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地域の食を体験する旅の提案で、金沢の発酵食文化を未来につなぐ「ヤマト醤油味噌」(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇した、ヤマト醤油味噌 山本 耕平さんのプレゼンテーション動画【地域の食を体験する旅の提案で、金沢の発酵食文化を未来につなぐ「ヤマト醤油味噌」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】規格外食材や地域課題を美味しく詰めこんだ“現代ソーセージ“をつくる「ハヤリソーセージ」(流行)がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

山本 耕平
ヤマト醤油味噌
BtoC営業部長
公式HP | 公式X① | 公式X②

1985年石川県金沢市生まれ。みそソムリエ。大学卒業後、貿易会社で営業職を経て家業の株式会社ヤマト醤油味噌に入社。2015年の「ヤマト・糀パーク」開設を機に、発酵食を日常に溶け込ませる体験やツーリズムを文化産業として展開。玄米甘酒の企画営業に始まり、社内外と協業して多様な調味料開発に挑戦。「魚醤・いしるだし」で2019年にプレミアムいしかわブランドを受賞。「金沢から世界へ、世界から金沢へ」を掲げ、近年は海外向けのグルテンフリー醤油開発に注力し、アメリカでの流通から拡大を目指している。発酵食は現在20か国以上に輸出され、海外売上比率は全社の2割以上に成長。糀チーズケーキ専門店「こめトはな」、冷凍総菜「まごはやさしいこ®」など新ブランドも創出。趣味は空手。身体感覚を大切にする習慣を仕事にも活かし、内面からの健康と美容を支える発酵食文化づくりに挑み続けている。


山本 耕平さん こんにちは、石川県金沢市からまいりました、ヤマト醤油味噌の山本耕平です。

私は石川県金沢市で家業の跡継ぎとして、発酵食文化を未来につなぐ挑戦をしています。

石川県金沢市で1911年創業

ヤマト醤油味噌は、1911年創業です。

初代は、醤油屋ではなく北前船に乗って日本海を行き来した船乗りでした。

二代目が醤油づくり、三代目が味噌づくりを始め、200トンの味噌を今も木桶で、天然醸造で仕込んでいます。

皆さんにとっては、6ヶ月、1年、2年と現金を寝かせるようなものです。

今もこれを愚直に続けています。

これが地域の味を作っています。

今は四代目で、輸出事業、酒造りへ。

私の弟も、製造で力を発揮してくれています。

家族を中核にものづくりをし、その製品が北陸、そして国内外のプロの料理人の皆様にご愛顧いただいている、そんな会社です。

金沢といえば…華やかな美食の町

皆さんにお聞きします、金沢と言えば、どんな食を思い浮かべますか?

多くの方が、ノドグロ、お寿司、そして海鮮丼と答えます。

観光で来られるお客様に人気の、華やかな美食です。

金沢にはミシュランの星付きレストランも多く、洋食から和食まで楽しめる街です。

地元の食卓を支えてきた素朴な郷土の味

でも、地元の食卓は少し違います。

魚の煮付け、鰯のつみれ汁、糀漬けの魚、そんな素朴な日常食です。

▶︎大野醤油とは(大野醤油醸造協業組合)

▶︎大根ずし 石川県(農林水産省)

日本五大醤油産地の一つ、大野町

今日は、金沢の食を支えてきた産業が、今まさに危機にあることを皆様に知っていただきたくてここに来ました。

ヤマトが創業した金沢市大野町は、野田、銚子、龍野、そして小豆島と並ぶ日本五大醤油産地の一つで、400年の歴史があります。

関東の醤油よりもほんのり甘口で、関西よりコクがある。

魚を美味しく食べることに特化したお醤油で、水で割るだけで煮魚が作れますし、旨味があるので刺身醤油にもぴったりだとご評価を頂いています。

金沢のプロにご愛顧いただいている、食文化を支えてきたお醤油です。

60軒から7軒に醤油屋が減り、産業存続の危機

これらは全部、違う蔵で製造されたものです。

かつては約60軒の醤油蔵がありましたが、私たちも含めごく小さな蔵ばかり。今はわずか7軒になりました。(講演の2025年9月時点)

