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ICC KYOTO 2025 リアルテック・カタパルトに登壇した、digzyme 渡来 直生さんのプレゼンテーション動画【イノベーションに有用な酵素の開発から生産まで担う酵素のアクセラレーター「digzyme」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ
渡来 直生
digzyme
代表取締役
公式HP
2019年、東京工業大学生命理工学院博士課程在学時に株式会社digzymeを共同創業、代表取締役に就任。2020年に博士号取得後、シードラウンド調達を実施。その後、pre SeriesA, SeriesAの調達を経て現在に至る。
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渡来 直生さん 皆さん、こんにちは、株式会社digzyme(ディグザイム)の渡来と申します。
早速ですが、「酵素」という言葉を聞いて、皆さんは何を連想されますか?
「酵素って聞いたことあるけど、なんだろう?」という方は、多いと思います。

「酵素」と言うと、「酵素ドリンクですか?」とよく言われます。
酵素と言っても、我々がやっているのは「産業用酵素」の開発です。

産業用酵素は、ものづくりを支える1.5兆円の産業と言われています。
食品の加工や家畜飼料への配合、化学品の製造など、日本のものづくりを裏で支えている存在です。
「地球環境問題」「おいしさ・健康寿命」で注目の酵素
酵素とは、生物が作る触媒機能を持つタンパク質のことです。
つまり、ある物質を別の物質に変換できるのです。
この機能を活かして、酵素はものづくりに活用されています。
得意領域は、「低エネルギーな反応」や「複雑なバイオ化合物への反応」です。
バイオものづくりを通じた「地球環境問題」へのソリューションや、食品素材の開発を通じた「おいしさ・健康寿命」など、グローバルな課題への挑戦という点で、酵素は非常に注目されている物質です。

効率的な探索が難しいとされる酵素
経営陣は東京工業大学卒のアカデミックメンバーと、業界のKOL(Key Opinion Leader)で構成されており、この事業に賛同して集まってきたメンバーの68%は博士卒という体制です。

「そんなに難しいものなのか?」というところですが、酵素は天然に1,000万以上の種類が存在しており、従来法ではその探索に非常に課題がありました。

もともとは、土や水などの環境中から微生物を採取し、網羅的に実験を行い、多大な時間をかけてスクリーニングする必要がありました。
偶然に頼った手法では、特定の課題解決のための開発は非常に難しいと言われていました。

そこで我々は、非効率な探索から脱却し、データの中から有用な酵素を見つけ出す「digzyme Moonlight™」を開発しました。

ある企業研究者の苦悩
大学時代の創業を振り返ると、我々の事業は、ある企業の研究者の言葉から始まっています。
「酵素を効率的に見つけられる良い方法はありませんか?」

彼は非常に困っていたのです。
我々研究者は酵素の専門家ではなく、世界中の生物、ライフサイエンス研究から得られる遺伝子データベースとゲノムデータベースの専門家でした。

データベースにしか存在しない酵素に着目
我々は、こうしたデータの中に有用な酵素が埋まっていることを知っていたので、そこに着目して事業を開始しました。
事業開始時には、すでに1億以上の母集団がありましたが、昨年末には2倍以上に増加しており、データソースは急速に広がっています。

これまで人類が発掘してきた酵素と比較しても、100倍以上の酵素がデータベースにしか存在していないと言われています。
創業当初から、我々は酵素「=enzyme」を掘る「=dig」という意味で「digzyme」という名前で創業し、初志貫徹で取り組んできました。

酵素によるプラスチックリサイクルの応用例
「具体的には、どのようなことができたのか?」と思われるかもしれませんので、事例をご紹介します。

これは、「地球環境問題」へのソリューションの1つです。

実は、酵素はプラスチックリサイクルへの応用が可能であることが、最近注目されています。
我々が取り組んだのは、塩ビ(PVC、ポリ塩化ビニル)と呼ばれるプラスチックです。
塩ビは塩素を含むプラスチックなので、通常のリサイクルプロセスに入れると金属の腐敗を引き起こすため、リサイクルできないものでした。
そこで我々は、2つの新規酵素を用いたプロセスを提案し、塩ビから塩素を除去したり、表面構造の変化をもたらしたりすることに成功しました。
これはまだ研究段階ではありますが、単離酵素としては世界初の事例となっています。
食品素材開発への応用例
次は、「おいしさ・健康寿命」へのソリューションの1例で、食品素材開発への応用例です。

我々のクライアントは、もともと、とある酵素を用いて原料から食品素材を製造していました。
この素材は非常に有用でしたが、物性の問題で用途に制限がありました。
そこで我々のdigzyme Moonlight™のプロセスを用いて、新しい素材を開発することに成功しました。
つまり、物性や用途を拡大し、機能の多様性をもたらすことがすでに実証されています。
すでに量産化までの体制を構築
ただ、これも「研究レベルでしょう?」と言われるかもしれません。
いいえ、我々は研究を「可能性」のまま終わらせないことを常に考えています。

コア技術である解析技術を中心に、酵素やプロセスのデザイン、酵素の製造と実証、さらに量産化までの体制をすでに構築しています。

「バイオ研究は夢だけ与えて実用化しない」とよく言われますが、我々は本当に実用化できる技術を念頭に置いて開発を進めています。
10プロジェクトが進行中
ビジネスモデルとしては、酵素を創薬のような形でパイプラインモデルを採用しており、2023年から10本のプロジェクトが進行中です。

すでに生産開発が目前のものもあります。
開発期間は3~5年で、製品化後にはそれぞれの売上やライセンス収益を見込んでいます。
3~5年の開発フェーズのコストは、1つのパイプラインにつき約1億円かかります。
成功率は30〜50%で、クライアントにはデータやサンプルを提供しながら、研究開発の一部のリソースを頂いています。
事業化後は、長く続く(10〜50年)ところも酵素の面白いところですが、年間1〜50億円の売上、利益率20〜50%の製品となる見込みです。

実用化後には、酵素を実際に提供することを考えています。
世界を変える酵素を、迎えに行こう
我々は研究者集団であると言いましたが、バイオものづくり社会の実現を志す研究者と、イノベーションを求める事業者とをつなぐ酵素のアクセラレーターのような存在でありたいと考えています。

digzymeとともに、世界を変える酵素を、迎えに行こう。
ぜひともご支援のほど、よろしくお願いいたします。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成


