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ICC KYOTO 2025 リアルテック・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、LYMPHOGENiX 岩宮 貴紘さんのプレゼンテーション動画【不妊治療に、リンパ管再生技術で新たな選択をもたらす「LYMPHOGENiX」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。
▶【速報】諦めていた生活をもう一度、BMI医療機器で重度の手指麻痺を改善する「LIFESCAPES」がリアルテック・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ
岩宮 貴紘
LYMPHOGENiX
Director
公式HP
慶應義塾大学研究員/特任助教、株式会社メトセラ代表取締役を経て、PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャーとして医療・ヘルスケア分野の戦略策定や事業化支援に携わる。2024年、英国ロンドンで LYMPHOGENiX Limited を創業し、リンパ管再生を軸とする世界初の線維症治療プラットフォームを構築。不妊治療や肺線維症など、治療選択肢が限られる疾患領域に向け、新たな治療法の実用化を推進している。同社では研究・知財・事業・資本の各戦略を一貫して統括。英国と日本を拠点に、アカデミア、企業、医療機関との共創体制を築き、畜産からヒト医療まで疾患領域を横断する革新的医療技術と環境ビジネスの国際展開に挑んでいる。
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岩宮 貴紘さん 皆さん、こんにちは。
前職でご一緒した方々は、お久しぶりです。
私たちLYMPHOGENiX(リンフォジェニクス)は、世界中で多くの方が直面している「なぜ、妊娠できないのか?」という問いに挑む、ロンドン発のスタートアップです。

創業からわずか1年で、すでにMerck財団主催の世界最大級の不妊スタートアップ賞「ESCA」において、グローバルトップ10に選出されました。
本日は、私たちが取り組む革新的なサイエンスとユニークなビジネスモデルをご紹介します。
体外受精の成功率が低いのはなぜか
皆さんは、不妊がどれだけ深刻な社会課題か、ご存知でしょうか?

子どもを望んでも願いが叶わない現実、これは私たちのすぐ身近に存在しています。
実際に世界では6組に1組のカップル、世界の成人人口の17.5%が不妊に悩んでいます。
▶世界では 6 人に 1 人に不妊の影響(日本WHO協会)

その背景には、体外受精が今も不確実な治療であることが挙げられます。

その成功率は未だ35%にとどまり、45歳を超えると、なんと成功率は1%未満と言われています。
治療を繰り返しても結果が出ない、多くのカップルがそんな現実と向き合っています。
なぜ妊娠できないのか?
私たちは、その背景にこれまで誰も着目してこなかった「見えない壁」があると考えています。
不妊治療の“見えない壁”は「リンパ管」
その見えない壁の正体は、「リンパ管」です。

リンパ管は、体液バランスの維持、炎症の制御、ヒアルロン酸合成の促進、免疫の監視など、多様な機能で受精卵が生着する場所である子宮内膜の受け入れ環境を支えています。
しかし、加齢や慢性炎症によりリンパ管が壊れると、子宮内膜はその機能を失い、着床不全が引き起こされるのです。

この見えない壁を突破する鍵となるのが、私たちが開発したソリューションである、リンパ管を再生するテクノロジーです。

私たちは、従来法である間葉系幹細胞と比較して、リンパ管形成を飛躍的に促進することに成功しました。
従来法に比べて、スライドの左の画像では緑色で示されたリンパ管が明らかに増えているのがわかります。
外来処置で投与できる負担の少ない治療法
私たちのテクノロジーは、このリンパ管の再生能力に加え、品質の安定性、製造コストの低さなど、商用化に不可欠な要素も高く評価されています。
この技術は、ホルモンや抗生物質を使わず、外来処置で子宮内に簡便に投与できる、患者にとって負担の少ない治療法です。

傷ついた子宮内膜のリンパ管を再生し、受精卵が着床しやすい受け入れ環境を整えます。
従来の治療で結果が出なかった方にも、着床率・妊娠率の改善が期待され、着床不全という未解決の課題に対して、全く新しいアプローチとして応用可能です。
大規模製造に向け体制を確立
私たちはそれだけでなく、他社が追従できない量産体制を構築しています。

臨床グレードにあるお子さんの乳歯由来の幹細胞「SHED」を原料に、リンパ管再生能を付与するGMP(適正製造規範)準拠の因子の供給体制を構築し、作用機序を解明した独自のバイオプロセスを確立してきました。
これはすでに『Nature』姉妹誌をはじめとする国際論文に掲載され、さらに国際特許6件が成立済みです。
また、医師主導治験1件によって、人体への安全性が裏付けられています。
大規模製造に向けた独占的パートナーシップ体制も確立しており、臨床導出やグローバル展開にも対応できる準備が整っています。
創薬プロセスの一部を新マーケットとして展開
この技術をもとに、まずは自由診療でマーケットインします。

そして、イギリスと日本の多施設共同研究を通じて、保険償還(保険適用)を狙います。
しかし、従来の創薬プロセスはマネタイズまでの道のりが非常に長く、投資回収、つまりROIを可視化することは非常に困難です。
だからこそ、私たちは新しいビジネスモデルを提示します。
それは、従来、非臨床試験として位置づけられてきた「創薬プロセスの一部」を「新しい巨大なマーケット」として位置づける戦略です。
不妊牛の巨大マーケットを用いた非臨床創薬モデル
その対象は、ウシ、特に乳牛です。
実は、世界の乳牛2.7億頭のうち、その30%が子宮内膜を原因とする不妊と言われています。

もちろん乳牛は妊娠しなければ、母乳を出すことはできません。
つまり、不妊牛は利益を生まないまま、農家に大きなコストだけを残しています。
その額は世界全体で、なんと年間20兆円です。
さらに、ウシが排出するメタンガスは、全運輸産業の温室効果ガスの3倍に相当すると言われています。
そこで私たちは、まず不妊牛という巨大マーケットに挑み、畜産農家の大きなペインを解消します。

そして市販を通じて得られる大規模な非臨床のリアルワールドデータをもとに、安全で有効性の高いヒト不妊治療へと展開していきます。
さらに、不妊牛を見越した余剰飼育を是正することで、カーボンクレジットとしての収益化も実現します。
社会実装を目指す経験豊富な国際チーム
この挑戦を牽引するのが、イギリスのオックスフォード大学とキール大学で構成されたLYMPHOGENiXのチームです。

私たちは、科学、畜産、臨床、そしてビジネスの交差点に立ち、社会実装を本気でやり抜くために結成されたチームです。

私、岩宮は、PwCコンサルティングやメトセラでの経験を通じて、研究から臨床応用、事業化、さらに国際展開を見据えた標準化をリードしてきました。
共同創業者の松永(昌之さん)は、日英をつなぐパートナーシップ構築とグローバル展開で豊富な実績を持っております。
さらに、畜産やヒト不妊領域からイギリスを中心とした世界的な専門家がアドバイザーとして参画しています。
リンパ管によって複数疾患を横断的に治す未来へ
このようなチーム体制で、私たちは不妊治療でのPoC(概念実証)と収益化を起点に、リンパ管再生という新しいモダリティを疾患ごとにバイアウト・ライセンスアウトしていく展開を構想として描いています。

それは単なる薬の開発ではなく、「不妊から全身へ」、リンパ管という全身を駆け巡る共通の鍵を使って、複数疾患を横断的に治すという未来です。
本日は、この挑戦をご一緒いただける仲間を探しております。

関心をお持ちの投資家、導出先、そして実証フィールドの皆様、どうぞお気軽にご連絡いただけましたら幸いです。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成