設備の老朽化、基礎調味料なので値上げしにくい、原料高、高齢化と後継者不足。

今残っている7件の蔵も高齢化しており、後継者に手を挙げているのは私一人です。

町屋は取り壊され、静かに産業が消えています。

四代目の父に、この会社を継がせてくださいと伝えました。

この産業は、なくせないのです。

美肌県1位の理由は、金沢の食生活にある

そんな中、ポーラ化粧品が全国2,020万人の肌データを測定したら、何と石川県が美肌No.1。

理由は、魚を皮ごと食べ、発酵食品をよく食べる食生活にあると、大学の研究でもレポートされました。

世界的に見ても、発酵食の魅力は特別です。

味噌、醤油、濁酒という、私たちヤマトが手がけるこの3つの発酵食品は、麹菌、乳酸菌、酵母の全てが含まれており、食べるだけで自然に腸活できる価値がある。

だから、金沢の美食の真髄は、内側から美しくなる美食であると今日、皆さんに覚えていただけたらと思います。

私自身もお寿司が大好きです。

でも、ふと思い出すのはもっと素朴な、小さい頃から食べていたカレイの煮付けです。

身がふわっとしていて、骨離れも良く、実はおばあちゃんが僕の離乳食に作ってくれていたそうです。

この味で育ちました。

夏は地引網の魚、冬は家族で囲むエビやカニ、そんな家庭の味が私の体と心に沁み込んでいます。

地域の日常にある食文化を、なくしたくないのです。

だって、美味いんですよ。

地域の発酵食文化を体験できるヤマト・糀パークを開園

だから私は、体験を通してこの味わいを伝えたい。

2025年にヤマト・糀パークを開設しました。

本社にある醸造所を常時オープンファクトリーにしました。

のれんをくぐって路地を歩けば、木桶や蔵の空気を五感で感じられます。

ここでは、味噌仕込み体験や味噌汁の飲み比べ、子供と楽しめる「みそぼーるづくり」ができますし、レストランでは「一汁一菜一糀」をテーマにして、玄米のご飯とお味噌汁、塩麹や甘酒を調味料として使った季節のお料理、お出汁がよくきいた和食で、内側から美しくなれる発酵食提案をしています。

頼れる店長と料理長がICCの会場に来て、今日も支えてくれました。

「糀の手湯」では、手を浸すと、しっとりすべすべになります。

これは糀の持つ酵素の効果です。

子どもたちがみそぼーるを作ります。

子どもたちは「帰ったら自分で味噌汁を作るんだ!」と誇らしげな顔で笑ってくれるので、本当にやりがいを感じます。

小さな蔵元のチャレンジでしたが、こうした仕掛けを重ねたことで、今では年間7万人に訪れていただける発酵のテーマパークに成長することができました。

アート×醤油蔵で仲間と結束、観光客を呼び込む

全国に、頼れる仲間たちがいます。

金沢21世紀美術館を拠点に、ヤマトを含む、市内9つの蔵にアーティストが作品を展示したことで、アートをきっかけに私たちの蔵を訪ねていただけるようになりました。

▶︎「発酵文化芸術祭 金沢―みえないものを感じる旅へ―」レポート。「発酵」をテーマにしたアートで金沢を感じる(美術手帖)

私たちの蔵には、味噌と会話できるロボットMisobot(ミソボット)が登場しました。

子どもが味噌と仲良く喋る光景を実現しました。

産地の仲間も活動を手伝ってくれました。

工夫次第で、金沢の中心の観光地から、周辺へわざわざ足を運びたくなる状況を実現できるのです。

糀を使ったオリジナル商品を開発

訪ねてみたくなるような、そこにしかない商品の開発も欠かせません。

糀のチーズケーキ「こめトはな」は、ヤマトのお味噌の糀の酵素を使っているのですが、チーズのタンパク質に働いてよりコクが深くなった、ヤマトだけのチーズケーキです。

本格的な糀漬けの魚を冷凍した「まごはやさしいこ」、美味しく楽しく飲めて体に良い「ヤマトどぶろく」。

もしお料理する時間がなくても大丈夫、そんな方のために美味しく飲める糀のエナジードリンク「玄米甘酒」も作りました。

地域の食文化を味わう旅のモデルを作る

私が目指す未来は、この小さな金沢の大野町で、日常の食の価値を味わう旅のモデルを成功させるというものです。

醤油から体験価値へ、美食の価値へ。

価値を高めることで雇用を生むので、地域の食文化を支えることができるのです。

大野という小さな地域でも、それができれば、全国の地域でも同じことができる可能性に繋がります。

だから、まずは、うちの蔵を含め大野町を訪れてください。

蔵を訪れ、暮らしに触れて、商品を持ち帰ってください。

皆さんの行動が、文化を未来に繋ぐ力になります。

本日はありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成

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