍になって、飼料の量は2割減になったマダイです。

厚生労働省に食品安全を、農林水産省に生物多様性への影響がないことを確認してもらい、世界初のゲノム編集「動物」食品として販売しました。

ゲノム編集技術を利用して開発した「可食部増量マダイ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了(PR TIMES)

同じプロセスを経て、このトラフグを販売しています。

成長性が1.9倍になったことによって、飼料の量が4割減った非常に高効率な魚になっています。

ゲノム編集で、全国各地の名産の魚を守る

そして今、「地球沸騰化」とも言われる、海水温の上昇が各地で続いている異常事態になっています。

これによって、福井県小浜市では養殖のサバの9割が死んだり、高知県宿毛市ではマダイが大量死したりしています。

今まで名産品だった魚を育てることができないという問題に直面しています。

これを品種改良で変えていこうと、ゲノム育種をはじめとしながら高温耐性の魚を作っています。

我々(関西電力、福井県、ふくい振興センターなどと共同研究で開発)は高温耐性のマサバを開発。アニサキスフリーにもなります。

▶︎福井県嶺南地域における水産事業の共同研究等に関する協定の締結について 2023年10月(関西電力)

高温耐性のサーモンやヒラメを作出し、マガキは貝柱を太くすることによって高温耐性に変えていくことに成功しています。

我々の品種を使えば、これからも地域の名産品を作り続けていくことができるという形になっています。

成魚販売からスタートしましたが、現在のメイン事業は、稚魚を養殖事業者に販売して、名産品を作ってもらうというものです。

そのほうが、利益率が高いというのもあります。

水産業を盛り上げるため、90超の協業を実施

世界4兆円市場を目指します。

水産業界を変えるため、1社だけでは限界がありますので、これまで90団体以上と組んできました。

シナジーが強い会社と67億円規模の業務資本提携を結びながら、資本を出していただいています。

NTTとリージョナルフィッシュ、合弁会社「NTTグリーン&フード」を設立(日本経済新聞)

我々は稚魚を作りますが、養殖まで持っていこう、スマートな養殖環境で育てようとすると、すごくお金がかかるのです。

そこでNTTと合弁会社を組み、我々はこちらに稚魚を提供し、作った成魚を販売しています。

最初は、静岡県磐田市にあるスズキ部品製造の工場を居抜きで借りて、1年間で日本最大のエビ養殖プラントを立ち上げました。

NTT系、静岡・磐田のエビ陸上養殖場完成 スズキが協力(日本経済新聞)

日本の水産業を世界で戦える産業構造に

3年前、ICCサミットのスタートアップ・カタパルトで優勝した時から売上は42倍超になり、成長することができました。

【速報】ゲノム編集技術による水産業革命で、世界の“タンパク質危機”を解決する「リージョナルフィッシュ」がスタートアップ・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)

私は、この産業を最初に見た時に、「勝ち筋だな」と思ったのです。

なぜなら、日本の魚は世界で一番美味しいのです。

ただ、天然物はどこの地域でも獲れます。

神経締め、血抜き、熟成、冷凍などの加工技術が世界で一番だから、日本の魚は世界で一番美味しいのです。

けれども、品種は変わっていないし、生産体系は30年前のままです。

水産物の品種改良はなかったのですが、我々が品種改良を行っていき、スマートな養殖環境をみんなで作っていくことによって、結果として世界で唯一の品種ができます。

それを超高効率な生産、加工技術へとつなげ、バリューチェーンをオープンイノベーションでつないでいくことができれば、みんなで世界で戦える水産業を創っていけるのではないかと思っています。

皆さん、応援のほど、よろしくお願いいたします。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成

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